和本への招待;橋口侯之介著 角川選書 を読んでいる。
父の影響で、書に関心があり、その関連で筆、和紙などへの興味の連鎖で読んでいる。
知っていることも、知らないことも、あたりに漂う歴史的背景などまことに興味深いことが満載の本。その中から
千年前の『源氏物語』を復元する というタイトルのなかから
源氏物語の原典は残っていない。写本のみ。物語はどうかかれたのか?
推理小説といってもいい内容の本です。
千年前の表記ルール
そのなかで、56ページの小見出しに
枠にはめない「ゆるやかさ」 とありました。
仮名が制約のない書き方だったことに由来する。
写経や漢籍は、文字を書く枠=界線が引かれる。中国の伝統である。
仮名は、文字に枠をはめず、行取りを決める書き方。
「伝統は守る」のだが「ゆるやかに」継承していくことだった。
法令で決めてしまい、それに従わないのは誤りだという発想は近世までの日本にはなじまなかった。
「ゆるやかさ」こそが、一方では様式を尊重して守るが、
他方では新しいことに挑戦して変化をいとわない。
美的な感覚があって表記された。
平安時代の<みやびやか>は、 現在と異なるニュアンスであったと書いてある。
「風流」は、踊りと結びついて中世の芸能に。「過差」は、ぜいたく、華美。
風流、過差は、いずれも怨霊を沈めることと関係していたとの記載で、
大きくうなずき納得です。
現在、自分を華美に飾るのは、他人から畏怖されたい願望なのでしょうか。
正月の晴れ着は、神参りのため。その意識は、どれほど残っているでしょうか?
提灯を持った年長者を先頭に、正装して神社詣での記憶はかすかに残っています。
この本を読んで記憶の底から浮かび上がりました。