ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

THE SIDEWINDER

2007年04月18日 | レコードのお話
庭木に水を注いでいると、上空をヘリコプターが旋回した。
バタバタバタ。
椿の花弁が1個落ちて、ガラス窓がビビビリ、と鳴っている。
そういえばバッハの『トッカータとフーガ』のオルガンに耳を澄ますとき、ROYCEの室内も共振することがある。かげろうのような一瞬の儚い清明が、時の証に韻を踏んでいるようだ。
バッハの盛大なオルガン音は、さるところではどのように鳴っているのか聴いたことが有る。
空の曇っている日、ロンドンのウエストミンスター寺院に入ると、たまたまそれが、石の壁に音の波がしみわたりつつこだまし、上空にゆっくり煙りのように立ち登っていくのが聴こえた。
小耳に挟んだそれは、甘いやわらかな低い音である。
タンノイで、バックロードホーンの威力を聴こうとボリュウムを上げると、トッカータとフーガも脱穀機のようなすさまじい音で鳴るが、それは是非もない快感だ。
現実には、ウエストミンスター教会の遠いオルガン音は、ちょうどそのとき『スペンドール』で小さく鳴らしたような、それで良い音だった。
ジャズでもクラシックでも経験する「鳥肌の瞬間」とは何だろう。
それは鯉に似た、感動なのか。
あるとき六法全書に『恋』という字は無いといわれて、法典に鯉は必要でなかったのか、意外だが、約束も証明も要らない、いらない興奮をタンノイに求めてきたのかな。
『サイドワインダー』をまだ5回しか聴いていない人は、聴かないためにそれを持っているとか言って、感動を冷凍パックして、針を置く日を先延ばししている。
何度も同じ女人とデイトしていれば、鯉も次第に薄らぐから『ワルツ・フォー・デビィ』などの場合は、少々聴き通して、鯉からアイにフェーズが変わってしまったのである。
新鮮な出会いのために、多くのフアンは斬新なカッティング盤の再登場を待っているのかもしれない。

☆ウエストミンスター寺院には、ニュートン、ダーウイン、ヘンデル、チョーサー、ディケンズ、ハーディなどなど、起こしては大変な人物たちが眠っているそうだ。

コメント
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