某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

与謝野晶子「駄獣の群」

2011-08-15 15:36:36 | ぼやき
 14日(日)の朝日に、与謝野晶子のこの詩を田中康夫が「社会保障一体改革」会議での発言で引用したと紹介してあった。大正4(1915)年12月に読売新聞に発表されたものだという。私はこの詩も田中氏の発言も知らなかったので、遅まきながら調べてみた。いや大変な詩だ。「君死にたもうことなかれ」以上かもしれない(晶子の孫「与謝野氏への嫌がらせだ、撤回し謝罪しろ」と仙石官房副長官が怒ったというおまけまでついている。)今まで知らなかったのが恥ずかしい。知らない方もおられるか、とここに先ず掲載する。インターネットで簡単に調べられるし、ご存知の方々も多いと思う。でも、私のお節介を怒らないでください。

 与謝野晶子「駄獣の群」

ああ、此国の/怖るべく且つ醜き/議会の心理を知らずして/衆議院の建物を見上ぐる勿れ。/禍なるかな、/此処に入る者は悉く変性す。/たとへば悪貨の多き国に入れば/大英国の金貨も/七日にて鑢にて削り取られ/其正しき目方を減ずる如く、一たび此門を跨げば/良心と、徳と、理性との平衡を失はずして/人は此処に在り難し。/見よ、此処は最も無知なる、/最も悖徳なる、はた最も卑劣無作法なる/野人本位を以て/人の価値を最も粗悪に平均する処なり。/此処に在る者は/民衆を代表せずして/私党を樹て、/人類の愛を思はずして/動物的利己を計り、/公論の代わりに/私語と怒号と罵声とを交換す。/此処にして彼等の勝つは/固より正義にも、/聡明にも大胆にも、雄弁にもあらず、/唯だ彼等互いに/阿附し、/模倣し、/妥協し、/屈従して、/政権と黄金とを荷ふ/多数の駄獣と/みづから変性するにあり。/彼等を選挙したるは誰か、/彼等を寛容しつつあるのは誰か。/此国の憲法は/彼等を逐ふ力無し、/まして選挙権なきわれわれ大多数の/貧しき平民の力にては・・・/かくしつつ、年毎に、/われわれの正義と愛、/われわれの血と汗、われわれの自由と幸福は/最も醜き/彼等駄獣の群に/寝藁の如く踏みにじらるる・・・ 

 最近の出版物では、入江春行『与謝野晶子とその時代』新日本出版社 2003年刊 にこの詩がのっているらしい(私はまだ読んでいないが。)

 大正デモクラシーと言われ、なにやら良さそうな「良い時代」にこのような激しい詩が発表されていることに驚く。それも選挙権を奪われている女性が、男ども何をやているんだ、と激しく叱りつける口調で書いているから迫力がある(まだ普選の時代ではないから貧乏な平民男子にも選挙権はなかった)。勿論、この批判は「政党の腐敗堕落批判、昭和維新」へとゆがんで行く危険もある。しかし、これを現今の議会の泥試合批判と読み替えて見ると、田中康夫ならずとも引用し一撃を加えたくなる。百年近い昔の女性の詩がこれほど現代批判になっているとは。偉いものだ。「私語と怒号と罵声」。議会中継で皆驚くのは今でもこれだ。「政権と黄金」「悪貨は良貨を駆逐する」今も全く同じ批判を多くの方が持っている。「あの人当選するまでは凄く良い人だったのにね」と。だが、彼らを選んだのは誰だったか。
 「騙された」では済まない。「戦争中は騙された、戦後も騙された、原発でも騙された。」そういう素直さが日本の政治を駄目にしているということに、もう気づくべきだろう。「騙した奴が悪いのか、騙された奴が馬鹿なのか。」ただの馬鹿で済むならいいけれど、加害者になっちまう。
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