Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

ただの偶然ではこうはならない 『お召し列車』伊丹→岡山公演に向けて

2015-12-10 | Weblog
『お召し列車』はこの11~13日に伊丹のアイホールで上演。関西の皆さまよろしくお願いいたします。
http://rinkogun.com/the_imperial_train_Itami.html

そして17日夜に岡山市、岡山市民文化ホールで上演する。
http://rinkogun.com/the_imperial_train_Okayama.html

この劇は、岡山県瀬戸内市邑久・長島にあるハンセン病療養所に向かう列車の旅を舞台にしている。

縁というものはあるもので、私の期である岡山芳泉高校4期生の学年主任であった金光巧先生が、その後、長島にある邑久高校の分校・新良田教室の閉校時の、まさに最後の教頭先生として就任しておられた。新良田教室が二十八年前に廃校になったときの記念アルバムを見て、それを知った。

皇室の人々を運ぶ特別列車だけでなく、新良田教室に集められた新入生を運ぶ専用列車も「お召し列車」と呼ばれていた。それを知ったことが創作の動機である。
はからずして自分の故郷に関わる劇を作ってしまったわけだが、その中で、さまざまな出会いと思いがけない再会があったわけである。

そして、もちろんこの劇は、『カウラの班長会議』でその存在が描かれた、現在長島邑久光明園におられる立花誠一郎さんとの出会いがなければ存在していない。

もう一つの「偶然」もある。ほんとうにびっくりしたことだ。

少し説明が必要だ。
日本という国がハンセン病を強制隔離の必要な伝染病であると決めつけ差別的な施策を推し進めたことは事実である。ハンセン病に対する正しい知識を隠蔽し、国民に強い偏見を植え付けた。家族の一人がハンセン病者の烙印を押されて療養所に収容されると、家は派手な消毒を受け、家族は村八分にあい、親族の結婚話が破談にされるなどの差別を受けた。病者の多くは家族から絶縁された。快復して療養所を出た者も、偏見・差別を恐れ、隠れて生きていくことを余儀なくされた、という。
国は「隔離政策」を正当化し、「断種・堕胎は同意に基づくものだった」という虚偽を押し通そうとした。
多くのハンセン病患者たちがそうした「国による施策による被害」について賠償を求めて訴えたのは当然のことである。

「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」は、隔離政策を認めた「らい予防法」が、日本国憲法に違反するとして提起した国家賠償訴訟である。1998年(平成10年)7月31日、熊本地方裁判所に提訴され、2001年(平成13年)5月11日に原告全面勝訴の判決が下された。
その判決は、「ハンセン病に対する差別・偏見は古来から存在するもので国の政策とは無関係である」とする国側の主張を退け、ほぼ全面的に原告側の主張を認めたものとなった。判決は原告らの被害を「人として当然に持っているはずの人生のありとあらゆる発展可能性が大きく損なわれた人格そのものに対する被害」であるとした。
元患者たちの立場に寄り添い、除斥期間の適用も認めず、強制作業についても事実を認めた。断種・堕胎については、「被告の右主張は、入所者らの置かれた状況や優生政策による苦痛を全く理解しないものといわざるを得ず、極めて遺憾である」とまで言い切った。判決の中で、一方当事者の主張を単に斥けるのではなく、それを主張すること自体「遺憾である」と批判することは異例のことだという。
原告たちは「ようやく人間として認められた」と言い、この判決を出した熊本地方裁判所の杉山正士裁判長の名前をとり、「杉山判決」、そして「愛の判決」と呼んだ、と聞く。
日本政府は控訴を検討したが、正当な理由を見いだすことができず、5月25日に小泉純一郎内閣総理大臣が総理大臣談話を発表して控訴を断念、一審が確定判決となった。衆参両院で謝罪決議が採択され、6月22日にはハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律が施行された。

『お召し列車』出演者の一人・杉山英之(写真)が、稽古中のある日、ぼそっと言った。
「あの『杉山判決』を出した裁判長は、俺の親父なんですよね」。

この話はこれきりで、杉山君とその後お父さんの話をしたりはしていない。人は一人一人独立したものではあるからだ。あまりにも目の前にやることが多く忙しいからでもある。そのうち話したいなとも思う。

