前回(→こちら)に続いて、大伴昌司『怪獣図解入門』を読む。
昨今では、山本弘さんの『MM9』など、こういった架空の生物だからこそ、あえて科学的生物学的にリアリティーを持って設定を作るというのが主流だが、昭和の時代の特撮にそんな姿勢など皆無である。
そこには全編「その場の思いつきとハッタリ」で埋めつくされており、今読むとなんともいえず味わい深い。
また、そんな本を新年度一発目に持ってくる私もさすがであるといえよう。攻める姿勢を常に忘れない。まさに、2014年早々のロケットスタートである。
怪獣といえばまず語られるべきは、そのおそろしいパワーであろう。
一撃で高層ビルを破壊する凶悪怪獣たちの腕力や蹴りの力を大伴センセイは説明してくれるのだが、それがすごいのかどうか、いまひとつわかりにくい。
たとえば『ウルトラマン』に出てきたザラガスの「ザラガス尾」のパワーは
「ブルドーザー20万台分」。
すごいといえばすごいのだろうが、ブルドーザー20万台というのがピンとこない。
同様にテレスドンの「テレス尾」は
「ブルドーザー10万台分」
いきなり半額の安値である。
テレスドン、しょぼいな。いや、10万台でも強いんだろうなあとは思うけど、この豪快かつ適当な数字のあつかいが味である。
怪彗星ツイフォンから降りてきたドラコの「ドラコ腕」は、
「インド象10万頭分」
だから、すごいのかどうか、よくわかんないってば。
さらに味なのが、ゴモラの腕力で、
「ジャイアント馬場の20万倍」
ますます、すごいのかどうかよくわからん。
20万倍といわれると、それはそれはパワフルであろうが、なぜ比較対象が馬場なのか。それは案外ショボいのではないか。
すごいといえば、腕力以外でもむやみにすごい能力は目白押しである。
たとえば『帰ってきたウルトラマン』のキングマイマイによる「マイマイふくがん」は
「地球から月に落ちた1円玉が見える」
驚天動地のスーパー視力。マサイ族も裸足で逃げ出す見えっぷりだ。
でも、キングマイマイって、そんなすごい怪獣だったかなあ。ちなみに、こいつが脱皮するとパワーアップして「ストロングマイマイ」になる。
なんか、かわいいぞ。
よくアイドルなどで「麻衣」とか「舞」なんて子がいたら、ニックネームが「まいまい」になったりするが、私にそういう名前のガールフレンドが出来たら、まちがいなくこう呼ぶね。ストロングマイマイ。
またメフィラス星人の「メフィラス目」は
「5万光年はなれたところの音が聞こえる」
って、それはもうとんでもなくはるか昔の音なのではとか、ビラ星人の「超高性能ビラ目」は、
「宇宙のかなた何百億光年まで見える」
ホンマかいなという話である。なにかもう、ものすごい「言うたもん勝ち」感だ。
こういうのをザーッと見ていくと、だんだんこっちの感覚もおかしくなってきて、
「タッコングひふ 水爆でも平気だ」
程度の記述では「ふーん」とばかりに、ちっとも心が動かされなくなる。「何百億光年」を出されると、今さら水爆程度ではオロオロしなくなるのだ。「普通やろ」ってなもんである。
そんな、少年ジャンプ並に「強さのインフレ」を見せている『怪獣図解入門』。
子供をグイグイ引きつけるには、とにかくハッタリでもって敵を強化していくというのは、今も昔も変わらないんだなあと、感慨深いものがあるが、そんなすっかりクールな大人の私でも「ええ?」と思わず声に出してしまったビッグなヤツがいた。
それは『ウルトラセブン』に出てきた冷凍怪獣ガンダーであり、その胃である「ガンダーアイストマック」(また胃のダジャレだ)の説明は、
「空気を氷点下1000度に冷凍する袋」
そう、科学にくわしくない人でも「絶対零度」という言葉は聞いたことがあるだろう。温度は高い方に関しては、基本的に上はいくらでもあるが、下がる方に関しては今のところ-273.15以下にはならないということになっているのだ。
そこを氷点下1000度と言い切るところが男らしい。
やはりこういうときは、「言い切ってしまう、やりきってしまう」ことが大事なのだ。なにごとも中途半端はよくないという人生の真理を、私は大伴昌司から学んだのである。
