講座日に受講者がいっしょに学べるほか、YoutubeのURLをメールでお送りしますので、自分で好きな時間に視聴することもできます。
全6回の講義を前期3回(11月、12月、来年1月)、後期3回(2月、3月、4月)の2期に分けてご提供します。
(*なお講座の名称について、現在では「コスモロジー・セラピー」と呼んでいますが、当時のまま「コスモス・セラピー」にしていますので、ご了承ください。)
【日曜講座】 コスモス・セラピー+α(前期)
講師:研究所主幹 岡野守也
テキスト:データ送信
時間:13時半~17時
受講料:前期3回分
一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=7千5百円、学生割引参加費=3千円
講座日:11月26日、12月17日、2024年1月21日。講座日から1カ月程度Youtubeにて視聴可能
講座内容:前期3回
第1回 11月26日(日曜)=2014 年1 月19 日収録/3 時間42 分
資料:「生きる自信の心理学の要点」、「生きているだけでも大変な奇跡」
第2回 12月17日(日曜)=2014 年2 月16 日収録/3 時間20 分
資料:「詩“最初の質問”」、「ニヒリズムの定義」、「現代科学のコスモロジー:ポイント
の整理表と小解説」
第3回 2024年1月21日(日曜)=2014 年3 月23 日収録/3 時間00 分
資料:なし
なお、後期は来年2月以降に予定しており、年が明けてからご案内しますが、内容は以下のとおりです。
第4回 2014 年5 月25 日収録/3 時間34 分
資料:「アドラー心理学:ヒューマニズムとその限界」、「宇宙歴XIII」
第5回 2014 年6 月22 日収録/3 時間29 分
資料:「ロゴセラピーからコスモス・セラピーへ」
第6回 2014 年7 月27 日収録/3 時間27 分
資料:「生きる自信の心理学の要点」
講座へのご参加やご相談、お問い合わせは研究所の問合せフォームからどうぞ。
『サングラハ』185号が出ました。発送も終わっていますので、読者のみなさんのお手元には間もなく届くと思います。お待ちください。
まだ読者でないみなさん、以下の「近況と所感」「目次」「編集後記」で推測していただけるような内容です、よろしければぜひご購読ください。お問い合わせ | サングラハ教育・心理研究所 (smgrh.gr.jp)
近況と所感
これまで体験したことのないほどの大型台風が多くの被害を出して日本列島を縦断した後、急に涼しくなりました。
被害に遭われたみなさんに心からお見舞い申し上げ、一日も早い復旧-復興をお祈りいたします。
当研究所の関係者のみなさんはいかがでしたか? いつも神仏・天地自然・ご先祖さまにみなさんのご無事をお祈りしています。
筆者の住む香川県は自然災害がとても少ないところで、ニュースで知るかぎりでは、今回も少し強めの雨と風だけで済んだようで、我が家も何事もありませんでした。自分だけよければいいとはもちろん思っていませんが、とりあえず感謝すべきことかと思います。
それにしても「気候変動」による気象の荒れはますます顕著になってきているようで、とても心配です。
*
そうした中、「気候変動などという大きなことに対して自分一人では何もできない」と考えてしまう方も少なくないでしょう。気持ちはよくわかります。筆者もふとそういう気持ちになりかかりますから。
しかし、これまで学んできていただいた読者には、「そういう気持ち=過度に否定的な感情は、非合理的な考え(イラショナル・ビリーフ)から生まれている…んでしたね」と言いたいと思います。
どこが非合理的か確認しましょう。その気持ちの裏に「自分一人で気候変動をどうにかしなければならない」という考えが潜んでいませんか? それはどう考えても無理・非合理的です。自分一人ではもちろんどうにかできません。
気候変動は、自分一人のせいではなく、長い歴史をかけて人類全体が生み出したものですから、「人類全体でどうにかしなければならない」と言ったほうがやや正確・合理的ですし、もっと言えば「大きな被害やまして絶滅を避けたいのなら、人類全体で協力してどうにかしたほうがいい」ということなのではありませんか?
