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ミラマー基地のMWDデモンストレーション(軍用犬と玩具の関係)〜フライング・レザーネック航空博物館

2021-11-18 | 博物館・資料館・テーマパーク

「Combat Canines」



このコーナーの壁に大きく赤で描かれている文字。
前回説明したように、Caninesはイヌ科の動物であり、
そこから軍用犬、警察犬をK9と称します。

冒頭写真で海兵隊のハンドラーと一緒に走っている、
おそらくジャーマンシェパードの首にも黄色い「K-9」の札がありますね。

それでは、FL航空博物館の展示から。

「アメリカ軍の最前線で、軍用犬とそのハンドラーは、
第二次世界大戦以来、米海兵隊と共に
地球上でも最も危険な戦場で彼らを導く役目を果たしてきました。

かつて軍に使役された様々な動物が、技術の発達によって
そのほとんどが時代に合わなくなってしまった今でも、
軍用犬だけはいまだに一線で活躍する価値を見出されています。

IED(即席爆発装置: Improvised Explosive Device)
を検出する能力は、かつて軍事技術者によって発明された
どの機械や装置よりもはるかに優れています。

何より、犬は知的で順応性があり、忠実でタフです。

第二次世界大戦の頃、軍用犬の訓練は、2週間を一つの区切りとし、
農場経験のある海兵隊員の手によって行われました。
農場育ちなら、動物を手懐けるのは慣れているとされたのです。


近年では犬の訓練とハンドリングは、一頭あたりの訓練、しかも
に約3万ドルから4万ドルかかるといわれます。
犬にお座りや寝返りを教えるのは簡単ですが、
戦闘状況かで吠えずに静かにしていることを教えるのは全く違います」

■MWD(海兵隊軍用犬)用ガジェット


そしてこれは犬用ゴーグル。
フレームに書かれている
DOGGLES(ドッグルス)
という商品名に思わず膝を叩いてしまいました。


着用例。

「洗練されたテクノロジーと装備」
軍隊はしばしば洗練された技術を惜しげもなく
このような装備に注ぎ込み、現代の犬はそれ以上のものを「楽しんで」います。

軍用犬は、専用のベスト、GPS装置、ドッグル(もはや一般名詞らしい)
などの目を保護するための機器の他に、足を地面から保護するための
犬専用のブーツが支給されます。


犬専用ブーツ。(ゴルフのスティックカバーかと思った)

サングラスをした上の写真は、ダニエルSSgt(曹長)と、
彼の担当である🐕アウラ(Aura)さん。(多分雌)
アウラさんは2015年に引退し、ダニエル曹長に引き取られて
今は家族の一員となっているそうです。

引退した犬がハンドラーに引き取られるというのは
珍しいことではないような気がしますが、
この場合やはり「装備引き渡し」みたいな扱いなんでしょうか。

■ミラマー海兵隊航空基地でのデモンストレーション



ハンドラーの首から上を撮り損なった?と思ったら、
もともとこういう写真でした。
訓練デモ中のMWD(海兵隊使役犬)に焦点を合わせて撮っています。

1mくらいの障害を楽々飛び越えているMWDの名はワンドゥ(Wando)
ここMCAS(Marine Coops Air Station) Miramar kennel
つまりミラマー海兵隊航空基地犬舎で行われた
学童を招いての公開デモンストレーションでの一コマです。

デモの代表になるくらいですから、ワンドゥくん、優秀犬です。
前回、ウォーダーグで三冠を取ったとご紹介しましたね。



ミラマー海兵隊航空基地にあり、犬・ハンドラーともに
採用されただけで「エリート」コースと言われる
ミリタリー・ワーキング・ドッグプログラムことMWD訓練は、 
主に基地の警衛部隊の憲兵隊長(設置されている法執行機関の最高責任者)
を増強することに焦点を当てています。

犬とハンドラーのチームは2009年以降は展開(たぶん海外派遣)しておらず、
駐屯地において密に任務を負っており、
施設のゲートや基地全体での警備に時間を費やしています。

犬の嗅覚と視覚が訓練で向上することにより、
より徹底的な捜索が可能となりますし、
警備犬とハンドラーの姿は目を惹き、攻撃に対して
潜在的・心理的抑止力として機能する
というメリットがあります。

MWDに関わる仕事には、継続的なトレーニングが必要です。
任務についていない時でも、チームは常に犬舎の監督、
master SSgt Daniel、マスターサージャント=
ダニエル曹長
の監督下に置かれて一挙一動が訓練です。



これがダニエル曹長だ!
そして曹長が左手に持った赤い物体ですが・・・、



これですよね。
犬が訓練の時に咥えたり放って取ってこさせたりするもの、
要はおもちゃです。

鎖はMWDの標準装備らしく、ダニエル曹長と一緒に写っている
アウラさんの首にも同じものがかけられています。

このダニエル曹長は、犬舎のアジリティ・コースで行われた
学童対象のデモンストレーションで何か質問しているようです。



この大荷物を持った女性は、アッキバッティ上等兵。(イタリア系)
2018年当時新人で研修中でした。


ちなみにハンドラーの海兵隊上等兵の年収は現在で
2,103.90ドル(241万4128円)だそうです。
ついでに、曹長になるとは4,614.60ドル(529万6964円)
倍以上ですが、その階級差は5もあります。

彼らのトレーニング場所は、チームが直面するであろう事態を想定し、
犬舎の専用コースや施設内の多くの倉庫などが使われます。
究極の目標は、チームを戦術的・技術的により熟練させるだけでなく、
犬とハンドラーの間の絆を少しでも強くすることにあります。



デモンストレーションの日公開された攻撃訓練の一コマ。

訓練用の防御衣を噛まれているバス上等兵の顔がナイス
腕に噛み付いてぶら下がっているのは先ほどのワンドゥくんです。
ワンドゥと別の伍長がタッグを組んで、「悪役」である
バス上等兵を攻撃しているというわけです。


これも同じ日のデモンストレーションでの展示。
後ろにあるのは引退した戦闘機(展示してある)のようです。
F9F2パンサーかな?

