スウェーデンの今
スウェーデンに11年暮らし、現在は博士課程に在籍している筆者がみるスウェーデン社会・経済・政治の今。
Smått och gott från Sverige
 



鈴木みそ作 『僕と日本が震えた日』
「ドキュメンタリーコミックの第一人者である鈴木みそが、まずは自分の周りから取材を広げていきながら、今回の震災が浮き彫りにした現代日本の「日常」を描き出していく。」


無料で読めます。現在、第5話まで。
それぞれ興味深かったけれど、第5話『食べ物の安全』では放射能による食品汚染に関して、参考になる情報が分かりやすく説明されています。

「食品から次々、暫定基準値を超えるセシウムが検出されています。気にしすぎなのか、きにすべきなのか。暫定基準値を超えなければ安全なのか。そもそも暫定とはなんなのか。」

三重大学の勝川俊雄氏が、暫定基準値の設定する際の配慮や、内部被ばくについて解説しています。

重要な点は以下の3点です。

・内部被ばくについては、明瞭な影響が分からず「影響が無い」とはいえないため、予防的に避けておくべき。
・どのレベルまでだったら食べても大丈夫か、という明確な区分はない。個人の価値観の問題として、最終的には一人ひとりが自分で考えて決めるしかない。
・安全か危険かという結論を示すよりも判断の土台となるデータを出すことが大事。

私が非常に良い、と思ったのは、「白か黒か」という二項論で断定的な説明をするのではなく、客観的な情報を提供したうえで各個人の判断に任せる、という姿勢です。


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福島第一原発の事故が始まって以降、このブログではチェルノブイリ原発事故のあとにスウェーデンが被った被害やその影響、農業・畜産分野で取られた対策や、放射能汚染を抑えるための実験などについて紹介したが、この大部分はスウェーデンの防衛研究所が農業庁やスウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁が共同でまとめ、2002年に発行した『放射性物質が降下した際の食品生産について』という報告書からの抜粋であった。

2011-04-19:チェルノブイリ事故後にスウェーデンが取った汚染対策(その1)
2011-04-27:チェルノブイリ事故後にスウェーデンが取った汚染対策(その2)
2011-04-06:チェルノブイリ原発事故のあとのスウェーデン(← ただし、ここでは別の報告書も参考にしている)

ブログでは、その報告書の一部を紹介したわけだが、報告書そのものを訳して出版しないか、という企画を持ちかけられ、昨年の秋以降、その翻訳作業を行ってきた。そして、ついに完成することになった。


チラシはこちら

この報告書にまとめられているのは、まず、ブログに紹介したように実際の事故が起きた後の対策(農業・畜産業・トナカイ遊牧・酪農加工・食品加工)、そして、放射能に関する基礎知識、さらに、それ以上に強調されているのは、将来の事故に備えてどのような災害対策を整備しておき、実際に事故が起きたときには行政当局としてどのような側面を考慮に入れながら対策を講じていく必要があるか、という点である。

実際のところ、チェルノブイリ原発事故が起きたとき、スウェーデンでは十分な備えができておらず、事故がその発生から2日も経ってから明らかになった時には、既に国土の一部が比較的高い濃度の放射能で汚染されていた(被害が一番激しかったところで1平米あたり12万ベクレルとも、20万ベクレルとも言われる)。

2011-04-02:発生から2日後に発覚したチェルノブイリ原発事故

情報は混乱し、政府の行き当たりばったりの対応に、世論からは批判も相次いだりした。しかし、その失敗をきちんと事後評価し、その教訓を将来の原子力事故が起きた場合に生かそうとしている点は、大人の社会である。そして、一般の人向けにまとめられた報告書が本書である。

教訓は次の2点にまとめられる。
・万が一の場合にきちんと機能する事前警告・警報システムの確立
・必要とされる汚染対策を迅速に、効果的に実施できる防災組織の構築


特に、この後者に挙げられた「防災組織の構築」においては、スウェーデン社会を構成する様々な人々(市民・行政・農業従事者・その他の汚染対策に関わる人々)が平時から訓練を重ねるだけでなく、事故が起きた際に様々な判断を下す際の根拠となる情報や前提知識を事前に共有しておくことで、有事における協力関係を築きやすくなるし、対策の選択に対する理解も得られやすくなる、と報告書で指摘されている。(このあたりは、冷戦時における核戦争を想定した防災体制構築の経験が活用されているように感じる)

また、事故の際に原子炉の圧力容器内の圧力を下げるために、ベントを行うことを想定して、きちんとフィルター装置(水浴法)を取り付けることにも触れている(日本の原子炉には情けないことにこれが備え付けられていなかった)。

さらに、国内外の原子力事故によってスウェーデン国内に放射性物質が降下した際には、直ちに汚染度の測定を開始して随時集計し、降下からまず1日以内に放射線の線量率(単位:シーベルト/h)を示す大まかな線量率マップを作成・公表し、その後、ガンマ線分光計を援用しながら、数日後までには地表汚染度(単位:ベクレル)を示す汚染マップを作成・公表し、さらに、降下から4、5日後からは航空機を使った空からの測定を開始し、降下から1ヶ月以内より詳細な汚染マップを作成・公表する、といった汚染把握のための工程表が示されている。

本書は、スウェーデンに住む人々を対象にし、汚染対策の内容もスウェーデンの農業や畜産業を想定したものではあるが、私の願いとしては、日本の条件に適した同じような「実践マニュアル」が近い将来に日本でも作成されることである。本書を、そのための参考に是非していただきたいと思う。

※ ※ ※


現在、日本ではストレステストの評価が始まっており、その内容の良し悪しに注目が集まっている。このストレステストの評価次第で、現在停止中の原子炉の再稼動が妥当かどうかが決まるようだが、忘れないでほしいのは、仮にストレステスト自体は完璧なものであったとしても、それは原子炉の安全性の評価にすぎない。いくら安全だといっても事故のリスクはゼロにはできないのだから、原子炉の安全性の評価に加えて、事故が万が一にも起きてしまった場合に、どのような災害対策が準備され、周囲数十キロに居住する住民の避難や食料の確保のための詳細な計画が整備され、示される必要があるのではないだろうか。果たしてそのようなものが、各原発ごとに存在するのか? 再稼動、再稼動と言うのであれば、それをきちんと示す必要があると私は思う。

