スウェーデンの今
スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員
 



スキャンダルなどで環境党の閣僚が二人辞任したのを受けて、ロヴェーン首相(社会民主党)は社会民主党と環境党からなる連立内閣の部分的な改造を実施。そして、新しい内閣を発表した。

辞任した二人というのは、環境党の党首の一人であり、環境大臣(兼 副首相)であったÅsa Romson(オーサ・ロムソン)と、住宅担当大臣であったMehmet Kaplan(メフメット・カプラン)。そのため、空席となったこの2つのポストの補充を行うことが、今回の内閣改造の大きな目的であった。当初は、社会民主党のロヴェーン首相が2つのポストのうちの1つを環境党から社会民主党に取り戻して、自党の党員を充てるのではないかとも噂されたが、環境党は2つのポストを維持することになった。

環境大臣には、現職のマルメ市議会議員であり市の執行部のメンバーでもあるKarolina Skog (カロリーナ・スコーグ)が、そして、住宅担当大臣には現職の欧州議会議員であり、環境党の党首をかつて務めたことがあるPeter Eriksson(ペーテル・エリクソン)が抜擢され、就任した。

また、社会民主党所属であり戦略・未来問題および北欧協力担当大臣は、これまでの活躍があまりなく、また、自分の側近を選ぶ際の政治任用のあり方がメディアで批判されたこともあり、別の社会民主党所属の政治家に代えられた。新たに閣僚に就任したのは、Ann Linde (アン・リンデ)。彼女はこれまで、内務担当大臣であるAnders Ygeman (アンデシュ・イューゲマン)の副大臣を務めてきた

ところで、この組閣に伴って、大臣の担当領域の変更や省の再編も行われた。例えば、先ほど触れたAnn Linde (アン・リンデ)はEUおよび通商担当大臣という新たなポストに就任し、戦略・未来問題および北欧協力担当大臣というポストは廃止されることになった。また、難民問題がスウェーデンにとっての大きな課題であることを踏まえて、法務大臣のポストに移民担当大臣という役職が加わったし、労働市場大臣のポストには難民自立支援担当大臣という役職が加わっている。また、エネルギー担当大臣はこれまでは環境省の管轄であったが、首相府に移管された、

環境党所属で、これまで国際援助担当大臣を務めてきたIsabella Lövin(イサベラ・ロヴィーン)は、先に触れたÅsa Romson(オーサ・ロムソン)が党首を辞任したあとの党大会で、環境党の党首の一人に選ばれることとなった(環境党は二人党首制を採用している)。複数の政党が連立で政権を構成する場合、第2党の党首が副首相というポストを兼ねるという暗黙のルールがあるため、前回の組閣(つまり2014年9月の選挙後の組閣)では党首であったÅsa Romson(オーサ・ロムソン)が副首相を務めることになったが、今回もそのルールが適用された結果、Isabella Lövin(イサベラ・ロヴィーン)副首相を今後、務めることになった。

以下には、新しい閣僚の一覧を示すが、新たに任命された閣僚赤字で、そして、担当領域が変更した大臣青字で強調している。

また、ニュースでは新たな閣僚にばかり注目が集まっていたが、実は隠れたところで、農林水産省が廃止されて、産業省に統合されたのである。

【 首相府 】

首相

Stefan Löfven (ステファン・ロヴェーン)
社会民主党 58歳

省間コーディネーションおよびエネルギー担当大臣

Ibrahim Baylan(イブラヒム・バイラン)
社会民主党 44歳


【 財務省 】

財務大臣

Magdalena Andersson (マグダレーナ・アンデショーン)
社会民主党 49歳

金融市場・消費担当大臣(財務副大臣)

Per Bolund (パー・ボールンド)
環境党 44歳

民生担当大臣

Ardalan Shekarabi (アルダラン・シェカラビ)
社会民主党 37歳


【 外務省 】

外務大臣

Margot Wallström (マルゴット・ヴァルストロム)
社会民主党 61歳

EU・通商担当大臣

Ann Linde (アン・リンデ)
社会民主党 54歳

国際発展協力・気候変動担当大臣(兼 副大臣

Isabella Lövin (イサベラ・ロヴィーン)
環境党 53歳


【 法務省 】

法務大臣(および移民担当大臣)

Morgan Johansson (モルガン・ヨーハンソン)
社会民主党 46歳

内務担当大臣

Anders Ygeman (アンデシュ・イューゲマン)
社会民主党 45歳


【 環境省 】

環境大臣

Karolina Skog (カロリーナ・スコーグ)
環境党 44歳


【 産業省 】

産業・技術革新大臣

Mikael Damberg (ミカエル・ダムベリ)
社会民主党 44歳

インフラ担当大臣

Anna Johansson (アンナ・ヨーハンソン)
社会民主党 44歳

住宅・デジタル化担当大臣

Peter Eriksson(ペーテル・エリクソン)
環境党 57歳

農林水産担当大臣

Sven-Erik Bucht (スヴェン・エーリック・ブクト)
社会民主党 61歳


【 教育省 】

教育大臣

Gustav Fridolin (グスタフ・フリドリーン)
環境党 33歳

高校・知識向上担当大臣

Aida Hadžialić(アイーダ・ハジアリッチ)
社会民主党 29歳

高等教育・研究担当大臣

Helene Hellmark Knutsson (ヘレーン・ヘルマルク・クヌートソン)
社会民主党 46歳


【 労働市場省 】

労働市場大臣(および難民自立支援担当大臣)

Ylva Johansson (イュルヴァ・ヨーハンソン)
社会民主党 52歳


【 文化省 】

文化・民主主義大臣

Alice Bah Kuhnke (アーリス・バ・クンケ)
環境党 44歳


【 防衛省 】

防衛大臣

Peter Hultqvist (ペーテル・フルトクヴィスト)
社会民主党 57歳


【 社会省 】

社会保険大臣

Annika Strandhäll (アニカ・ストランドヘル)
社会民主党 41歳

子供・高齢者および男女平等担当大臣

Åsa Regnér(オーサ・レグネー)
社会民主党 51歳

国民健康・医療およびスポーツ担当大臣

Gabriel Wikström (ガブリエル・ヴィークストロム)
社会民主党 31歳


【 過去の記事 】
2014-10-05: 社会民主党・環境党連立、ロヴェーン内閣の発足

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スウェーデンに関して誤解を招きそうなタイトルを掲げた日本語記事があったので、指摘しておきたい。

Spotifyが本社移転か スウェーデンの「高すぎる税金」から避難

という見出しの記事であるが、この手の見出しは、一般的に世間に持たれているステレオタイプを利用して人目を引き、読者を分かった気にさせてくれるものの、実際の事実はきちんと理解されないままで終わってしまう、という事態を招きやすいので注意が必要だ。このタイトルだけ見て、スウェーデン → 税金が高い国 → だから企業が国外に逃げていく という単純なストーリーを想定する人は少なからずいるだろう。

しかし、この日本語記事の元となっている英語の記事のタイトルは「Spotify May Soon Leave Sweden, According To Its CEO」であり、税金という言葉は使われていない。「高すぎる税金」と一言でまとめられるほど単純な話ではないからである。

「高すぎる税金」というけれど、何の税金を問題にしているだろうか?消費税だろうか? 給与所得に掛かる所得税のことだろうか? 資本所得にかかる所得税のことだろうか? それとも、法人税のことだろうか?法人税に関しては、前回の記事でも触れたようにスウェーデンは1990年代以降、他の先進国に先駆けて法定税率を下げてきた国であり、国際的に見ても高いわけでは全く無い。税率は2013年から22%という水準である。これに対し、日本は法人所得に対して法人税のほか住民税や事業税が課せられるため法定実効税率は35%ほどであり、アメリカは40%前後だ。

