すずめ通信

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第1913号 広島が全国一の転出超過とは

2024-02-13 06:32:35 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】13年ぶりに広島市を訪れた日の前々日、総務省は「住民基本台帳人口移動報告」2023年報を発表した。そこでは広島県が3年連続で転出超過日本一になったと明らかにされた。市民に衝撃が広がっているのか雨のせいか、13年前より行き交う人が少ないように感じる。県は「統計の取り方がおかしい」と息巻いているようだが、中国地方1の大都会である広島市でさえ、全国トップクラスの転出超過だ。この街にいったい何が起きているのだろう。



発表によると、転入が超過しているのは東京都をトップに首都4都県と大阪、福岡に限られる。あとの41道府県はいずれも転出が転入を超えている。なかでも広島県は1万人を超える転出超過で、続く兵庫、愛知を大きく引き離している。減少の男女比はほぼ同じだが、20代の転出が著しいらしい。学生層が県外に就職し、その逆は少ないということだ。出て行く住民が多いのは街にとって好ましくはない。広島には何か問題があるのだろう。



広島へは岩国から山陽本線で移動する。車窓に宮島を遠望しながら、宇部のインターハイに向かった高校1年の時以来の60年ぶりだと懐かしむ。保田与重郎は『日本の橋』で「錦帯橋は山陽本線の車窓から見える」と書いているが、それは違うだろうと地図を調べると、岩国から、本線より内陸部に岩徳線という路線が延びて錦川を渡っている。直線距離で1キロ上流の錦帯橋が見えるものだろうか。そんなことを考えながら約1時間で広島に着く。



広島駅は駅ビルの全面建て替え工事中だ。来年春には路面電車が改札階に乗り入れる、新しい街の顔が生まれるという。市民球場跡地が生まれ変わったという「ひろしまゲートパーク」に行ってみる。催しはなく寒々している。原爆ドームはこれまで訪ねた中で最もさっぱりしていて驚く。補強工事などが終わったのか、内部が一層むき出しになり痛々しい。繁華街に戻って本通りアーケード街を歩く。13年前に妻と寄った「アンデルセン」を見つける。



昔の銀行を改装した「広島アンデルセン」の旗艦店で、2階は楽しい雑貨売り場だったと思い出し、行ってみる。ところが殺風景なレストランに変わっていて記憶が混乱する。店員さんに訊ねると、私の記憶に間違いはなかった。「楽しいフロアだったのに残念です」と言うと、「そういう声はよく寄せられます」と、店員さんも残念そうだった。雨のせいか、あるいはこれも転出超過の影響で賑わいが薄れたか、本町通りに13年前の雑踏は見られなかった。



原爆で被った厄災を平和都市建設を掲げて跳ね返し、国内有数の大都市に発展してきた街である。テーマ別に充実した美術館が3つもあり、妻と訪ねる前年に歩いた比治山では、大勢の市民が「まんが図書館」でリラックスしている風景を眺めて「いい街だなあ」と思ったことを覚えている。広島市の人口は4年前に120万人を突破し、東京を除く都市の10番目の規模になった。しかしここ数年は減少が続き、直近は118万人台になっている。



人口減少社会なのだから、人口減をさほど神経質に嘆く必要はないのかもしれないが、東京1極集中が強まる中で、地方では中心都市への人口集中が似たような現象を生んでいる。全国的にそうした傾向が顕著だというのに、広島ではその中心都市が転出超過になっていることを、「統計の取り方がおかしい」と言って済ませていてはいけない。若者はこれほどの街から出て行ってなぜ帰ってこないのか、真剣に分析する必要がある。(2024.2.1)













(2010年2月の本通り商店街)

(2011年4月の本通り商店街)




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