A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 009

2007-08-24 22:58:25 | ことば
あなたがたには、あなたがた自身の<知性>の動揺を、恐れることなく招き寄せていただきたい。揺らぐことを放棄した<知性>はもはや力を持ちえず、現状維持の自堕落さに陥るしかなく、ある種の快適さからふとそれに安住するとき、人は知らぬ間に若さと別れを告げるのです。
(p.71 「私が大学について知っている二、三の事柄」蓮實重彦、東京大学出版会、2001.12)

<知性>の動揺。動揺続きの一日であった。動揺といえば私の未来も随分動揺しているのだが、勝手なことばかり言う豊臣秀吉みたいな子どもに振り回される幼稚な大人たちにも私は動揺していて、だが実はそれは動揺ではないだろう。事実、わかりきったことだった。いつも心中で笑ってばかりいたし、いまも思い返すと笑えるのだが、この笑いに笑いという現象がもたらす幸福はないということに私は動揺しているのかもしれない。

未読日記83 「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」

2007-08-24 22:46:25 | 書物
タイトル:ナショナル・ストーリー・プロジェクト
原題:I THOUGHT MY FATHER WAS GOD AND OTHER TRUE TALES FROM NPR'S NATIONAL STORY PROJECT
著者:ポール・オースター編 
   柴田元幸、岸本佐知子、畔柳和代、前山佳朱彦、山崎暁子訳
装幀:新潮社装幀室
発行:新潮社
発行日:2005年6月30日
内容:
誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は私には想像しがたい。 ポール・オースター

爆笑もののヘマ、胸を締めつけられるような偶然、死とのニアミス、奇跡のような遭遇、およそありえない皮肉、もろもろの予兆、悲しみ、痛み、夢。投稿者たちが取り上げたのはそういったテーマだった。世界について知れば知るほど、世界はますます捉えがたい、ますます混乱させられる場になっていくと信じているのは自分一人ではないことを私は知った。

オースターが全米から募り、選んで、編集し、「アメリカが物語るのが聞こえる」と感動した、180の実話。

購入日:2007年8月13日
購入店:e-books
購入理由:
ポール・オースターといえば私も『ムーン・パレス』や映画化された『スモーク』など好きな作品の多い作家だ。その彼がこのような無名の市井の人々の物語を集めた本を出していたとは。
この本の存在を知ったのは、昨年のことだ。
クリスマス・イヴの夜にJ-WAVEというラジオ局で作家の沢木耕太郎がナビゲーションをつとめる番組が放送されていた。この番組は毎年クリスマス・イブの夜に放送を行い、もう何年か10年ぐらいはたっているようだ。わたしも何回か聞き続けていた記憶がある。その番組の中で、沢木氏が紹介していたのが本書だった。番組によれば、この『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』もラジオ番組から生まれたということから、昨年の番組内に沢木氏はこの番組でもリスナーからそれぞれの「物語」を募集し、1年後に発表したい、という趣旨から紹介された本だった。
無名の人々の「物語」を集めること。
たいへん興味深いアイデアであり、「普通」を嫌い「個性」ばかり求めたがる今の風潮をいぶかしく思うところもあり、また、戦前のドイツの写真家アウグスト・ザンダーのさまざまな職業に従事する人々を撮影した写真集を思い出したりもし、ぜひ読みたいと思っていたが値段がそこそこするのであきらめていた。だが、地元の古本屋で偶然見つけ購入。
たかが1冊の本を店頭で見つけ買うだけの話なのに、いろいろな記憶と結びついているものである。

未読日記82 「パイドン」

2007-08-24 22:15:22 | 書物
タイトル:パイドン 魂の不死について
著者:プラトン 岩田靖夫訳
発行:岩波書店/岩波文庫 青602-2
発行日:1998年2月16日
内容:
人間のうちにあってわれわれを支配し、イデアを把握する力を持つ魂は、永遠不滅のイデアの世界と同族のものである。死は魂の消滅ではなく、人間のうちにある神的な霊魂の肉体の牢獄からの解放である―ソクラテスの最期のときという設定で行われた「魂の不死」についての対話。『国家』へと続くプラトン中期の代表作。

購入日:2007年8月13日
購入店:e-books
購入理由:
不条理な日常をあまりに長く過ごしてくると、さすがにプラトンでも読みたくなる今日この頃。久しぶりに地元の古本屋を散策していたら、そのプラトンを見つけ購入。何かにつけプラトンというのは批判されてばかりいるのだが、批判されてばかりだとアマノジャクの私としては読みたくなる。それにかつての恩師がプラトン好き(いや、イデア好きか?)だったのも影響しているのかもしれない。