実は、この記事(日本語およびその元となっている英語の記事)がネタにしているのは、4月11日にSpotifyのCEOであるダニエル・エーク(Daniel Ek)マッティン・ローレンツォン(Martin Lorentzon)がスウェーデンの政治家に宛てた公開書簡である。二人はこの書簡の中で、スウェーデンにおいて今後もスタートアップ企業が盛んに成長し、世界中から才能のある人材が集まる場であり続けるうえでの懸念を3つ掲げ、自身の会社が本社を国外に移すかもしれないことを示唆しながら、政治家に改革に向けた行動を起こすよう促している。その懸念の一つがストックオプションに対する課税のあり方である。

ストックオプションとは、企業の従業員がその企業の株式をあらかじめ決められた価格で購入できる権利のことである。一定期間が過ぎないと行使できなかったり、いつまでに行使しなければならない、などの制限が付いている場合が多いようだ。行使時に、あらかじめ決められた行使価格を株価が上回っていた場合、その差額がオプション行使者のものとなる。企業の業績が上がるにつれ株価も上昇していくだろうから、従業員に努力するインセンティブを与えるボーナス制度の一つである。しかも、企業が報酬を払うわけではないので、企業が直接の財務的負担を負う必要がない

スウェーデンではこのような制度はこれまであまり一般的でなかったが、Spotifyのような新興のIT企業の中には従業員にストックオプションを提供しているところもある。しかし、スウェーデンの税制はその流れに追いついておらず、いまだにストックオプションという言葉が税法上できちんと定義されていない。また、課税のあり方が従業員や企業にとって非常に不利なものであることも、ストックオプションの普及を阻害する大きな要因となっている

では、不利な課税のあり方とはどういうことかというと、現行制度のもとでは、ストックオプションの行使によって得たキャピタルゲイン資本所得ではなく、給与所得として見なされ課税されているのである。より詳しく言えば、行使したその日における時価と購入価格との差額が給与所得として見なされるのである(購入した株式をすぐに売却するか、しばらく保持するかは関係ない)。そして、その後、実際にその株式を売却する際に行使時よりも株価が上昇して、さらにキャピタルゲインが発生した場合は、その部分が資本所得として見なされ課税される。

今回のSpotifyのCEOの公開書簡も、オプション行使時の時価と購入価格との差額が給与所得として見なされ課税されるあり方を批判しているのである。企業からの給与所得としてみなされるため、企業はその給与所得に応じた社会保険料を支払わなければならない。そもそもストックオプションは企業が財務的負担を負うことなく、努力した従業員に報酬を支払う制度であるのだが、これでは従業員がオプション行使で得たキャピタルゲインの31.42%に相当する社会保険料を支払わなければならなくなる。また、他の給与所得と合わせた形で所得税が決まるため、すでに高い給与を得ている従業員であれば限界税率が60%ほどになってしまう可能性がある。

(公開書簡の中では「限界税率は最大で70%にもなる」とSpotifyのCEOは書いているが、それは社会保険料を加えれば限界税率が最大でそのくらいの水準になるスウェーデン経営者連盟が以前から言っているのをそのまま使っているだけだと思われる。オプション行使に掛かる所得税の場合、行使者が社会保険料を負担することは無いであろうから、70%という数字はこの文脈では適当ではない)

SpotifyのCEOは、アメリカではストックオプションの行使によって得られた利益が資本所得としてみなされ15〜20%の税率が課せられ、社会保険料の負担も発生しないという。ドイツでも資本所得としてみなされ、税率は25%だという。だから、彼らはスウェーデンでもストックオプションの行使による利益が資本所得として扱われ、課税されるのであれば文句は無いと言っているようである。スウェーデンでは資本所得税の税率は30%であるが、この水準で彼らが満足なのかどうかは公開書簡からは明らかではない。(日本について私が簡単に調べたところ、日本でも給与所得として見なされるようであり、ということは、それに応じて所得税や住民税が課せられるのであろう)

であるから、CEOの彼らが問題としているのは、税金の高い・低いということよりも、むしろストックオプションに対する課税のあり方が時代の流れに即したものではなく、ストックオプションという制度が本来狙いとしていた目的を損なう形になっていることなのである。Forbesの英語の元記事では「the taxes unfairly punish those at the company with stock options」と書かれているが、これは彼らの主張と合致しており正しい。しかし、日本語に訳した編集者は「過大な税金が課されている」と、余計な意訳を施しているため、ニュアンスが異なってしまっている。

ちなみに、ストックオプションに対する課税のあり方については、スウェーデン政府も改革の必要を感じているため、改革に向けた調査をすでに実施し、その調査委員会が政府に対して答申を提出している。しかし、この調査は「中小企業の起業を促進するためにはどのような税制改革が必要か」という問題意識に焦点を置いていたため、提出された答申では、税制の改革が必要なのは、従業員数が50人以下の企業、および、創業から7年以内の企業に限られる、とされている。そのため、今や大きく成長したSpotifyのような企業には適用されない。このこともSpotifyのCEOの怒りに拍車をかけているのである。

SpotifyのCEOの指摘が妥当なものであるかどうかの判断は、私はとりあえず保留としておきたい。一方、彼らが現在のスウェーデン経済における問題点だと指摘する他の2点に関しては、私はその通りだと思う。

まずは、賃貸住宅の不足。これについては私も2年前にこのブログでまとめたが、特に都市部において賃貸住宅が不足しているため、Spotifyのような成長企業がストックホルムの事務所に世界中から従業員を雇ったり、他の事務所からストックホルムの事務所に優秀な人材を送ろうとしても、彼らの住居が容易には確保できないのである。スウェーデン経済の景気は良好なのであるが、この住宅不足がその成長のボトルネックとなっている

もう一つの点は、プログラミング教育である。IT企業が成長していくためには優秀なプログラマーの確保が欠かせないため、SpotifyのCEOらは基礎教育からすでにプログラマー教育を実施すべきだと訴えている。この点も私は全くそのとおりだと思う。プログラミングに必要なシステマティックな論理的思考や数学的な能力は、大人になってから一夜にして身につくものではない。私が小さい時にそんな教育は小学校ではほとんどなかったけれど、興味があったので独学で学んだ経験がある。その時の経験が後々にたいへん役立った。しかし、独学だったので自分で理解できず、大人になってからやっと「そういうことだったのか」と気がついた部分もいくつかある。小さい時に基礎教育でそういう手ほどきが受けられていれば、理解ももっと早く深まったのにと思う。

【 過去の関連記事 】
2014-07-14: ますます深刻化する賃貸住宅不足の問題 (その1)
2014-07-18: ますます深刻化する賃貸住宅不足の問題 (その2)
2014-07-30: ますます深刻化する賃貸住宅不足の問題 (その3)
2014-08-06: ますます深刻化する賃貸住宅不足の問題 (その4)

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今週日曜日の夜7時半、公共テレビSVTのニュースを見ていた。通常であればニュースの最後に天気予報があり、そのまま地方ニュースにバトンタッチをするのであるが、この日は天気予報のあとにニュースキャスターが再びニュースを読み始めた。そのニュースの内容は、アイスランド首相に資産隠しの疑いがあることが明らかになったこと、そして、その疑いはパナマの法律事務所から漏洩した膨大な数(1100万)の文書から明らかになったこと、さらに、その文書は世界的なジャーナリスト・ネットワークであるInternational Consortium of Investigative Journalists (調査ジャーナリスト国際連合:ICIJ)がこれまで長期にわたって分析してきたものであり、SVTのジャーナリストもそのネットワークのメンバーであったこと、そして、そのネットワークの定めた世界共通の解禁日時はその日の夜8時であるため、夜8時になればSVTのホームページで詳細を公開することが、淡々と伝えられた。

通常とは異なったニュース番組の終わり方であったため、見ていた私も思わずドキドキしてしまった。そして、それから間もなく世界的に公開されたパナマ文書の詳細は、世界のメディアを釘付けにしてしまうものであった。

スウェーデンに関しては、大手4銀行の一つであり、2013年まではスウェーデン政府も主要株主であったNordea(ノルディーア)が有力顧客に対して、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立してスウェーデンでの課税を逃れるためのサービスを提供していた疑いがパナマ文書から浮かび上がってきたため、メディアを始め、金融監督庁などの激しい追及を受けている。

それ以上に大きな危機に陥っているのは、冒頭で触れたアイスランドである。現首相であるシグムンドゥル・ダヴィード・グンラウグソンは、2008年の金融危機で明るみになった政治腐敗からアイスランドを脱却させ、政治や行政への信頼回復を重要課題として取り組むことを自身の政治キャリアの中心に据えてきた政治家だというが、その本人がタックスヘイブンでの資産隠しに関与し、アイスランドでの課税を逃れていた疑いが持たれているからである。

このスキャンダルがアイスランド国民に伝えられたのは、国際ジャーナリスト・ネットワークICIJがこのパナマ文書に関するスクープニュースを解禁した日曜日だった。その夜、アイスランドではこの首相スキャンダルを扱った番組が放送されたという。そして、その番組にはジャーナリストの厳しい質問に驚き、その場を慌てて立ち去ろうとする首相の姿も映されていた。

そのテレビ・インタビューの場面であるが、ストーリー的にはとても良く出来ている。ちなみに、このインタビューはスウェーデンの公共放送SVTがアイスランド首相に申し込んだものだったのである。その経緯について、スウェーデンの公共テレビSVTの番組「Uppdrag Granskning」の情報を元に簡単にまとめてみたい。

※ ※ ※ ※ ※

膨大な数のパナマ文書の分析は、最初にそれを入手したドイツのメディアだけの手に負えるものではなかったため、深い分析を得意とするジャーナリストのネットワークである調査ジャーナリスト国際連合(ICIJ)を通じて数百人のジャーナリストで手分けして分析することになった。この中には、スウェーデンの公共放送SVTの看板番組の一つであり、様々な資料や公開請求して得た文書の分析でスキャンダルを暴いていく「Uppdrag Granskning」のスウェーデン人ジャーナリストの他、アイスランドのフリージャーナリストも含まれていた。

以前から知人同士であったこの二人は、アイスランド首相に対する疑惑を数カ月前にすでに突き止めていたのであるが、その疑惑を何とかして当の本人に突き付けて、回答を得たいと考えていた。しかし、正攻法でインタビューを申し込んでも首相側がOKする可能性は低く、映像も良いものが得られないだろう。

そこで彼らが考えたのは、別の名目でインタビューを申し込み、首相をテレビカメラの前に誘い出して、そこで疑惑を突きつける手であった。ジャーナリストの彼らもこのやり方が「汚い」ものであり、物議を醸しかねないことは承知していたものの、それでも敢えて実行に移したという。

スウェーデン人ジャーナリストがアイスランド首相に申し込んだインタビューの名目は「2008年に始まった金融危機と政治危機をアイスランドがいかに乗り越えてきたか」をアイスランド首相に尋ねるという、ごく無難なものだった。だから、アイスランド首相もOKをしたようだ。インタビューではまず、国民の皆が税金を収めることが重要であること、そして、タックスヘイブンを利用した租税回避行為が深刻な問題であることを首相に語らせる。首相も、政治や行政は国民が信頼できるものでなければならないと強調している。

そうやって、首相が波に乗って答え始めたところで、スウェーデン人ジャーナリストが切り出す。「あなた自身はどうなんでしょうね? あなた自身がペーパーカンパニーに関わったりはしていませんよね?」

次第にうろたえるアイスランド首相。そして、自分の家族が関わるペーパーカンパニーの名前を出され、しどろもどろになってしまう。

その後、首相が慌ててカメラの前から立ち去る様子が下の動画に映っている。


(注:英語字幕はYoutubeのCCを押せば表示される。ちなみに、この動画はもとのインタビュー動画をノルウェーの新聞社が編集したものであるため、ノルウェー語で解説されている。インタビューそのものは英語だが、途中から登場するアイスランド人のフリージャーナリストがアイスランド語で質問している)

※ ※ ※ ※ ※

ともあれ、タックスヘイブンを利用した租税回避行為には、スウェーデンもこれまで頭を悩ませてきた。スウェーデンはEUの中でも比較的早い時期から法人税を切り下げてきた国であるが、世界中に法人税率が0もしくは0に近い国や地域がある以上、そういったタックスヘイブンへの資産や所得の流出を阻止するための効果的な方法がこれまであまりなかった。かといって、他の課税制度との調和の問題から法人税をタックスヘイブン並に下げることは不可能である。一方、近年ではタックスヘイブンとして利用されている国・地域が次第にその地域で保有されている資産情報を他の国と共有するようになっている。スウェーデン国税庁もタックスヘイブンとのそのような協力関係の中でスウェーデン人の資産隠しを暴いていくことが次第にできるようになり、罰金を恐れて、過去の申告漏れを自分から事後申告するスウェーデン人も増えているようだ。今回のパナマ文書を発端とする様々な暴露も、そのような資産隠しを難しくしていこうとする動きに、大きな拍車をかけることになるだろう。

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2007年か8年ころだったろうか、株式や投資信託の売買のために私が使っていたスウェーデンのネット銀行のサイトに、このネット銀行によるサービスの広告が出ていた。「税金の安いスウェーデンへようこそ」という文句とともに、ダックスフンドの写真が使われていた。ダックスフンドはスウェーデン語ではtaxと呼ぶ。一方、taxは御存知の通り、英語では「税金」。だから、背の「低い」ダックスフンド(tax)と、「低い税金」とを掛けた言葉遊びだと分かった。

そして、その広告をクリックしてみると、「あなたの資本所得税の税率が1.2%になる金融商品があります」と書かれていた。(1.2%の部分は明確には覚えていないが、それくらいの水準だったのは間違いない)

でも、スウェーデンの資本所得税は30%である。それなのに、そんな旨い話があるものかと思って、詳しく読んでみたところ、1.2%というのは投資や貯金の元本全体に掛かる税率であることが分かった。これに対し、通常の資本所得税の税率である30%というのは、利子やキャピタルゲインに掛かる税率である。つまり、税率だけ見ると非常にお得に感じられるが、実際には課税の対象が異なっているのである。だから、税率を比較しただけでは、果たしてこの新しい金融商品がお得なのかどうかは判断しにくい

一見すると、長所・短所が分かりにくい金融商品だが、実際に契約をしてみて運用を始めるとその好都合な点と不利な点が次第に分かってきた。この金融商品は、当時はKapitalförsäkring(直訳すると「資本保険」だが、それは名前だけで、本来の保険としての性格は持っていないことに注意)と呼ばれていたが、2012年からはそれによく似たInvesteringssparkonto(投資貯蓄口座)という金融商品の制度が新たに設立された。後者は、その口座を保持するための手数料が無いなどの点で前者よりも利便性が高く、その後、着実に人気を高めつつある。(注:株式の売買手数料や投資信託の手数料は通常通りかかる。)

KapitalförsäkringInvesteringssparkontoも課税に関してはほぼ同じ特徴を持っているので、以下では後者に焦点を当てて説明したい。また、以下ではInvesteringssparkonto(投資貯蓄口座)を略してISKと呼ぶことにする。


【 ISK(投資貯蓄口座)の概要 】

ISKは大手金融機関であればどこでも開設できる。まず、口座を開設し、自分の投資資金をそちらに移す。そして、その口座の中で、投資信託や株式、デリバティブなど様々な投資商品を購入する。そして、購入した投資信託や株式は、その口座の中で保持される。また、それを売却することも容易にでき、売却すれば同じ口座の中で流動性資産に置き換わり、それを使って別の投資商品を購入することができる。ISK(投資貯蓄口座)はいわば「外枠」なのである。

では、ISKという「外枠」を使わずに投資信託や株式を売買した場合と比べて、何が異なるのだろうか? それは課税の仕方である。通常の売買では、購入額と売却額の差額によるキャピタルゲインに対して、30%の資本所得税が課せられる。購入額よりも売却額のほうが小さくなった場合はキャピタルロスが生じるが、このような損失は他の売買で生じたキャピタルゲインと相殺されたうえで資本所得税が課せられる。

これに対し、ISKを使って売買した場合は、キャピタルゲインに対してではなく、その口座に入っているすべての資産の合計額に対して一定水準の資本所得税が課せられる。そして、その税率は(長期国債金利)×(30%)で求められる水準である。仮に長期国債金利が4%であれば、4%×0.3=1.2%となる。


【 元本 ×(長期国債金利)×(30%)の意味は? 】

では、税金の大きさを考えた場合、どちらが利用者にとって得なのだろうか(つまり納税額が少なくなるのだろうか)?そのためには、ISKを利用した場合に課せられる、資産合計額の(長期国債金利)×(30%)という額の意味を考える必要がある。

これはどういうことかというと、仮に私がその口座にある資金のすべてを無リスクの投資対象(その代表例として長期国債)に投資したと想定し、そこから得られる投資益に対して30%の資本所得税を課す、ということなのである。実際の投資では、株式のようにリスクの高い投資商品もあるため、大きな収益を得ることもあれば、損をすることもある。しかし、様々な投資収益の平均を取ってみれば、その収益率は無リスクの長期国債の金利にだいたい落ち着くであろう。それならば、すべての資金をその平均的な収益率で運用したと仮定して、課税します、という考え方なのである。

下の図説では、長期国債の金利を4%と仮定し、投資資金のすべてをこの国債で運用した場合のキャピタルゲインと、それに課せられる通常の資本所得税を示している。結局、税額はISKに課せられる(元本)×(長期国債金利:4%)×(30%)と等しくなることが分かる。


先ほど、様々な投資の平均的な収益率は無リスクの金利にだいたい落ち着く、と書いたが、実際にはリスクの大きさに応じてリスク・プレミアムが加わるため、高リスクの投資商品ほど長い目で見た平均的な収益率は高くなる。だから、長期的には、高リスクの投資家ほど有利になる課税制度であるため、リスクの高い商品への投資を促進することがこのISKの狙いの一つである。

また、通常の株式の売買であれば、一つ一つの取引の購入金額と売却金額、そしてそこから生じるキャピタルゲインやロスをすべて記録して、確定申告の際に国税庁に申告する必要がある。それに対し、このISKを使って株式を売買した場合は、そのような細かな手続きは不要となる。必要なのは、その口座にいくらの資産があるか、ということだけである。そのため、ISKを使えば、確定申告における資本所得の申告手続きが大幅に簡略化されることになる。(一方、株式ではなく、投資信託の売買から生じたキャピタルゲインやロスなどの情報については、ISKを使わない場合でも自動的に国税庁に報告されるため、個人の納税者が自分の一年間の取引を一つ一つ申告する必要はない)

では、私個人にとって、ISKは果たして得なのだろうか? それは投資の結果による。投資信託や株式の売買をうまくやり、長期国債の金利以上の収益率を実現できれば得である。自分の投資の腕のおかげでいくら大きな収益をあげても、国に支払う資本所得税は長期国債で資金を運用したと想定した場合に課せられたであろう額だけであるからだ。

下の図説では長期国債金利をこれまで通り4%と仮定したうえで、株式などの投資により元本の20%のキャピタルゲインを得た場合に課せられる税額を、通常の場合とISKを利用した場合とで比較している。ISKを利用した場合は、キャピタルゲインがどれだけ大きくなろうが、課せられる税額は元本の1.2%だけである。


一方、投資に失敗し、長期国債の金利以下の収益しか達成できなかったり、損失が出たりした場合は不利となる。長期国債で資金を運用した場合に想定される資本所得税を支払わなければならないからだ。

ISKは財務省・国税庁の側から見れば、上記の税務手続きの簡略化という点だけでなく、景気状況にあまり左右されずに安定的な資本所得税収を得られる、という利点も持っているだろう。キャピタルゲインに課せられる通常の資本所得税は、株価が上昇し、多額のキャピタルゲインが発生する好況時には税収が大きくなるものの、不況時には株価が低迷してロスが発生したり、損失を確定するのを避けるために株を維持する人も増えるだろうから、税収が減ってしまう。これに対し、ISKに対する課税はキャピタルゲインではなく、その口座にある資産総額に依存する。もちろん、株価など資産価格が低迷すれば資産総額も減少するため、税収も若干減るわけだが、通常の資本所得税ほどの落ち込みにはならない。

※ ※ ※ ※ ※


ISKを使おうと思った場合に、最低限知っておくべきことは以上である。これから先に書くことはテクニカルなことなので、ISKの税率が課税年2015年には0.27%課税年2016年には0.42%となるという点だけを押さえておけば、あとは読み飛ばしてもらっても構わない。


【 長期国債金利 】

投資貯蓄口座(ISK)に対する課税額の計算で使われる長期国債金利についてであるが、スウェーデン国税庁は課税年前年の 11月30日における、満期まで少なくとも5年以上あるスウェーデン国債の平均値を用いている。近年は低金利が続いているため、過去にない低水準となっている。

課税年2014年では、その前年である2013年10月30日時点の長期国債金利(平均)である2.09%が用いられた。そのため、投資貯蓄口座(ISK)の総資産額に課せられる税率は2.09%×0.3=0.627%となった。

その次の課税年2015年では、2014年10月30日時点の長期国債金利(平均)である0.90%が用いられた結果、税率は0.90%×0.3=0.27%にまで低下した。

さて、課税年2016年はどうなるだろうか? 2015年の半ばに政策金利がマイナスになり、しかも、その状態がしばらく続くだろうと考えられたため、長期金利もさらに低下を続けた。国税庁は2015年半ばに、「もし長期国債金利がマイナスになった場合、投資貯蓄口座(ISK)に課せられる税率はどうなるのか?」という質問を受けていたが、「0%になるだろう」と答えていた。

実際には長期国債金利がマイナスの領域に到達することはなかった。2015年4月24日に0.19%まで低下したものの、その後、上昇し、1%以下の水準で上下を繰り返しながら、2015年10月30日時点での長期国債金利は0.65%となった。この金利に基づけば、投資貯蓄口座(ISK)に掛かる税率は0.3を掛けた0.195%となる。

いずれにしろ、ISKに対する課税水準が非常に低くなってしまうことに変わりはない。そもそもISKの特殊な課税制度は、様々な投資商品の収益率の平均と、長期国債金利とがだいたい等しくなるであろうことを想定して設立されたものである。通常の景気変動であれば、不景気になって株価が低迷した時に政策金利が引き下げられるため、低金利=投資収益率の低迷、という等式が成り立つ。

