三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【原発事故による放射能汚染と建築空間】

2017年03月14日 06時42分16秒 | Weblog


わたしも参加している「住まいと環境 東北フォーラム」からは定期的に
住宅の研究をまとめた「H&Eレター」という報告が寄せられます。
基本的には住宅性能についての調査研究がテーマで
わたしも北海道の住宅の歴史をテーマに書いたりしたことがあります。
みなさんの真摯な研究発表を毎回楽しみにしているのですが、
今回は表題のようなレポートが送られてきました。
いよいよか、というような感覚に包まれていました。
震災、原発事故から丸6年が経過して、
「除染」作業も進捗していく中で、避難解除が現実の工程に上り初め、
原発事故地域へのひとびとの「帰還」が最終段階としてはじまるとき、
住宅建築に携わる業界は、このことと正面から向き合わざるを得ない。
いったいどのようにして住宅の環境を再構築して行けばいいのか。
ほとんど人類的なテーマとも言えることに直面する。
「避難指示が解除されても,事故由来の放射線
(空間放射線量率μSv/h〜マイクロシーベルト毎時)は
ゼロではないため,居住者の生活を考える上では,
建築空間内の放射線がどの程度になって,またどのような対策が
あり得るのか検討することは建築環境工学の重要なテーマです。」
というまさに建築が突きつけられている大きなテーマ。

当然のように、地域の住宅研究組織として
東北フォーラムはその最前線で調査研究にあたることになった。
中心となって活動されたのは、小林光東北大学准教授です。
これまで住宅研究で目に触れてきた温度湿度などのデータではなく、
「原発事故由来の放射能汚染によって建築空間に形成される
空間放射線量率はγ線(電磁波)によります。
放射線量率の単位はμSv/h(マイクロシーベルト毎時)で,
1時間当たりに人体が吸収する放射線のエネルギー(G:グレイ,J/kg)に
放射線の線種による人の感受性を掛け合わせたものです。」
というような、相当気合いを入れて読み込もうとしても理解が難しい、
そういった数値データが示されている。なお続けて、
「筆者らは建築環境工学の立場で放射線の健康影響については触れず、
科学的に建築と公害の関係を淡々と明らかにし、被災地に建築を新築或は
改修しようとする際に参考となる情報を提供したいと考えています。」
というように、純粋な研究上の立場も明示されています。

人間のくらしのイレモノとしての住宅は、
この原発事故からの復元の道筋を研究する責務がある。
そんな思いを持ちながら、しかし、まったく相貌の見えにくい、
未知の数値データを見つめ続けております。
コメント
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