素晴らしきヒコーキ野郎 羽生善治vs広瀬章人 2011年 第52期王位戦 第6局

2022年09月18日 | 将棋・名局

 が乱舞する将棋は楽しい。

 角という駒は、同じ大駒でも、わかりやすく攻撃力が高い飛車ほどには、使いやすくないところがある。

 だが、その分というわけでもないが、急所に設置すれば、その「位置エネルギー」によって、爆発的な威力を発揮し、一撃で相手陣を破壊できることもある。

 

 「飛車のタテの攻めは受けやすいが、角のナナメのラインは受けにくい」

 

 という格言もあるほどで、ある意味「腕の見せ所」が試される駒でもあるのだ。

 そこで今回は、そんな角が激しく舞う空中戦を見ていただきたい。

 

 2011年の第52期王位戦

 広瀬章人王位に、羽生善治王座棋聖が挑戦したシリーズは、広瀬の2連勝スタートから、3勝2敗と防衛に王手をかける。

 むかえた第6局も、序盤から広瀬が巧みな指しまわしを見せ、作戦勝ちに持っていくことに成功。

 

 

 

 図は羽生が△45銀と進出させたところだが、ここで広瀬が巧みな構想を披露する。

 

 

 

 

 

 

 ▲64歩と突いたのが、筋のよい好手。

 後手が進撃させてきたにねらいをつけた、見事なカウンターだ。

 羽生は△33桂とヒモをつけるが、▲65銀とこっちも繰り出していく。

 △64歩に、さらに▲74銀と出て、△73歩と打たせた形は、後手のがまったく使えなくなり、気持ちいいことこの上ない。

 そこから、数手進んで、この場面。

 

 

 

 

 △82がヒドイ形で、羽生がいかにも苦しそうだが、実は後手陣には、もうひとつ不備があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ▲78角と打つのが、あざやかな遠見の角。

 これで、後手は△23の地点を受ける術がない。△22飛には▲34歩が、きびしすぎるのだ。

 まるで、天野宗歩升田幸三という、見事な角使いで広瀬が才能を見せ、これには控室も、

 

 「早い終局もあるのでは」

 

 広瀬防衛が濃厚のような空気になったそうだが、なかなかどうして、羽生はそんなやわなタマではない。

 広瀬によると、一見妙手の角打ちは悪手で、ここからの羽生の構想に舌を巻くことになる。

 

 

 

 

 △94歩と、裏窓からのぞいていくのが、しぶとい手。

 以下、▲23角成に、△93角と活用し、▲79飛△66角とぶん回していく。

 ▲77桂△56歩と突いて、いやらしくカラんで、先手も気持ち悪い。

 

 

 

 

 あの眠っていたを、ここまで活用できる腕力はさすがの羽生。

 以下、▲56同歩△25桂と跳ねて、やや不利ながらも、これで後手も勝負形に持ちこむことができた。

 

 

 

 

 そこからも熱戦は続いて、この△37角とブチ込んだのもスゴイ手。

 この手が好手かどうかや、実際の形勢判断などまったくわからないが、羽生の「負けてたまるか」という、ド迫力な戦いぶりは伝わってくる。

 そこからも、ねじり合いを制して、羽生がタイスコアに押し戻す。

 最終局でも「振り穴王子」の穴熊を、木っ端みじんに吹き飛ばし、23歳で王位を獲得し、「神の子」と呼ばれた広瀬章人からタイトルを奪取するのだった。

 

 ■おまけ

 (「振り穴王子」と「広瀬王位」誕生まではこちら

 (その他の将棋記事はこちらから)


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