ネイビーブルーに恋をして

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映画「イン・ザ・ネイビー」〜はみ出し者たちの「スティングレイ」

2018-03-04 | 映画

というわけで、また潜水艦映画を紹介してしまいます。

 

この「イン・ザ・ネイビー」、原題、

「ダウン・ペリスコープ」(潜望鏡を下げろ)

「第二次大戦の遺物であるバラオ級潜水艦スティングレイで
はぐれ者や変人役立たずの部下を率いて最新鋭原子力潜水艦に挑む
落ちこぼれサブマリナーの物語」

という内容を見ただけで、迷わずぽちっと購入してしまいました。

それにしても、

”DOWN PERISCOPE"

という英題を見て、皆様何か感じませんか?
冠詞がないんですよ。
日本人の英語には冠詞がない、というのはよく言われることですが、
それはともかく、このタイトルにどうして「The」がないのか?

もしかしたらこれが潜水艦の現場では普通の号令となっているから?

アメリカ海軍も海軍ならではの「省エネモード」で(例えば日本海軍では
『お願いします』を『ねえす』『おはようございます』を『おおす』だったような)
独特の言語を発しているのかな?

一つわかったことは、この映画が1959年の真面目な?潜水艦映画

"UP PERISCOPE!"

からその題名をシャレで取ってきているということで、
こちらの「真面目な方」にも冠詞がないところを見ると、これが潜水艦での
「慣用句」なんだろうなと思うしかありません。

舞台はバージニア州ノーフォーク海軍基地から始まります。
世界最大の海軍基地であるここには現在ロスアンゼルス級を中心とした
原子力潜水艦隊を擁しています。

折しも行われている潜水艦隊司令部の首脳会議。
人事と昇進を決定する会議の席で、ある潜水艦副長の人事が話題になります。

原潜「オーランド」副長トーマス・ダッジ少佐は、潜水艦学校の成績も優秀、
指揮官としての資質も持ちながら、なぜか今まで艦長になるチャンスを逃してきました。
会議で名前が挙がるのは3度目です。

彼の昇進を阻んできたものは、航海士時代ロシアの潜水艦とニアミスをした
過去の失敗と、・・・多分このおっさん。

なぜか潜水艦隊司令部のグラハム少将は、ダッジを目の敵にしているのです。

おそらくその理由は、この型破りな性格。

「ナイス・オン!」


グラハム少将「それだけじゃないんですぞ!
彼は少尉時代、泥酔して、ぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に刺青を入れたんです!
『ウェルカム・アボード』とぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に!」


(うんざり・・・)

ところが、この後なぜかダッジ少佐のもとに辞令が。

「潜水艦長に任命する」

「ブルーの潜水艦だといいな!」

意気揚々とノーフォークに愛車で乗り付けるダッジ少佐。

しかし、現実は過酷でした。
嫌味ったらしく、わざわざグラハム少将が直々にボートに乗り込んで、
彼が艦長に着任するその潜水艦を指し示します。(暇なのか?)

「君の船、USSスティングレイ、SS161だ」

「スティングレイ」という名前の潜水艦は実際に2隻、

第一次世界大戦時のCクラス潜水艦、
第二次世界大戦時の「サーモン」級SS-186

として存在しています。
SS-186は16回もの哨戒を務め上げ最後まで生き残った
精鋭艦ですが、この映画では微妙に番号をずらしています。

そして実際のSS-161潜水艦は第一次世界大戦時のSボートの改装後となります。

「南北戦争の甲鉄艦メリマックといい勝負です!
原潜に乗せてください!」

憤然とするダッジに、グラハム少将はサディスティックにほくそ笑み、

「任務を拒否するのか?("Are you refusing take a man?")」

と凄むのでした。
しかも、

「私自身がスティングレイの乗員を全員選んでおいた」

暇なのかこのおっさん。

ダッジは早速、米海軍大西洋司令官隊の潜水艦隊司令である
ウィンスロー中将に直訴しにいきます。
しかし彼を「スティングレイ」の艦長にしたのはウィンスロー中将本人だったのです。

