思惟石

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『香水 -ある人殺しの物語-』パリの鼻男一代記

2021-05-14 12:04:35 | 日記
1985年にドイツで刊行され、
当時23カ国に訳されてベストセラーになった小説です。

『香水 -ある人殺しの物語-』
パトリック・ジュースキント
池内紀 訳(ちなみに日本語版は1988年)

サブタイトルがちょっとセンセーショナルなので、
徹頭徹尾猟奇系の話かと思っていました。
『FBI心理分析官』みたいな異常性犯罪者の記録風とか、
『冷血』みたいな特定の犯罪者のノンフィクション・ノベル風とか、
『羊たちの沈黙』『ボーン・コレクター』みたいな表現キツめの
シリアルキラー小説とか、みたいな。

と思ったら、そうではなかった。

どちらかと言うと、嗅覚が異常に発達したヘンテコ男の人生を、
文学風に淡々と綴る系かな。

『阿Q正伝』(魯迅)とか『イワンのばか』(トルストイ)を
思い出しました。
いや、そこまで文学ではないけど。
副題のイメージがちょっと違うかな、という感想。

それはさておき、中身はおもしろかった。
連続殺人者としての活動は小説の後半3分の1くらいかな。
それよりも、前半がおもしろいですね!

天才的嗅覚を持ったクレイジー変人グルヌイユが
どう生まれてどう育ったか、
ついでにその周辺の人物がどんな物語(?)を背負っているか、
というパートがとにかく面白かった。

調香師としての師匠が2ページくらいかけて延々と、
ライバルへの愚痴と我が身への嘆きを述べているところとか、
「この爺さんしつこいな!」と思いつつ楽しい。

18世期パリの「臭い」描写もおもしろかった。
実際に臭気で体調を崩したり、死んでしまうこともあったとか。
どんだけ臭かったんだよ花の都パリ…。

文章も翻訳もいい。
さくさく読める文章で、異常者グルヌイユの人生を飄々と描きます。

数年前に映画化もされたみたいですし、
2003年に(ようやく?)文庫化されたようです。
近年でまた再燃してるのかな?

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