そこでポイントは、「たいのなら」と「協力して」と「ほうがいい」というところではないかと思います。
まず、人類全体が協力できなかったら、とてもとても残念ですが大きな被害やもしかすると絶滅も避けられないでしょう。それはきわめて論理的な結末です。
しかしポジティヴに言い直すと、「人類全体が協力できたら、被害も絶滅も避けることができる」ということです。
では、次は協力できるのかということですが、協力は無意識的にされることはほとんどなく意識的に合意することによって可能になるのではないでしょうか。
言い方を替えると、協力という行動には合意という意識が必要だということです。
協力できていないのは合意できていないからで、それは十分な共通意識=一体感が形成されていないからです。
ポジティヴに言い直しましょう。「十分な共通意識=一体感が形成されれば合意が可能になり、協力が可能になり、協力が可能になったら人類の持続も可能になる」と。
そうすると、「必須の出発点は共通意識に向けた人類の意識の変容だ」ということになると筆者は考えてきました。
唯識的に言えば、「転識得智(てんじきとくち)」、特に自分や自分たちを実体視するマナ識からすべてのものの平等・一体性を実観(実感の誤植ではありません)する平等性智(びょうどうしょうち)への変容です。
そして意識の変容は、残念ながら「いっせーのせ」と人類全体ですぐに一挙には起こらないもののようですから、「滅亡したくない」と本気で思った者から取り組むしかない、と思ってきました。
しかしそれは、「自分一人でどうにかする・しなければならない・できる」ということではなく、「〔人類的合意と協力に向けて〕まず自分から始める」ということです。
しかも、そうした意識の変容への取り組みはすでにかなり多くの人の中で起こっており、筆者一人がやっているわけではありません。当研究所に関わってくださっているみなさんも、そういう多くの人の一人です。
大丈夫だと思いますが、「私一人が、サングラハで学んでも、瞑想しても、六波羅蜜を実践しても、世界は変わらないのではないか」とネガティヴ思考に陥りそうになったら、ぜひ「私が意識の変容に取り組んでいるのは、人類の意識変容の先駆者の一人だということであり、それが全体に広がったら、世界は変わりうる」とポジティヴ思考に取り換えてください。
進化史上、絶滅の危機に瀕した時、きわめて短期間に種全体が合意して飛躍的に変容し生き延びることができたというケースが何度もあるとのことです。私たち人類もそうなったほうがいいですね。ぜひ、そうしましょう。
以上、まるでコスモロジー心理学ミニレクチャーのようになりましたが、これが筆者の「近況と所感」です。
目 次
■ 近況と所感……………………………………………………………………………… 2
■『正法眼蔵』「生死」巻講義 下 …………………………………………岡野守也… 4
■〈宗教〉に未来はない 増補再説…………………………………………岡野守也… 12
■ 縁起の理法からみたウイルスと私たち
――新型コロナパンデミックをめぐって……………………………………大井玄…… 24
■書評『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(6)…増田満…… 35
■ 講座・研究所案内………………………………………………………………………… 50
■ 私の名詩選(84) 寒山詩一九三 ……………………………………………………… 52
編集後記
主幹の正法眼蔵「生死」講義は、短い巻でしたが、表現の簡潔さ・平易さ・率直さの中に一層、深さが感じられました。主幹のもう一つの記事は、新々宗教の問題に関し、過去記事を増補・再説しています。「未来はない」は単に批判・否定ではなく、新たな宇宙観と霊性に向けて超えるという、いまだ実現のめどが見えていない、しかし今こそ必要な建設的提案です。
大井先生の論文は、目下の新型コロナ禍のようなウィルスのあり様にもまた、進化と縁起の理法が貫徹していることが示されています。
増田さんによる『人新世の「資本論」』書評は、内面の視点の欠落を指摘して終えられています。確かに、この外面システムのみの代案は、私たちの内的意欲を喚起する力を持ちえないように見えます。
(編集担当)
サングラハ教育・心理研究所リモート講座のお知らせ
学びの秋になってきました。みなさん、いかがお過ごしですか。
以下の通り、10月〜12月の講座予定が決まりましたので、お知らせします。
ご一緒にさらに深めていきましょう。どうぞ、お申し込みください。
サングラハ教育・心理研究所 岡野守也
【日曜講座】「無明と智慧の深層心理学――『唯識三十頌』を学ぶ」第三期
人はなぜ死を恐れ、なぜ強欲になりがちで、なぜ戦争をし、なぜ自分の生きる基盤である自然を破壊するのか。大乗仏教の深層心理学・唯識は、すべてのものを分離独立したばらばらのものと見る見方・分別知・無明が心の奥底にまで固く固着していることが原因であることを、きわめて正確に指摘し、にもかかわらず人間は、無明を超えて、すべてがつながり合い(縁起)・一体(一如)であることを心の奥底まで覚る智慧に到ることも可能であると語っています。
実際に戦争が起こり気候変動が進んでいる状況のなかで、多くの方々とその智慧を共有したく、改めて講座を設定しました。
併せてやさしい瞑想法もお伝えしますので、知識だけにとどまらない深い学びをしていただけるでしょう。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布
▼時間:13時半〜16時半
▼参加費:一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=7千5百円
10月30日 11月27日 12月25日(3回)
【水曜講座】「『正法眼蔵』とやさしい瞑想によるやすらぎの時間」シリーズ
『正法眼蔵』を学ぶ長期シリーズです。
今回は、死生観、世界観(コスモロジー)に続き、すべてが一体で善悪を超えているからこそ成り立つ善悪とは何か、道元独自の深い倫理観を語った「諸悪莫作」巻を取りあげます。
