思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

仁木悦子『猫は知っていた』を知らなかった。

2018-02-20 15:20:13 | 日記
仁木悦子という作家さん、ご存知ですか?
私は寡聞にして知りませんでした。
で、先日『黒いハンカチ』という短編集を読んだ際、
そのあとがきで
「松本清張と同時代に推理小説ブームをつくった人」
的な文脈で紹介されていたのを読み、興味を持った次第です。

出版当時はベストセラーになったものの、
今では絶版のいわゆる「忘れられた作家」的な人かしらん。
と思ったら、ポプラ社からポップな表紙で再版されてるのですね。
ちなみにカバーイラストは『夜は短し歩けよ乙女』や
『謎解きはディナーのあとで』の中村祐介氏。
なんとなくマーケット戦略がわかるチョイスである。
(誉めてます)

というわけで『猫は知っていた』です。
主人公は、語り手である仁木悦子と、兄の仁木雄太郎の兄妹探偵。
この二人の会話が、なんというか明るくテンポ良く、
安心してすいすい読めます。
情景描写や、背景の説明なども、すっきりした品があって
健やかな感じ。とにかく読みやすい。

読みやすいが、なんと、初版は昭和32年(1957年)です。
すごいなあ。
ちなみに松本清張の『点と線』がその翌年だそうです。

両親が疎開先を気に入って田舎に引っ込んだまま、
学生の兄妹だけで都内に残っている、という設定。
で、兄の友人のつてで、とある病院の建物内に
下宿させてもらうことになったものの、
不可解な事件が起きて…。
というのがあらすじです。

最初に洞察力を見せるのは妹の悦子なので、
おや?と思いましたが、徐々に、兄がそれを上回る探偵役で、
悦子も良い助手という構図が見えてきます。
ただのワトソンではないのね!偉いわ悦子!と
誉めたくなるくらいには察しの良い悦子です。

防空壕での事件の検証などは、
普通、兄妹でこんなにマジメにディスカッションするものか?
と思うくらいマジメに議論を重ねるのですが、
その会話も育ちと地頭の良い兄妹らしいというか、
共感というよりも羨望って感じですかね。
なんか、良い感じなのである。
(私と兄ではこんなエスタブリッシュで意義ある会話なぞできぬ)

ちょこちょこ事件に絡んでくる子猫のチミも良い味だしてますし、
兄の専攻が植物学ってのもマイナーで良いですね。
あまり難しいこと考えずにミステリー読みたい、という人に
進めやすいです。
あと、有名すぎない作家で、且つ、質が高い、
ってことで、女子に薦めるとポイントあがるかも。
(そうでもないか?)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 皆川博子『アルモニカ・ディ... | トップ | アンディ・ウィアー『火星の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事