「ディーゼルエンジンの潜水艦が各国に流出しているという現在、
もしディーゼル艦で海軍基地が攻撃された場合を想定して
潜水艦隊はこれを阻止するための策を練らねばならない。

スティングレイを整備して大西洋岸でウォーゲーム(模擬演習)を行え」

「む・・・無理です」

「何を言っとる!ぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に刺青する勇気を持て!」

「その点はまあ・・じゃ攻略できたら原潜の艦長にしてください」

 

チャールストン海軍基地、ノーフォーク海軍基地に侵入し、
ダミーの戦艦に魚雷を二発撃ち込んだら原潜の艦長にしてやる、
という約束を取り付け、ダッジは艦長として着任しました。

 

まずは副長のエグゼクティブオフィサー、パスカルが元気すぎるお出迎え。

まずはギャンブラー「スポッツ」二等水兵。
本命をスって靴無しの乗艦です。

地獄耳の電信員、「ソナー」。

海軍刑務所から直送されてきた乗組員も。
警衛のガードを従えての華々しい登場です。

一級エンジン技師、ステパネック。

「一週間で監獄へ送り返されてやらあ!」

こんな彼の父親は実は提督だったりします。

調理員のバックマンと無線技師の本名ナイトロ(ニトロ)。

「マイクとかいうあだ名はどう?」

「お前バスケットの選手”ストーンボール・ジャクソン”だろ。
お前のおかげで1000ドルスった」

「ディフェンスされてシュートできなかったんだ!悪いか」

 
 
やれやれ、とダッジ艦長がやってきた埃だらけの艦長室。
 
実はこの映画、内部の撮影をサンフランシスコの海洋博物館に
繋留されている潜水艦「パンパニト」で行いました。
 
「パンパニト」については、このブログでもお話ししたことがあります。
わざわざ撮影のために古びた塗装に塗り直し、蜘蛛の巣まで付けたようです。
 
ちなみに錆だらけの「スティングレイ」も「パンパニト」が演じました。

艦長室には「最後のスティングレイの艦長」のものらしい写真が・・・。

その時艦長室にやってきた美女が。

「あー・・・わかった!
いたずらで誰かがストリッパーを呼んだんだな?
ああ、服は脱がないでね。皆忙しいから。
でも制服がよく似合うねえ!」

「ストリッパーではありません、サー。
潜航指揮官エミリー・レイク大尉です」

「女は潜水艦には乗れないはずだが」

「グラハム提督がわたしを女性潜水艦乗り第一号にと」

「あんの野郎・・・」


ちなみに、この映画公開の1年後、最初の女性潜水艦乗組士官が誕生しています。

そして作業が始まりました。

そしてみんなで楽しくスティングレイの整備と塗装、とにかく
乗れるようにしなければ。

しかし、艦長と副長から見て彼らの仕事ぶりは・・・・・。

海に放水されてしまう副長パスカル。

「あーあ・・・・」

怒りの副長、早速調理員のバックマンに八つ当たり。

副長は移動を申し出ますが、ダッジはにべもなく拒否します。

そうこうするうちに整備が終わりました。

艦体にはスティングレイのマークも描き込まれました。

早速制服をこっそり小さなサイズに取り替えられるという
セクハラの洗礼に遭うレイク大尉。

いよいよ新生「スティングレイ」出航です。
ここで鳴り響くのはコーラス付き「錨を上げて」。

艦橋には本当にダッジ(ケルシー・グラマー)が乗っています。

この撮影の時、「パンパニト」は自走できないので、曳航されています。

この写真をよく見ると、曳航している船の航跡らしき波が写っていますね。

CPO、機関室チーフの「エンジンルームの主」、ハワード。
演じているハリー・ディーン・スタントンは実際にも
海軍軍人として沖縄戦にも参加しています。
ただし、配置は調理師だったそうです。

「潜ったことがあるのか。事故以外で」

「模擬訓練300回以上、75回は強い潮流でした」

「さぞいい成績を」

「あなたより上でした」

「(カチーン)

「潜行用意!」

あれ、「パンパニト」本当に潜ってませんか?


