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皆川博子『死の泉』 御大はすごい

2019-08-27 09:49:50 | 日記
幻想文学の巨人、皆川博子の『死の泉』です。
御大、すごいよ…。
執筆時はちょうど還暦くらい。すごいよ御大。

構成がちょっと変わっていて、
ドイツ人作家のギュンター・フォン・フュルステンベルクが書いた
原書を日本人翻訳家の野上昌が訳して1970年に出版した、
という体裁になっています。
古川日出男『アラビアの夜の種族』なんかと同じスタイルですね。
(こういう手法にネーミングってあるのかな)

舞台は第二次世界大戦末期のドイツ。
第一部は、未婚の妊婦となったマルガレーテの一人称で始まります。
ナチスが優勢種と言い張るアーリア系(金髪碧眼)のための
産院 兼 孤児院で、出産育児をするマルガレーテ。
時代も設定もハードモードすぎて、赤ちゃん大丈夫かなとか、
養子のフランツとエーリヒ大丈夫かなとか、
不安要素しかない。
戦争コワイ。
それでも読み進めずにいられない皆川マジック。
御大、すごいよ。

とはいえ、ずっとこの調子で進めるなら、
作中作というか、
入れ子構造にする必要はないわけです。
第二部は終戦後が舞台となり、怒涛の展開ですよ!

作中作の作者と同名のギュンターが登場し、
青年になったフランツとエーリヒが現れ、
マルガレーテのライバル(?)ブリギッテの息子ゲルトも登場。

なんというか、
乳飲み子を抱えて時代に翻弄されるしかなかった前半に比べて、
後半の登場人物はみんな良い大人なんだから、
謎も事件もトラブルも銃撃もどんと来いや!
という気分になります。
私だけですかね。

なんだかんだで一気に読んでしまいました。

読んでいる途中、先の展開というか展望というかが、
まったく読めないし、
ちゃんとお話しが畳まれるかもわからないのに、
中途半端な離脱は許されないというか
読み進めて損はないと確信させてくれる御大、
やっぱすごいと思います。

1997年の第32回吉川英治文学賞受賞。
週刊文春ミステリー第1位。

いや、これ、ミステリーではなくないかな…。

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