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防衛大学儀仗隊 ファンシードリル〜平成30年度 自衛隊音楽まつり

2018-12-01 | 自衛隊

平成30年度自衛隊音楽まつり、第3章のテーマは

飛翔、昇りゆく挑戦。

で、これから自衛隊指揮官という世界に挑戦すべく
飛翔せんとしている防衛大学校から、儀仗隊の登場です。

今年の音楽まつりに登場しているのは60期から63期まで。
防大儀仗隊のホームページはいつまでたっても鋭意工事中なので、
詳しいことは全くわかりませんでしたが(忙しいんだろうな)
出場しているのは全員ではなく、卒業生中心の選抜メンバーだと思われます。

63期は音楽まつりが終わったら引退して後進に道を譲ることになっています。

演技前、会場のアナウンスでは

「防衛大学校は国際士官候補生会議などを通じて国際的視野をも涵養しています」

と紹介されました。
国際士官候補生会議?
アナポリスやウェストポイントとも交流があるのか?
と興味を持ってHPを開いてみたら、それは防大内に設置された

International Cadets' Conference

通称ICCなる組織のことでした。

これは防大に諸外国の士官候補生を招へいして国際会議を実施し、
国際情勢及び安全保障に関する討議等を行い、各国と我が国の将来の
安全保障につながる相互理解と信頼関係の促進を目的とするものです。
(とHPに書いてありました)

この会議は

米、英、伊、印、インドネシア、豪、カナダ、韓国、シンガポール、

タイ、中国、チュニジア、独、仏、フィリピン、マレーシア

等の国の士官候補生を招へいし、8日間程度の日程で行われ、
その目的とは

1.学生に対する国際交流の機会の付与(国際感覚の醸成)

2.学生の国際的視野の拡大、

3、国際情勢認識

4、語学力の向上

4は特に日本の士官候補生には大事なことですよね。

さて、演技です。
始まるなりキビキビと隊形を卍に整え、しばしドリルを行ないます。
投げ上げた銃が完璧に地面と平行なのにご注目。

まず放射状となって回転するマーチング。

小さな十字はだんだん人を巻き込んで大きな十字となって回転します。

馬てい形のフォーメーション。

何年か前には近くに座ったおばちゃんたちの軍団が、彼らの一挙手一投足に
「かわいい」「かわいい」ときゃあきゃあしていたものですが、

こういう年頃の息子を持つ身になってみると、その気持ちがわからなくもありません。

年頃のお嬢さん方なら「かっこいい!」と目が❤️になるところ、
わたしどもはとにかく「かわいい!」となってしまうわけです。

高校野球の選手が「大人」から「お兄さん」になり、「同世代」、
「年下」となっていつの間にか息子の世代になるようなもんですね。

彼らが「孫」に見える日ももう目前です(しみじみ)

馬てい形となってからのドリルは、左から右、右から左と銃回しや銃投げ、
膝をついたりが目まぐるしく移り変わっていきます。
まあこれは文章など読んでいないで映像を見てこられるのが一番です。

最後に、一番端の隊員は一人で敬礼しつつ連続で銃を回し続けます。

これがまず会場を沸かせます。

この技のことを「夢幻」というそうですが、やはり

「延々と回し続ける」=「無限」

からきているのかな。
防大儀仗隊のドリルは彼らが主に米海兵隊のドリルを参考にして取り入れ、
名前をつけて代々受け継がれている技で構成されています。

前にも書いたことがありますが、防大に儀仗隊ができたのは開校して
3年後ということなので、初代儀仗隊だったOBはもう80代になっているのです。

無限を行う時、敬礼しながら会場をぐるりと見回すのもお約束。
この「美味しい役」はおそらくこれを最後に引退する
4年生に与えられるのでしょうね。

というか、演技をしているのは袖の桜を見ると4年生中心のようです。

第302保安警務中隊のと違いこちらは「ファンシー」なドリルなので、
動きが華やかで、銃を投げる動きは頻繁に行われます。
しかし、これも今までの
音楽まつりで銃を落としたのを見たことがありません。

取り回しがしやすく美しいため儀仗に使われているM1ガーランド銃は
4.3kgとそれなりに重く(というか普通にかなり重いよね)特に
白い手袋をしていると取落すなど精度も下がると思われるのですが。

会場の隅に立っている二人の隊員が(おそらくこちら側にも二人)
銃を持っているのは、演技者に何か起こった際渡すためでしょうか。
しかしこの銃が実際に機能したことなど、過去の防大儀仗隊の歴史には
一度もなかったのではないかと思われます。

右端の隊員にも「見せ場」があります。
最後に思いっきりジャンプしながら銃を投げ上げて・・・、

高々と宙を舞う銃をしれっとキャッチ。

「今年は女子が多いですね」

リズムを担当するドラムラインを見て連れが呟きました。
言われてみると確かに。
大太鼓が女性だとすればメンバーのうち
半数近くの四人が女子生徒です。

しかも皆さん楚々として可愛らしい方ばかり。
このお嬢さん方が自衛隊指揮官として将来護衛艦の艦長になったり、
これからは戦闘機パイロットとなる可能性だってあるわけか・・。

それどころか、この学年が将官を輩出する将来には、もしかしたら
すでに初の女性幕長だって生まれているかもしれません。


ところで余談ですが、うちのTOはよく最近の学生や若い社会人を評して

「みんなのび太君としずかちゃんみたい」

と言っております。

この意味は、なべて最近の青年はおっとりしすぎて覇気がなく、
出世したりのし上がってやるぞ!というギラギラした野心が見られない反面、
女子は皆きちんとやることをやり、優秀な人が多いという傾向だそうです。

一般的に優秀な女性が社会に出て頭角を現すため、こう見えるのは
最近に限ったことではありませんが、特に最近、

TOのいる業界でも男性の「総のび太君化」が著しいのだそうです。

一般論として自衛官になろうとする青少年に覇気がないわけがないので、
男性「のび太君化」は自衛隊には関係ない話だと信じたいですが、
一方これから自衛隊という職場に、しずかちゃん的女性が今まで以上に
増えてくることは間違いありません。

自衛隊が女性自衛官の登用を一層推し進めている理由の一つに
深刻な人手不足があるというのも厳然たる事実なので。

ということはどういうことかというと、これからは相対的に
真面目で優秀な女性自衛官が増え、そのいずれかは
自衛隊のトップにのし上がる可能性も無きにしも非ず、ということです。

おっと、話が逸れました。

儀仗隊演技の途中には、会場が真っ暗になった瞬間発砲する場面があります。
わたしは火花が出る瞬間を撮ろうと、待ち構えていて会場が暗くなった瞬間
シャッターを切ったのですが、タイミングが合いすぎて画面が真っ白になっていました。
ISO感度の下限を設定していたので露出オーバーになったんですね。

しかも次のチャンスに全く同じことをして、真っ白な写真をまた撮りました。
うーむ、全く学習しない奴。

ファンシードリル演技最後のクライマックスに行われる
「銃のトンネルくぐり」。
正式になんというのかは知りません。

HPのメンバー紹介によると儀仗隊への入隊動機のほとんどが、

「防大でないとできないことをやってみたかった」

そして

「かっこいいから」

この二つのどちらかです。

かっこいいといえば、ただ指揮刀を持ってまっすぐ歩くだけの
この時の指揮官ほどかっこいい存在はありますまい。

きっとこれがやりたくて儀仗隊を目指す子もいるよね。

隊長だけがつば飾りのついた佐官クラス風の帽子をかぶるのを許されますし、
何年か前の端正な容姿の儀仗隊長など、その年の音楽まつりの顔として
DVDの
パッケージに大アップを飾ったというくらい目立つ存在です。

とにかく彼らの親御さんは嬉しいだろうなあといつも思いながら見てます。

音楽まつりの最終日最終回、このトンネルをくぐりぬければ、
儀仗隊長の儀仗隊生活は終わりを告げます。

他の儀仗隊メンバーの4年生たちにとっても、彼らの4年間は
これで終えて悔いのないものであったことを願って止みません。

全員が「夢幻」をしながら敬礼、隊長は抜刀し敬礼。

全ての演技を完璧に終え、防大儀仗隊退場です。

指揮官は松高諒典学生。

ドラムメジャーはシンガポールからの留学生、
ジョエル・ン・ジア・ジュン学生でした。

儀仗隊に留学生が加わっていることはたまにあるようですが、
ドラムメジャーとして名前を呼ばれたのは、わたしの知る限り
彼が初めてです。

彼は今回招聘バンドだったシンガポール軍楽隊の人たちと交流できたでしょうか。

 

続く。



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5 Comments

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63~66期です (Unknown)
2018-12-01 06:59:37
儀杖隊ではなかったので「グルグル」回せませんが、素手だと擦れて痛いので、手袋は必須だと思います。

M1は木部がほとんどなので、落して割れても予備があれば簡単に交換出来ます。アメリカで可動銃を買おうと思ったら、1万ドルが相場(製造していないのでオークションのみ)ですが、自衛隊や某大では木部だけはかなりの予備を持っています。練習を見ているとちょくちょく落しています。

M1は日本では「ガーランド」と言いますが、英語だとGarandなのでアメリカ人は「ガランド」(ラにアクセント)と言います。「ガーランド」と言っても通じません。

今年の四年生は63期なので、出ているのは63~66期(66期(一年生)はいないかもしれません)です。この間、遠洋航海から帰って部隊配属になったのが、61期(もう3尉)です。

学生と接する機会があるのですが、確かに「のび太君としずかちゃん」みたいに穏やかな子が多い気がしますが、言うべきことはちゃんと主張してもいます。

学生生活すべてに接している訳ではないので、実際のところはわかりませんが、約40年前は、学生舎生活という縦社会では服従ですが、校友会活動(部活)では、上級生とぶつかる場面もありました。

今はそういうところは、あまりなさそうに思います。実際はどうなのか、今度、聞いて見ます。
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いつ見ても (bpmana)
2018-12-01 15:40:29
儀仗隊 いつ見てもカッコいい
もう10年も時が経ちましたが
53期の儀仗隊長は海上要員であり
3年のときはアナポリスへの留学派遣
任官後自身の遠洋航海の2年後にも
かしま乗組になり遠洋航海参加
各国訪問時の栄誉礼指揮官も務めてました
その彼は今 最年少指揮官として
掃海艇みやじま艇長を務めています
返信する
帽子の被り方 (Coral)
2018-12-02 11:15:09
エリス中尉

帽子の被り方についてですが、
「シン・ゴジラの「悲劇」と国旗入場〜平成30年度自衛隊音楽まつり」
の中の下記コメントがついた儀仗隊を斜め右前から写した写真の帽子の被り方は姿勢と相まって流石に大変美しいと思います。
>警務中隊の写真をいかように撮っても、その隊列に乱れや狂いの類は全く見つけ出すことはできません。

同様に「陸自と海兵隊員のハイファイブ〜平成30年度 自衛隊音楽まつり」
の最後の海兵隊の帽子の被り方も美しいと思います。

さて、防大儀仗隊の「銃のトンネルくぐり」(以前は「指揮者の銃くぐり」
と書かれていましたが、「蹴り渡せ」指揮者ではなく列員に対する演技名ですね。一般者に分かりやすい名称に改称するよう提案してみてはいかがでしょう?(笑))
の写真ですが、帽子の角度がややあみだになり、被り方が深くそのため頭頂部が少し盛り上がっていて、残念ながら美しいというほどには見えません。

勝手に思うのですが、帽子のサイズが少し大きくこうならざるを得ないように思います。
近年中高生たちの学生帽を被る姿をほとんど見かけません。そんな帽子を被る経験の少なさが防大入校時に帽子のサイズを選定する時に適正なサイズ(私が思う)を選べていないのではないかと思います。それに着校時はまだ少しは長かった頭髪で少し大きい帽子を選ばせているのかなと想像します。
被るのではなく乗せる、というくらい感じの帽子を目深に被ると美しく感じます、多分。
返信する
防大儀仗隊 (元目指せ海上自衛官)
2018-12-08 16:03:44
大変ご無沙汰しております!
エリス中尉も音楽まつり行かれたのですね!
防大の儀仗隊についての記事でしたので、いてもたってもいられず、コメントしました笑
まず、今年は、昨年までと違って新たなフォーメーションが多かったですね。また、真ん中を通るやつは、他の方が書かれているとおり、「蹴り渡せ」という列員の技です。隊長は、列員を信頼することしかできないですし、一回踏み出すと、戻ることのできないかなり緊張する技ですが、練度で補って、あの技を完成させています!一番の花でもあるので、儀仗隊員としてもやり切れたのは嬉しいでしょうね。
また、今年度の、演技は、練度の高い四学年と三学年のつまり63、64期が大半を占め、二学年からは一名、一学年からは出ておりません。それを活かしての新しいフォーメーションの数々だったんでしょう。
「蹴り渡せ」の名称の件ですが、儀仗隊は、元来見せることも活動のうちとしてやってきましたが、技の名前まで注目されることは割と想定外でしたので、一般の方向けの名前の付け直しは必要なのかもしれませんね笑
また、過去何度かは、音楽まつりで落銃したこともありますが、基本的には無いように日々努力しております。
儀仗隊独特のつなぎを着ている学生は、一応、誰か演技中に入らないための見張りで、要は警衛として立っているので、基本的にあの銃を渡すことは無いと思います。実は、演技用の銃と、彼らが持っているような銃は色も全く違く、上手く空砲を撃つことができない銃もあります。下級生の練習用としてよく使われていますね。
銃の木部の替えについては、ストックは防大の場合はそんなに無いと聞いておりました。実は落銃しても、木部までやらかすことはあまり無いので、交換した経験のある隊員は少ないのではないかとも思います。余談ですが、高等工科学校のドリル部のガーランドは、やたら綺麗なものが多くて羨ましいと感じたこともあります笑
ドリルは、64期に女子学生が数名おり、65期も一名います。女子学生は入れる校友会が限られており、女子学生の中で、儀仗隊の人気が高まってきているのかもしれませんね。ちなみに、列員にも女子学生がおり、来年あたりからは出てくるとも思われますので、ご期待ください!
最後に、音楽まつりの出演部隊は、下で他の部隊と話す機会もあるみたいなので、ドラムメジャーのジョエルさんもきっと、シンガポールの軍楽隊員と話せたのではないかと思われます!
取り留めの無い長文失礼致しました。儀仗隊のマニアですのでつい、熱くなってしまいました・・・
返信する
みなさま (エリス中尉)
2018-12-08 21:10:39
unknownさん
儀仗隊でなくても銃を持つことがあるんですね。
生産されているものではないので壊したら終わりなのかと思っていたら、
ちゃんとメンテナンスのための用意もされているとはさすが防大です。

防大生気質ですが、戦後すぐは旧軍出身者である教官や先輩と
それは激しくぶつかり合っていた時代があったと聞いたことがあります。
何かと言うと「陸軍では」「海軍では」と口にする旧軍出身者を
戦後の旧軍パージの空気もあって疎ましく思う傾向にあったらしいんですね。

bpmanaさん
そんな優秀な人が掃海艇に進まれたんですか!頼もしいですね。
どんな人なのかつい検索して調べてしまいました。

防大からアナポリスに留学することができるとは知りませんでした。
毎年一人ぐらいは行っているんでしょうか。

coralさん
そういえばそうですね。最近の学生は帽子をかぶりません。
スーツ型の制服に帽子はありませんし、七つボタン型の制服にも
帽子を被っている姿を見たことはまずありません。
ふと気になって自分の出身中学のHPを見てみたら、制服は全く変わってないのに、
修学旅行の写真で男子は帽子をかぶっていませんでした。
いつからなくなったんでしょう。

思い起こせば、中学の男子も帽子をいろんなかぶり方してたなあ。
ちょっと粋がっている子はあみだにかぶり、真面目な子はまっすぐ深々と、
という感じで個性があったものです。

警務中隊などの制服の着方はさすがに完璧ですよね。

元目指せ海上自衛官さん
儀仗隊の詳しいお話興味深く読みました。ありがとうございます。
銃潜りは「蹴り渡せ」・・・命令形なんですかね。
なんとも納得いかない名前ですが、いつの間にかそうなってしまったのかな。

銃を持っているつなぎの学生は見張りですか。
銃を交換するのとおなじ、いやそれ以上に誰か侵入してくる可能性は
少なそうですが、まあ、その辺が自衛隊組織というものなのかもしれません。

高等工科学校の銃の方が綺麗なのにはなんか訳があるんでしょうかね(笑)

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