これは模型らしいですが。

しかし潜行するなり艦体が傾いて艦内は阿鼻叫喚に。
悠々としているのは機関室の主ハワードとダッジ艦長だけ。

皆床を転がり、ある者は祈り、ある者はオッズを賭け・・。

ベント開放でことなきを得ましたが、艦長、ここで
500フィート潜行を命じます。

実は「バラオ」級潜水艦は構造上400フィート以上に潜行することは
不可能だということになっています。
400フィート越すと文字通り「クラッシュダイブ」の危険があるのです。

「このヒモを見てな。
深く潜行するとこのヒモはたるんでくる。
つまり空き缶みたいにひしゃげていくんだ。ふぉっふぉっふぉ」

爺さん、すっかり楽しんでるだろ。

ギャンブルコンビの操舵手。

400フィートくらいから艦体が軋み、ヒモはだらんだらんに。

セオリー通り、レイク大尉は

「この艦の最大潜行可能深度は400フィート(121m)です」

と中止を進言しますが、艦長は不敵にも限界まで挑戦することを言い放ち、

「怖いのか」

と大尉を挑発するのでした。

嫌な金属音がしてどこからともなく浸水し、ビスが弾け、
電球が割れてみんながもうだめ!と首をすくめた瞬間・・・・。

「ビンゴ!500フィートだ!
もうたまらんぜ!」

"I love this job!” はダッジ少佐の口癖です。

「諸君、おめでとう。
模範的な潜行(テキストブック・ダイブ)だった!」

この無茶振りでダッジ艦長は乗組員の心をがっちりとつかんだのでした。

さて、こちらは悪代官・・・ではなく、グラハム提督。
かつてのダッジの上官である「オーランド」艦長ノックスに、
「スティングレイ」が仕掛けてくるであろう模擬戦の説明をしています。

海軍の規定により、ノックスが相手の存在を知らされることはありません。

「一つ言えることは、その未知の敵は原潜の相手ではないだろうということだ」

「戦うのが楽しみです」

 

しかしそんなノックス艦長も、まさか自分に戦いを挑んでくるのがかつての部下、
ダッジ率いるディーゼル式潜水艦であろうとは夢にも思わなかったのです。

 

 

続く。

 

 



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4 Comments

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海上自衛隊だったら (鉄火お嬢)
2018-03-04 20:16:25
久々の実写・ザ・海上自衛隊『空母いぶき』でファンは盛り上がってますが(今城空将補、出演してぇ)『亡国のイージス』とか、シリアス路線はOKしても、こういうおちゃらけたコメディー路線は海上自衛隊の協力は無理かなあ。広報では陸幕空幕がお口あんぐりなCMなども結構平気でやってきた実績?はあるんですがね。ましてビー!!が連発は難しい?(笑)
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スティングレイ (お節介船屋)
2018-03-04 20:44:10
>第一次世界大戦時のCクラス潜水艦
1911年改名でC-2 SS-13 1909年竣工、1920年売却
排水量水上240トン、水中273トン、全長32.1m、幅4.2m、吃水3.3m、ガソリン機関2基水上、電動機2基水中、2軸、水上11kt、水中9kt、45cm魚雷発射管2門、魚雷4本、安全潜航深度61m、乗員15名
ホランド型、初めて無線搭載、発射管の門扉が回転式のため同時2門発射は不可能、外洋行動は可能だが凌波性は不十分、第1次世界大戦でパナマ運河防衛。