残念ながら、日本はいつまで経っても「少年の国」であって、原子力という高度に複雑で、大きなリスクをともなう技術を使いこなすのに必要なリスク管理の能力に欠ける、あるいは、その重要性を行政や電力会社側がしっかりと認識していないことは、福島原発の事故から明らかである。よって、それを使う資格がないように思う。


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年が明けてから日本に2週間滞在。仙台・東京・山口・広島・鳥取などで過ごした。

その間に参加したイベントのひとつは、1月14・15日横浜で開催された「脱原発世界会議」。一昔前ならば少し過激な印象も受け、異端的な目で見られたかもしれないこのテーマに、両日でのべ11000人もの人が参加した。海外からも30カ国から50人を超えるゲストが参加した。


とてつもなく大きなイベントで、1000人収容できるメインホール、600人のサブメインホール、そして、150人前後収容できる部屋が10ほど用意され、その全てで様々な企画が同時に進行していった。この巨大なイベントをピースボートの専従50人、ボランティア300人で実現したというからスゴイ。

初日は13:00から開会イベントがスタートする予定だったが、当日券を買い求めたり、引き換えたりする人たちが開会の時間になっても会場入り口前に長蛇の列を作りながら、寒さの中で待っていた。だから、30分遅れたスタートとなった。

私は2日目の分科会で「持続可能なスウェーデン協会」のレーナ・リンダルさんと一緒に、電力自由化や発送電分離についてのトークショーを行ったところ、会場を埋め尽くし、立ち見が出るほどの人が詰めかけ、熱心に聴いてくれた。

朝日新聞1月19日朝刊の社説面でこのイベントについて触れている。脇阪記者は私の分科会にも参加してくださった。


脱原発という、これまではメインストリームから外れていた動きが、こうしてメインストリームになりつつある、という印象を受けた。私と同じような20代・30代の若い人が参加者に多かったことも印象的だ。今までなんとなく不安は感じながらもこのような動きに加わるのをためらっていた人たちが、2011年3月を機に、これは自分達の問題なんだ、自分達の将来に関わる問題なんだ、と真剣に考えつつあるのだと思う。それは、正直なところ、私も同じだ。次のステップとして、「脱原発」という考えを「持続可能な社会」の実現という枠組みの中で捉えたうえで、では、私たちはどのような「持続可能な社会」を望んでいるのかを議論していくことが必要になると思う。

(話はそれるが、このイベントの関係者ではない在京のスウェーデン大使館も自身のHPのイベント一覧で、この会議のことを触れていた。スウェーデン大使館としても応援しているのだと私は理解した。)

今回の会議は、脱原発のうねりの第一歩にすぎない。ネットワークを作って、今後、次の行動につながっていって欲しいと思う。

海外からのゲストが様々な場で口にしていたのは「福島第一原発やその周辺の状況が、いまだにこんな状態だったと知って驚いた」というものだ。海外ゲストは、この世界会議に先駆けて福島県の南相馬市などを訪れて現地の様子を視察していた。現地の実情は予想よりも深刻だったというのだ。

震災直後の世界的な注目に比べて、今は世界に流れる福島関連の報道は大きく減っている。しかも、日本政府の意味不明の「収束宣言」が世界に報道され、間違った「安心感」が世界の人々に伝わってしまったのかもしれない。とにかく、海外にいる私としても、海外の人々に実情を伝えていくことが必要なのだと感じた

以下に、欧州議会議員レベッカ・ハルムス氏(ドイツ選出・緑の党)の言葉を紹介するが、彼女は「原子力のパワーから脱却しなければ政治的なパワーも失ってしまう」と言っている。彼女の意味するところは「原発依存に代わる新しい政策を提案できなければ、政治家は有権者の投票行動を通じて職を追われてしまう」ということだが、私はむしろ日本が国としての信頼を失い、世界の中における影響力・発言力を失ってしまう、という解釈もできるのではないかと思う。


印象に残った言葉:

【レベッカ・ハルムス氏(欧州議会議員、緑の党/欧州自由同盟副代表)・開会イベントにて】


福島原発事故の大きな帰結は、日本よりもむしろ、遠く離れた地球の裏側において顕著となった(← 脱原発を政治的に決定したドイツ・スイス・ベルギーを指して)。我がドイツは脱原発を決定し、半分にあたる8基の原子炉を停止したが、それから半年以上経った今、電力の輸入で補うことはやっていないし、電力価格が高くなったわけでもない。ドイツはこのまま行けば、温暖化対策の目標達成も可能である。

福島の政治的なインパクトは、ドイツをはじめとするヨーロッパで強く現れた。ドイツのある選挙において、原発推進の保守系候補者が福島の事故ゆえに負けたのである。

では、日本ではどうだったのか? すでに多くの原子炉が停止し、54基のうち5、6基しか動いていない。日本の世論も大きく変わり、脱原発を支持する人々が半数を超えている。これはまさにドイツの世論と同じような展開である。それなのに、どうして(政治的に)脱原発を進められないのか?

日本の皆さんには、ドイツの経験から学んで欲しい。日本の市長の方、地方議会の議員の方、県知事の方、国会議員の方、中央官僚の方々。あなた方は正しい教訓を福島原発の事故から学ばなくてはならない。さもなければ、皆さんは権力の座から追われることになる。原子力のパワーから脱却しなければ政治的なパワーも失ってしまう。

日本政府のこれまでの対応を見ていると、もっと科学を生かして解決に向わなければならないと感じる。政府機関から独立した医師や科学者、原子力に詳しい専門家や、チェルノブイリ事故の経験をよく知っている専門家など、世界中の英知を集めて、ワーキンググループを作って共に学ぶことが必要だ。


【佐藤栄佐久氏(前福島県知事)・開会イベントにて】


私が在任中に、いくつかの原子力事故が福島の原発であった。ある時は、原発で非常事態を告げる警報が原発施設内で鳴ったが、東京電力はそれを消したという。そして6日後になって福島県のほうに連絡がきた。電力会社から東京の本社へ報告があり、そして経産省に報告があり、そして地元の福島県に届いたのは最後で、6日目だった。原子力事故が起きた場合、一番の関係者は地元自治体であると思うが、一番最後だった。