やさしい瞑想の時間も含め、悩みの多い日常を離れ、深いやすらぎを感じることのできる時間になるでしょう。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布
▼時間:19時半〜21時
▼参加費:一般=7千5百円、会員=7千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=6千円
10月26日 11月16日 12月14日(3回)
【土曜講座】「般若波羅蜜=本当の智慧とは何か」第一期
大乗仏教の入門・初級の知識があることを前提に、さらに掘り下げて学ぶ中・上級者向け講座です。
(*その点を予め了承の上であれば、初心者の受講も受け付けます)。
前回シリーズで、大乗仏教の実践のスタンダードである六波羅蜜についてかなり深くまで学びました。
その学びをふまえた上で、今回のシリーズでは、六波羅蜜の中でももっとも中核である智慧=般若波羅蜜に焦点を当て、『摩訶般若波羅蜜経』(鳩摩羅什訳)の書き下しテキスト――第一期は「習応品(しゅうおうほん)第三」――に沿って、唯識による解析を加えながら、さらにじっくりと学びを深めます。
併せて瞑想・禅定波羅蜜の実習の時間ももちたいと思っています。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布
▼時間:14時〜16時
▼参加費:一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=7千5百円
10月8日 11月12日 12月10日(3回)
☆各講座、学生割引参加費=3千円
○受講申込方法(各講座共通)
氏名、住所、性別、連絡用の電話番号、メールアドレスを明記して、お問い合わせ | サングラハ教育・心理研究所 (smgrh.gr.jp) でお申込みください。
少し遅れましたが、『サングラハ』第184号の「近況と所感」も掲載しておきます。
実際の暑さのピークはまだこれからです。八月は平年並みかそれ以上の暑さになりそうだと天気予報は言っています。
日本中、記録的な大雨で被害が出ました。被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げます。
その他、一つ一つ改めて書くのはやめておきますが、国内外で、いろいろ好ましくない出来事がこれでもかこれでもかと起こってきています。
読者のみなさんは、ご無事・お元気でしょうか。いつも、みなさんのご無事・ご健康をお祈りしています。
*
筆者は、もともと瀬戸内海の生まれで、若い頃は暑さには比較的強く、夏は好きな季節だったのですが、最近はとても強いとは言えず、ここのところ毎年、夏が終わると、「何とかやっと生き延びた」という感じです。
とはいっても、筆者が少年だった今から半世紀以上前の夏は、今ほど暑くなかったので、弱くなったと感じるのは、年齢のせいだけではないようです。こちらが暑さに弱くなっただけでなく、暑さのほうがあまりに強くなったということもあるのでしょう。
禅の言葉に「寒時(かんじ)は闍梨(じゃり)を寒殺(かんさつ)し熱時(ねつじ)は闍梨を熱殺(ねっさつ)す」(『碧巌録』第四十三則)というのがあります。「闍梨」は「阿闍梨(あじゃり)」つまり僧の敬称で、ここでは話している相手のことです。「〔嫌がって不平を言っていないで〕寒い時には寒さに成り切り、暑い時には暑さに成り切りなさい。〔そうすれば、乗り切ることができる〕」といった意味で、確かにある程度まではそうだと思うのですが、しかし寒さも暑さも、度を超すと本当に死んでしまいかねません。
近年の気候変動による暑さは、精神論だけでは対処しきれないところまできているようです。筆者も、最近はクーラーを付けて寝ています。過度な我慢はせず、適度で合理的な暑さ対策をしながら、この夏も乗り超えたいものです。
夏もまた無常ですから、どんなに厳しくてもやがては必ず終わります。
*
暑さだけでなく、今起こっている山積みの問題もまた、無常です。「無常は仏法なり」(道元)。あらゆるものが変化するというのが宇宙の法則ですから、どんな問題もいつかは終わります。そして終わってみると、その問題は新しい解決へのプロセスだったことが見えてくるはずです。
ただ、個人や集団や人類にとって不都合なことは、問題が終わって新しい解決が創発する前に個人のいのちが終わってしまったり、集団も壊滅状態になったり、人類の場合は、問題の終わりと一緒に人類も他の多くの生命種と同じ運命を辿って終わってしまうかもしれないということです。
しかし、これまで何度もお伝えしてきましたし(「耳タコ」の方もおられるかもしれません⦅笑⦆)、後の記事「コスモロジー心理学各論8――全地球的な危機について」グローバルでも改めて書きましたが、「もし、破壊が次の創発の準備であり、死が次の誕生の準備だとすれば、根源的には宇宙には不条理はない、ということになります」。
個人が、幸福な人生を送り穏やかな死を迎えようが、不幸な人生を送って悲惨な死を迎えようが、「生死は仏のおんいのち」です(今回と次回の連載記事「『正法眼蔵』「生死」巻講義、参照)。
水曜講座で講義を始めた『正法眼蔵』「一顆明珠(いっかみょうじゅ)」の言葉を先取り的に引用すると、「いったい誰が、いろいろな事が起こったり滅したりするのを、これは宇宙のことだ、これは宇宙のことではないと肯定したり否定したりすることに心を煩わせる必要があろう。たとえ思い悩んだり心を煩わせたりしても、宇宙のことでないことはない。宇宙でないものがあって起こさせた行為でも思いでもないのだから、ただまさに須弥山(しゅみせん)中の亡者どもが住む暗黒の洞窟の中でさまざまな生活があり、それもまたただ一体なる宇宙〔の働き〕だということなのである」と言われています。
すべての出来事は一つのエネルギーとしての宇宙(一顆明珠)の働きであり、私の悩みもまた宇宙の働きであり、暗黒の洞窟のようなところで無明に囚われた人々がやっているトラブルだらけの生活(第一八二号「無明がある限り、死の怖れ、環境破壊、戦争もある」参照)もまた宇宙の働き以外のものではない、というのです。