人が出会うことは偶然の集積だ。時間軸と空間的な距離の掛け算の無限の可能性の中で、その出会いは果たされる。
そうした、私たちの今、ここ。仲間たちと渡辺美佐子さんが渾身の演技を見せる。それだけでもほんとうに価値のあることである。
伊丹で、岡山で、名古屋で、一人でも多くの方に立ち会っていただけることを願う。


読売新聞劇評
http://www.yomiuri.co.jp/culture/photonews/article.html…
岡町高弥さん劇評
http://uzumarishiro.web.fc2.com/2013/page/voice.html
松元ヒロさんのツイッター評
https://twitter.com/matsumotohiro/status/671357291816353794…
英語評
https://winfailjapan.wordpress.com/…/review-omeshi-ressha-…/
アイホールによる紹介インタビュー
http://www.aihall.com/rinkogun_27/

以下、岡山公演の上演情報です。

…………………………

燐光群最新作

『お召し列車』

もうこれ以上ひどいことがないっていうくらいのひどい目に遭ったら、勇気が出る。私はそうなの。

明治5年から現在まで、幾度となく特別運行されてきた「お召し列車」の歴史。
新たな東京オリンピックで海外からの来場者への「おもてなし」として再現された「お召し列車」。
その車輌の中で繰り広げられる、「果たせなかった思い出」をたどる旅。
渡辺美佐子+坂手洋二・燐光群による「鉄道劇」、最新作。

作・演出○坂手洋二

渡辺美佐子
円城寺あや 岡本舞 中山マリ 大島葉子 大月ひろ美
鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 さとうこうじ
杉山英之 武山尚史 東谷英人 樋尾麻衣子 松岡洋子 
宗像祥子 秋定史枝 川崎理沙 宇原智茂 根兵さやか 

照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○大川裕
美術○じょん万次郎
音楽○太田惠資
演出助手○城田美樹
擬闘○佐藤正行
衣裳○小林巨和 ぴんくぱんだー・卯月
舞台協力○森下紀彦 
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ 長谷川千紗
宣伝意匠○高崎勝也
協力○岩淵ぐるうぷ 浅井企画 無名塾 T-ARTIST青年劇場
DULL-COLORED POP
制作○近藤順子 鈴木菜子 
Company Staff○古元道広 田中結佳 桐畑理佳 鈴木陽介
福田陽子 西川大輔 宮島千栄 橋本浩明 内海常葉 秋葉ヨリエ
齋藤宏晃

12月17日(木)19:00
会場 岡山市立市民文化ホール
路面東山行「小橋」下車徒歩1分 ※公共交通機関をご利用ください。
岡山市中区小橋町1-1-30
086-273-0395
【全席自由】前売開始11月8日(日)
一般前売 3,300円 ペア前売 6,000円 当日3,600円
U-25(25歳以下)2,500円 高校生以下 1,500円
※U-25・高校生以下は、劇団のみの受付。前日までにご予約の上、当日受付にて要証明書提示。
受付開始時より整理券を発行します。
受付開始○開演の60分前 開場○開演の30分前
開演直前・直後は(一時的に)ご入場を制限させて頂く場合がございます。
未就学児のご入場はご遠慮下さい。
◆チケット取扱い(一般・ペア前売のみ)
ぎんざや 086-222-3244
岡山シンフォニーホールチケットセンター 086-234-2010
岡山県天神山文化プラザ 086-226-5005(月曜休・9:00~18:00)
シネマコレクターズショップ映画の冒険 086-252-7606
◆ご予約・お問合せ
おかやま燐光群を観る会(映画の冒険内)
086-252-7606
 yoshitomi@mx3.tiki.ne.jp
燐光群 03-3426-6294 
ticket-rinkogun@ee.alles.or.jp

共催○岡山市 岡山市芸術祭実行委員会 
助成○福武教育文化振興財団
(公財)岡山市スポーツ・文化振興財団  おかやま燐光群を観る会
後援○岡山県 岡山県教育委員会  山陽新聞社  朝日新聞岡山総局 
読売新聞岡山支局 毎日新聞岡山支局  RSK山陽放送 
OHK岡山放送 KSB瀬戸内海放送  TSCテレビせとうち 
NHK岡山放送局 公益社団法人岡山県文化連盟

撮影○加藤孝

以後の国内ツアー ↓

【名古屋】12/19(土)・20(日)@愛知県芸術劇場
http://rinkogun.com/the_imperial_train_Nagoya.html
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする