思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

深緑野分『戦場のコックたち』良い!

2019-07-12 10:16:28 | 日記
深緑野分(ふかみどりのわき)『戦場のコックたち』です。
おもしろかったです。

この作品、青春ミステリとか、戦争文学とか、連作短編とか、
いろんな言い方があるんですが
どれも正解で、どれもしっくり来ないような…。
一言で言い表し難い、多方面的な魅力があるんですよね。

とはいえどういう話しかというと。

舞台は第二次世界大戦末期のヨーロッパ戦線。
主人公はアメリカのパラシュート部隊でコックになった
19歳の新兵エド。

頼れるコック仲間のティム、陽気なディエゴ、兄貴風のライナス達が
「パラシュート収集」「消えた粉末卵」などの
日常の謎を通じて友情を育み様々な経験をし…、

と、一見、そういうフォーマット風に始まるんですが、
中盤あたりから不穏な空気が流れ始めます。
まあノルマンディー上陸作戦から始まってるので
序盤から背後では何人もの仲間たちが命を落としているんですが。
徐々に、あらがえない何かが日常を侵食するというか。
主人公も、物語も、戦争という大きな流れに翻弄されていきます。

ちょ、ちょっとちょっと!
と、私まで翻弄されながら一気にページをめくってしまいました。
よくできたプロットだと思います。
読了後は、すごい読書したなあ…、という満腹感。

この作品は、戦争文学というくくりの中で、
短編ミステリに分類されるんじゃないのかな。

ある世界観の中で、それなりに安定して日常が続く短編ミステリ
(『謎解きはディナーの後で』とか『ビブリア堂』とか?
 あまり読まないから詳しくないけど)
を読みたい人には、好まれないのかもしれません。

一方で、北村薫が持つ日常の謎シリーズの苦味や
『ルピナス探偵団』なんかが好きな人には、
是非ともおすすめしたい!
いや、そういう人はすでに読んでると思うけど…。


ちなみに『戦場のコックたち』は作者にとって初長編作品。
で、いきなり直木賞の候補作になっています。
すごいわ。

デビュー作の短編集も読んでみようっと。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【読書メモ】2011年3月 ①『遠... | トップ | 【読書メモ】2011年3月 ② »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事