〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)
『本当の高瀬露』
さて、先の〝「『ナーサルパナマの謎』より」〟において、特に、・反例がある現定説「大正15年12月2日の上京」
・現定説「大正15年12月2日の上京」の反例とは
・「ヒデリノトキニ涙ヲ流シタ賢治」という通説の嘘
・通説「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」の嘘
・「寒サノ夏ハオロオロアルイタ賢治」という通説の嘘
・「風雨の中を徹宵東奔西走、遂に風邪、病臥」?
・通説「貧しい農民のために献身した賢治」の嘘
・これまでほとんど無視されていた千葉恭
・「独居自炊」という通説はあやかし
・通説「聖女のさまして近づけるものは露」も嘘
・「聖女のさまして近づけるものは」露以外
等について明らかにしたのだが、私たちの一連の検証結果はどういうわけか、現「賢治年譜」等とは大分異なっていたり、果ては正反対だったりということで、そう簡単には世の中から受け容れてもらえないであろうことは充分に覚悟している。おそらくそこには、構造的な問題が横たわっていそうだからである。そこで、これらの事柄の真偽がどう決着がつくかはまだまだ時間を要するだろうから歴史の判断を俟つしかないと思っている。・現定説「大正15年12月2日の上京」の反例とは
・「ヒデリノトキニ涙ヲ流シタ賢治」という通説の嘘
・通説「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」の嘘
・「寒サノ夏ハオロオロアルイタ賢治」という通説の嘘
・「風雨の中を徹宵東奔西走、遂に風邪、病臥」?
・通説「貧しい農民のために献身した賢治」の嘘
・これまでほとんど無視されていた千葉恭
・「独居自炊」という通説はあやかし
・通説「聖女のさまして近づけるものは露」も嘘
・「聖女のさまして近づけるものは」露以外
しかしながら、巷間流布している〈高瀬露悪女伝説〉がもし捏造されたものであったとするならば、この件だけはそうはいかない。それは人権に関わる重大な問題であり、それ以外の事柄とは根本的に違うからである。そして懸念していたとおり、この伝説は捏造されたものであることを私は実証してしまった。
ここからは、高瀬露は〈悪女〉などでは決してなく、逆に見事な生き方をした人であったということを、「本当の高瀬露」を明らかにしてゆきたい。
あやかし〈悪女・高瀬露〉
鈴木 巷間、〈高瀬露悪女伝説〉なるものが流布していが、この伝説はある程度調べてみれば信憑性の危ういことが容易に判る。それはまず、賢治の主治医だったとも言われているという佐藤隆房が、
櫻の地人協會の、會員といふ程ではないが準會員といふ所位に、内田康子(〈註二十〉)さんといふ、たゞ一人の女性がありました。
と『宮澤賢治』で述べているからさ。 内田さんは、村の小學校の先生でしたが、その小學校へ賢治さんが講演に行つたのが緣となつて、だんだん出入りするやうになつたのです。
來れば、どこの女性でもするやうに、その邊を掃除したり汚れ物を片付けたりしてくれるので、賢治さんも、これは便利と有難がつて、
「この頃は美しい會員が來て、いろいろ片付けてくれるのでとても助かるよ。」
と、集つてくる男の人達にいひました。 〈『宮澤賢治』(佐藤隆房著、冨山房、昭和17年)175p~〉來れば、どこの女性でもするやうに、その邊を掃除したり汚れ物を片付けたりしてくれるので、賢治さんも、これは便利と有難がつて、
「この頃は美しい會員が來て、いろいろ片付けてくれるのでとても助かるよ。」
吉田 さらには、賢治の弟清六も、
白系ロシア人のパン屋が、花巻にきたことがあります。…(筆者略)…兄の所へいっしょにゆきました。兄はそのとき、二階にいました。…(筆者略)…二階には先客がひとりおりました。その先客は、Tさんという婦人の客でした。そこで四人で、レコードを聞きました。…(筆者略)…。レコードが終ると、Tさんがオルガンをひいて、ロシア人はハミングで讃美歌を歌いました。メロデーとオルガンがよく合うその不思議な調べを兄と私は、じっと聞いていました。〈『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著、津軽書房)236p〉
と追想していることも承知のとおりだ。そして、下根子桜の宮澤家別宅に出入りしていてオルガンで讃美歌が弾けるイニシャルTの女性といえば高瀬露がいるし、露以外に当て嵌まる女性はいない。となれば、この「Tさん」とは露のことである。よって、賢治はある時、下根子桜の宮澤家の別宅に露を招き入れて二人きりで二階にいた、と清六は実質的に証言していたということになるから、このような露が〈悪女〉であるとは普通言い難いので、この伝説はその信憑性が危うい。鈴木 清六はまた、