>第二次世界大戦時の「サーモン」級SS-186
1936年度計画6隻の1艦、1938年竣工、雷装強化、水上速力向上、魚雷発射諸元計算盤の本格的装備。
基準排水量水上1,449トン、水中2,198トン、全長93.9m、幅8.0m、吃水4.8m、デイーゼル機関4基、電動機4基、2軸、水上5,500馬力、水中2,660馬力、水上21kt、水中9kt、7.6cm50口径単装砲1基、12.7㎜単装機銃2基、7.6㎜単装機銃2基、魚雷発射管艦首4門、艦尾4門、魚雷20本、安全潜航深度76m、乗員59名2次大戦初期過酷な戦闘に従事、戦没艦なし 
デイーゼル・エレクトリック方式の進歩でデイーゼル1基と電動機2基で両軸駆動しつつもう1基の主機で充電可能。
この次のクラスから耐久力抜群の電池採用等日本潜水艦と技術の差が見える。

>SS161
艦名S-50
1919年計画S-48級4隻の1艦、1922年就役
ドイツ潜水艦の影響で艦尾発射管装備、水中旋回圏が大きく、迅速な反転襲撃困難、主機の信頼度低く、事故後船体延長主機換装し近代化改装を受けたS-48以外3隻は1930、31年除籍。
排水量水上903トン、水中1,230トン、全長73.2m、幅6.7m、吃水4.1m、デイーゼル機関2基、電動機2基、2軸、水上1,800馬力、水中1,500馬力、水上14.8kt、水中11kt、10.2cm50口径単装砲1基、53.3cm魚雷発射管艦首4門、艦尾1門、魚雷16本、安全潜航深度61m、乗員38名。
参照海人社「世界の艦船」No567
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会話ではないので (Unknown)
2018-03-04 21:10:00
「Down Periscope」は「潜望鏡下ろせ」という号令で会話ではないので冠詞がないのだと思います。

米軍では簡単な表現を使うことが多いです。例えば、自衛隊では艦内放送で状況説明をする時「達する。本艦は現在○○国と交戦状態にあり、××軍の艦艇を護衛し・・・」のような説明をしますが、米軍だと「Now here this.」で日本のように文語調?ではありません。

ノーフォーク基地?の停泊艦艇から見るに、1960~70年代の撮影で、イージスが登場する前のようです。軍艦らしいタロスやテリア艦がズラッと並んで壮観です。イージスからはノッペリしてしまいました。

潜水艦が女性に開放されたのはごく最近なので、この時代、実際には女性の乗組員はいなかっただろうと思います。

米軍を見ていると、シャワーなんか男女混合でもお互いにあまり意識しないので、日本人とはずいぶん違うなと感じます。

日本では、ウェーブ隊舎は外から中が見えないようにすりガラスに格子がはまっており、たとえ総監(今のところ、男性しかいません)でも許可がないと立入出来ないようになっています。
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みなさま (エリス中尉)
2018-03-08 12:58:08
鉄火お嬢さん
「空母いぶき」実写化されるんですか。
どこの国でも軍隊はパロディの対象になるものですが、日本では色々と無理かな・・。
自衛隊を敵視する側はもちろん、自衛隊の中や自衛隊を応援する側からも
ふざけるな!と文句が出てくるでしょうね。
全くつまんない国にしてしまったものです。

お節介船屋さん
実在した名前を使いながら撮影を「パンパニト」に頼るほかなかったので、
色々とおかしなことになってますね。
いっそ劇中でも「パンパニト」にしておけばよかったのにと思うのはわたしだけ?

unknownさん
映画の命令シーンで「潜望鏡を上げろ」「下げろ」では必ず定冠詞なしですね。

映画は1996年公開なので、基地の様子もそんなに古いものではないはずです。
ただしこれには事情があって、メインのシーン撮影はノーフォークではなく全て
サンフランシスコ近辺で行われたからだとか。
当時ベニシアでモスボール化されていた船が写り込んでいるので、型が古いんですね。
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