長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

出ました! 超ウルトラスーパー0点~  映画『クロユリ団地』

2013年06月16日 17時18分08秒 | ホラー映画関係
 じめじめイエー! 梅雨イエー!! どうもこんにちは、そうだいでございま~っす。6月の日曜日、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 いや~、多分それでもまだまだ降雨量は少ないのかも知れませんが、ある程度しっかり雨の降る天気が続いてまいりました。いちいち傘をさしたり、洗濯物がなかなか乾かないのはイヤですが、夏を迎えるためにこの季節は大事なのであります。ひどい湿気もちゃんと受け止めなきゃあね~。楽しめ楽しめ~っと。

 もうね、最近のあたくしは忙しいもなにも、もう「忙しい」って言うヒマもないってくらいの忙しさなんでい! って感じなんですが。
 でも、「しっかり仕事をする。」ってことを身をもって体験している時期なんでね。試験勉強も手を抜いちゃあいけないわけなんで、一日の時間が短く感じるのに、その貴重な時間があいたらひたすら眠くなるだけ、って日々なんですが、このあたりがのちのちに「良い思い出」になってくれれば万々歳! ってことで、冷や汗かきかきがんばっていきまっしょい~と。

 そんな毎日でありまして、ふと今月のスケジュールを手帳で見なおしてみたら、仕事も誰かと会う用事もない完全フリーな日は「たったの2日」ってありさまよ! まぁ、そういう一年をお過ごしでいらっしゃる方々が無数にいらっしゃるのが「大人の社会」というものなのでしょうが、不肖わたくしめも、やっとそのつらさがわかるかもしれないステージに混じらせてもらっとるということで。へいへいありがてぇこってす。

 それで、その超貴重な「まるまる休日」のひとつが本日だったわけなのでありますが、そんな今日は早朝から雨、雨、雨。私の住む千葉は絵に描いたような梅雨のオープニングでございました。
 こういう日は外に出ないで家でのんびりするのが一番なのかも知れませんが、それでも私は外に行く予定を作っちゃってたのよねぇ~。今日行っとかなきゃ、いつ行くんだと!


 というわけで、本日は東京の池袋に行きまして、2つの娯楽をたのしんできてまいりました。
 まず、ひとつはこれ。


さやか 個展『緑とコーヒーとあなたの物語』6月5日~7月31日 場所・スターバックス池袋明治通り店


 我がいとしの辻村深月先生のハードカヴァー版『本日は大安なり』(角川書店)や文庫版『ふちなしのかがみ』(角川文庫)、河治和香の『紋ちらしのお玉』シリーズ(角川文庫)などのカヴァーイラストを手がけていらっしゃる画家のさやかさんの個展が、画廊といった特別な空間でなく、ふつうに出入りするようなコーヒー屋さんで開催されている! そんな情報をなんと、さやか先生ご本人の手跡になるダイレクトメールで頂戴いたしましたので、喜び勇んではるばる千葉くんだりから池袋まで馳せ参じさせていただくことにいたしました。
 これは昨年の夏に、千駄ヶ谷で開催されたさやか先生の個展に行ったときに来廊帖に記入したからいただいたお知らせだったんですが、記入してなかったら、たぶん忙しさにかまけて展示の存在にさえも気づかずじまいになってたんじゃないだろうか……危なかったねぇ!

 それで、ちょっと今日を逃がしたらしばらくチャンスがないということで足を向け、慣れないスターバックスの中に踏み入って、「し、し、したらば、おらはコーシーをいっぺぇもらえっかな……」と、うつむきがちに小声で自分のランニングのすそを両手でギュッとつかみながら顔を真っ赤にして……はいないんですが、内心はそのくらいのドギィ&マギィ度でアメリカーノのトールを頼み、それを片手に2階にあがっていきました。
 私ねぇ、そりゃあいちおうコーヒーはいろんな場所でたしなむんですが、基本的に苦手なんですよ、コーヒー。だから、スターバックスなんか滅多にいかないの。

 オイオイ、なんだよ、この「トール」サイズって! 多いよ、多すぎるよ量が! なんでこんなに多量の苦豆汁をいちどきに摂取しなきゃなんねぇんだよ!! うぅ……なんか、強引に体内から腹中虫を追い出す儀式的なもんに参加してる気分になってきたよ……にが……

 そんなことを内心で叫びつつも、表向きは「う~ん、やっぱりカァフィはブラックに限りますな。」というゼントルメンな涼しい顔をしながら、明治通り店の2階と3階に展示されている計13点のさやか作品を楽しみました。

 うん、やっぱりさやか先生の作品は色の濃淡の絶妙な采配が最高なんですよね。今回の作品群は「黒い闇」を背景にして人物が躍動している構図が多かったと感じたのですが、その闇の中に深みがあるというか、ちゃんと近くは明るくて、遠くなるにつれて光が届かなくなって暗くなっていくという空間の奥行きの説得力がしっかりあるのがステキなんですよね。それこそ宇宙の黒さに秘められている可能性の豊穣さ、そこにある無限大の世界の存在を感じて、それと同時に、手前のにぎやかな人物配置が豊かな光源となっていて、それを見ている自分自身が今ここにいるということの奇跡に思い当たり、身が引き締まる感覚を得るわけです。

 昔、私は学生時代に友人たちと連れだって1週間くらい北海道に旅行に行ったことがあって、そのときに1艘のカヌーに乗って屈斜路湖をただよったことがあったのですが、しばらく進んでふと湖面の下をのぞいてみたときに、その碧い美しさを構成している30~100m くらいの深さを感じて、そんな高さの空中に浮かんでいるような気分になってヒヤッとした経験がありました。「怖い!」っていう感覚じゃなくて、なんともいえない自分以上のサイズの世界に触れたっていう畏敬に近い感覚ですよね。
 まぁ、同時に屈斜路湖の伝説の聖獣「クッシー」のこととか、小学生のときに TVで見てものすご~くビックラこいた映画『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)のこととかも連想したんですけど。俗な話でごめ~んねっと。

 ともかく、あのとき私が感じた「深遠の美しさ」を絵画という形で体験させてくれるのがさやか先生の筆遣いなのです。
 今回は静かな画廊ではありませんし、作品がかかっている壁際にふつうのお客さんがいる座席が置かれている状態なので作品に接近することはかなり制限されたうえでの展示なのですが、それでも、印刷物ではない本物のさやかワールドが味わえる貴重な機会だと思いますので、多くの方々に観に行っていただきたいと思います。店員さんも非常に感じがよろしかった! みなさんぜひとも、お時間があるときに行ってみてくださ~い。

 それにしても、雨の降る日曜日だっていうのに、あそこのスタバはパソコンをにらんでお仕事らしきものをなさっているスーツの方が多かったね……それに加えて休日を楽しむ2人連れもあいまって店内はほぼ満員だったのですが、午前中から大東京はほんとににぎわっとるねぇ。池袋の文化集中度というか、ものすごさを改めて思い知った感じでした。

 そういえば、池袋の映画館「新文芸坐」にもずいぶんと行ってないねぇ。
 あっ、今度、7月と8月をまたいで黒沢清監督のオールナイト特集を2回やるんでしょ? 行ってみようかなぁ、久しぶりに! どんなファンが集まるのかも興味があるしねぇ~。
 ……あ、試験の超直前だったわ。まぁ、行かない勇気も大切ということで、ハイ。


 とまぁ、そんなことでさやか先生の個展は「やっぱり、イイ!!」という大満足の感想に終わりまして、問題はもうひとつの用事のほうだったのであります。

 本来の計画では、まず池袋の映画館「シネマサンシャイン」で上映中のこの作品を観てからスターバックスに行くつもりだったのですが、家を出るのが遅れてしまったため午前の回の上映開始に間にあわず、結局はスターバックスに行ってから地下鉄に乗って新宿に行き、新宿ピカデリーでやっているちょい遅めの回を観るというまわりくどい経路になってしまいました。地下鉄の東西線は便利なんですけど、ちょっとタイミングを逃がすと東京に到着する時間が思いっきりズレちゃうんですよね。

