大伴昌司『怪獣図解入門』

2014年01月02日 | オタク・サブカル
 大伴昌司『怪獣図解入門』を読む。

 子供のころから本と怪獣大好きであった私が、生まれて初めて手に取った書物というのが、この『怪獣図解入門』である。

 読書好きにとって、書物とのファーストコンタクトというのはいつまでも思いで深いもので、ミステリ作家の北村薫先生などはヨーロッパの民話集を読み、なんとそれで自作のアンソロジーを作って遊んでいたそうだが、私の場合は怪獣もの。

 それも、よりにもよって大伴昌司であるとは、三つ子の魂なんとやらというか、私の因果な人生はすでにこのときからはじまっていたようである。ご愁傷様としかいいようがない。

 そんな思い出深い本書が平成版として復刻されているというので、さっそく読み返してみることにしたが、これが昔の印象と変わらず、なかなかにハッタリのきいた内容であるのには、うれしくなってしまった。

 昨今は、オタク文化の一般化により特撮やアニメに関しても、かなり詳細な設定集や研究本があまた売られている。

 だが、昭和の時代というのは、今のような充実したメディアなど望むべくもなく、全体的にかなりアバウトなシロモノであった。

 それはこの『怪獣図解入門』をひもとけば随所に見られる。本書はウルトラシリーズの人気怪獣のイラストにお腹や足などの部分解剖図を添付。それにより、怪獣を内部構造から考察していこうという作りになっている。

 そこで、たとえば「どくろ怪獣レドッキング」の章では、レッドキングの図解とともに、人間でいえば「前頭葉」とか「腎臓」「ハムストリング」といった身体機能を説明してくれるわけだが、そこでのネーミングというのが、


 レッドキングの脳=「レッド脳」。


 大伴、仕事をやる気があるのか?


 レッドキングの脳みそだからレッド脳。

 「ジーパンをはいているから、今日からおまえはジーパン刑事だ」

 といい放った七曲署のボス並のストレートすぎるネーミングセンスである。

 以下、レッドキングの内部というのは、


 鼻=レッド鼻
 歯=レッド歯
 心臓=レッド心臓
 胃=レッド胃
 つめ=レッドつめ
 尾=レッド尾
 うろこ=レッドうろこ



 と、怒濤のレッド攻勢。

 しかもその説明が


 「レッド脳 あまりかしこくない」


 みたいなもんだから、ステキだ。ますます「大伴、仕事やる気あるのか?」であろう。シンプル・イズ・ザ・ベストという言葉では表現しきれない、ある意味いさぎよい仕事っぷりであるといえるかもしれない。

 他にも、あまりにも有名な、


 「ゼットン火の玉は1兆度」


 とか(出た瞬間地球が燃え尽きると思われる。それでも壊れない科特隊の基地ってすごい)、


 「ネロンガ目 ヘッドライトの54倍の明るさ」


 とか(すごいのかどうかよくわからん!)、


 「怪獣オクスターの胃 オクストマック」


 とか(それはただのダジャレだろ!)といった、味のありすぎる記述がいっぱい。

 ハッキリ言って適当この上ないが、資料的充実著しい現代では決して望めないこのいい加減さは妙なパワーがあり、なんともいえず引き込まれる。

 さすがは大伴昌司、玄人の仕事だ。

 それにしても2014年早々こんな本を読んでいる私の人生は大丈夫なのか。今年もまた、一般ウケから「遠く離れて地球に一人」になりそうな予感がビシバシ、嗚呼。

 というわけで、みなさま、あけましておめでとうございます。どうか今年度も当ページをよろしくお願いいたします。


 (続く【→こちら】)





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