Sightsong

自縄自縛日記

『私の城』

2022-09-03 07:54:01 | アート・映画

両国のシアターカイ(2022/8/29)。

Jean Sasportes ジャン・サスポータス (演出, 振付)
Chikako Kaido 皆藤千香子 (dance)
Shophia Otto ソフィア・オットー (dance)
Faris Saleh ファリス・サレー (actor)
Eri Fukahiro 深堀絵梨 (dance)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Rutsuko Kumasaka 熊坂路得子 (accordion)
Kazuhiro Tanabe 田辺和弘 (b)
Miyama McQueen-Tokita マクイーン時田深山 (十七絃箏)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (composition)
Naoki Kita 喜多直毅 (music director)

自閉症をテーマにしたタンツテアター(ダンス演劇)。初演は2016年、ジャン・サスポータスが齋藤徹らと協力して上演を繰り返してきた作品であり、2020年の再演予定がコロナ禍のため今回ようやく実現した。徹さんがいない世界、音楽家としてはマクイーン時田深山、田辺和弘、熊坂路得子の3人が加わった。

コミュニケーションの不毛とかんたんに言うよりも広範な問題意識があり、これを観る自分の言動に照らしてもどきりとさせられる。対話の相手は虚空であり、仮想の自分であり、仮想のなにものか。自らサングラスやモバイル機器で対話が閉じたものになされてもいる。そして機能不全に陥ったときに水の入ったコップを持たせると治癒されるように、ディスコミュニケーションにもコードがある。あるいはコミュニケーションとディスコミュニケーションとが機能による優劣ではなく同じ場所に置かれており、それにより表現が浸透力を持っているのかもしれない。音楽家がステージ四隅から世界に貢献し、ときおり世界に介入するあり方もよかった。世界を縁でつなぎとめるのは小さな個人の愛情。

終わったあとにジャンさんとロジャー・パルバースさんとのトークがあった。今回ジャンさんはダンサーとしてではなく振付と演出で参加したわけだが、それでもステージ上に出てきて指示し、作品の一部となるありようは、タデウシュ・カントールも意識したのだとのこと。

そして近くのちゃんこ店でジャンさんと話した。ジャンさんもダンサーとして協働したピナ・バウシュは完璧主義者であり、ペーター・ブロッツマンとも共演したが演出が予定外に揺らぐことを嫌うピナは即興音楽との親和性がなかった(このあたりは『齋藤徹の芸術』に書いた)。だがピナのカンパニーにはさまざまな指向性を持つ者がおり、ジャンさんもこのように即興とのコラボレーションを続けている。コントラバス奏者でいえばペーター・コヴァルトは即興指向が非常に強く、徹さんは即興と曲の両方をみていた、と。

●齋藤徹
齊藤聡『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』(2022年)
森田志保『徹さんの不在』(Dance Vision 2021 feat. 齋藤徹)@アトリエ第Q藝術(2021年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2021年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
『Sluggish Waltz スロッギーのワルツ』(JazzTokyo)(2019年)
ジャン・サスポータス+矢萩竜太郎+熊坂路得子@いずるば(齋藤徹さんの不在の在)(2019年)
松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)(2019年)
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
齋藤徹+沢井一恵@いずるば(JazzTokyo)(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
ミシェル・ドネダ+フレデリック・ブロンディ+齋藤徹『Spring Road 16』(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


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