 そして、いつも活気のある新宿ピカデリーで観たおめあての映画は、こちら。


映画『クロユリ団地』(2013年5月公開 106分 松竹)

 『クロユリ団地』は、中田秀夫監督のホラー映画。日活創立100周年記念作品。公開と同時に『ぱちんこクロユリ団地』としてパチンコ化されているほか、スピンオフの連続 TVドラマ『クロユリ団地 序章』が放送されている(毎週火曜日深夜2時30分~3時 TBS)。
 全国162スクリーンの公開ながら、公開初日2日間で興収1億5千万円、動員11万人になり、映画観客動員ランキングで初登場第1位となった。公開第2週で累計興収は4億1千万円、累計動員は32万人となり2週連続第1位となった。

スタッフ
監督 …… 中田 秀夫(『リング』シリーズ 51歳)
脚本 …… 加藤 淳也(42歳)、三宅 隆太(『ほんとにあった怖い話』シリーズ 41歳)
音楽 …… 川井 憲次(『リング』シリーズ、『攻殻機動隊』シリーズ 56歳)
企画 …… 秋元 康(55歳)
企画・製作幹事 …… 日活

キャスト
二宮 明日香     …… 前田 敦子(21歳)
笹原 忍       …… 成宮 寛貴(30歳)
明日香の父・勲    …… 勝村 政信(49歳)
明日香の母・佐智子  …… 西田 尚美(41歳)
明日香の弟・聡    …… 佐藤 瑠生亮(るいき 8歳)
明日香の伯父・武彦  …… 並樹 史朗(55歳)
明日香の伯母・栄子  …… 筒井 真理子(50歳)
介護学校の教師・金本 …… 青山 草太(33歳)
忍の恋人・ひとみ   …… 佐藤 めぐみ(28歳)
松浦刑事       …… 諏訪 太朗(58歳)
忍の上司・石塚    …… 柳 憂怜(50歳)
ミノル        …… 田中 奏生(かなう 7歳)
篠崎老人       …… 高橋 昌也(83歳)
霊能者・野々村    …… 手塚 理美(51歳)

ストーリー
 黒百合団地に引っ越してきた介護士志望の学生・二宮明日香は、住み始めて数日後に、隣室に住む老人の遺体を発見する。そして、団地の公園で孤独な少年ミノルと出会ったことを境に、次々と彼女の身に恐怖が襲いかかる……



 はい~、なにはなくとも現在大人気公開中の、話題のホラー映画であります。
 なんかその後、公開第4週の段階で興行収入7億6千万、動員50万人をゆうに突破したそうですね。もちろんまだ結果は出ていませんが、おそらくこの土日で10億円には届くんじゃないかなぁ。
 ともかく新宿ピカデリーで私が観た午前の回は、公開1ヶ月とはにわかには信じがたい大盛況ぶりで、120席あるスクリーンがほんとのほんとに「私の買ったチケットで完売になる」という勢いになっていました。
 私はまさかそんなにコミコミになっているとも思わずに、のうのうと予告編が始まっているくらいに受付に行ったら、見事なまでの「座席選択肢、なし。」で最前列のど真ん中でした。首が、首がいてぇ!! でも、わざわざ新宿にまで来てソールドアウトで門前払いになるよりは100万倍ましでしたね。私はやはり運がいい。

 今回はやっぱり、せっかく休みを利用して東京に行くんだから、コーヒー屋だけじゃなくてついでに何か観て帰ろうという貧乏根性から始まった映画鑑賞だったのですが、あんまり積極的に観たいものがないんだけど……と思いつつも、『ローマでアモーレ』、『言の葉の庭』、『グランド・マスター』、『フィギュアなあなた』、『ジャンゴ 繋がれざる者』といった候補の中から選ばれたタイトルこそが、この『クロユリ団地』だったのでした。