(続く【→こちら】)
昨今では、山本弘さんの『MM9』など、こういった架空の生物だからこそ、あえて科学的生物学的にリアリティーを持って設定を作るというのが主流だが、昭和の時代の特撮にそんな姿勢など皆無である。
そこには全編「その場の思いつきとハッタリ」で埋めつくされており、今読むとなんともいえず味わい深い。
また、そんな本を新年度一発目に持ってくる私もさすがであるといえよう。攻める姿勢を常に忘れない。まさに、2014年早々のロケットスタートである。
怪獣といえばまず語られるべきは、そのおそろしいパワーであろう。
一撃で高層ビルを破壊する凶悪怪獣たちの腕力や蹴りの力を大伴センセイは説明してくれるのだが、それがすごいのかどうか、いまひとつわかりにくい。
たとえば『ウルトラマン』に出てきたザラガスの「ザラガス尾」のパワーは
「ブルドーザー20万台分」。
すごいといえばすごいのだろうが、ブルドーザー20万台というのがピンとこない。
同様にテレスドンの「テレス尾」は
「ブルドーザー10万台分」
いきなり半額の安値である。
テレスドン、しょぼいな。いや、10万台でも強いんだろうなあとは思うけど、この豪快かつ適当な数字のあつかいが味である。
怪彗星ツイフォンから降りてきたドラコの「ドラコ腕」は、
「インド象10万頭分」
だから、すごいのかどうか、よくわかんないってば。
さらに味なのが、ゴモラの腕力で、
「ジャイアント馬場の20万倍」
ますます、すごいのかどうかよくわからん。
20万倍といわれると、それはそれはパワフルであろうが、なぜ比較対象が馬場なのか。それは案外ショボいのではないか。
すごいといえば、腕力以外でもむやみにすごい能力は目白押しである。
たとえば『帰ってきたウルトラマン』のキングマイマイによる「マイマイふくがん」は
「地球から月に落ちた1円玉が見える」
驚天動地のスーパー視力。マサイ族も裸足で逃げ出す見えっぷりだ。
でも、キングマイマイって、そんなすごい怪獣だったかなあ。ちなみに、こいつが脱皮するとパワーアップして「ストロングマイマイ」になる。
なんか、かわいいぞ。
よくアイドルなどで「麻衣」とか「舞」なんて子がいたら、ニックネームが「まいまい」になったりするが、私にそういう名前のガールフレンドが出来たら、まちがいなくこう呼ぶね。ストロングマイマイ。
またメフィラス星人の「メフィラス目」は
「5万光年はなれたところの音が聞こえる」
って、それはもうとんでもなくはるか昔の音なのではとか、ビラ星人の「超高性能ビラ目」は、
「宇宙のかなた何百億光年まで見える」
ホンマかいなという話である。なにかもう、ものすごい「言うたもん勝ち」感だ。
こういうのをザーッと見ていくと、だんだんこっちの感覚もおかしくなってきて、
「タッコングひふ 水爆でも平気だ」
程度の記述では「ふーん」とばかりに、ちっとも心が動かされなくなる。「何百億光年」を出されると、今さら水爆程度ではオロオロしなくなるのだ。「普通やろ」ってなもんである。
そんな、少年ジャンプ並に「強さのインフレ」を見せている『怪獣図解入門』。
子供をグイグイ引きつけるには、とにかくハッタリでもって敵を強化していくというのは、今も昔も変わらないんだなあと、感慨深いものがあるが、そんなすっかりクールな大人の私でも「ええ?」と思わず声に出してしまったビッグなヤツがいた。
それは『ウルトラセブン』に出てきた冷凍怪獣ガンダーであり、その胃である「ガンダーアイストマック」(また胃のダジャレだ)の説明は、
「空気を氷点下1000度に冷凍する袋」
そう、科学にくわしくない人でも「絶対零度」という言葉は聞いたことがあるだろう。温度は高い方に関しては、基本的に上はいくらでもあるが、下がる方に関しては今のところ-273.15以下にはならないということになっているのだ。
そこを氷点下1000度と言い切るところが男らしい。
やはりこういうときは、「言い切ってしまう、やりきってしまう」ことが大事なのだ。なにごとも中途半端はよくないという人生の真理を、私は大伴昌司から学んだのである。
(続く【→こちら】)