チェルノブイリ事故の教訓を生かすために採択された「スラヴィティチ基本原則」(欧州地方自治体会議がチェルノブイリ事故から20年経った2006年に採択)では、原発の一番の関係者は地元の住民、そして、地方自治体だと明示している。

また、この基本原則は「他国政府の原子力の事業者は偽りのない情報を平時に於いても緊急時に於いても提供する義務を有する」と書いている。福島第一原発から放射能を含む10000トンの汚染水を流す際に、私は当然のこととして、これを世界各国に報告した上で行っていると思っていたが、実際はそうではなく、韓国から抗議の声が早速上がった。9ヶ月以上経った後に、原子力安全・保安院の院長が記者会見して「いや、事故のために混乱したから他の国には報告しなかった」と言っている。

1999年に、福島県の隣の茨城県でJCOの臨界事故が起きた。その時に現場で指揮を取った当時の原子力安全委員会の隅田副委員長が、退職後である2009年に「これだけは言っておかなければならない」として、新聞にこう投稿していた。今こそ、推進と規制の分離をすべきだと。つまり、推進機関とチェック機関が経産省という同じ役所に入っているから、これを是正しなければ事故は必ず起きるよ、と書いていた。

実は、新しい時代の幕開けの2001年1月1日に省庁再編が行われ、21世紀に向けた新しい役所が作られていた。この時、大蔵省は、銀行業務の監督を行う部門と金融行政を執行する部門の両方抱えていたために、前者を金融庁として分離した。しかし、同じときに原子力行政の世界ではどういうことが起きたか? 何と、経産省はチェック機関を、原子力を推進する経産省の中に取り込んでしまった

現在、原子力安全・保安院は経産省の管轄下にあり、チェックするところが一緒の屋根の下にあって、人事もたすき掛けで行われている。泥棒と警察が一緒の館に住んでいるということである。私も県知事として、2002年と2004年に原子力委員会の委員長にこの問題を提起したが、改善はなされなかった。

また、2002年8月29日には、経産省に送られてきた原発作業員からの内部告発を、経産省が東電に流し、東電が検査記録の改ざんをしていたことが明るみになった。経産省がこのようなありさまであるから、内部告発する人も怖くなったのだろう。当時知事であった私の元に2002年から2006年まで20通の内部告発が寄せられ、ずさんな安全管理の実態が訴えられていた。残念ながら安全を確保するような国の体質に全然なっていない。


【飯田哲也氏・閉会後の記者会見にて】

民主党政権は、その失敗を露骨に出してしまった。私は、海外のメディアのインタビューにこう答えた。自民党の政治は歌舞伎だったが、民主党の政治は学芸会だと。学芸会だからそのお粗末さが見る人に分かってしまう、ということだ。

結局、何でこうなってしまったかというと、官僚に完全にお任せだからだ。官僚というのは市民とか地域のことを毛ほども考えていない。上から目線でとにかく見下しているだけなので、一人ひとりの人間の幸せとか苦しみを、地域の目線で考えるようなことを全くしない。民主党政権は、それに任せて大雑把な政治をしている。

だから、そういう政治にさせないために、どういう手を打つべきかを考える必要がある。しかし、レベルの低い日本のこんな政治ではそう簡単にできることではない。まずは、地方政治の中で、きちんと機能する政治を部分的に実現するようにしていく。あるいは、国の政治の中でも省庁の縦割りをまたいで官僚らをきちんと使いこなせるようなレベルまで作りこんだ政権を作れるように働きかけていくしかない。


【吉田達也氏(ピースボート代表)・閉会後の記者会見にて】

私たちは、本質的な問題に向かい合わなければならない。この脱原発の問題は、日本の民主主義の問題とも直結している。私たち一人ひとりが行動を始められるか、ということなのだ。「行動してもどうしようもない」という諦めではなく、自分たちが行動することで何かが変わるのだという実感を得ることだ。福島の現場に足を運べば分かるが、本当にどうしようもないことが起きている。それなのに、(現在の原発依存のエネルギー政策は)お上のやっていることだから仕方がない、と思ってしまったら、おしまい


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新年以降、仕事の波が再び押し寄せてきて、全く更新できませんでした。今年第1号の書き込みは何か希望を持たせてくれるものにしたいと思い、昨年10月にあるジャーナリストの人の紹介で読んだ、高橋洋氏の『電力自由化 ― 発送電分離から始まる日本の再生』のある一節を部分的に引用してみます。

発送電分離電力自由化が完成した2030年の日本を描いた「未来予想図」です。夢物語にすぎない、と思われるだろうか? いや、ヨーロッパではここに描かれた多くの部分が、現時点ですでに現実のものとなっており、さらに着実に進化を遂げています。(太字の強調部分は私が付けたものです)

※ ※ ※ ※ ※


多くの一戸建てやマンションの屋根には太陽光パネルが設置され、昼間のピーク需要時の電力供給に貢献している。一定規模以上のオフィスビルや公共機関、学校の屋根には、太陽光パネルの設置が義務付けられている。(中略)

19年前の地震や原発事故による被害を受けた地域でも、休耕田に大規模な商用ソーラーファームが、海上にはウィンドファームが建設され、発電が地域の大きな産業になった。浮体式洋上風力発電機の技術開発が進み、世界に先駆けて2018年から近海で大量導入が進んだ。(中略)再エネ全体で「緑の雇用」が60万人を超えたと、政府が宣伝していた。ウィンドファームの中には、地元住民による投資組合が所有者になっているものも多く、毎月の配当が年金代わりになっている。

地熱発電も急速に普及した。地元の温泉組合が出資しているコジェネの形態も多く、温泉街の熱と電気を自給している。地熱は出力の調整が容易なため、風力や太陽光と組み合わせている例も多い。潮力発電もいよいよ2024年から実用化が始まった。こちらは漁業組合が取り組んでいる例が多い。(中略)

太陽光や風力は天候任せであるため、気象庁によって「発電予報」が毎日発表・更新されるようになった。化石燃料による火力発電も第一線で活躍している。その大半はガス火力だ。(中略)

この結果、2030年の日本の電源構成は、再エネが発電量の35%水力13%LNG36%石炭12%石油等4%となっている。原子力0%だ。つい先日、最後まで残っていた北海道の泊原発3号機が廃炉になり、脱原発が完了した。消費電力量全体が、20年前よりも20%減少したので、火力発電も絶対量では30%以上減少した計算になる。(中略)

全国全ての電気メーターは、2015年までにスマートメーターに置きかえられた。リビングルームの壁に備え付けられている「電力モニター」を見れば、屋根に設置された太陽光パネルの発電量と、蓄電池の残量、売電・買電量が一目で分かる。(中略)基本設定を「節電モード」にしているため、洗濯機と乾燥機、食器洗い機は、深夜の電気料金が最安値となる時間帯に自動的に運転してくれる。(中略)2022年の夏には、電力モニターから「ピーク警報」が鳴り響いたことがあった。その15分後には、照明やテレビ、エアコンの電源は切れたが、事前に設定しておいた冷蔵庫は切れなかった。1時間後には全て復旧したが。「家庭用需給調整契約」に加入しているので、このようなことがなくても毎月100円のキャッシュバックがある。(中略)

8年前に、小売会社を乗り換えた。電気料金が安くなりそうなのと、再エネの電力しか供給しないところが気に入った。料金メニューは「市場連動型」を選んだ。太陽光パネルとEV(電気自動車)を所有しているので、そのほうがスマート機能を活かせるからだ。月によって料金にばらつきが出るようになったが、年平均では5%ぐらい下がった。お向かいの家は、旧電力会社と契約し、昔ながらの「固定型」料金が安心でよいらしい。

長男が大学に合格して一人暮らしを始めるので、「デンキドットコム」で調べてみた。京都では80社の小売会社から選べるらしい。月間電気料金は、一人暮らしの設定で3000円から4000円まで幅があるが、今使っているところが京都でも営業しているので、そこを勧めておいた。「家族割」があるのも良かった。

2016年に発送電分離が完了した。これまでの10の電力会社は、東西2つの送電会社15の発電会社に再編された。そこに至るまでには大きな政治的議論が繰り広げられたが、原発を電力会社から切り離して国家管理に置くことが決め手になった。当時の電力会社にとっては、原発の抱えるリスクに単独では耐えられないという判断が大きかったようだ。そして発送電分離の結果、特段停電が増えたという話は聞かない。

その後、送電会社は政府の規制・監督の下で、本州を貫くスーパーグリッドを2020年に完成させ、周波数を気にせずに北海道から九州まで電力を融通できるようになった。2013年には地域独占が撤廃されたがスーパーグリッドのおかげで市場統合が進み、北海道の風力による電力を東京まで大量に送れるようになった。(中略)

大手の発電会社は、地域とは無関係に競争が激しくなり、新規参入と合併・買収が進んだ結果、2030年現在で5社に集約されている。そのうち1社は韓国資本で、1社は新規参入者だが、特段サービスが悪い、停電が多いといった話は聞かない。他の旧電力系3社は、韓国市場や中国市場にも進出し、海外売上高比率が30%を超えた会社もある。国内市場でスマートグリッドのノウハウをいち早く蓄積し、発展途上国の市場開拓に励んだ結果、売上高に占めるサービス業の割合が20%を超えた会社もある。

これら大手5社以外にも、中小の発電会社や小売会社、両方を行う会社が計300社ほどある。ソーラーファーム専門の会社、自家発電をベースにした会社、火力による調整電源に特化した会社、地域の市民風車など、多様な発電会社が強みを活かして競っている。(中略)

2022年から韓国と、2027年からロシアと国際連系を行うようになった。日本の発電量の5%が輸出され、ほぼ同じ量が輸入されている。来年には韓国と中国が送電網でつながるので、これを機に電力取引所であるアジアプールを創設することが、最大の外交課題になっている。2025年には北方領土にロシアと共同で地熱発電所が建設されており、ここの電力は北海道にも送られ、系統安定化に貢献している。(中略)


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追跡!真相ファイル「低線量被ばく− 揺らぐ国際基準」を見た。

事前予告がセンセーショナルであった上、内容的にも物議を醸す部分がいくつかあったようで、放送直後からいろんな反応がネット上に出ている。それはさておき、私自身はスウェーデンの部分で誤解を与える内容があったように思うので、コメントしたい。


【 サーメ人の村が受けた外部被ばくの量 】

スウェーデン北部のヴェステルボッテン県に位置するサーメ人の村。トナカイ遊牧をして暮らしている人々だが、チェルノブイリ事故後、食品を通じた被ばくによると思われるガンが増えているという。

番組では、「チェルノブイリ事故で発生した放射性物質が降り注いだときの放射線量は年間0.2mSv」と説明していた。これは地表に降下した放射性物質による外部被ばくのことだと思われるし、自然放射線量を除いた値だろうが、事故直後に年間0.2mSvとというのはあまりに低い値だと感じる。



1987年にスウェーデンの放射線防護庁が発表した報告書「Radiation doses in Sweden as a result of the Chernobyl fallout」に示されたデータによると、事故から1年間に地表から受けたガンマ線による積算被ばく量は、

国全体の平均は一人あたり0.15mSv
イェーヴレボリ県ヴェステルノルランド県の平均は一人あたり0.5mSv

だという。

イェーヴレボリ県ヴェステルノルランド県とは、今回の番組の取材先となったヴェステルボッテン県の南に位置する2県だ。


ただ、0.5mSvといってもあくまで2県内での平均の話。図の色の濃淡はセシウム137による地表汚染の度合いを示したものであり、凡例の単位はkBq/m2だ。ここから分かるように、場所によっては7万ベクレル以上の汚染を受けるなど、差が激しい。だから、先に挙げた報告書の中では