 まぁ、やっぱり日本のホラー映画の最新型ですし、ものすごい人気になっている話題作ですから。しかも、あの天下の前田敦子さんが主演なんでしょう? 実は私、家に TVがないもんですから、正味な話 AKB48の PV以外での「女優・前田敦子」の仕事って1回も観たことがなかったのよね……あの『リング』シリーズで大変お世話になった中田監督の作品もハリウッド版の『ザ・リング2』(2005年)以来トンとご無沙汰でしたからね。
 「最近の日本のホラー映画&女優・前田敦子はいかほどのものか!?」というダブルテーマに注目しながら意気揚々と鑑賞した『クロユリ団地』だったわけなのですが……


0点、0点、れぇてぇえ~んん!! 私の中では異議なし処置なし文句なしの大零点という脅威の得点が出てしまいました。


 いや~……ヒドいですね。
 無論、私も鬼ではありませんし、別に「怖くなければ即、0点!!」というホラー・ショック演出重視論者でもないつもりです。つまり、さほど怖くない、もしくは起伏のないホラー映画でも「おもしろい」のならば大好きな作品として歓迎する意志は持っているつもりです。エンタテイメント的な派手さはなくても、その「不吉な」雰囲気がなんともいえない味わいを提供してくれる一連の黒沢清、鶴田法男両監督の作品ですとか、「朦朧法」の教科書とも言うべき丁寧なストーリーテリングの「幽霊洋館もの」を見事に現代に復活させてくれたアレハンドロ=アメナーバル監督の『アザーズ』(2001年)とか、ほんとにもう大好きですね。

 なので、世間で言われている「あんまり怖くなかったよ。」という意見に賛同して減点しているわけではないのですが、ともかくこの『クロユリ団地』、「ホラー映画」になっていない以前に、そもそも娯楽作品としての「映画」にもなってないし、さらにはプロのみなさんが世に問う「作品」にもなってないと思うのよ、私! 何を言いたいのか、観た人に何を感じてほしいのかがほんっとうにわかんない。ただただ、観る人をすべからく不快な気持ちにさせるだけのストーリー展開、そしてあのファッキンど~しようもない結末!

 かといって、あの世界的な不快映画『ブラック・スワン』(2010年)みたいな計算高さもないしねぇ。要するに、この『クロユリ団地』という常軌を逸した駄作をひっさげて「文句あるかバカヤロー!」と気を吐く誰かが作り手の中にいるのならば、それなりに再検証する価値のある「怪作」なのかもしれませんが、スタッフの誰からも役者の誰からも熱意がまったく感じられない。
 「いや、いちおうがんばって作ってはみましたけど、別にこれを代表作にするつもりはないっす。ヒットしたらいいんじゃないっすか?」みたいな、気が抜けてるどころか、もともと最初っから炭酸が入ってない「コーラグミを1コ、2~3分漬けただけの水道水」みたいな気力のなさなんですよ、この映画! 同じ中田監督でも、まず創作にかける意欲の時点で『リング』(1998年)とは天と地ほどの違いがありますよ、マジで!! え? もちろん『リング』はコカ・コーラ御大その人ですよ! 『リング2』はコーラ・タブクリア(1993~94年)かな。『呪怨』のオリジナルビデオ版2部作はやっぱりジョルト・コーラだろうねぇ。

 最初にこれだけは言っておきますが、確かに前田敦子さんの演技は主演者として観られるものがありました。少なくとも、この作品での「二宮明日香」というキャラクターは100% 以上の説得力をもって演じきることができる「幸薄さ」と「おびえの表情」を惜しげもなく披露してくれていたと思います。

 でも……それを世間に知らしめて、前田さんのこれからにメリットはあるの?

 『クロユリ団地』の二宮明日香というキャラクターは、ストーリーの中盤からもうこれでもかというほどに展開されていく「主人公らしからぬ境遇」の激流に身を任せていくことになり、とにかく演じる前田さんの「顔色の悪さ」と「周囲からさし伸べられる救いの手のいっさいを拒絶する、第14使徒ゼルエルもビックリの A.T.フィールドの張りっぷり」が際だって印象的な娘さんになっています。
 つまり、単なるむちゃくちゃめんどくさい「アレな人」でしかないわけなんですよ。こういう演技がうまいって言われて喜ぶ本人やファンって、いるか?

 いや、もちろん作品の後半にいくにしたがって、前田さん演じる明日香がそういう人になってしまった「原因」、ひいてはこの『クロユリ団地』という物語の全体にわだかまる謎の真相は明らかになっていき、それによって明日香の「悲劇のヒロイン」としての説明はいちおうなされていくのですが……

 そこにまぁあっっっったく感情移入できない!! 誰の意見も聞かずにひたすらウジウジしている人なんか、千ウン百円お金払った上に同情なんて、できる? できるあなたは、ちょっと度を越した前田さんファンか菩薩さまだよ! 今すぐ出家したほうがいいよ!!

 感情移入できない理由はいくつかあるんですが、まず致命的なのは、映画が明日香の「秘密」をちょっと長く引っぱりすぎてしまったがために、本来ならば観客と一体化した視点を持っていなければならなかった明日香にたいして、観客が「なんかこの人……おかしいぞ。」もしくは「なんでこの子は『あの違和感』をはっきり人に言わないんだ? もどかしすぎ!」という不信感を持つにいたってしまい、後半でその原因を解き明かされてもイマイチ明日香の問題の解決法というか、「ハッピーエンドのかたち」を想像する興味がわかない温度の低下をまねいてしまっているのです。作中では後半から、そんな明日香の「主人公降板」をフォローするかのように、W主演というふれこみの成宮寛貴演じる青年・忍がぐぐっとストーリーの中枢に乗り出してくるのですが、もはや時すでに遅しといった感じだし、忍は忍でそれなりに「くら~い闇」を背負っているので、その事情を知らなければならない「重だるさ」におおむね違いはありません。

 要するにさぁ、何から何まで重苦しいくせに、主演だっていう2人が2人とも、それぞれの形は違ってもまったく救いようのない末路をたどって物語が勝手に終焉する、って感じなんですよ。

「あるところにかわいそうな人がいました。そこに幽霊が現れたりいろいろあって……かわいそうな人はさらにひどい目に遭いましたとさ。チャンチャン。」

 こんなそっけなさ、重たいまんまで投げっぱなしの知らんぷり! オイちょっと、それはいくらなんでも丸投げすぎなんじゃないのか!?

 話はちょっと変わりますが、『クロユリ団地』は時間が進むにしたがって、物語がズンズン信じられないくらいの加速度で「古臭くなって」いき、クライマックスではあきれてものも言えないほどに古典的な『吉備津の釜』パターンでの「人間 VS 邪悪な霊」の対峙になってしまうのですが、そういうのはその人間が邪悪な存在を呼び込むことになってしまった「それなりのきっかけ」というか、誰でも「あぁ、それやるよね~!」と思わず共感してしまうような、人間らしい欠点が理不尽な破滅を呼んでしまうことへの同情が生まれてはじめて機能する、怪談文化の「教訓譚」としての効能だと思うんです。「やっちゃいけないことはやっちゃいけない」「行っていけない所には行っていけない」という問答無用な教訓がわかりやすく伝わるツールだからこそ、怪談は不滅なのです。

 でもさぁ……別にバッドエンドでもかまわないんだけど、明日香と忍が、あの「ミノル」とかっていう邪悪な存在に追われなきゃいけなくなった原因って、強いてあげれば「心優しかったから。」ってことなんでしょ?
 じゃあさ、この映画はなに、「優しくなっちゃいけません。弱そうに見えるものに声をかけちゃいけません。」っていう教訓を伝える映画なの?