自分の都合という分別知でものごとを捉え感じてしまう未熟な修行者・凡夫の菩薩である私たちには、なかなかすぐには肚落ちしない言葉ですが、ただの凡夫のように「そうは思えない。それは理屈だ。それは理想論だ。私には無理だ」と反発したり尻込みしたりしないで、肚落ちさせるべく精進を続けていきましょう。
*
自分にとってあまり好都合ではない時代であっても、よく生き抜いてよく死ぬためのヒントになりそうな記事を、今回も掲載しました。お役に立てていただけると幸いです。
変わらないご愛読を感謝します。
『サングラハ』第183号の発行のお知らせの時、「近況と所感」を掲載するのを忘れていました。
問題山積の時代にあって、心が折れないためのヒントになるかと思い、掲載することにしました。参考にしていただけると幸いです。
爽やかだった季節が終わろうとしています。季節は確実に移っていきます。「無常は仏法なり」(道元)。
皆さんはいかがお過ごしですか。お元気でしょうか。
あまり元気の出るニュースのない昨今ですが、それでも生かされて生きている日々は貴重です。生きることが許されている間は、日常をしっかり丁寧に生きたいものです。
*
ウクライナのあまりにも厳しい状況のニュースが毎日のように報道されています。私のまわりには、そうしたつらいニュースにずっと触れて、ご自分もとてもつらくなってしまっている方たちも少なくないようです。
そういう方たちが「共感疲労」という言葉を使われるのを聞いて、そういう言葉があることを初めて知りました。
そして「なるほど、実にうまく表現した言葉だな。今そういう気持ちになっている人は多いんだな。それはそうだ」と妙に納得してしまいました。
*
それどころか「共感うつ」と表現してもいいくらいになっている方もいるようです。そういう気持ちはよくわかります。共感性が高いというか高すぎる人はそうなりがちです。
*
「鈍感力」という言葉もあって、いろいろな出来事に対してあまり強く感じないという気質の人もいるようです。
それから、特に悪げがあるわけではなくごく庶民的に大きなことは自分には関係がないと思って無関心でいることができ、その結果いろいろなことにわりに平気でいられる人もかなり多いように見えます。
*
それに対して「HSP(Highly Sensitive Person,繊細すぎる人)」と呼ばれるタイプの気質の人は、ものごとを強く感じすぎて、生きるのがなかなか大変なようです(心理学者のエレイン・アーロンによれば人口の二〇パーセント
くらいいるとのこと)。
筆者もそういう傾向がありましたし、今でもちょっと油断すると外部の状況に影響されてうつ気分になりそうです。
しかし、幸い禅と論理療法を学んだおかげで、「共感うつ」にはならないですんでいます。
すでに著書や講義で皆さんにお伝えしてきましたが、今回改めてポイントをお話ししておくといいと思いました。
*
かつて初めて論理療法を学んで「眼からウロコ」だったのは、「共感することと共感しすぎることは同じではない」ということでした。
真面目な人には、「他人の不幸には共感すべきであり、共感して心が乱れるべきである」という思い込み(イラショナル・ビリーフ)がありがちだが、「不幸な人を見た時にするべきことは、その不幸を無くすか軽減するための行動であって、自分も共感しすぎて心が乱れて不幸になることではない」というのです。
「健全な市民にはもちろん適度な共感性は必要だが、共感しすぎて自分まで不幸になるのは、世界に不幸な人を一人増やすだけで、不幸を減らすことにはならない。あなたがすべきことは、不幸を少しでも減らす具体的な行動をす
ることであって、それができないのなら、そのことは忘れて、せめて自分が不幸になるのは避けるように」と。
これだけでは、真面目すぎ、優しすぎ、共感性が過度に高い方には、すぐには納得しにくいかもしれません。
でも、共感しすぎて疲れたりうつになったりするようでしたら、人間として適度な共感の範囲にとどまって、できる行動をすることのほうが有効性があるという理性的な考え方(ラショナル・ビリーフ)に変更することを検討してみていただくといいのではないか、と筆者は思っています(詳しくは拙著『いやな気分の整理学――論理療法入門』NHK生活人新書、P・A・ホーク/拙訳『きっと「うつ」は治る』PHP研究所、どちらも品切れですがネット等の古書で入手可)。
*
もう一つ、『坐禅儀』では、冒頭で「大乗の菩薩は坐禅をする時にまずすべての生きとし生けるものを救いたいという大悲心を起こすように」と言っておきながら、そのすぐ後に「諸縁(しょえん)を放捨(ほうしゃ)し万事(ばんじ)を休息(きゅうそく)せよ(さまざまな関わり合いを忘れ去り、すべての俗事を休むように)」と言っていました(第一七六号「六波羅蜜を学ぶ⑹」参照)。
それは、いったんすべてを忘れ休んで、心を静かにし心のエネルギーを取り戻して、それから衆生救済に取りかかるように、ということでした。慈悲は、過度の共感や同情ではなく、具体的な業・行為(カルマ)であり、それには大変なエネルギーが必要で、そのためには十分な休息も必要だということでしたね。
ぜひ、この世(家庭や会社や日本や世界)のトラブルのことを一切忘れて深くやすらぐ時間を確保して、それからまた元気になって(根元である宇宙のエネルギー・気をもらって)、この世でしっかり働いて、最後は迷わず光の国
に帰れるといいですね。引き続きご一緒に精進しましょう。
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お待たせしました。『サングラハ』第184号が出ました。混迷の深まる時代をどう生き抜くかのヒントをが語られています。どうぞ、ご購読ください。
目 次
■ 近況と所感…………………………………………………………………………………… 2
■『正法眼蔵』「生死」巻講義上………………………………………………岡野守也… 4
■ コスモロジー心理学各論8―全地球的(グローバル)な危機について…岡野守也… 19
■書評『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(5) …増田満…… 28
■ 講座・研究所案内…………………………………………………………………………… 38
■ 私の名詩選(83) 寒山詩…………………………………………………………………… 40
編集後記
今号、普通には「心が折れる」世の現状に対する、いわば対処法の特集となっています。
主幹による正法眼蔵「生死」の巻講義録が始まりました。覚りの眼には絶望などありえないことが納得できます。
コスモロジー各論では、それに対応する外面の世界観においても、絶望は無用であることが明示されています。
ぜひ、このカオスが新たな秩序の創発につながってほしいものです。
羽矢先生の「仏弟子たちのことば」は著者都合により短期間休載となります。
増田さんの書評では、脱成長コミュニズムの理想が紹介されています。対応する内面的変革がぜひ必要だと感じます。
(編集担当)
●購読の問合せ、申込みはサングラハ教育・心理研究所のフォームでどうぞ。
『サングラハ』第183号が出ました。目次は以下のとおりです。
目 次
■ 近況と所感 ……………………………………………………………………………… 2
■「典座教訓」講義(6) ……………………………………………………岡野守也… 4
■ コスモロジー心理学各論7
――宇宙は光、死は光の国への帰郷…………………………………………岡野守也… 16
■ 仏弟子たちのことば(15) ………………………………………………羽矢辰夫… 29
■書評『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(4) …増田満… 31
■ 講座・研究所案内 ………………………………………………………………………… 38
■ 私の名詩選(82) 千家元麿「麥」……………………………………………………… 40
編集後記
今回の一八三号では、主幹の連載「典座教訓」講義が最終回となっています。道元禅師の語る、この結論部の慈しみある言葉は、まさに一体の心をもって、今すべき日常業務に取り組む姿勢というものが、一般的に作務という言葉で表現される分別知的な「真心」等と、似ていながら全くレベルの違う、修行の核心を行くものであったことを感じさせます。
再開した主幹のコスモロジー各論は今回、現代科学の宇宙観(コスモロジー)から、私たちの死の意味がどのように転換するかについてです。哲人皇帝の遺した言葉は、内面的にも外面的にも、そここそが今後世界のコスモロジーが行きつく地点であることを明示していて、何よりその意味で感動的です。
羽矢先生の「仏弟子たちのことば」では、何とも人間臭かったブッダの異母弟ナンダの自己変革が取り上げられています。
増田さんの書評では、資本主義の根本問題を乗り越えるという新たな共有の思想が紹介されています。加えて著者が、コミュニズムの歴史的暗部をどのように考え、内的なスターリニズム克服にいかに道筋をつけているのかも注目されます。
(編集担当)
●購読のお問合せ・申込みは研究所HPのフォームでどうぞ。
戦争や環境破壊が止まりません。このままでは人類の近未来に希望を見出すことが難しい時代になっています。
そのもっとも深い原因は、すべて――例えば「我々」と「やつら」、「人間」と「自然」――を分離したものと捉える人間の浅知恵=分別知にあると思われます。
私たちは、これまでとは根本的に違うすべてがつながっており究極的には一つであると捉える本当の智慧(ちえ)を学ぶことによってのみ、未来に確かな希望を見出すことができるでしょう。
当研究所は、今期も分別知を超える本当の智慧の探究をさらに持続します。
講座はすべて遠隔(リモート)ですから、まさに遠隔地の方も参加できます。すでに北からも南からも多くの方が参加してくださっています。皆さんもぜひどうぞ。
【日曜講座】「無明と智慧の深層心理学――『唯識三十頌』を学ぶ」第二期
大乗仏教の深層心理学・唯識は、死の恐れ、強欲、戦争、自然破壊などの根本的原因が、すべてのものを分離独立したばらばらのものと見る見方・分別知・無明が心の奥底にまで固く固着していることであることを、きわめて正確に指摘しつつ、同時に人間は、無明を超えて、すべてがつながり合い(縁起)・一体(一如)であることを心の奥底まで覚る智慧に到ることも可能であると語っています。
実際に気候変動が深刻化し、大きな戦争が起こっているという状況のなかで、多くの方々とその智慧を共有したく、改めて講座を設定しました。
併せてやさしい瞑想法もお伝えしますので、知識だけにとどまらない深い学びをしていただけます。
▼講師:研究所主幹
▼時間:13時半〜16時半
▼参加費:一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=7千5百円
▼テキスト:随時配布
7月24日 8月28日 9月25日(3回)
【水曜講座】「『正法眼蔵』とやさしい瞑想によるやすらぎの時間」シリーズ
『正法眼蔵』を学ぶ長期シリーズ。今回は、前回までの道元の死生観が語ら
れた「生死」「全機」に続き、「全宇宙は一つの光り輝く玉である」という世界観が全面的に展開された「一顆明珠(いっかみょうじゅ)」巻です。
参加者のみなさんには、やさしい瞑想の時間も含め、悩みの多い日常を離れ、深いやすらぎを感じることのできる時間になっています。
▼講師:研究所主幹
▼時間:19時半〜21時
▼参加費:一般=7千5百円、会員=7千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=6千円
▼テキスト:随時配布
7月20日 8月17日 9月21日(3回)
【土曜講座】「深い気づきのメソッド――六波羅蜜を学ぶ」第三期
大乗仏教の中・上級者向け講座。大乗の基本である空・中観と唯識を学び、煩悩とは何か覚りとは何かいちおうの理解ができると、次にではどうしたら覚れるのかという実践的な問いが起こるでしょう。
「六波羅蜜の実践」が答えです。布施、忍辱、持戒、精進が終わり、第三期は禅定、智慧と進んでいきます。
『大般若経』を中心に学びます(瞑想の実習もあります)。
*第三期からの受講も可能です(途中参加の方は第一、二期をDVDで学べます)。
▼講師:研究所主幹・岡野守也
▼時間:14時〜16時
▼参加費:一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦=7千5百円