イェーヴレボリ県内で2mSvの被ばくを受けた人は約25000人。
3.5mSv の被ばくを受けた人は約1500人。
7mSv の被ばくを受けた人は約100人。

と同じ県の中でも被ばくの量がもっと高かった人が多数いたことを示している。

肝心のヴェステルボッテン県の状況は分からないし、取材を受けたサーメ人の村が県内のどの場所なのかも分からないが、事故直後の汚染の影響をある程度受けた場所だと番組から判断すれば、イェーヴレボリ県とヴェステルノルランド県の平均である0.5mSvより低いことは考えられにくい。しかも、0.2mSvという値は、スウェーデン全体の平均である0.15mSvと比べてもあまり変わらない。仮に赤い地域、もしくは茶色の地域だとすれば、イェーヴレボリ県のデータからの類推に基づくと、3.5mSv〜7mSvくらいの外部被ばくをチェルノブイリ事故によって受けた可能性もある。

だから、番組のこの部分を根拠に「わずか0.2mSvの外部被ばくでガンが増加した」と解釈すべきではないと私は思う。この村はもっと高い3.5mSv〜7mSv程の被ばくを受けていた可能性を排除できない。ただし、以下で書くようにサーメ人の村ではトナカイの肉などを通じた内部被ばくによる影響もあるだろうから、ガンが発症したとしても外部被ばくだけが原因ではないだろう。

さらに言えば、スウェーデンの自然放射線による外部被ばくの量は年間4〜4.5mSvだということを考えれば、この0.2mSvという数字がいかに小さなものかが分かる。


【 ガン増加に関するテロップ 】

このサーメ人の村ではガンが増えている、という。「事故の前と比べると34%増加しました」とナレーションが入るが、画面のテロップには「がん1年あたり 34%↑」と書かれている。これでは意味不明だ。



あたかもガンの発症件数が1年ごとに34%増えている、と誤解されかねない。番組がここで言いたいのは、ナレーションの通り、事故前と現在の比較であろう。

私の推測では、おそらく、事故前の例えば1985年と、2010年のそれぞれ1年間におけるガンの発症件数を比較すると34%増えている、と言いたいのだろうが、「1年あたり」という言葉を変な場所に入れてしまったために、意味不明のテロップとなったのだと思う。

ついでに、34%増加と言っても、ここにはチェルノブイリ事故以外の要因(例えば、食生活の変化、喫煙 etc)による発症増加もたくさん含まれているだろうから、これだけでは何とも解釈が出来ない。


【 トナカイの肉に含まれる放射性物質の基準値について 】

番組では「事故直後、スウェーデン政府は食品に含まれる放射性物質の安全基準を設けた。人々が良く食べるトナカイの肉は、1kgあたり300Bq(日本の暫定基準値 500Bqより厳しい値)とされた」と説明し、あたかも「日本の暫定基準値よりも厳しい値であったのにガンが増えた」という印象を与えかねない。

実際には、確かに事故直後にトナカイの肉に含まれるセシウムの量は300Bqと設定されたものの、事故から1年あまりが経った1987年6月1日に、トナカイやヘラジカ、湖沼魚、ベリー、キノコなど「あまり頻繁に摂取しない食品」に限っては1500Bqに引き上げている。そして、この値が現在まで維持されている。事故直後はトナカイの基準値が300Bqと設定されたため、それを上回る汚染を受けたトナカイの肉が大量に処分されたが、1500Bqに引き上げてから廃棄処分にされるトナカイの数が大きく減っている。

ちなみに、トナカイの肉は「スウェーデン人がよく食べる」と番組内で説明があったが、実際はそんなことはない。スウェーデン人一般にとっては食べる頻度、もしくは量の少ない食品であるから1500Bqに引き上げられたのである。

一方、サーメ人は普段から頻繁に食べている。だから、国は基準値設定とは別に、彼らに対して特別の「食事アドバイス」を配布し、トナカイを食べる際にどのような点に気をつけて、内部被ばくを極力防ぐべきかを指導してきた。しかし、その後の追跡調査などによると、サーメ人はそれでも一般のスウェーデンの人々よりもたくさんの内部被ばくを受けたことが明らかになっている。


チェルノブイリ事故から50年間に内部被曝によって受ける放射線量の積算(放射線防護庁)
左端の棒は、まさにヴェステルボッテン県に住むサーメ人。ただし、県の広範囲に分散しているため、番組が取材した村とは限らない

詳しくは、2011-04-06:チェルノブイリ原発事故のあとのスウェーデン

したがって、番組のこの部分から読み取れることは、「300Bqという基準値にもかかわらずガンが増えた」ということではなく、「トナカイの肉を一般の人よりも比較的頻繁に食べる人たちがおり、その人たちが基準値が1500Bqに設定されたトナカイの肉を食べ続けた結果、ガンの発症が増えた疑いがある」ということだろう。

※ ※ ※


私が言いたいのは、低線量の外部被ばく、もしくは内部被ばくは問題がなく、心配する必要がない、ということではない。低レベルの被ばくでも、何らかの健康被害はあるだろうし、なるべく避けるべきだと思う。

私が言いたいのはむしろ、この番組が(暗黙に)示唆しようとしている因果関係もしくは解釈の仕方を、視聴者が受け入れるに値する根拠がこの番組には乏しい、ということだ。


※ ※ ※




スウェーデン・ヨーテボリ大学サールグレンスカ大学病院トンデル教授について 】

彼は、2004年の論文が大きく非難されているが、私自身は彼が言おうとしている因果関係の有意性は境界ギリギリのところだと思う。年齢や人口密度など様々な要因を加味していくと、因果関係を示す値が減少して行き、最後は有意性があるかないかのところに達する(彼の結論では、それでも0.11という値は0から有意で乖離している、ということのようだが)。Confidence Intervalを95%ではなく、90%で取ってみると、より多くの結果が有意になるだろう。

トンデル教授のあの論文が示そうとしているのは「チェルノブイリによる低線量内部被ばくとガンの発症率との間に何らかの因果関係があることが統計的に言えるかもしれない(?)よ」ということであって、彼(ら)は何もあの論文1本を持って「チェルノブイリによる低線量内部被ばくとガンの発症率との間に明確な因果関係がある!」と言おうとしているのではない。「今後、より詳しい調査・研究が必要だ」という、取っ掛かりとしての論文であろう。

だから、彼の論文一本をとって、やれ「イカサマ」とか「インチキ」と非難をするのは、やりすぎではないかと思う。彼の他にも低線量被ばくの影響を研究をしている人たちがいれば、他の研究結果も集めて、その中で総合的にトンデル氏の結論を評価すべきだろう。