 いちおうこの作品では、後半に手塚理美演じる霊能者の野々村が明日香に「優しいのは悪いことじゃない」という意味合いの声をかけるシーンも用意されてはいるのですが、すでに明日香はそんなことはまるで聞いちゃいない精神状態だったし、野々村も流れでミノルくん調伏に一肌脱いではみたものの、その明日香の優しさが引き起こしてしまった「大失策」のために散々な目に遭ってしまいます。完全に「骨折り損のくたびれもうけ」ですね。

 ちょっと話はズレますが、この野々村っていう霊能者の調伏儀式シーンっていうのが、また最低でねぇ! ホラー映画の大事なクライマックスだっていうのに、怖がっていいんだか笑っていいんだかぜんぜんわかんない演出で、コントみたいな扮装にコントみたいなおばちゃんエキストラをしたがえてコントみたいな呪文を大声でわめき散らすわけ! ヒドいもなにもないよ、こんなもん。怨霊調伏の儀式なんかもうどうでもいいから、とりあえず TSUTAYAに行って『エクソシスト』を借りてきて雰囲気の出し方を勉強してくれよ~!!

 しかもさぁ、この儀式シーンで野々村が唱えてる呪文ってのがもう、どこからどう聴いても完全に、四国の「いざなぎ流陰陽師」の『不動王生霊返(ふどうおういきりょうがやし)』のフレーズなわけ! 超メジャーなナンバー!!
 いやいや、あんたが対決してるのは生霊とか同業者のはなった式神とかじゃなくて、ミノル君っていう正真正銘の「死霊」なんでしょ! 話聞いてた!? カゼひいてウンウンうなってる人のおでこにバンドエイド貼ってどうするんだバカー!!! 宜保愛子先生の墓前で腹かっさばいて詫びてください。

 オイ脚本! 消費者ナメんなよ!! 「とりあえず内容なんかどうでもいいから、耳障りがおどろおどろしい呪文をわーわー言わせとけ。」っていう安易な動機でチョイスしてんじゃねぇよ。どんな呪法なのかヒアリングできる気持ち悪いお客さんもいるの!
 この作品の脚本担当者は2名いるのですが、そのうちの1名(三宅)はしょっちゅう公共の電波で「私は本物の幽霊が見える体質です。」と明言しています。

嘘だ!!!! まさかの2013年に竜宮さん風の、嘘だ!!!!

 世間以上に幽霊の存在をリアルに感じている人なんだったら、そんな「相手(幽霊)に意味を通す」というコミュニケーション上の大前提を軽く無視することはできないだろう。もはや心霊やホラー映画に詳しいプロとも言えないドしろうとの、「呪文なんかなんでもいい」という他人も他霊もいっさいをナメにナメきった脚本です。百歩譲って、もしその呪文チョイスが自分(三宅)の筆によるものじゃなかったのだとしても、「共同脚本」という形で名前がいっしょにならぶんだったら、自分のプロ生命を賭けてでも相手に変更をうながすレベルのイージーミスでしょう。
 も~0点、0点! 0点どころか退学処分で放課後に市中引き回しだろ、これ。

 とにかくもうね、この『クロユリ団地』はデートムービーのつもりでノリで観に来た若いいちげんさんにも、前田敦子さんや諏訪太朗さんといった出演者のファンの方々にも、ホラー映画に一家言を持っていると自負しているマニア層にも、全方位360°に向けて「ナメきった」つくりのしろものになっているんです。だぁれもうれしくないし、だぁれも得しないの。得してるのは作品に直接かかわってないのにもうけてる「上の人」だけ。

 こんなにヒットしちゃって、もしかしたら続編製作が決定してもおかしくないような勢いなわけなんですが、私は信じてますよ。この国の「口コミ」の力を! こんな愚にもつかない有害ゴミをえんえん1時間半以上も見せつけられて「おもしろかったー☆」なんて言える人はいないはず。
 でもさぁ、公開から1ヶ月たってもまだこんなに大入りだってことは……「口コミ」がそういうことになってんのか。そんな馬鹿な……


