前回(→こちら)の続き。
高校の修学旅行で、「女装パーティー」をやることになった、我が大阪府立S高校2年B組。
我が校は第二次大戦のことを「太平洋戦争」でも「大東亜戦争」でもなく、「大祖国戦争」と呼称するような思想的におもしろい学校だったので、前の年までは修学旅行でも「討論」「総括」「自己批判」といったイベントが行われていた。
他校の生徒が沖縄や北海道でバカンスをエンジョイしているのをよそに、宿で夜中まで、
「○○君はいつも制服の着方がだらしない。アメリカ資本主義の奴隷です!」
などと議論し合っているというのは、なかなかに素敵な青春であった。
それが、次の年には「女装パーティー」。まあ、S高を仕切っていた思想的におもしろい先生方が異動でいなくなったせいもあるのだが、それにしても急激に軟弱である。反動というのはおそろしいものだ。
それはともかく女装であるが、衣装や化粧などはすべて女子が持ってくることになっていた。女子が企画したのだから当然だが、やたらと張り切っているのが印象的だった。
「一回、やってみたかったんだ」とか「あたし、弟に化粧して遊んだことある」とか、ずいぶんと楽しそうである。どうも、女装というのは女子の琴線にふれるなにかがあるらしいのだ。よくわからんけど。
修学旅行当日。いよいよパーティーの開始。男子一人に女子一人が担当として付き、女子の見立てや本人の希望などから服や化粧など選んでいく。
さてこのイベント、一見女子の体のいいおもちゃにされているようで、私は、いやクラスの男子たちは密かに楽しみにしていたのである。
というのも、みな口には出さないが
「いざやってみると、オレってマジでかわいいんじゃないの」
と思っていたからだ。特に、ビジュアルに自信のある男子はそうである。
不肖、この私もちょっとだけそういう期待があった。
というのも、私は子供のころ、自分でいうのもなんだがめちゃくちゃに愛らしい子供であったのだ。
というと、「お前のどこがやねん」と鼻で笑われそうだが、これが嘘ではないから世の中はコワイ。なんといっても、子供のころの私は近所のショッピングモールの洋服モデルなどつとめていたのである。
ムチャクチャ生意気なガキである。その写真は今でも残っているが、子供用の礼服など着て笑顔で写っていやがる。女の子と手を組んで、舞台でポーズなど取っていて今となっては信じられないリア充っぷりである。おいおい、お前ホンマにワシかいな。爆発しても知らんよ。
さらには、子役タレント事務所からスカウトの電話もかかってきたことがあるという、嘘のような本当の話もあったりして、どうも私が人並みはずれてかわいい子であったことは相当に間違いはない。世の中には、まだまだ不思議なミステリーが点在している。
そんな私であったため、
「女の子の格好をすると、なんだかすごいことになるのでは」
などとついつい考えてしまったのも無理はあるまい。もしかしたら、あまりの妖艶さに何かが「目覚めて」しまうのではないかなどとドキドキしたりしていた。
担当になったのはイシズミさんという女の子で、私はマンガ好きの彼女に少女マンガを借りて読んでいたりしたので、
「大島弓子の『綿の国星』に出てきた須和野チビ猫みたいにお願いします」
などとかなり具体的にリクエストしたりした。
そしていよいよ結果発表。様々な装いで登場する我々女装男子。キャリアOL風あり、女子に制服であるセーラー服を借りたものあり、当時まだいたワンレンボディコンあり。
しかしどれも「いろいろ失敗した残念なニューハーフ」といった域をを出ておらず、私は勝利を確信した。間違いなく私がこの店……じゃなかった、このクラスでナンバーワンの美女であろう。
そんな思い出もあったりして、昨今の「男の娘」ブームはそんな昔のことを楽しく思い返したりして、たいそうなつかしい気持ちになったのだった……。
……て、おいおい、そこで終わりかい。肝心のお前の女装の結果はどうだったのかと意見に関しては、一応その写真は残っているものの私の基本的人権のためにここはひとつ非公開ということにしたい。
結論としては、
「まあ、笑いを取れたからオッケー」
と、前向きな解釈をすることによって、今後につなげたいところである。