宮沢清六の話では、この歌は賢治から教わったもの、賢治は高瀬露から教えられたとのこと。〈『新校本宮澤賢治全集第六巻詩Ⅴ校異篇』(筑摩書房)225p〉
とも証言しているから、賢治は露から歌(讃美歌)を教わっていたということもまた私たちに教えてくれる。荒木 つまりこれらの証言からは、露はしばしば下根子桜の宮澤家別宅を訪れており、賢治は露にいろいろと助けてもらっていたこと、露とはオープンで親密なよい関係にあったということが少なくとも導かれるわけだから、これじゃ、この〈伝説〉とは全く逆だべ。
鈴木 一方で露本人は、
君逝きて七度迎ふるこの冬は早池の峯に思ひこそ積め
師の君をしのび來りてこの一日心ゆくまで歌ふ語りぬ
というような、崇敬の念を抱きながら亡き賢治を偲ぶ歌を折に触れて詠んでいたことを『イーハトーヴォ第四號』(菊池暁輝編輯、宮澤賢治の會、昭和15年)等によって私たちは知ることができる。師の君をしのび來りてこの一日心ゆくまで歌ふ語りぬ
荒木 ならば、このような歌を露は公にもしているというのに、なんでそこまで〈悪女〉にされねばならんのか、全く俺には解せん。
吉田 そしてもう一つ大事なことがあり、露は19歳の時に洗礼を受け、遠野に嫁ぐまでの11年間は花巻バプテスト教会に通い、結婚相手は神職であったのだが、夫が亡くなって後の昭和26年に遠野カトリック教会で洗礼を受け直し、50年の長きにわたって信仰生涯を歩み通した(雑賀信行著『宮沢賢治とクリスチャン花巻編』(雑賀編集工房)143p~)クリスチャンであったという。
荒木 となれば、常識的に判断すれば、巷間流布している〈悪女・高瀬露〉はあやかしである蓋然性がかなり高いということか。
吉田 それは、鈴木がここ十数年ほどをかけて「羅須地人協会時代」の賢治についての検証してみたところ、賢治に関する「年譜」や「定説」そして「通説」等のうちで、これは常識的におかしいぞと感じたものは皆、やはりほぼおかしかったということだからなおさらのことにだ。
荒木 しかしあの世界では、現実は全く逆なんだろう。
鈴木 そうなんだな、例えば山下聖美氏は、
感情をむき出しにし、おせっかいと言えるほど積極的に賢治を求めた高瀬露について、賢治研究者や伝記作者たちは手きびしい言及を多く残している。失恋後は賢治の悪口を言って回ったひどい女、ひとり相撲の恋愛を認識できなかったバカ女、感情をあらわにし過ぎた異常者、勘違いおせっかい女……。〈『賢治文学「呪い」の構造』(平成19年、59p)〉
とか、あるいは澤村修治氏は、 無邪気なまでに熱情が解放されていた。露は賢治がまだ床の中にいる早朝にもやってきた。夜分にも来た。一日に何度も来ることがあった。露の行動は今風にいえば、ややストーカー性を帯びてきたといってもよい。〈『宮澤賢治と幻の恋人』(平成22年、145p)〉
というように、何の躊躇いもなさそうに、露をとんでもない〈悪女〉にしているというのが実態だ。吉田 そしてもう一つ大きな問題がある。それは、先の清六の証言内容等とは正反対とも言える、露の人格を貶め、尊厳を傷つけているとしか思えないようなこれらの記述内容の典拠を、山下氏も澤村氏の共に明示していないということがだ。ということは、この方々は御自身がそう感じておられるということになる。
荒木 もしそうであるとするならば、それも大問題だべ。根拠も明らかにせずに、他人を貶めていることになるのだから。
鈴木 いずれにせよ、この〈悪女伝説〉の流布は、『本統の賢治と本当の露』でも触れたのだが、
露は客観的な根拠が全くないのにも拘わらず理不尽なことに〈悪女〉の濡れ衣を着せられてしまったのだった。よって、現状の〈悪女・高瀬露〉の全国的流布は冤罪であり、「賢治伝記」上の看過できぬ瑕疵である、と私は異議申し立てをしたい。〈『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版)133p~〉
と、声を大にして言いたいんだな。続きへ。
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賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました。
そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
電話 0198-24-9813
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