《コマクサ》(平成27年7月7日、岩手山)
「校本宮澤賢治全集」の検証を五 とんでもない悪女であるという濡れ衣
さて、『事故のてんまつ』の出版に関わる故人の名誉毀損と差別問題については出版差し止めの仮処分申請が出され、筑摩と遺族側との話し合いの結果、絶版回収ということで和解したし、筑摩は「総括見解」も公にして詫びた。
一方、これと同じ構図にあった〝「新発見の252c」等の公開〟の方はどうであったかというと、その公開後、〈高瀬露悪女伝説〉が全国に流布してしまったと言える。のみならず、賢治に関して実績のある筑摩が活字にしてしまったからなおのことであろう、件の推定群⑴~⑺は独り歩きしてしまって「事実」となった。その結果、その「事実」に基づいて少なからぬ賢治研究家が、露をとんでもない悪女であるとした論考等を著している実態がある。不公平で極めて残念なことだ。
ただし、件の「新発見の252c」とか、「判然としている」とかの客観的な典拠がいくら調べても見つからなかったことなどから逆に私は示唆されて、この〈露悪女伝説〉を検証してみる必要があると判断した。そしてその検証等の結果、露は賢治から感謝されることこそあれ、露が悪女であったことを裏付けるものは何もないことが分かったから、この〈悪女伝説〉は創られたものであるということを実証できた。そこで、露は悪女の濡れ衣を着せられたということがはっきりしたので、私たちは、『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(森義真、上田哲、鈴木守共著、ツーワンライフ出版)においてそのことを公にした。
なお、〔聖女のさましてちかづけるもの〕のモデルが高瀬露だから露は悪女だと主張する人も中にはいるが、その有力なモデルは他におり、それが露であることの蓋然性は限りなくゼロに近いということを始めとして、露が悪女であることの客観的な根拠は何一つないということを私は実証できたので、露は悪女とは言えないということを『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ社)』でも公にした。
ところが、なぜ「新発見の252c」とし、はたまた、「判然としている」と断定できたのかというその客観的な典拠を筑摩は我々読者に相変わらず明示してくれない。したがって現段階では、〝「新発見の252c」等の公開〟は結果的に露に「とんでもない悪女である」という濡れ衣を着せてしまった、と私は言わざるを得ない。
畢竟するに、 『広辞苑』(岩波書店 第二版)によれば、
【杜撰】 著作で、典拠などが不確かで、いい加減なこと。
ということだから、『校本宮澤賢治全集』は杜撰なのだ。
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来る6月9日(日)、下掲のような「五感で楽しむ光太郎ライフ」を開催しますのでご案内いたします。
2024年6月9日(日) 10:30 ▶ 13:30
なはん プラザ COMZホール
主催 太田地区振興会
共催 高村光太郎連翹忌運営委員会
やつかのもり LCC
参加費 1500円(税込)
締め切り 5月27日(月)
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