みちのくの山野草

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「独居自炊」とは言い切れないのでは

2019-08-11 10:00:00 | 子どもたちに嘘の賢治はもう教えたくない
《ルリソウ》(平成31年5月25日撮影)
〈子どもたちに嘘の賢治はもう教えたくない〉

 さて、その「常識的に考えればおかしいと思われるところが、特に「羅須地人協会時代」を中心にして幾つか見つかった」についてだが、私が最初におかしいと思ったのは「旧校本年譜」の大正15年7月25日の項の次の記述、
 賢治も承諾の返事を出していたが、この日断わりの使いを出す。使者は下根子桜の家に寝泊りしていた千葉恭で午後六時ごろ講演会会場の仏教会館で白鳥省吾にその旨を伝える。
             〈『校本全集第十四巻』〉
だった。
 そこで私は、「えっ、ということは違ってたんだ」、と軽いショックを覚えた。「羅須地人協会時代」の賢治は「独居自炊」であったと巷間いわれているはずだが、そこに「寝泊まりしていた千葉恭」とあるからには、少なくとも「下根子桜」に移り住んだその年の夏に、ある人物が賢治と一緒に暮らし続けていたということになる。となれば、「独居自炊」という通説が危ぶまれることとなり、「羅須地人協会時代」の賢治は「独居自炊」とは言い切れないのではなかろうか、と。
 そして、そもそもこの千葉恭とは如何なる人物だったのだろうか、という疑問を抱いた。そんな人物が下根子桜の宮澤家別宅に寄寓していたということなど私は全く知らなかったからだ。そこで、千葉恭なる人物のことをもっと知りたいと思って『校本宮澤賢治全集』を渉猟したのだが、いつ頃からいつ頃まで賢治のところに寝泊りしていたのかも、その出身地さえも含めて、恭自身のことに関してはあの膨大な『校本宮澤賢治全集』のどの巻にも殆ど何も書かれていなかったのだった。
 一方で、それとは逆に、賢治関連の論考の中で、恭自身が行った講演内容や彼の著した追想等が資料として沢山使われていることを知った。例えば恭が行った「羅須地人協会時代の賢治」という講演では、
 文学に関しては、私は何も知ることはありませんが、私が賢治と一しよに生活してまいりましたのは私自身百姓に生れ純粹に百姓としての一つの道を生きようと思つたからでした。そんな意味で直接賢治の指導をうけたのは或は私一人であるかもしれません。
             〈『イーハトーヴォ復刊2号』(宮澤賢治の会、昭和30年)〉
と述べたという。しかしながらそれらのどの資料の中にも、恭が下根子桜の宮澤家の別宅でいつ頃から暮らし始めたのかも、いつまで賢治と一緒に暮らしていたのかというその期間についても、ずばり直ぐに確定できるものは一つも見つからなかった。そして、賢治関連の論考の中にも同様にだ(つまり、賢治研究家の殆ど誰一人として、先の「疑問」を解決していなかったし言及さえもしていなかったようだ)。
 当然、この実態はかなり奇妙なことだし、何か不自然だなと私は強い違和感を感じた。ならば、恩師の嘆きに応えるために真相を明らかにせねばならない。これを機に徹底的に調べてやろうではないか、と私は決意した。

 ちなみに、高村光太郎は昭和26年に随筆集『獨居自炊』』(龍星閣)を出版した。一方で、それ以前に賢治の「羅須地人協会時代」を「独居自炊」だったと言っていた賢治研究家は一人もいない。それが初めて使われたのは、昭和28年発行の『昭和文学全集・第十四巻宮澤賢治集』(角川書店)においてであり、小倉豊文によって、
 大正十五年三月農學校教諭を辭職した彼は、四月から自耕自活の一農民の姿になり、花巻郊外に獨居自炊の生活を始めた。
とか、
 大正15年「櫻の假寓に獨居自炊を始む
というようにである。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
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 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
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 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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