テニス 地味……もとい「いぶし銀」プレーヤー列伝 マーク・ウッドフォード編

2019年04月18日 | テニス

 テニス地味な選手を見ると、つい応援したくなる癖がある。

 ロジャーフェデラーラファエルナダルといったスター選手の活躍もいいが、やはり玄人のテニスファンとしては、それ以外の選手も大いに語りたいもの。

 なので、グランドスラム大会などで、そういった渋い選手が上位進出して皆をガッカリ……もとい大会を盛り上げたりすると、たいそう印象に残るのである。

 たとえば、1996年オーストラリアンオープンマークウッドフォード

 テニスの世界には「ダブルススペシャリスト」という選手が存在する。

 テニスにはご存知のようにシングルスとダブルスがあるが、メインははっきりいってシングルス

 正直なところダブルスはあまりクローズアップされず、ドロー的にもルール的にも縮小されがち。ダブルス観戦も好きな私には残念なことだ。

 かつてはジョンマッケンローマルチナナブラチロワのような、単複両方でトップに立つ選手もいたものだが、昨今のタイトなスケジュールが問題化されているテニス界では、なかなか両立も大変である。

 ゆえにシングルスとダブルスは分業化がいちじるしいわけだけど、ときに



 「ダブルスのトップを張って、シングルスでもそこそこ上位につけている」



 そういった選手が存在するわけだ。

 今ならニコラマユとか、ジャックソックイワンドディグあたりが思い浮かぶが(彼らも地味だなあ)、一昔前だとトッドウッドブリッジマークウッドフォードによる「ウッディーズ」も、そんな選手たちだった。

 トッドとマークのふたりは、とにかくダブルスで強かった。

 通算67勝グランドスラム大会優勝12回。マークはミックスダブルスでも、グランドスラムを5度優勝している。

 アトランタ五輪でも金メダル。「ダブルスが命」といわれるデ杯でも大活躍した、強すぎる二人。

 これらはのちにブライアン兄弟があらわれるまで、テニス界に燦然と輝く大記録だったのだ。

 そんな無敵のウッディーズだが、シングルスでも魅せる機会があったのが、この1996年の全豪。

 ここでウッドフォードが、すばらしい進撃を披露したのだ。

 準々決勝では、優勝候補の一人だったトーマスエンクヴィスト(彼もまた相当地味な実力者であった)をストレートで沈めて、堂々のベスト4
 
 準決勝では優勝したボリスベッカーに完敗したが、地元オーストラリア勢の大活躍に会場は大いに沸いたものだった。

 この2試合で見せたウッドフォードのテニスというのが、ずいぶんとおとなしいテニスだったのが意外だった。

 サウスポーでダブルスのエキスパートとなれば、それこそジョン・マッケンローのごとく切れるサービスを打ちこんで、どんどんネットダッシュを見せるのかと思いきや、彼はベースラインでねばるスタイルも多く見せていたのだ。

 特にバックハンドは丁寧なスライスでつないで、相手との間合いをはかっていくテニス。

 ビッグサーバー全盛の時代にずいぶんと優雅というか、なんだかオーストラリアの大先輩であるケンローズウォールロッドレーバーといった雰囲気だ。

 こういう「大人のテニス」が見られるのが、ダブルスのスペシャリストの味なのかもしれない。

 ちなみに、相棒のトッド1997年ウィンブルドンではベスト4に入る大躍進を見せている。

 ダブルス最強で、シングルスでも魅せたウッディーズ。

 特にマークの活躍は、彼のいかにも人のよさそうな風貌も相まって、たいそう印象に残っている。

 私は地味な選手とともに

 

 「シングルスでたまに活躍するダブルスのスペシャリスト萌え」

 

 でもあるので、96年の全豪はその意味でも、大いに盛り上がったのであった。

 

 

 (続く→こちら



 ★おまけ ウッドフォードの渋いテニスは→こちらから



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