某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

死刑減刑の訳ーデ・ヴァレラ減刑の謎

2016-02-04 13:19:59 | アイルランドの今日



 ほぼ百年前に独立したアイルランドに最も英雄的な政治家として君臨し、首相や大統領を歴任したのは故デ・ヴァレラ氏であった。彼はダブリンで百年前に起きた復活祭蜂起で工場を占拠し、蜂起軍の部隊を指揮し、降伏後軍事裁判で死刑を宣告された。しかし何故か減刑されて終身刑となり、翌年解放されて帰国。独立運動のリーダーとして活躍した。
 何故減刑されたか。彼はアメリカ合衆国生まれでアメリカ市民権をもっていたから、というのがこれまでの定説だった。この話は、しかし、アメリカのさる新聞が書いた記事によるらしい。根拠は特にしめされていない。ところがデ・ヴァレラ自身もそのようにいう事が多かった。特に独立戦争中アメリカ合衆国で支援募金の為の活動を続けていた時とケネディ大統領がアイルランドに「里帰り」したとき。ケネディに「貴国のおかげで助けられた」と再三語っていたという。募金行脚の折も、アメリカのお陰で私は死刑を免れた、と再三語り、アメリカ人の共感と多くの支援をえた。
 3歳までアメリカにいたと言うだけの名もなき一介の独立運動家の処刑をイギリスがアメリカに配慮して減刑するだろうか。私は前からちょっとおかしいと疑問視していた。日本と違って欧米では複数の国の市民権を持っている人は珍しくない。処分は「犯行」のあった国で行われる。
 デ・ヴァレラ自身は後に「減刑されたのは、裁判(判決)が一番後に行われたからだ」と書いている。彼ともう一人の判決は最後だった。「死刑」だが、イギリス政府の残酷さ(連日の銃殺刑)に対する非難が内外で多くなり、処刑中止を首相が命じたと言う。デ・ヴァレラを名指したわけではなかった。
 最近出された研究をアイルランドのIndependent紙が記事にしている。もしデ・ヴァレラが自分で信じていない「アメリカのおかげで減刑」という話を、募金やケネディのために、「利用」したのだとしたら。これが政治なのかもしれないが。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 哲学堂のお陰です。田口哲夫... | トップ | 19年ぶりの金メダル回復。オ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アイルランドの今日」カテゴリの最新記事