(経済学の分野でも、ある特定の因果関係を調べた実証研究が例えば20本あったとすれば、そのすべてが同じ結論になることなんてほとんどなく、20のうち10が「強い相関がある」と結論づけ、5つは「有意な相関は見られない」と言い、残りの5つは「条件を変えたり、モデルを変えると場合によっては有意な相関が得られることもある」というような曖昧な結論だったり、ということがザラだ。そのような状況の中で、ではどうして研究によって結果が異なるのか、使うデータは? サンプル数は? 条件は?・・・などと検証が始まっていく。手法が納得のいくものである限り、一つの論文を槍玉に挙げて、叩くようなことはしない。)

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水曜日のNHK番組です。スウェーデンの映像やインタビューも登場します。

「追跡!真相ファイル」12月28日 22:55−23:23 『低線量被ばく 揺らぐ国際基準(仮)』


番組ホームページより
“生涯100ミリシーベルトとされる被ばくの基準で、本当に健康への影響はないのか?”
福島をはじめ、全国の人々が現実に直面している放射能の脅威。
国は「直ちに体への影響はない」と繰り返すばかりだ。
その拠り所としているのが、ICRP(=国際放射線防護委員会)の勧告。
広島・長崎の被爆者の調査データをベースに作られ、事実上の国際的な安全基準となっている。

しかし関係者に取材を進めると、1980年代後半、ICRPが「政治的な判断」で、被ばくでガンになるリスクを実際の半分に減らしていた事実が浮かびあがってきた。
当時ICRPには、原子力産業やそれを監督する各国の政府機関から、強い反発が寄せられていたのだ。
そしていま、世界各地で低線量被ばくの脅威を物語る、新たな報告や研究が相次いでいる。

アメリカでは原発から流れ出た微量の放射性トリチウムが地下水を汚染し、周辺地域でガンが急増。
25年前のチェルノブイリ原発事故で、大量の放射性セシウムが降り注いだスウェーデンでは、ICRP基準を大きく上回るガンのリスクが報告されている。
いま、誰もが不安に感じている「低線量被ばく」による健康被害。
国際基準をつくるICRPの知られざる実態を追跡する。


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音楽配信サービスSpotify(スポティファイ)の創設者ダニエル・エーク(Daniel Ek)は2008年のサービス開始当時は25歳の若さだった(会社そのものの設立は2006年)。彼は、雑誌フォーチュンの今年の「40歳以下で世界で最も才能のある人物ベスト40」にも挙げられるほどだ。今年のベスト40は、第1位がFacebookのMark Zuckerberg、第2位にGoogleのLarry Pageが続き、ダニエル・エークは第18位として登場する。

無料サービス有料サービスがあることは前回説明したが、利用者の数で見ると無料サービスが1000万人あまり、有料サービスが250万人ほどだという。ただし、無料サービスでは利用者がお金を払わない代わりに広告が定期的に流れるため、その広告収入から著作権所有者に報酬が支払われることになる。しかし、無料サービスは今年になってから、使用できる時間に制限が加えられたようだ(最初の6ヶ月はお試し期間として無制限に利用できるが、それ以降は1ヶ月10時間まで。同じ曲を演奏できるのは5回まで)。


念願のアメリカ進出今年7月に果たし巨大市場に乗り込んだわけだが、そこまで達するのは苦難の道のりだったという。著作権に関する法規制が州によって異なっていたりと、本人曰く「ごちゃごちゃした法律ジャングル」に対処しなければならなかったからだ。それに大手レコード会社がSpotifyの無料サービスを激しく批判し、サービス開始に向けた交渉が紛糾したこともあったようで、上記の利用制限もその妥協として導入せざるを得なかったという話もある。

しかし、アメリカ進出の成果はやはり大きく、今年の春に比べて利用者が700万人増え、そのうち150万人が有料サービスの利用者であり、急激な成長を遂げることになった(ただし、この増加分にはアメリカ以外にも、今年進出した他の国も含まれているようだ)。

ダニエル・エークのインタビュー。CNBC Video (最初から1:30まで)

次に進出する市場しては、ドイツオーストラリアニュージーランドシンガポール香港などが噂されている。残念なことに、日本進出にはあまり関心がないようだ。

ストックホルムの本部も成長が著しい。従業員の数は2008年末には34人だったが、その一年後には76人となり、そして昨年末は100人近くに膨らんでいる。今年に入ってからはアメリカ進出などもあり、さらに成長したようで来年の年初めには450人ほどのスペースを確保できる新しいオフィスに引っ越す予定だという。

従業員といえば、こんな話もある。2010年の初めにSpotifyの従業員は自社の株を買うチャンスが与えられた。1株50クローナ(600円)でという条件だった。何人の従業員がこの話に飛びついたのか明らかではないが、この時に従業員が買った自社株の総額は610万クローナ(7300万円)だったという。その株に今どのくらいの価値がついているのか? 実は何と1株2500クローナ(3万円)と50倍に膨れ上がっているのである。

こう見ると順風満帆のようにも思えるが、実際は激しい競争にさらされている。似たようなオンライン音楽サービスとしてはItuneの他、DeezerRdioJanus FriisSharethemusicWimpWe7Grooveshark などがあり、市場シェアを競っている。だから、新しい機能やサービスを次から次へと、他社に先駆けて売り込み、利用者の維持と数の拡大を狙わなければならない。最近、Facebookと連携を始めたのも利用者の拡大を狙ってだ。

さらに、Spotifyのダニエル・エークは、10月にアメリカで大きな記者会見を開き、メディアの注目を集めた。ここでの目玉は、Spotifyがサービス利用のために必要なアプリケーションのプラットフォームを開放したことだ。これによって、誰でも様々な追加アプリをSpotifyのアプリケーションの中に作ることができるようになる。追加アプリの例としては、例えば今演奏している曲の歌詞を自動的に表示させる機能や、そのアーティストの詳しい情報、コンサートチケットの販売サイトへのリンク、CDアルバムの批評などがある。実際のところ、大手音楽雑誌は追加アプリを作って、Spotifyの利用者が音楽を聴きながらそのアーティストの関連記事を読むことができるようにする構えだという。利用者はこのようなthird partyによる様々な追加アプリをSpotifyの中に組み合わせることで、カスタマイズを楽しむことができるようになるという。