しかし、現在のスウェーデン経済はそれとは異なり、好景気で株価も高水準を維持していると同時に、超低金利、という状態だ。スウェーデンの株価は昨年半ばから減少傾向が続くが、大手企業の株式配当は高い水準であるため、株式などの運用から得られる収益の水準は高い。だから、ISKに対する税率が低くなりすぎると、資本課税が不公平になる可能性がある。さらに、今のようなマイナスの金利政策が続けば、長期国債金利もマイナスになる可能性もあり、そうなると非課税となってしまう。この制度が導入された2012年の時点で、まさかそのような経済状況に直面するとは、政策立案者も予想していなかっただろう。

そんな懸念から、国税庁は税率の計算の仕方を改め課税年2016年から
(長期国債金利+0.75%)×0.3

に改めた。つまり、長期国債金利に0.75%の下駄を履かせたうえで、通常の資本所得税率である0.3を掛ける、ということである。また、(長期国債金利+0.75%)の部分が1.25%を下回った場合は1.25%に置き換える、というルールも加えた。つまり、
MIN[(長期国債金利+0.75%), 1.25%]×0.3

ということである。これにより、ISKに課せられる税率は、1.25%×0.3=0.375%を下回る可能性がなくなった

前述のとおり、2015年10月30日時点での長期国債金利は0.65%であったが、これらの制度変更のため、投資貯蓄口座(ISK)に課せられる税率は2016年は(0.65%+0.75%)×0.3=0.42%となる計算である。これでも、かなり低い税率であることには変わりはない。


【 課税対象額の計算 】

以上は、ISKの税率についての説明であったが、ではその税率が課せられる課税対象額はどう計算されるのであろうか? この記事の前半の説明では、分かりやすくするためにISKに入れられた資産総額を指して「元本」と一言で書いたが、資産総額は1年を通して一定であることはなく常に変動するだろうし、1年の途中で口座に新たに資金を追加したり、逆に引き出したりすることもあるだろう。

そのため、スウェーデンの国税庁はISKに入っている総資産額の年間平均を、以下の式を使って導き出している。
[(各四半期の初めの時点でISKに存在する総資産額)+(その年にISKに振り込んだ資産額)]÷ 4

一見、意味が分かりにくい式であるが、具体例を考えて見ればよく分かる。一つの例として、年の初め(第1四半期の初め)の時点でISKの口座に10000クローナが入っており、そして、各四半期ごとにキャピタルゲインが1000クローナずつ発生し、かつ、各四半期ごと新たに2000クローナの資金をISKに別の口座から振り込んだとする。

この例における各四半期の初めの資産額、キャピタルゲイン、振り込み、終わりの資産額は以下のようになる。


そして、国税庁の式に基づくと、各四半期の初めの資産額の合計58000と他の口座からの振込額の合計8000を足した66000を4で割った16500が、年間を通じた総資産額の平均ということになる。結局、この計算は何をしているのかというと、それぞれの期のキャピタルゲインを除いた各四半期の終わりの資産額(表の右端に提示)の平均 (12000+15000+18000+21000)/4を取っているのと同じだということが分かるだろう。このようにして、総資産額の年間平均を求めているのである。

ただし、口座からの引き出し額が計算に含まれていないことに注意してほしい。上の例では各四半期ごとに2000クローナを振り込んだが、もし、各四半期ごとに6000クローナを振り込み、かつ4000クローナを引き出すという場合はどうなるだろうか? 各四半期の振り込み額の実質は2000クローナであるという点では、一つ前の例と同じであるが、課税対象額の計算では大きな違いが生まれることになる。

下の表では、新たに「他の口座への引出」という項目を設け、各四半期に6000の振り込み4000クローナの引き出しをするという設定にした。この場合、各四半期の初めと終わりの資産額は一つ前の例と全く変わらない。しかし、総資産額の年間平均の計算は、各四半期の初めの資産額の合計58000と他の口座からの振込額の合計24000を足した82000を4で割った20500となり、一つ前の例よりも課税対象額が4000クローナも大きくなってしまった。そして、その分、払わなければならない税額も大きくなるのである。


だから、ISKを使う上で注意しなければならない点は、
・資金の出し入れを頻繁に繰り返すと課税対象額が大きくなってしまうため、近い将来に使う必要がある資金を一時的に投資するようなタイプの貯蓄には向かない。
それでも資金を引き出す必要がある場合は、次の四半期が始まる前に引き出すべき。(そうすれば次の四半期の初めの資産額が小さくなり、課税対象額が減る)

であろう。

とはいえ、この記事の中で示したように税率自体が低いため、課税対象額が多少変化しても、税額にはあまり大きな影響が出るとはいえず、非常に細かな議論ではある。

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ヨーロッパの音楽祭典「ユーロヴィジョン・ソングコンテスト (Euro Vision Song Contest)」スウェーデン代表を決める大会「メロディー・フェスティヴァーレン (Melodifestivalen)」の決勝が昨日、土曜日に開催され、公共テレビSVTで生放送された。スウェーデン国内のこの大会では、これまで4回の予選と1回の敗者復活戦を経て、12人(およびグループ)の歌手が決勝に進出。

この大会はもともと、日本で言えば(番組の性格は異なるものの)紅白歌合戦のように話題性の強い番組であり、かつては若者だけでなく中高年の視聴者もある程度は意識した内容になっていたが、今年は近年に増して若い歌手が多くて、企画・制作している公共テレビSVTはもはや若者だけにターゲットを絞ったのではないかと思わせる内容だった。(私が好みというわけではないけれど)中高年向けの、もうちょっとベタベタなダンスバンド・ミュージックがあっても良かったと思う。

ともあれ、この大会における近年の注目の的は、手話通訳。ただ、曲の歌詞を淡々と通訳するのではなく、曲の臨場感やテンポ、メッセージ性や喜怒哀楽を表情や体全体を用いて表現し、耳の聞こえない人にも番組を楽しんでもらう、という手話通訳なのである。昨年は、Youtubeにアップされた手話通訳の映像が世界的に話題を呼び、日本でもメディアなどで紹介されたりした。

今年の大会でも決勝大会で手話通訳が行われ、公共テレビSVTのサブチャンネルや、オンラインチャンネルで放送されていた。私は途中から手話付きと手話なしの両方をパソコンとタブレットで見ていた。2010年にこの大会で手話通訳が試験的に実施されて以来、毎年のように登場していたベテランの男性通訳者は今年は登場せず、残念だった。しかし一方では、最後の出場曲の手話通訳の中で、通訳の人が裸になるという演出があって、思わず圧倒されてしまった。さすが、歌詞だけでなく、曲のイメージやステージの雰囲気までも表現しようとする手話通訳とあって、歌手の若い男の子二人がステージで上半身裸になったのに合わせて、通訳者までシャツを脱いだのだ!

この曲のタイトルは「Bada nakna」、つまり「裸で泳ごう」。歌詞を聞いてみると分かるが、「ストックホルム中心部にあるセルゲル広場の噴水で泳ごう」と歌っているのである(この噴水は日本で言うと道頓堀のようなもので、スポーツイベントで大勝利した時などに、若者が飛び込んで泳いだりする)。だから、最後のサビの部分で歌手がパンツ一枚になったのである。




ノリノリで、2分20秒のところで裸になる手話通訳者。この日のために鍛えてきたのか、わりと筋肉ムキムキです。



【過去の記事】
2015-03-19: これは凄い! 音楽番組「メロディー・フェスティヴァーレン」の手話通訳
2012-03-20: 初めて見た! ロック・ポップス音楽の手話通訳

今年は登場しなかったベテラン通訳者の昨年の映像。


今年の担当だった手話通訳者も頑張っていたけれど、この人ほどのレベルに達するにはもう少し時間が掛かりそう・・・


<追記>
すっかり忘れていましたが、今年の優勝曲はこちら。



この曲がスウェーデン代表となり、ヨーロッパ大会である「ユーロヴィジョン・ソングコンテスト (Euro Vision Song Contest)」に挑む。昨年はスウェーデンがヨーロッパ大会で優勝したため、スウェーデンが今年の開催国。5月14日にストックホルムにて本大会が開催される。

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前回の続き。

【 新幹線の必要性 】

スウェーデンに新幹線(高速鉄道)を建設することについて、私自身は否定的に感じていた時期もあった。巨額の資金を投じて新しい路線を作るくらいなら、現在すでにある線路を改修したり増強したりすることで、頻繁に起こる列車の遅延を減らすことを優先すべきではないかと考えていたからだ。

しかし、その後、様々な討論や賛否両論に耳を傾けながら分かってきたことがある。新幹線を建設する主な目的は、当然ながら都市間の所要時間を短縮して鉄道の利便性を高めることで、航空機や車から乗客を鉄道にシフトさせることである。これは気候変動対策のためにも必要なことである。ただ、それだけが目的ではない。在来線の負担を軽減することも重要な目的であるのだ。

環境への意識の高まりや、鉄道の利便性が向上したことなどによって、過去20年にスウェーデン国内の鉄道利用客は2倍近くに増加している。一方、鉄道インフラのキャパシティーはこの旅客需要の伸びに全く追いついていない。また、鉄道による貨物輸送は現在でもスウェーデンの林業や鉄鋼などの重工業を支える重要な柱であるため、在来線には貨物列車も走っている。その結果、限られた線路の上を旅客列車と貨物列車がひしめき合って、キャパシティ一杯に鉄道インフラを利用しているのが現状なのである。そのため、線路上で少しでもトラブルが発生すると数多くの列車が影響を受ける結果となる。それに、インフラを現在のようにそのキャパシティーの限界まで活用していれば、メンテナンスももっと増やさなければならないはずなのだが、それがおろそかになっているため、信号トラブルや架線切断、切り替えポイントの故障といったトラブルが多発している。

だから、スウェーデンの鉄道のキャパシティを引き上げることはいずれにしろ、必要なことであり、それならいっそのこと新しい路線を敷設することで、在来線の過密度を減少させ、通勤列車・ローカル列車や貨物列車が在来線をもっと自由に使えるようにしたい。それと同時に、新路線は高速列車の運行も可能な高規格にすることで、鉄道の利便性を高め、利用者をさらに増やそう、というのが、このプロジェクトの意義なのである。

【 総費用 】

しかし、いくら一石二鳥のプロジェクトだからといって、際限なく費用をつぎ込めるというわけではない。実際のところ、総工費については不確かな点が多いようだ。8年ほど前に行われた最初の試算では、総建設費が1250億クローナ(1.8兆円)になるという結果になった。しかし、その後の試算で1700億クローナに上方修正され、昨年末にはさらに2560億クローナ(3.8兆円)へと引き上げられた。また、プロジェクトを管理する交通庁の報告書によると最大3200億クローナかかる可能性もあると指摘されている。しかも、これらの数字は新線の建設費用だけであり、新駅や車両庫の建設や在来線との接続線の敷設や在来線の改良などにかかる費用は含まれていないのである。

費用の大部分は国が国債の発行などによって賄い、今後数十年にわたって返済していく予定だ。しかし、新幹線の新設によって地元経済が潤うことになる沿線の自治体にも、総費用の最大10%を限度として分担が求められている。沿線自治体では住民の増加や商業活動の活性化が期待されているため、自治体は住宅公社を通じて新たな住宅やオフィス施設の建設などを計画しており、完成後の売却収入・家賃収入などを新幹線プロジェクトの分担金の支払いに充てると考えられる。しかし、プロジェクトの総費用がどんどん膨張してしまうと、自治体の負担もそれに比例して増加していくであろう。自治体側も青天井に負担できるわけではないため、すでに自治体連合会は「費用負担のあり方は非現実的であり、スウェーデン政府がより多くの財政的責任を追うべきだ」と批判している。

一方、スウェーデン政府の負担が増えすぎてしまうと、毎年の国債返済が交通庁の予算を今後数十年にわたって圧迫し、今ですら問題の多い在来線のメンテナンスがさらにおろそかになるのではないか、という懸念もある。スウェーデン政府としては、環境・道路関係の税を建設費に充てる案なども考えているようだ。

巨大プロジェクトの一つのファイランス方法としては、Public-private partnership(パブリック・プライベート・パートナーシップ(指定管理者制度))もある。これは、株式会社などの営利企業からも出資を募り、建設後は施設の運営・管理をその企業に代行させるやり方である。建設費が巨額になるのであれば、この方法を活用することで国庫負担を軽減すべきだという声は産業界などから上がっている。しかし、同様のPPP制度が活用された過去のプロジェクトであるストックホルム・アーランダ国際空港地下駅の建設(および既存在来線との接続路線の敷設、そしてアーランダ・エクスプレスの運行)プロジェクトがあまり良い評価を得ていない。運営を代行している管理企業が多額の使用料を要求して大きな利益を得ている結果、利用者の便益が損なわれているとの見方が強い。また、現在建設が続いているストックホルムのカロリンスカ大学病院もこのPPP制度が使われているが、その費用負担のあり方に批判が相次いでいる。むしろ記録的な低金利の今なら、国が国債発行で費用を賄うほうがまだマシだと考えられる。

【 どの技術を用いるか 】

新幹線のルートの決定と平行して、技術の選定や入札手続きの準備なども進められている。スウェーデンの新幹線計画に参入しようとしているのは、日本や中国、韓国、ドイツ、フランスなどだ。インフラ担当大臣であるアンナ・ヨーハンソンは昨年、日本と韓国に視察に行っているし、スウェーデン議会の交通委員会も2つのグループに分かれて、日本と中国をそれぞれ訪れている。

どの国も新幹線計画への参入に躍起になっているが、中国の攻勢は激しいようだ。自国に視察に来たスウェーデン議会・交通委員会のメンバーに対して、「中国の技術を使えば工期は短く、建設費も大幅に安く済む」ということを強調したらしい。セメントによる基礎や支柱などの大部分を、現場で型に流し込んで作るのではなく、あらかじめ規格化し、工場で大量生産し、それを現場に運んで鉄道を建設する工法である上、路線の大部分を高架で建設するため、土地の取得などの費用や手続きが軽減されることがその理由であるようだ。議会・交通委員会の視察団に同行した民間コンサルが、中国でひどく感銘を受けたらしく、そのことをスウェーデンに帰国後にメディアに話したので話題になった。新聞にもオピニオン記事を書いて、中国の凄さをやたらと強調していた(中国へ行った経験はあまりない人で、お膳立てされて見せられたものをそのまま信じてしまった話しぶりだった)。すぐさまスウェーデンの大学研究者に「ちょっと落ち着け」という感じでたしなめられていた(笑)。その研究者が言うには「スウェーデンのこれまでの経験から考えると、地盤がしっかりしており、地価も安いため、高架よりも接地型の線路を建設したほうが経費が抑えられる。中国のやり方がスウェーデンで必ずしも安上がりだとは限らないし、建設労働者の賃金も中国とは異なる」と指摘している。

高架で建設するという点では、日本も同じだろう。スウェーデンにおいてはどのような工法が適しているのか、私にはよく分からないが、技術力や安全性という面で日本にも健闘してもらいたいと思う。

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スウェーデンの高速鉄道計画がさらに一歩前進した。今月初めに予定経路と予定駅が正式に発表されたのである。

高速鉄道(新幹線)構想といえば、スウェーデン国鉄SJが特急列車X2000を導入した1990年代から浮上し、その利点やコストが次第に議論されるようになっていった。首都のストックホルムから第2の街ヨーテボリ第3の街マルメを結ぶ路線であり、特にこの新線が敷設されるであろう沿線の自治体が大きな関心を寄せてきた。中でもストックホルムとヨーテボリ、およびストックホルムとマルメの中間に位置するヨンショーピン(Jönköping)市はこれまで在来線の幹線から外れた場所に位置し、ローカル線に乗り換えなければ鉄道による到達が不可能であったが、この新線が敷設されるとヨーテボリ行き路線とマルメ行き路線の分岐点となる可能性が高いため、このプロジェクトの実現を積極的にスウェーデン政府に働きかけてきた。また、スウェーデンの高速鉄道をそのままデンマークに接続し、さらにはドイツに到達させるという「ヨーロッパ・コリドー」構想を打ち上げ、そのためのロビー団体を作ったりもしていた。

2月1日に発表されたスウェーデン版新幹線の予定経路と駅
出典: Sverigeförhandlingen

ヨンショーピン(Jönköping)は、私が修士課程を履修したヨンショーピン大学がある街だが、修士号を取得した後、私はしばらくリサーチ・アシスタントとして経済学部で働いていた。その時の仕事の一つがまさに高速鉄道計画に関するもので、例えば、この新幹線ができた時の旅客数をモデルを使って推計するというものだった。ただ、どの自治体に駅を作るのかなどは全く決まっていない時期であったため、大学から言われたとおりに私が推計をしたところ、私が推計モデルの中で駅設置を仮定しなかった自治体から不満の声が上がり、推計をやり直すということもあった(笑)。

このスウェーデン高速鉄道計画には当然ながら多額の投資費用と長い工期が予想されるため、スウェーデンが経済危機に見舞われた1990年代はおろか、2000年代に入ってからもスウェーデン政府は及び腰であった。特に穏健党(保守党)は長い間、このプロジェクトに否定的であったものの、政権を握っていた2014年に態度を変え、連立政権を組んでいた他の3党とともに計画の実現を決定したのだった。その後、社会民主党と環境党が政権を奪ったものの、その計画作業はそのまま継続され、そして今回、その予定経路と予定駅が正式に発表されたのだった。

【 計画の概要と予定経路 】

スウェーデンの在来線の現在の最高速度は時速200kmであるが、その在来線とは別に新たな鉄道を敷設して、最高時速320km程度の高速列車を走らせるというのがこのプロジェクトである。これにより、現在では3時間かかるストックホルム−ヨーテボリ間が2時間で、また現在は4時間半かかるストックホルム−マルメ間が2時間半で結ばれる予定だ。また、大都市間の高速輸送(日本で言う「のぞみ」号)だけでなく、近隣の街を結んで通勤客も利用できるように時速250km程度の高速ローカル列車(「こだま」号のようなもの)も走らせる計画である。例えば、ストックホルム−ニューショーピン(Nyköping)−スカヴスタ空港(Skavsta)−ノルショーピン(Norrköping)−リンショーピン(Linköping)を結ぶ列車や、ヨーテボリ−ランドヴェッテル空港(Landvetter)−ボロース(Borås)を結ぶ列車がそれである。

着工は早くとも2017年であり、ストックホルムからリンショーピン(Linköping)までのÖstlänken(オストレンケン)と呼ばれる区間が2028年までに完成、そして残りの区間が2035年までに完成する計画である。

さて新線の敷設経路であるが、ストックホルムからヨンショーピンを経てヨーテボリに至る路線については大まかな経路がすでに決まっていた。一方、ヨンショーピンから分岐してマルメに至る路線については、どこを通し、どこに駅を作るかが大きな議論となってきた。



最短経路にするならば(2)の候補が望ましい。しかし、人口14万人弱のヘルシンボリ(Helsingborg)にも停車させようとすると(1)の経路になる。一方、スモーランド地方の中核都市であるヴェクショー(Växjö:人口8.5万人)に停車させようとすると(3)の経路となり、少し大回りになる。

ヴェクショー(Växjö)といえば、地方大学(リンネ大学)のある、この地域では比較的大きな街であるものの、鉄道の幹線から外れた場所にあるため、ストックホルムから特急列車で向かおうとすると途中でローカル列車に乗り換えなければならず、不便である。だから、この街にとって現在構想されている新幹線を自分たちの街に通すことは切実な願いであった。

しかし、今回の正式な経路発表では(2)の最短経路が採用されたため、ヴェクショーの願いが叶うことはなかった。

3つの候補のどれを選ぶか、行政の担当者は苦渋の決断を迫られたであろう。高速鉄道の利用者を増やし、建設プロジェクトから得られる便益を高めるためには、なるべく人口の多い場所に線路を敷設したほうが良い。しかし、だからといって距離が長くなってしまうと、そもそも時間短縮のために建設する高速鉄道のメリットが薄れてしまう

実際のところ、2都市間を鉄道で移動するのに要する時間とその2都市間における鉄道の旅客シェアは綺麗な反比例の関係になっている。だから、所要時間が長くなるとその分、鉄道を選ぶ人が減り、逆に飛行機を使う人が増える結果となる。


出典:Lundberg (2011) Konkurrens och samverkan mellan tåg och flyg

上のグラフは、2都市間の鉄道による所要時間とその2都市間の鉄道の旅客シェア(飛行機と鉄道の合計に占める鉄道のシェア。車・バスは含まれていない)の関係である。日本の新幹線沿線の都市も登場するので簡単に説明すると、
・東京−広島:所要時間 4時間弱、鉄道旅客シェア 54%
・東京−岡山:所要時間 3時間強、鉄道旅客シェア 61%
・東京−大阪:所要時間 2時間半、鉄道旅客シェア 88%

となっている。

スウェーデンの場合は、現時点で
・ストックホルム−ヨーテボリ:所要時間 3時間強、鉄道旅客シェア 65%
・ストックホルム−マルメ:所要時間 4時間半、鉄道旅客シェア 39%

であることが分かる。


スウェーデン版新幹線の建設によって、それぞれの所要時間が期待通りに短縮できれば、航空機から乗客を奪うことができ、その結果、
・ストックホルム−ヨーテボリ:所要時間2時間、鉄道旅客シェア90%
・ストックホルム−マルメ:所要時間2時間半、鉄道旅客シェア75%

にまで鉄道旅客シェアを伸ばせるかもしれない。上のグラフは、あくまで各国の様々なケースの平均であり、実際の鉄道旅客シェアは、一日に何便走っているのかといった利便性や、航空機と比べた場合の快適さ遅延の頻度などに左右されるわけだが、予測できる乗客数増加の一つの目安にはなるであろう。

一方、期待した時間短縮が本当に実現できるのかどうか、気になる点もある。例えば、この高速鉄道(新幹線)のために在来線とは別に新たな線路を敷設するわけだが、その新線の起点はストックホルム中央駅ではない。その南西50kmのところにあるヤーナ(Järna)という集落を起点とするのである。そのため、ストックホルム中央駅を出発した新幹線は、まず在来線を通ってヤーナに行き、そこから新線へ乗り入れるということになる。そのため、最高時速320kmを出せるのはそれ以降ということになる。

(ヘルシンボリを経る(1)の案が不採用になったのは距離が長くなるという理由だけでなく、ヘルシンボリからルンドまでの区間がすでに過密であるために在来線を使わなければならず、スピードが出せないから、という理由もあるかもしれない)

【 おまけ 】

新幹線の経路と停車駅を決める過程では、ヴェクショー市以外にも様々な自治体が「うちの自治体にもぜひ駅を!」と働きかけを行っていた。だから、もしそれらの希望を全て受け入れて新幹線の経路を作っていたらどうなっていたか?というジョークの画像がFacebookなどで出回っていた。ここまで来ると、在来線よりも所要時間が長くなってしまいそうである(笑)


