幸せのおすそ分け

　先日の結婚式には後日談がある。
　ちょうど、キヨちゃんが結婚式から戻って、親戚などに自分で育てた野菜を送ろうとしていた時だった。ほとんどは、キャベツや白菜、干し大根など全部キヨちゃんの畑で採れた物である。しかし、椎茸だけは作っていないので、知り合いの方にお願いして分けてもらった。
　その時に、キヨちゃんは「幸せのおすそ分け」をしたくなったのだ。貰ってきた引き出物から、持って帰るのに手頃な箱を一つチョイスした。
　「これ、結婚式の花嫁さん菓子じゃけん、縁起物じゃけん、持ってかえってお茶飲んで。」
　大きさと言い、重さといい、ちょうど手頃な「羊羹」である。最初は遠慮していたその方も、せっかくだからと持って帰ったのだ。
　さて、その日仕事から帰ると、キヨちゃんが落ち込んでいる。何事かと聞くと
　「母ちゃん・・・失敗した。申し訳ないことした・・・。」
と言う。
　それは、その日渡した「羊羹」だった。
　その人は、家にもって帰った「羊羹」をご主人にも見せて、お茶を沸かして一緒に食べようとした。そして、いよいよお茶を飲もうと箱を開けると、そこには引き出物用のカタログが入っていたのだ。さすがにお茶請けには出来ず、かといって、それで引き出物を取るわけにもいかず、気の毒そうに電話がかかり戻してくれたと言うのだ。まあ、そりゃあ落ち込むわな・・・。
　そして、今日デイサービスにキヨちゃんは透明の袋に入った「本当の嫁さん菓子」を持って行った。親友ナースの子供にやるんだとか。同じ鉄は踏まなかったので「えらい」と言っておこう。

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