ターゲット役はトリミーノ上等兵、
確実に腕を狙いにきているのは同じワンドゥ号。

新人(下っ端とも言う)は最初噛まれ役が多いんだろうな。

ワンドゥはベテランなので間違いはないかと思いますが、
これ、もし防御衣を着ていない脚を噛まれたらどうなるんだろう。


ちなみに、シリーズ最初の扉絵にしたこのチームは、
犬=コラード号、ハンドラー=スミス伍長で、
沖縄県の海兵隊基地キャンプ・ハンセンに所属しているんだそうです。

■なぜ玩具を展示するのか



犬のおもちゃといえば・・・、フリスビーですね。
標準仕様なのか、国旗がついた赤いフリスビー。
海兵隊装備納入業者もびっくりだ。

そして下のケースは、
「エリートK9」と文字が穿たれています。
穴が空いているのはこれが「匂い箱」だからで、
磁石式になっていて金属部分に装着して捜索の訓練に使います。


ところで、なぜ軍用犬のおもちゃが展示されているのでしょうか。

軍用犬として生まれた子犬にとって、最も重要な特徴の一つは
「プレイ・ドライブ」と呼ばれるものです。
このプレイドライブによって、ハンドラーは、
犬が優れたMWDとしてあるべき反応をするかを確認するのです。

ラックランドのAFBで訓練されている犬とハンドラーに
褒賞としておもちゃが与えられるというのは日常的な光景です。

犬は命令、および任務が与えられると、おもちゃのために働き、
任務が完了すると、よくやったという印に、報酬として玩具を受け取ります。

MWDのデモンストレーション中に犬のおもちゃを紹介すると、
そこにいる犬は耳をピンとたてて興奮するのを観客は目にするでしょう。
それは犬がハンドラーに出す
「任務を完了するためのやる気十分」の合図です。

犬が玩具を見つけるために行うプレイドライブは、
そのモチベーションを利用して本職の捜索活動を容易にするのです。

MWDの本職とは、麻薬あるいは爆発物の捜索であり、
(必ずそのどちらかであり、1匹がどちらの任務もすることはない)
彼らはその訓練を受けています。

そして、犬がそのどちらかを見つけたとき、
そのハンドラーは必ず安全を保証される必要があります。

犬は大変鋭敏な嗅覚を持っていることは有名ですが、
その
鼻には2億2500万個の嗅覚受容体が含まれており、
(人類の嗅覚受容体は500万個にすぎない)
この特性だけでも、彼らは理想的な軍事作戦参加者になります。

そして、彼らの
忠誠心と、人を喜ばせたいと言う願望
犬たちを基地や戦場で重要な存在とするのです。



バス上等兵がタッグを組む犬はパト(Pato)
パトは爆発物探査専門のMDWです。
爆発物に見立てた対象物を探し出すデモンストレーション中。



MWDがご褒美に与えられるおもちゃ。
硬化ゴム製らしい瓢箪のようなものは、てっぺんに
匂いが出る穴が空いているのにご注意ください。



これもご褒美として犬がもらうおもちゃの一種です。
穴が等間隔に開いているので笛みたいですが、
こちらも匂いを仕込んで捜索訓練に使います。
その犬の任務に合わせて、爆発物の匂い、ドラッグの匂いが使われます。

■犬はどこから来たの?


基地にいる犬のほとんどは、ベルジャンマリノア、
オランダ&ジャーマンシェパード、ベルジャンテルビュレン
のどれかです。

犬の75%はヨーロッパから輸入されていますが、
25%はテキサス州のラックランドにある
「ミリタリー・ワーキング・ドッグセンター」で飼育されています。

ラックランドでは、米国内及び海外からの犬とハンドラーが
パトロール、偵察、建物の創作、麻薬や爆発物の検出を行うため
共に訓練を受けています。

訓練方法は、それぞれの犬の特性や性格を考慮に入れます。
ハンドラーの仕事は簡単ではなく、犬を担当するということは、
ハンドラーが犬の入浴、餌やり、遊び、運動だけでなく、
記録を詳細に付けて最新の状態に保つことを意味します。

誕生から8週間まで、将来の犬は彼らの子育てセンターの
第341訓練飛行隊で飼育されます。
8週間に達すると、子犬はサンアントニオ・オースティン地域で
資格のある里親といっしょに家に帰ります。

7〜9ヶ月になるとMWDの候補として観察されます。
どんな子犬も使役犬になれるという保証はありませんが、強い意欲を示し、
様々な環境に適応し、仕事に対する報酬へのモチベーションを持つ子犬は、
資格ありとして事前トレーニングプログラムに移行します。



もしもーし、ベッドからこぼれ落ちてますよ〜。

タグづけされたベルジャンマリノアの子犬の、
年長さん、ドンジャ(上)はもうちびたちを見守ることもできます。

第341訓練隊は共同ユニットであり、
全てのサービスブランチがMWDを提供する機会を与えています。

さて、この子犬たちは将来そろってMWDになれるでしょうか。


続く。






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