サンドラ・ヘフェリン&流水りんこ『満員電車は観光地!?』を読む。
日本とは違う外国の風習や考え方、はたまた日本人が自分たちでごく普通にやっていることが、いかによそさんからは「不思議」と思われているかなどを、楽しく紹介するというもの。
著書『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』で、我々がついつい、おちいりがちである
《ハーフは美人》
《ハーフは金持ち》
《ハーフは英語がペラペラ》
といった「安易なハーフ像」に警鐘を鳴らしておられる、自身もドイツ人とのハーフであるサンドラさん。
また、元バックパッカーで夫がインド人。『インドな日々』などの著書もあるマンガ家、流水りんこさん。
おふたりとも、その背景から異文化や自文化に対して、いい感じに相対化されており、そこに絶妙な「つっこみ力」が生まれる。
そんなコンビの作品なので、まあこれがなんとも楽しいのである。
「和製英語は日本のものだけ」と思われがちだが、ドイツにも和製じゃないけど「独製英語」が存在する、とか。
日本のCMは「お母さん、お風邪だいじょうぶ?」みたいな、「母娘」ものが多いが、ヨーロッパはとにかくカップルが登場。
「その割には、ヨーロッパ人はパートナーをコロコロ代えたりしますからねー」
なんて、サンドラさんのミもフタもないツッコミが入ったり。
他にも、
「日本はエロコンテンツが充実してるのに、ニュースサイトなどはエロNGなのはなぜ?」
「日本人はツイッターやフェイスブックに食べ物の写真を載せたがるが、ヨーロッパ人には意味不明。でも、アジアは意外とどこでも日本と同じ傾向がある」
なんて、「そうなんかー」と思わされるネタが満載。
個人的にツボだったのは、「外国人が好む日本の曲」というテーマ。
答えは「演歌」で、サンドラさん曰く、
「演歌の良さがわかって感情移入できる文化圏」
というのがあるらしく、中国、韓国、ベトナムなどアジア全般とイスラム圏(これは高橋由佳利さんの『トルコで私も考えた』にもあった話。ただし歌詞に「酒」がある曲はダメらしい)などがそうだが、反対にサッパリなのが北ヨーロッパ。
「えー、寒い港町で戻らない男を待ってセーターを編むって生産性ないよね」
「彼女は暖かい場所に引っ越すべき。毛糸ムダになるけど」
「海鳴りがひどいと不眠症になって体壊すよ」
いやいや、聴くとこそこやない! と。
まあ、私も昭和の日本の演歌(あと一部のアイドルソング)にある
「男の作家が自分のイメージする勝手な女性像を歌詞にして、それを女に歌わせる」
というオジサンっぽい(かつ、なんとなしにSMっぽい)ノリは苦手ですけど。
あと、ちょっとほっこりしたのが、パキスタンの女性の話。
とある曇り空の日。彼女は今にも降り出しそうな空を見ながら、こう言ったそうだ。
「素敵な日ね。すごくロマンチックな空……」
カンカン照りの日が多いパキスタンでは、日本の曇天が、ものすごくロマンチックに映るそうです。
まさに、所変われば品変わる。ホント、同じものを見ても、文化圏が違うと、こうも受け取り方も違うのだ。
だから、自国や他国の文化を知るのはおもしろい。
雨の日のお出かけや仕事というのは、どうしても気鬱になりがちだが、そういうときは、
「でも、パキスタンの女の子は、これを見てウットリしてるのかもしれへんのやなー」
なんて考えてみると、ちょっとばかり楽しくなったりするではないですか。