▼テキスト:随時送付
7月9日 8月13日 9月10日(3回)
☆三講座とも会員割引を再開または新設☆各講座、学生は学割参加費=3千円
○受講問合・申込方法(各講座共通)
氏名、住所、性別、連絡用の電話番号、メールアドレスを明記して、研究所HPのフォームでお問合せ・お申込みください。
●有史以来人類は、根本的には無明である知恵・分別知で文明を発展させてきましたが、同時に多くの問題を生み出し続けています。
戦争も環境破壊も無明が生み出したものだと考えてまちがいありません。
今やこのままでは人類の近未来に希望を見出すことが難しい時代になっています。
私たちは、これまでとは根本的に違う本当の智慧を学ぶことによってのみ、未来に確かな希望を見出すことができるでしょう。
当研究所は今期も、分別知を超える智慧の探究を持続します。
講座はすべてリモート・遠隔で、まさに遠隔地の方も参加していただけます。これまで参加が難しかった皆さん、ぜひご参加下さい。
【日曜講座】「無明と智慧の深層心理学― ― 『唯識三十頌』を学ぶ」
第一期
人はなぜ死を恐れ、なぜ強欲になりがちで、なぜ戦争をし、なぜ自分の生きる基盤である自然を破壊するのか。
大乗仏教の深層心理学・唯識は、すべてのものを分離独立したばらばらのものと見る見方・分別知・無明が心の奥底にまで固く固着していることが原因であることを、きわめて正確に指摘し、にもかかわらず人間は、無明を超えて、すべてがつながり合い・一体であることを心の奥底まで覚る智慧に到ることも可能であると語っています。
実際に大きな戦争が起こっているという状況のなかで、多くの方々とその智慧を共有したく、改めて講座を設定しました。
併せてやさしい瞑想法もお伝えしますので、知識だけにとどまらない深い学びをしていただけるでしょう。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布▼時間:13時半〜16時半▼参加費:一般=1万5百円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=7千5百円、学生=3千円
4月24日 5月22日 6月26日(3回)
【水曜講座】「『正法眼蔵』とやさしい瞑想によるやすらぎの時間」シリーズ
『正法眼蔵』を学ぶ長期シリーズです。今回は、前回の「生死(しょうじ)」の巻に続いて、道元禅師のきわめて深い死生観を本格的な文体で語った「全機(ぜんき)」の巻を選びました。
やさしい瞑想の時間も含め、悩みの多い日常を離れ、深いやすらぎを感じることのできる時間になっています。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布▼時間:19時半〜21時▼参加費:一般=7千5百円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=6千円、学
生=3千円
4月20日 5月18日 6月15日(3回)
【土講座】「深い気づきのメソッド――六波羅蜜を学ぶ」
第二期
大乗仏教の入門・初級の知識と理解を前提とした、中・上級者向け講座です。
大乗の教えの基本である空・中観と唯識を学び、煩悩とは何か、それを超える覚りとは何かについていちおうの理解ができた人の心には、次にではどうしたら覚れるのかという実践的な問いが起こるでしょう。
「六波羅蜜を実践するように」というのが答えです。第一期は、序論と布施の後、状況に関わって先に忍辱について学びました。続いて持戒、精進と進んでいきます。『大般若経』を中心に学びます(瞑想の実習もあります)。
*第二期からの受講も可能です(ご希望の方は第一期をDVDで学ぶことができます)。
▼講師:研究所主幹・岡野守也▼テキスト:随時送付▼時間:14時〜16時▼参加費:一般=1万5百円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=7千5百円、学生=3千円
4月9日 5月7日 6月4日(3回)
○受講申込方法(各講座共通)
氏名、住所、性別、連絡用の電話番号、メールアドレスを明記して、研究所HPのフォーム、またはFAX087‐899‐8178、メール okano@smgrh.gr.jp でお申込みください。
*当研究所―本誌はおかげさまで今年1月で満30年を迎えることができました。その「近況と所感」を以下に引用させていただきます。
近況と所感
今年は寒(かん)らしい寒になりましたが、それでも近所の滝宮天満宮では数輪白梅が咲き始めています。「冬来たりなば春遠からじ」ということですね。
今年最初なので、遅ればせですが、ご挨拶を。
問題山積の時代ですが、それでも生かされているだけでも喜ばしいことなので、明けましておめでとうございます、と申し上げます。今年も皆さんの身心のご健康をお祈りします。
問題山積という状況は、「陰極まれば陽に転ず」というプロセスの陰がまだ極まっていないということでしょう。やがて陽に転じるまで、転じさせるべく、それぞれの最善を尽くしながら、気長に待ちましょう(「能動的忍耐」!)。
今年最初の号をお届けします。本年もよろしくご愛読をお願いいたします。コロナ第六波の影響があって、また少し遅くなってしまいました。どうぞご海容ください。
*
ところで、当研究所-本誌は一九九二年一月十八日にスタートしましたので、この一月十七日で満三十年でした。
振り返ると、創刊号で創設の目的について次のように書きました。
サングラハ心理学研究所の目的
この「サングラハ心理学研究所」を通じて、私が目指したいことは、これまでもいろいろなかたちでみなさんに申し上げてきましたが、あらためていえば、以下のようなことです。
◇どうしたら、人間すべてが、自分白身とも他者とも自然とも調和した、「仲よく楽しく生きて楽に死ぬ」ことができるような生き方に到達できるか、徹底的な探究を試みること。
◇そのためには、近代的な理性・科学主義、個人主義、ヒューマニズムは不十分であり、霊性と理性の統合、自己実現から自己超越へという意味での〈意識の変容〉が必要条件――十分条件ではない――だと思われるので、そのための理論と方法とそしてなによりも実践そのものを探究すること。
