某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

サマータイム余話―失なわれた25分

2014-10-27 02:09:31 | アイルランドの今日
 はたから見ればたいした事ではないが、当事者には誇りを傷つけられた大事件という事が良くある。アイルランドが1916年にイギリスに25分時間を奪われたというのも、アイルランド愛国者には許しがたい暴挙と記憶されている。正確に言うと、復活祭蜂起の女性闘士コンテス・マーキエヴィッチがイギリスの時間強奪を怒って書いた手紙が最近発見されたという話。
 イギリスでは19世紀後半まで日の出日の入りを基準にして地域別に時間を決めていた(日本も同じ)。しかし、それでは鉄道の運行や電信の時間設定などに非常な困難が生ずるので、1880年にグリニッジ標準時が法令で定められた。しかし、アイルランドはダブリン標準時でグリニッジより約25分遅いローカル時間を採用していた。
 第一次世界大戦の最中、1916年5月1日にドイツは時計の針を1時間進めてエネルギーの節約を図った。今の「夏時間」の始まり。イギリス・フランスなども皆一斉に同じ「夏時間」を実施した。しかし冬は暗くて「夏時間」に意味がないから、同年10 月1日、針を1時間遅らせてグリニッジ標準時に戻した。この時、イギリスはアイルランドにもグリニッジ標準時を適用した。それまで25分遅れていたのだから、アイルランドは35分しか戻せない。つまり25分失ってしまった。
 たかが25分、と私などは先ず思ってしまうが、この1916年の4月にダブリンの蜂起があり、5月には指導者ら15名が銃殺され、反英の世論が湧きたってきていた。アイルランドにも徴兵制が実施されるというのでますます反英気分は高まっていた。そのような状況だから、「イギリスは時間まで奪うのか」となったわけだ。
 ダブリンの蜂起についてはいままで色々調べたり考えたりしてきた。しかし、ヨーロッパでの「夏時間」の始まりが蜂起と同じ年だったとは知らなかった。しかもそれが戦争遂行の為の工夫だったとは! アイリッシュ・タイムズの記事に、10月1日に時間をグリニッジ標準時に戻したため25分失った、とあって「おや?もしかして夏時間?」と調べてみてわかった。俺は全く何も知らないな。

  

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