三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

円窓の日時計

2011年07月30日 07時44分55秒 | Weblog





先日の見学会より。
円窓って、日本の建築ではけっこうポピュラー。
精神性を表現する重要な建築装置として
いろいろに見る機会が多い。
住宅用でも、たぶん、サッシ屋さんの品番にもあるのではないかと想像します。
ただし、今回見たモノは、
円窓と言うよりも、その周囲の窓まわりの造形がすごい。
この家は、外壁自体が湾曲していて、
その曲面の中心にこの円窓はある。
で、この家は断熱はきちんと行っている。
そういう条件の中で、窓と、内部空間をどのように仕上げるかは
なかなかに頭を使うところ。
この家では、外張り断熱の板状断熱材を工芸品制作のように加工して
このような造形を作り上げたのだそうです。
この造形は、3次元曲線を描いているので、
まぁ、丹念に断熱材を切り込んだり、削ったりしなければならない。
形だけを作って、いわばデザインだけやって
空間の温熱環境機能性は無視しました、っていうようなお気楽な仕事ではない。
こういう芸術的な仕上げをしてなおかつ、断熱性を担保している。

先般、東京であるエコ関係の住宅審査を取材していて
その審査員の先生たちの質問内容などを聞いていて
断熱と、デザインの問題の境界について
そこで試行錯誤しながら作っている北国のひとたちのことを
こういう先生たちの視点では理解できないのでは、という気分にさせられました。
この円窓周囲の造形仕事を見ていて
技術の積み重ねと、それでようやくたどりつくデザインは
単純に情緒的な部分だけでは見えないのだと思う次第です。
こういうデザインを実現して、
しかし、窓は結露だらけで周囲は寒い、というわけには
北海道では決していけないのですね。
それを関東以南的な感覚世界で評価するとかしないとか、
そういう論議は、もうやめたほうがいいのではないか。
まぁ、そうすると、人口規模的に北国世界の価値観を無視する、
というような結果になることは明白なので、
田舎にいる人間としては、なんともやりきれないところなんですが・・・。
おっと、これではグチだ(笑)。

円窓であります。
ちょうどこの時期の正午近くの太陽光線を反映して
こういう情景を見せてくれていますが、
この円窓、自然が作り出す日時計のようでもありますね。
建物の南面正面に位置してもいるので、
そういった「隠された制作意図」というものも理解できます。
そう考えると、まことに面白い「生活のデザイン」。
このように外の世界の日射が作り出す光を室内で感受する装置、
断熱とデザインの境界的なせめぎ合いの中で
北国住宅としての面白い挑戦ではあると感じました。
コメント
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