◇その時その時に到達した探究の成果を、自己絶対化することなく仮説・試案・提案といったかたちで、しかしやはり広く社会に提示していくこと。
◇そのことによって、人類の全体的変容-サヴァイバルになにほどか貢献すること。
若さの気負いでずい分大きな構えでスタートしたなと思いますが、振り返ってみて、「人はなぜ争うか」「人はなぜ死を恐れるか」という大きな問い(ビッグクエスチョン)についての「徹底的な探究」は自分で納得できる程度にはできたかと思っています。ではどうしたらいいのかという答えも、ある程度まで明らかにできたと考えています。
「到達した探究の成果を……社会に提示していくこと」についても、三十冊あまりの著作とたくさんの講義と本誌の通算一八〇号などで、かなりの程度できたのではないかと思いますが、「広く」という点ではまだまだです。
肝腎の「そのことによって、人類の全体的変容-サヴァイバルになにほどか貢献すること」は、当初気負ったほど広く影響を及ぼして大きく貢献できるということにはなっておらず、残念ながらまさに「なにほどか」です。
けれども、コスモロジーセラピーの自信のワークでやるとおり、「『あまりない』は『ない』ではない。どんなに小さくても、なにほどかであっても、あるものはある」という見方を選択することにしています。
関わってきてくださった皆さんの評価はいかがでしょう。
それに、これもいつも皆さんにお話ししているとおり、「まだまだだ」は「これからだ」ということでもありますから、これからも天・宇宙が生かしてくれている間は、できることをさらにできるだけやっていくつもりです。
よろしければ、ご一緒しましょう。
*
それに関して、ちょうど一年前の本誌第一七五号の「六波羅蜜を学ぶ⑸」の精進について引用した『大般若経』の個所を改めて噛みしめて読み直しながら、「精進波羅蜜多!」と自分を鼓舞しています。ご参考に、一部再掲します。
もし菩薩が一カルパかけて行なった事業を振り返って、長かったという想いになるようであれば、まさに怠惰な菩薩と名づけられると知るべきである。
もし菩薩大士が一カルパかけて行なった事業を振り返って、一日で行なった仕事のように思うなら、まさに精進の菩薩が精進波羅蜜多にしっかりと留まっていると名づけられると知るべきである。
また、プールナよ、諸々の菩薩大士は、覚りの行を修行するうえでカルパの数の多少を考えてはならない。もし菩薩大士がカルパ数を考えて限界を設けるようなら、精進し勇猛果敢に覚りの行を修行し、この上なく等しいもののない覚りを求め覚ったとしても、まさに怠惰な菩薩と名づけられると知るべきである。
もし菩薩・大士が次のような考えをしたとしよう。たとえ数限りない大カルパを経ても精進し、勇猛果敢に覚りの行を修行して、必ずこの上なく等しいもののない覚りを覚ろう。私は、決して心に尻込みする気持ちをもってこの上なく等しいもののない覚りを追究するようなことはしない、と。まさに精進の菩薩が精進波羅蜜多にしっかりと留まっているのである。
精進波羅蜜多を修行して速やかに完成し、生死輪廻を超越してただちに一切を知る者の智慧を覚り得て、諸々の衆生のために大いなる益をなすと名づけられると知るべきである。
もし菩薩大士がカルパの数を考えて限界を設けるようであれば、極めて勇猛に常に努めて布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若波羅蜜多を修行しても、それでも名づけて怠惰な菩薩とするのである。
*
「大乗の菩薩は、同時に摩訶薩・大士・志の大きな人であって、一切衆生を救うなどという大きな仕事が一年や十年や一カルパくらいでできると思ってはならない。果てしなくやり続けるのだ。一カルパかけてやったこともほんの一日仕事にすぎないと思うように」ということでした。
一カルパでさえそうですから、まして三十年は菩薩大士にとって大した長さではありません。ごくごく短いワンステップであって、大げさに騒ぐほどのことではないとも言えます。
それでも、凡夫の時間感覚ではそこそこの長さであり、それなりの感慨もありますので、コロナ感染症の流行が収まっていたら、皆さんにお集まりいただいて、東京または神奈川で三十周年記念の行事くらいはしてもいいかなと思っていましたが、なかなか収まる気配もありませんので、当面、特別な集まりはしないことにしました。
(中略)
*
最後に今回も、協力執筆者の皆さんと読者の皆さんに心から感謝し、本年もよろしくお付き合いいただけますようお願いいたします。
もう一度、山積する問題を見つめ過ぎて絶望したり、目をそらして能天気になったりすることなく、最終的には天・宇宙にお任せという気軽さを保ちながら、精進-能動的忍耐という行を続けましょう。
目 次
■ 近況と所感 ……………………………………………………………………………… 2
■「典座教訓」講義(4) ……………………………………………………岡野守也… 5
■ 仏弟子たちのことば(13) ………………………………………………羽矢辰夫… 20
■書評『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(2) …増田満… 22
■ 国際比較で見る日本のコスモロジー崩壊(8)…………………………三谷真介… 31
■ 講座・研究所案内 ……………………………………………………………………… 42
■ 私の名詩選(80) 『正法眼蔵』「梅華」巻より …………………………………… 44
目 次
■ 近況と所感 ………………………………………………………………………………… 2
■「典座教訓」講義(3) ……………………………………………………岡野守也…… 5
■ コスモロジー心理学各論(7)――なぜ空は青いか?…………………岡野守也……17
■ 痴呆、認知症そして老耄(認知障)(12)………………………………大井玄……… 22
■ 仏弟子たちのことば(12)…………………………………………………羽矢辰夫…… 33
■『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(1)…………増田満…… 35
