三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【家の物語性を語る、特注木製玄関ドア】

2017年03月21日 06時08分11秒 | Weblog
新住協北海道大会in帯広でのメーカー展示から。
写真の玄関ドアは、既成品の木質玄関ドアの表面面材を
購入する工務店各社でオリジナルに加工できるというもの。
下地は頑丈な玄関ドア面材で構成されていて、
この写真のモデルは北海道の武部建設さんのもので、
表面材には1.8cm厚みの「カバザクラ」という広葉樹材が貼られていた。
武部建設さんは古民家再生とか、古材を活かした家づくりを
ポリシーとしてアナウンスしている。
そのポリシーを表現するのに、これまでは古材の大黒柱などを
「見える化」の表現としてきたけれど、
そのポリシーを玄関ドアという「家の顔」で表現しようというもの。

このアイデアは悪くないと思う。
注文住宅の最後の仕上げというか、
家の表情を端的にあらわす面としてのデザイン要素として
玄関ドアというのは、非常にわかりやすく、ユーザー視点的。
玄関ドアになにごとかの「物語性」が付与されたら、
それが起点になるか、最後の決め手になるかはわからないけれど、
注文住宅の所有者にとって、いかにもこだわりが生まれてくる。
この武部さんの場合には、面の表現力として
カバザクラの木肌・木目がすべての表現を受け持っている。
この面としての美を見ているうちに家人が
ドアを開けて来訪者に挨拶する光景を想像すると、
これがそのまま、一種の来訪者を迎え入れる機縁を創造してくれる。
「このドアってなんか面白いね」
「そうなんだよ、これは樹齢200年くらいの地元産のカバザクラなんだよ」
「カバザクラ? 木目が楽しいし、肌合いがいいね」
「北海道の開拓期に豪勢に柱に使われた珍しい広葉樹なんだって」
「へえ〜、お宅、いい家を建てたね」
「まぁ中に入ってくださいよ」・・・みたいな。

北海道では、来客を軽く迎え入れる日本住宅の伝統的装置である
「縁側」のようなスペースは作りにくい。
高断熱高気密の考え方からは、ウチとソトの融通性は担保しにくい。
しかし、隣人友人知己とのコミュニケーションはなんとか創造したい。
そのような「住まいの仕掛け」としてこういう考え方は
非常に創造的なアイデアなのではないか。
物語性のある玄関ドア、面白い考え方だと気付かされました。
コメント
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