次回は、この高速鉄道計画の費用や必要性、メリット・デメリットなどについて書きたい。
(つづく・・・)

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毎年、年末になるとスウェーデンで話題になるイェーヴレ市のヤギだが、今年も11月29日に完成を祝う記念式典が市の広場で開かれた。

高さ13メートル、長さ7メートルのこの巨大なヤギは、全身が藁で出来ているため、一たび火がつくと瞬く間に燃えてしまう。11月末(正確に言うと最初のアドヴェント)に藁でこのヤギを建てて、それを新年まで飾って新しい年を迎えよう、という伝統が始まったのは1966年のことだが、この最初の年でさえ、新年を待たずに誰かが火をつけて炎上している。

その後は様々な工夫がなされ、燃えにくくするための防火剤をヤギの全体に吹きかけるようにもなったが、防火剤をかけてしまうと空気中の水分を藁が吸収しやすくなり、あまり見栄えが良くなくなってしまう。そんな理由から近年は防火剤を吹きかけるのをやめてしまった。

近年の結果を見てみると、2012年には早くも12月13日のルシア祭の早朝に炎上しているし、2013年にはクリスマスの数日前に燃えている。昨年2014年は厳重な警備の甲斐もあってか、無事に年を越すことができた。藁でできたこのヤギが果たして新年まで立ち続けるのかどうかは、ネット上のギャンブルサイトの賭けの対象にもなっているほどだ。1966年以来、火を付けられなかった年は14回しかない。

今年はいつまで持ちこたえるのか? クリスマス以前に火が付けられてしまうのか、それとも、年越し前か、それとも、新年を無事に迎えることができるのかどうか? 今年も人々が大きな関心で見守ってきた。地元の人にとっても、スウェーデンの他の地域に住む人々にとっても、これはスリリングな、一種のお祭りのようである。しかし、残念ながら今年のヤギは12月27日の早朝、炎上してしまった。


TV4のニュース映像より

犯人は警備員に現場近くですぐに逮捕されたが、かなり酔っ払っていたという。地元に住む25歳の若者で、犯行を認めている。警備員によると、どうやら共犯者が一人いたようであり、警察が行方を追っている。

放火直後を捉えた映像がある(下のリンク)。犯人はヤギの足元に火を付けた直後に走って逃げるが、火の勢いが強かったためか、彼の体にも火が燃え移っている(警察によると、医者に診てもらうほどではなかったらしい)。この映像を見ればわかるように、警察のパトカーが間もなくして現場に到着しているが、この火の早さでは、警察や消防がいくら早く現場に到着しようが、もう何もする術がない。近年、防火剤の散布をやめてからは、代わりにウェブカメラや警備員を配置することでいたずらを防ごうと努力しているらしいが、一たび火を付けられれば、もうおしまいだ。

通行人の映像(初回に広告が流れるかもしれない)

それにしても、私はむしろこんなに燃えやすいものがこれまで1ヶ月も立ち続けてきたことのほうが、むしろ驚くべきことだと思うのだけど。

【過去の関連記事】
2013-12-22: イェーヴレ市の藁ヤギ、今年も灰に
2011-12-05: イェーヴレ市のヤギ人形、今年は早くも・・・
2008-12-27: 今年は生き残るか?−イェヴレ市のヤギ
2006-12-31: イェヴレ市のヤギ人形

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今年の八つ墓村コンサート(嘘)をご覧になりたい方はこちらをどうぞ!



毎年12月13日朝に公共放送SVTで流れるスウェーデンのルシア祭のライブコンサートです。今年はヨーテボリから。

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「全国民に毎月11万円、フィンランドが世界初のベーシックインカム導入へ」

「フィンランド、国民全員に800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給へ」

などという日本語ニュースをここ数日の間に目にした。元ネタは英語のニュースだろうと思って検索してみると、英語でも数多くのニュースサイトがこの話題に触れていることが分かる。

詳しい話を知りたいのでフィンランドのニュースサイトを見てみた。私はフィンランド語は読めないが、幸いにもフィンランド人口の約1割はスウェーデン語を母国語とするため、スウェーデン語で書かれたニュースサイトもある。そこで、フィンランドのスウェーデン語系大手紙Hufvudstadsbladetのサイトで、ベーシック・インカムに相当する「medborgarlön」「basinkomst」という単語を検索してみるけれど、ここ数日に書かれた記事は全く見つからない。国外でこれだけ騒がれているのに、現地フィンランドでは話題になっていないのはなぜか・・・?

疑問に思いながら、今度はフィンランド公共放送Yleスウェーデン語のニュースサイトを覗いてみたら、国外メディアの報道に対して「なに騒いでんの!?」という反応をしていたので爆笑してしまった。

「外国メディアを目にした人は、フィンランドが今すぐにもベーシック・インカムをすべての国民に導入すると理解しかねない。」

『しかし、計画から実現までには長い時間がかかる』と専門家は念を押す。」


では、実際にはどうなのかというと、近い将来の導入を視野に入れながら、フィンランド社会保険庁今年10月末に準備的な調査を開始したとのことだ。800ユーロなどという数字もまだ決まったものではない。最終的には全国民を対象にしたベーシック・インカム制度を実現することがフィンランドの現政権の狙いではあるが、それは社会保障制度の全体的な改革を意味するため、まずは改革案の選択肢をいくつか用意したうえで、それぞれの効率性や労働インセンティブに与える影響などを分析するための限定的な実験をフィンランドで実行するところから始めなければならない、という。

というわけで、今はその準備的調査が始まったばかりという段階だ。まず、他国ですでに試験的に導入されたベーシック・インカム制度の研究・評価をまとめて2016年春に政府に提出し、その後、フィンランドで実際に限定的な実験を実施する場合に、それをどのように行い、そしてどのように評価するのか、といった研究デザインを2016年後半にかけて考案。そして、その実験を2017年に実行する予定なのだという。

そうすると、その後はまず実験の評価をしたうえで、それに基づきながら、社会保険庁が政府に対して改革案を提出。そして、それを基に公聴制度を実施したり、議会で議論したりしたうえで、最終的に本格的な導入の是非が議会で決定されることになるだろうから、仮に実施されるとしてもまだまだ先の話である。この記事の一番最初に挙げた日本語記事が書いているような「社会保障の問題を考える際によく引き合いに出される制度ですが、北欧の福祉国家として高い評価を受けているフィンランドが世界で初めて国として導入することを決定しました」とか、「ベーシックインカムを支給する方向で最終調整作業に入ったことが判った」とか、そんなレベルでは全くない。

外国メディアの報道に対するフィンランド社会保険庁の見解(英語)
Contrary to reports, basic income study still at preliminary stage

ではなぜ、この瞬間に大きなニュースになったのか不明だが、最近はどこの国のメディアも自分たちで取材せずに、他のメディアの報道を引用して、伝言ゲームのように話題を拡散していく傾向にあるので、今回もそういう形で広まった話だろう。人の話を鵜呑みにせずに、もっと自分たちでしっかり取材してから報道してほしいものだ。

どのニュースメディアが発端なのかは分からないが、アメリカのTIMEが参照していたQuartzというメディアは、自分たちの最初の報道の誤りに気づき、修正している。

とはいえ、スウェーデンを始め、多くの国々で政治的な議題にすらなっていないベーシック・インカム制度の導入に、フィンランドが本格的に取り組み始めた、という事実については今後も注目していくべきとは思う。
(私自身はこの制度の意義については今のところ懐疑的ですが、もうちょっと調べて、考えたいと思っています)

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