大伴昌司『怪獣図解入門』 その3

2014年01月06日 | オタク・サブカル
 前回(→こちら)、前々回(→こちら)に続いて、大伴昌司『怪獣図解入門』を読む。

 他のブログやツイッターでは、新年の抱負や初もうでの写真など載せているところに、


 「チブル星人のチブル脳 知能指数5万 銀河系のあらゆる知識を記憶している」


 みたいな話をしている私。2014年度もますます絶好調である。

 そんな夢とハッタリでいっぱいの『怪獣図解入門』だが、中にはどういうねらいなのかよくわからない、妙ちきりんな記事もあったりする。

 シュールとでもいうのだろうか、おそらくは「レッドキングの脳 レッド脳」みたいなことばかり書いているうちに、大伴昌司も

 「さすがに、こればっかりではあんまりやな……」

 と、良心の呵責のようなものをおぼえたのではないか。

 そこで、多少は変化をつけようとがんばってみたのだが、それがまた迷走して不思議なことになってしまっている。

 たとえば、『帰ってきたウルトラマン』に出てきた怪獣シュガロンの脳は「シュガロンレインボー脳」であり、その特徴は、


 「芸術的センスであふれている」。


 意味不明だ。一応ストーリーでは牛山画伯という絵描きの魂が乗り移ったのかもという設定があるが、それにしても、どこかずれた解説だ。せめて「人間の絵描きが乗りうつったから」とか加えておいてほしい。

 よくわからないといえば、『エース』に出てきたベロクロンの「ベロクロミサイル心臓」で、


 「ミサイルのもとになる液体をつくる」。


 どこからつっこみのメスを入れるべきか、非常に悩ましいフレーズである。

 ミサイルを液体から作るというのもすごいが、製造場所が心臓というのもソリッドな発想だ。感心していいのかどうか、まったくわからない。

 同じようなものに、


 「ジャミラ心臓 100万度の血液をつくり出す」


 そんなに熱かったら、ウルトラ水流ごときあっという間に蒸発させて効果がないと思うが。そもそも、ジャミラは元は人間なのに、ようそんな体質になったものだ。

 シュールといえば、この怪獣ははずせまいブルトン。

 ネーミングからしてアンドレ・ブルトンから取っているんだから(ちなみにダダも「ダダイズム」から来てます。昔の人はインテリですね)、やっぱり変わった怪獣。

 本編でも戦車を空に飛ばして、飛行機を地面に走らせたりと、おかしなことをやってウルトラマンを幻惑させたけど、そのブルトンの「ブルトン脳」というのが、


 「人間の腸のように長く、東京、静岡間もある」


 なんとなく、リアリティーがあるようなないような記述。さらに続けて、


 「すぐれた考えと、悪い考えがまじっている」


 「そうなのか……」としかいいようがない。まあ、人間だってたいていはそういうもんだと思うが。

 脳といえば、「ゴーストロン空気脳」の


 「なにもつまってないので、小さなおとでもひびく」


 とか、「ウー脳」の


 「雪の伝説をよくおぼえている」


 といった、やはりすごいのかどうか理解に苦しむ記述もステキだ。「よくおぼえている」って、それはただの記憶力のいい人だろ!

 なにかこう、一時期ブレイクした「点取り占い」に通じるわびさびさがある。

 独特の文体というか、俳句や短歌に通じるリズム感というか、ここまでくると、ほとんど「文学」のような気さえしてくる。

 この空気感にハマると、かつて栄えた「昭和特撮文明」から引き返せなくなる。

 怪獣アントラーの「砂あらし管」の注釈に「アントラー管ともいう」とあるのに、

 「その付け加えは、本当にいる?」

 とすかさずつっこめるようになれば、あなたも「大伴昌司 初段」の免許皆伝であろう。

 その勢いで現在、洋泉社のムック『円谷怪奇ドラマ大作戦』を読んでいる。表紙裏ピンナップの岸田森がシブすぎる。私の2014年も万全の充実ぶりといえよう。


コメント
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