高校の修学旅行で、「女装パーティー」をやることになった、我が大阪府立S高校2年B組。
我が校は第二次大戦のことを「太平洋戦争」でも「大東亜戦争」でもなく、「大祖国戦争」と呼称するような思想的におもしろい学校だったので、前の年までは修学旅行でも「討論」「総括」「自己批判」といったイベントが行われていた。
他校の生徒が沖縄や北海道でバカンスをエンジョイしているのをよそに、宿で夜中まで、
「○○君はいつも制服の着方がだらしない。アメリカ資本主義の奴隷です!」
などと議論し合っているというのは、なかなかに素敵な青春であった。
それが、次の年には「女装パーティー」。まあ、S高を仕切っていた思想的におもしろい先生方が異動でいなくなったせいもあるのだが、それにしても急激に軟弱である。反動というのはおそろしいものだ。
それはともかく女装であるが、衣装や化粧などはすべて女子が持ってくることになっていた。女子が企画したのだから当然だが、やたらと張り切っているのが印象的だった。
「一回、やってみたかったんだ」とか「あたし、弟に化粧して遊んだことある」とか、ずいぶんと楽しそうである。どうも、女装というのは女子の琴線にふれるなにかがあるらしいのだ。よくわからんけど。
修学旅行当日。いよいよパーティーの開始。男子一人に女子一人が担当として付き、女子の見立てや本人の希望などから服や化粧など選んでいく。
さてこのイベント、一見女子の体のいいおもちゃにされているようで、私は、いやクラスの男子たちは密かに楽しみにしていたのである。
というのも、みな口には出さないが
「いざやってみると、オレってマジでかわいいんじゃないの」
と思っていたからだ。特に、ビジュアルに自信のある男子はそうである。
不肖、この私もちょっとだけそういう期待があった。
というのも、私は子供のころ、自分でいうのもなんだがめちゃくちゃに愛らしい子供であったのだ。
というと、「お前のどこがやねん」と鼻で笑われそうだが、これが嘘ではないから世の中はコワイ。なんといっても、子供のころの私は近所のショッピングモールの洋服モデルなどつとめていたのである。
ムチャクチャ生意気なガキである。その写真は今でも残っているが、子供用の礼服など着て笑顔で写っていやがる。女の子と手を組んで、舞台でポーズなど取っていて今となっては信じられないリア充っぷりである。おいおい、お前ホンマにワシかいな。爆発しても知らんよ。
さらには、子役タレント事務所からスカウトの電話もかかってきたことがあるという、嘘のような本当の話もあったりして、どうも私が人並みはずれてかわいい子であったことは相当に間違いはない。世の中には、まだまだ不思議なミステリーが点在している。
そんな私であったため、
「女の子の格好をすると、なんだかすごいことになるのでは」
などとついつい考えてしまったのも無理はあるまい。もしかしたら、あまりの妖艶さに何かが「目覚めて」しまうのではないかなどとドキドキしたりしていた。
担当になったのはイシズミさんという女の子で、私はマンガ好きの彼女に少女マンガを借りて読んでいたりしたので、
「大島弓子の『綿の国星』に出てきた須和野チビ猫みたいにお願いします」
などとかなり具体的にリクエストしたりした。
そしていよいよ結果発表。様々な装いで登場する我々女装男子。キャリアOL風あり、女子に制服であるセーラー服を借りたものあり、当時まだいたワンレンボディコンあり。
しかしどれも「いろいろ失敗した残念なニューハーフ」といった域をを出ておらず、私は勝利を確信した。間違いなく私がこの店……じゃなかった、このクラスでナンバーワンの美女であろう。
そんな思い出もあったりして、昨今の「男の娘」ブームはそんな昔のことを楽しく思い返したりして、たいそうなつかしい気持ちになったのだった……。
……て、おいおい、そこで終わりかい。肝心のお前の女装の結果はどうだったのかと意見に関しては、一応その写真は残っているものの私の基本的人権のためにここはひとつ非公開ということにしたい。
結論としては、
「まあ、笑いを取れたからオッケー」
と、前向きな解釈をすることによって、今後につなげたいところである。