■ 講座・研究所案内……………………………………………………………………………… 42
■ 私の名詩選(79) 『万葉集』紅葉の歌…………………………………………………… 44
編集後記
おかげさまで第一八〇号に到達しました。間もなく創刊三十年、引き続きよろしくお願いいたします。岡野主幹による「典座教訓」講義では、典座の仕事を修行の本務であるというのが、単なる心構えではないという本気度が伝わってきます。うまく言い難いのですが、実に「気合」が感じられる回でした。
コスモロジー各論は、今回は「空が青い理由」です。大気がなければ真っ暗闇に極端にギラギラの太陽…青空が美しいのは、コスモロジー的に当然です。
大井先生の「痴呆、認知症そして老耄(認知障)」は今回が最終回となります。「認知症」とされるものの多くが人間の正常な老いの過程でもあること、人間の信じる力の可能性というのは驚異的なものがあること、そして何より「知識としての記憶は忘れても、感情としての記憶はしっかり残る」ことを、心に刻みたいと思います。
羽矢先生の「仏弟子たちのことば」は、因襲的な女性蔑視に直面したマハーパジャーパティーの話が扱われています。
増田さんは今回から「『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」」と題した、話題の著作の書評と考察の連載となります。
(編集担当)
サングラハ教育・心理研究所 2022年上期 講座案内
これまでも繰り返してきましたが、残念ながらこれまで(有史以来)のものの見方・やり方は、ものごとすべてを基本的にばらばらに分離・独立したものと捉える〈分別知(ふんべつち)〉をベースにしたものであり、個人の心にも社会・世界の状況としても、多くの問題を生み出してきました。
そして今や問題が山積みになっており、このままでは、近未来に希望を見出すことが難しい時代になっています。
けれども、これまでとは根本的に違うものの見方であるほんとうの智慧、すべてがつながっており究極は一つであることに目覚めた〈無分別智(むふんべつち)〉とそれをベースにすべてのもののそれぞれの姿を適切に捉える〈無分別後得智(むふんべつごとくち)〉を学び身につけることができれば、私たちは、個人としても社会・世界についても、確かな希望を見出すことができると思われます。
当研究所のプログラムは創設以来、分別知から智慧への心の成長の促進を目指してきました。今期のプログラムもその継続です。
現在、コロナの状況に対応して、講座はすべてリモートとしています(Zoom使用)。
遠隔(リモート)には、デメリットもありますが、どんなに遠くにお住まいの方でも参加していただけるというメリットがあります。
これまで、関心や希望があったにもかかわらず距離的に参加が難しかったみなさん、この機会にぜひご参加下さい。
【リモート日曜講座】「般若=智慧とはなにか――『摩訶般若心髄経(まかはんにゃしんずいきょう)』を読む」
古代から日本人の心を育んできた大乗仏教、その核心にある「空」「般若=智慧」「菩薩」とは何か。要点をわかりやすく学んでいきます。
まったくの初心の方の入門としても、中・上級の方の復習・熏習のためにも役立つことを目的としたプログラムです。
テキストとして、般若経典の集大成である『大般若経』六百巻などのもっとも重要な個所を抜粋編集した『摩訶般若心髄経』を読んでいきます。
併せてやさしい瞑想法もお伝えしますので、知識だけにとどまらない深い学びをしていただけるはずです。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布▼時間:13時半〜16時半▼参加費:一般=1万5百円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=7千5百円、学生=3千円
1月23日 2月27日 3月27日(3回)
【リモート水曜講座】「『正法眼蔵』とやさしい瞑想によるやすらぎの時間」シリーズ
『正法眼蔵』を学ぶ長期シリーズです。今回は、文体が難解なことで知られる道元禅師の著作としては例外的なほど平易な言葉でありながら、きわめて深い死生観を語った「生死」の巻を選びました。
『正法眼蔵』は初めての方にも、中・上級の方にも、それぞれのレベルの学びが可能です。
やさしい瞑想の時間も含め、悩みの多い日常を離れ、深いやすらぎを感じることのできる時間になるでしょう。
初心の方には、受講前にやさしい道元入門と瞑想入門のテキストも差し上げます。お気軽にご参加ください。
▼講師:研究所主幹▼テキスト:随時配布▼時間:19時半〜21時▼参加費:一般=7千5百円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=6千円、学生=3千円
1月19日 2月16日 3月16日(3回)
【リモート土講座】「深い気づきのメソッド――六波羅蜜を学ぶ」第一期
大乗仏教について入門から初級程度の予備知識と理解があることを前提とした、中・上級者向け(ただし、予め了解の上であれば、入門・初級の方でも受講可)の日々の実践のための講座です。
大乗の教えの基本である空・中観と唯識を学び、煩悩とは何か、それを超える覚りとは何かについていちおうの理解ができた人の心には、次に、ではどうしたら覚れるのかという実践的な問いが起こるでしょう。
六波羅蜜、完成(つまり覚り)への六つの方法(メソッド)がある、というのがその問いへの答えです。今期から、その具体的な内容について『大般若経』を中心に学んでいきます
(瞑想の実習の時間もあります)。
▼講師:研究所主幹・岡野守也▼テキスト:随時送付▼時間:14時〜16時▼参加費:一般=1万5百円、会員=9千円、年金生活・非正規雇用・専業主婦の方=7千5百円、学生=3千円
1月8日 2月12日 3月12日(計3回)
○問合せ・申込み方法(各講座共通):研究所HPのフォーム、またはFAX087‐899‐8178、メールsamgraha@smgrh.gr.jp でお問合せ・お申込みください。お申込みの方は氏名、住所、性別、連絡用の電話番号、メールアドレスを明記してください。