写真は宮城県の古民家の室内の写真。
ちょうど夏の盛りの頃に撮影したものです。
縁側とかに面している方角からの採光が室内に取り込まれて
たたみの床面に反射して、
そのあと光がバウンドして天井を照射し、
その残光が高い天井までの壁面をも微妙に照らし出していて、
独特の色彩模様となっていました。
壁は土壁で、その色合いはいかにも自然な風合い、
肌触りのいい色彩を醸し出しています。
構造材としての木材は自然な褪色の結果の色合い。
こうした床壁天井の色彩って、わたしたち日本人の色彩感覚を大きく規定している。
自然の褪色というなかに、
日本独特の気候風土条件も投影しているといえる。
白茶けた畳の色合いって、日本で取れた植物を加工したものであり、
その褪色にも、日本の日射しが繰り返し関与してきた結果。
面白い色合いだなぁと、特に思われるのが正面上部の壁の色合い。
土壁ですが、奥の部屋の壁の色合いとはまったく違って、
なんとも艶やかな、あかい色合いを醸し出している。
日本の土には、こんな色合いの表情も隠されているのかと、
ちょっと驚かされるような色調。
というか、同じ素材を使っているのに違いないのに、
奥の部屋は見える範囲では白壁。であるのに、こちら、内部側はどうも
構成する土の中の色素のうちの、赤いものが表出しているのか。
こういうコントラストがごく自然にわたしたちの感受性に染みこんでいる。
まぁ、ほんのさりげない風情なのですが、
こういう部分の奥行きの深さに、どうも弱くなってきてしまう。
こういう色彩のバランスの中に、空気感、湿度や温度条件が加わって、
日本的な情念の世界が出来上がっているような気がする。
建具などの黒々とした質感と、複雑だけれど見た目は白い壁の対比が、
たとえば日本的な「白黒付ける」という感覚を呼び覚ましてもくれる。
白黒は付けるのだけれど、見方を変えれば、
白ではなく、赤い部分もあったのだ、みたいな中間領域的感覚。
いずれにせよ、こういう空間への感受性こそ、
けっして消し去ることのできないわたしたちの心象風景なのではないかと
暑い季節の中に、思いを巡らせる次第です。
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