 話は変わりますが、私は最近、ひところはあんなに毎日楽しみにして聴きまくっていたラジオ生活をめっきりやめてしまいました。もうほとんど、ラジオ日本の『モーニング女学院』と『Berryzステーション1422』くらいしか聴けていない寂しさになっています。
 もちろん、その最たる原因は冒頭にも申しあげた「仕事で忙しいし眠りたい!」というものなのですが、そういった生活上の変化とほぼ時を同じくして、

なんとなく TBSラジオのラインナップに魅力を感じなくなってきた。

 という心理的変化も発生してしまった、ということがあったんですね。

 んで、その流れで毎週土曜日の『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』も聴かなくなってしまっていたのですが、今回「んまぁ~ひどい映画を観てきちゃったよ!」とプリプリしながら帰ってきて、そういえばこの『クロユリ団地』の脚本を担当している三宅隆太っていうのが、映画監督とか脚本家とは違う「スクリプト・ドクター」っていう肩書きでけっこうおもしろいホラー映画理論コーナーをやってたっけな、と思い当たってちょっと久しぶりに『ウィークエンドシャッフル』のホームページをのぞいてみたのね。
 そしたら案の定、宇多さんが何週間か前に『クロユリ団地』をシネマハスラー……じゃなかった、「ムービーウォッチメン」のコーナーで批評していたわけです。

 それで、おぉこれは聴かなきゃ。宇多さん、あの歯に衣着せぬ物言いでこのゴミを焼却処分にしてくれ! という思いでその放送回を聴いてみたらば……

 宇多さん。それはないです。なにをそんなに言いよどんでるんですか。なんで昔みたいにはっきり「クソだYO!!」と言ってくれないんですか。まぁ、そんなこと過去にも言ってないけど。
 4~50分くらいあるコーナー内容の中で、『クロユリ団地』自体のことに言及してるの、たったの「10分ちょい」じゃないですか! それもあんな気持ちの悪い、言いわけがましい弁護に終始して……「奥歯に物のはさまったような言い方」の教科書みたいな最低最悪のひとときでしたよ!
 そりゃあ、三宅隆太のことを個人的に好いているのはよくわかるし、スクリプト・ドクターとしての彼の魅力が番組に貢献しているのはよくわかりますよ。「ブルボンのお菓子コーナー」もいいしね。

 でもさぁ!! ちゃんと、そこと「『クロユリ団地』の脚本・三宅隆太」は区別して、正当に引導を渡してさしあげないと! ちゃんと「てめーはもう作品を創作するな!! 医業に専念しろ!」って。

 もう私は心に決めちゃいましたからね、「『大人の事情』でがんじがらめになっている宇多さんの声なんて二度と聴きたくないし、今後いっさい信用することもできない!」って。
 私ごときが聴かなくなっても特に番組の人気に問題はないのでしょうが、結構な人数がガッカリしたと思うんですよ。そこにカッコよさは1ミクロンも感じられないからです。それはもう、かつての『リング』に見られた新時代の到来を告げるスパークが、『クロユリ団地』のどこにもなかったのと同じことですよ!


 まぁ、いろいろ言いましたけどね。ま~だまだ言い足りない問題があるので、次回にもちっと補足のかたちで『クロユリ団地』の最低さについての考察をあげてみたいと思います。腹の立つことはもう山ほどありますが簡単にかいつまんで。できるか?

 結局、今回の『クロユリ団地』鑑賞は、「中田秀夫」と「三宅隆太」(と、宇多さん?)という名前になにかしらの幻想を抱いてしまっていた私から「憑き物」を落としてくれるいいきっかけになったと思います。今までどうもお世話になりました。

 もう二度とあんたらの作品には金をおとさねぇからな! さっさと後進の才能に押しつぶされてくれ、日本の未来のために!!

 ……でも、その後進がもうかれこれ10年以上出てきてないのが、日本のホラー映画の現状なのよね。
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