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EUの欧州議会で今日(水曜日)行われたある議決で、当初の予想を覆す結果となった。ユーロ危機に関する議決ではない。モロッコ沿岸での漁業権に関する二国間協定についての議決だ。

EUモロッコと漁業協定を結びEUの漁船がモロッコの排他的経済水域内で操業できるようにしてきた。現在の協定は2006年に締結されている。しかし、その海域には西サハラの沿岸部も含まれていることが問題になってきた。西サハラ1976年モロッコが軍事力で制圧し、それ以来、占領してきた。国連をはじめ様々な機関が、国際法に反した占領だと批判してきた。国連はモロッコに対し、西サハラの主権を尊重し、国の将来を彼らが自分たちで決められるように国民投票を実施すべきだと、国連決議を通じて要求してきたものの、何の改善も行われてこなかった。

占領下にある西サハラの沿岸海域は、モロッコ本国ほど漁船監視が行われていないため、EUからやってくる漁船(主にスペインとポルトガル)は西サハラ沿岸で無制限に操業を行っているようだ。モロッコにしてみれば、占領下の海域の漁業権をEUに売っているのと同然であり、また、そうすることで自分たちの占領行為をEUに黙認させようとする意図があるようだ。乱獲を指摘をする声も強い。EUとモロッコの漁業協定には「西サハラの人々の利益になるように配慮すること」という条項が盛り込まれているが、ほとんど守られてこなかった。このことはEUも認めている。

さて、このモロッコとの漁業協定は来年2月で期限切れとなるため、その延長が今年の春からEUで議論されてきた。EUの立法機関のひとつである理事会(閣僚理事会)では、スウェーデンをはじめイギリスデンマークが延長に反対したものの、賛成する加盟国が多数で勝つことになった。(ちなみに、スウェーデンはEUが2006年にモロッコと漁業協定を結んだ際に、唯一反対した国だった)

EUは立法機関を二つ持つため、欧州議会でも可決される必要がある。その議決が今日(水曜日)あったのである。その準備として行われてきた関連委員会での審議では、予算委員会開発委員会が延長に反対するよう欧州議会に要請したのに対し、漁業委員会は賛成の立場を表明した。

今日の議決に先駆けては、スペインやポルトガルの水産業界や在ブリュッセル大使館などがロビー活動を盛んに行ったようで、議決では延長賛成派が勝つものと見られていた。スウェーデンのメディアも、今日の午前中はそのように伝えていた。

『沈黙の海』の著者であり、現在は欧州議会議員(スウェーデン選出・環境党)であるイサベラ・ロヴィーン氏は午前中にFacebookでこう書いていた。
「あと2時間ほどで決着がつく。賛成派がプロパガンダ攻勢を盛んに仕掛けており、メールボックス一杯に溢れている。私たちも反撃している。」
彼女は個人のページでは普段はあまり書き込みをしないので、よほど緊張していたのだろう。

しかし、昼過ぎに行われた欧州議会での議決は、賛成296、反対326、棄権58と、意外にも反対派が勝ったのである。環境・緑グループや、左派グループ、リベラル派グループが反対に回り、保守系やキリスト教民主系に勝ることになった。

ただし、賛否はむしろ北と南でより明確に分かれたようだ。イギリスや北欧などの北ヨーロッパ選出の議員が反対し、イタリアやスペイン、ポルトガル、フランスなどの南ヨーロッパ選出議員が賛成に回るという、北vs南の構図が色濃く現れた議決になったという。まさに現在のユーロ危機と同じだ。

反対派を率いてきたロヴィーン議員のコメントが印象的だ。
「アラブの春が起きたことで、EUの中には非民主・独裁政権と仲良くしてきたことを咎められるという苦い経験をした国もある。EUは、非民主国の肩を持つようなことはしてはならない。今日の議決結果は歴史的なものだ。欧州議会は西サハラの主権を擁護していることを世界に発信したことになる」

ちなみに、彼女によるとこの協定はEUにとってもマイナスらしい。EUはこの協定を通して毎年3600万ユーロをモロッコに支払って漁業権を買ってきたが、その海域での漁業によってEUが受ける経済的恩恵はその65%でしかないという。スペインやポルトガルの漁師に対する補助金と化しているわけだが、それがEUにとって非常に高くつくものになっているのである。

現在の漁業協定は来年の2月に期限切れになる。今日の議決結果を受けて、これから協定内容の再検討がなされ、新しい案が再び欧州議会に提出されることになるという。

モロッコは今日の議決結果にすばやく反応し、自国の沿岸で操業するEU漁船は木曜日午前0時までに退去するように勧告した。




12月12日に欧州議会で発言するイサベラ・ロヴィーン議員(英語)


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Spotifyについて続けたいところだが、昨晩のニュースで耳にした不可解な事件についてちょっとだけ。

バルト三国がソビエト連邦から独立し市場経済に移行していく過程で、スウェーデンの大手銀行が相次いでバルト三国に進出して行った。正確な数字は忘れたが、今ではこれらの金融市場の半分以上、国によっては8割ほどがスウェーデン系の金融機関で占められることになった。そして、この深い関与のため、2008年のリーマンショックと前後してバルト三国で資産バブルが弾けたときには貸付の多くが焦げ付き、大きな痛手を負うことになった(そもそもバブルを率先して煽っていたのが、スウェーデン系の金融機関だったから自業自得だが)。

2009-10-15:罪深いスウェーデン金融資本 (6)
2009-10-19:罪深いスウェーデン金融資本 (7)

バルト三国の経済はかなり立ち直ったが、その中の一国であるラトヴィアでは、国内最大の銀行であるSwedbank(スウェードバンク・スウェーデン系)近いうちに経営破たんに陥るという噂が広がり、先週金曜日から今日月曜日にかけて、預金者が預金の払い戻しを求めて殺到する取り付け騒ぎが起きたのだ。国内にある400近くのATMのうち、3分の1から半分ほどで現金が空になる事態に至っている。預金者が引き出した総額は3億9000クローナ(46億円)ほどになるという。


ただし、噂はデマである可能性が高いようだ。そんな情報は聞いたことはないし、もしラトヴィアの現地法人が破綻しかかればスウェーデンの本社が資金を融通する大きな余力を持っている。ユーロ危機ともほとんど無縁だ。

一部の報道によると、噂の発端はバルト海に面した港町であり、先週の前半頃から何かがきっかけとなってFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアやSMS(携帯メッセージ)などを通じて一気に広まって行ったという。当初は、農村部での局所的な取り付け騒動に過ぎなかったが、金曜日以降は都市部にも伝播し、銀行が休みである週末にはATMに人々が殺到した。

Swedbankラトヴィアの金融当局も、噂の火消しに躍起になっている。ラトヴィアの公安警察も動き出し、「金融市場に関する偽りの情報を意図的に流した」(2-6年の懲役)という疑いで捜査を開始している。Swedbank側は、流動性は確保できるため経営に支障はない、としている。月曜日の日中には、スウェーデンの報道の一部に「Swedbankの競争相手が噂を流した可能性もある」と書かれていたが、今は消えている。おそらく根拠の薄い憶測だったのだろう。

ラトヴィア人のコメンテーターが言うには、ラトヴィアは共産政権による長い支配のために行政に対する市民の信頼が失墜しており、当局の発表よりも口コミの情報のほうが信頼される傾向にあるため、根拠のない噂までもが一気に広まる土壌があるという。また、市場経済が定着する過程でいくつかの銀行が破綻し、預金が全て消えたということもあったため、今では預金が一定の上限内で保護されるとはいえ、恐れを感じる人もいるという。

しかも、数週間前には地元の銀行一行が何の前触れもなく経営破たんに陥り、同国の中央銀行に救済されたというハプニングがあったばかりだったため「次はスウェーデンの大手Swedbank」という噂が一気に広まってしまったようだ。

Wikipediaで「取り付け騒動」を検索すると、日本で過去にあった例がいくつか出てくる。例えば、これなんかは面白い。
< 豊川信用金庫事件 >
1973年、高校生同士の会話での「信用金庫なんて(強盗とか)危ないわよ」という冗談から「(豊川)信用金庫(の経営)が危ない」という経営不安の噂となり、豊川信用金庫が取り付け騒ぎに陥る。実際には経営は健全であった。調査により原因から噂が広がる途中経過まで明らかになった稀有な例。
どんな文脈・状況で「信用金庫なんて(強盗とか)危ないわよ」なんて言ったのかがよく分からないが。


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IT時代の寵児は、ソーシャルメディアではFacebookだとすれば、音楽サービスではAppleのItuneになるだろうか。しかし、3年前から急速に成長し、世界市場を次々と開拓しているスウェーデンの企業がある。Spotify(スポティファイ)だ。

Spotifyの音楽サービスはストリーミング・サービスとして2008年10月にスウェーデンでスタート。インターネットに接続した状態で、オンデマンドで音楽を配信してもらい楽しむというものだ。利用者個人がパソコンに音楽ファイルを保存して、自由に利用できるわけではないため、著作権の問題をクリアしている。開始から3年のうちにアメリカを含め世界12カ国に進出、利用者の数は今や1300万人に達する。

サービスには「無料バージョン」「プレミアム・バージョン」という有料サービスの二つがある。無料バージョンでは、定期的に広告が流れてくる。著作権所有者への報酬は、利用者が聞いた回数に応じて、広告収入と有料サービスの利用者が支払う料金から支払われる。有料サービスといっても1ヶ月の料金49クローナ(550円)、もしくは99クローナ(1100円)を払えば聞き放題なのでお手頃だ。

利便性は抜群。専用のソフトウェアをダウンロードして、利用者登録をすればすぐに利用を開始できる。ジャンルは、ロック・ポップ・ジャズ・クラシックをはじめ何でもあり、利用できる曲数はかなり多い。洋楽だとほとんど見つかる。邦楽は稀に見つかることもある。


創設者は当時25歳ダニエル・エーク(Daniel Ek)。それ以前からIT企業を経営したり、作曲などを手がけていた彼は、トレントなどを通じた音楽の違法ダウンロードを減らせないかと知恵を働かせ、誰でも手軽に無料もしくは低価格で使える音楽配信サービスを始めようと決めた。

サービス開始は2008年だが、企業そのものは2006年3月に設立。しかし、アイデアはそれ以前からあり、仲間とそれを温めながら、音楽業界との交渉に走り回ったという。ただし、大手レコード会社はすぐには飛びついてくれなかった。彼らとしても違法ダウンロードに頭を悩ましていたものの、その解決のためのアイデアを提供すると申し出てくる企業はたくさんあり、ダニエル・エークのSpotifyもその一つに過ぎなかった。

ダニエル・エークとその仲間たちは、辛抱強く地道な交渉を重ねた。大手レコード会社のディレクターに「こんなものは無理だ」と怒鳴られ、挫折しようになったこともあったという。しかし、彼らの要望に耳を傾けながら、サービス内容やソフトウェアのプラットフォームにそれらを取り入れていくことで、次第にレコード会社を納得させていった。一方で、ダニエル・エークも「自分たちが気に入らないことはやらない」という信念を持っており、これだけは譲れないという一線がしっかりあったようだから、次第に交渉力をつけてくると、交渉がもつれ始めると席を立つ、という脅しをかけるようにもなっていった。

また、大手レコード会社を味方につけるときに功を奏したのが、株主になってもらうという手だったという。その結果、Warner Music、EMI、Universal Music、Sony BMGなどの大手が株の一部を所有することになった。

そのような長い道のりをたどりながら、2008年10月にサービス開始に漕ぎつけたわけだが、その時点で、既に100万曲を超える音楽が利用できる体制になっていた。そして、早くもその年のうちに、イギリスノルウェーフィンランドフランススペインでもサービスを開始し、サービス開始からわずか10ヶ月400万人の利用者がサービスに登録した。

その後も着実に拡大を続け、デンマークオランダベルギースイスオーストリアに進出。念願のアメリカ進出今年の7月に現実のものとなった。

(続く)


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