スミソニアン航空博物館の「第二次世界大戦の航空」コーナーから、
搭乗員の飛行服ファッションショーと銘打ってお届けしましたが、
今日は軍服(サービス・ユニフォーム)を紹介します。
まずは枢軸国から。
イタリア王国
イタリア空軍のことをレジア・エアロノーティカというのを
わたしはルフトバッフェと同じくらい気に入っているので、
ここでも文字数は多いですがそう呼ぶことにします。
軍服ファッションショーのトップを飾るのは
やはりファッション大国イタリア、レジア・エアロノーティカの、
元帥閣下が着用されたサービスコートでございます。
スレート・ブルーの繊細な色合いがさすがイタリーのオフィサー用コートは、
アルベルト・ブリガンティ元帥の私物であったということです。
Maj. Gen.Alberto Briganti
シングル・ブレストでヒップ・レングス。
ボックス・プリーツ付きの上部ボタン・フラップ・ポケットが2つ、
下部ボタン・フラップ・ポケットが2つ。
金ボタンにはイタリアの王冠を冠した鷲のエンボス加工が施されています。
両袖口に金線の航空総隊章。
両肩に金線の航空上級士官章、両襟に金色の五芒星とイタリアの王冠の襟章。
左胸のポケット上には14個のメダルリボンが付いています。
これらは戦功十字章や永年勤続勲章のほか、第一次世界大戦の勲章、
1911年にイタリア・トルコ・リビア戦争、そして第二次世界大戦に参加した、
などという功績に対して授与された軍人としての記念です。
是非アップで見ていただきたいのが士官用の正帽。
正面の帽章に凝った刺繍が施されているのは各国共通ですが、
他の軍帽なら黒一色が普通のいわゆる「腰」部分にも前面に刺繍があります。
写真のブリガンティ元帥は冬用の濃色の帽子を着用していますが、
夏用も冬用もカバーは使っていないので、レジア・エアロノーティカ、
夏冬で二つの帽子を取り替えて使っていたようです。
ナチスドイツ帝国
ルフトバッフェ 将校用サービスコート
シングルブレスト、前身頃に4つの銀ボタン、
胸上部にボックスプリーツのポケット、
ジャケット下部に2つのボタン付きフラップポケット付き。
黄色の襟章は彼が飛行要員であることを示しています。
そしてハウプトマン(大尉)の階級を示す黄色の階級章。
右肩にグルッペアジュタント(副官)を表す銀色の飾緒、
右胸にある銀のワシはルフトバッフェ、ドイツ空軍の国家記章。
そして右側胸ポケットに輝いているのが金色のドイツ十字章です。
海自では1佐以上の正帽の鍔につく刺繍を「カレー」と称するようですが、
なんと第三帝国でもこの手の俗称は存在していて、
この十字章をはじめとする金色のものは
「目玉焼き」(ドイツ語だからシュピーゲルアイ)
と呼ばれていたとかいなかったとか。
左胸の一番上にあるのが戦闘機パイロットを表すバッジ、
左上ポケットの上部には戦闘記章リボン、左ポケットに第一級鉄十字章、
左ポケットの下にある丸い月桂冠に鷲のアビエイターバッジとなります。
その他装備からわかるのは、彼が20回以上の飛行任務を行なっていること、
4年間の従軍記章を獲得していると言うことです。
乗馬用語でロングブーツとともに着用するズボンをブリーチと言います。
ちなみにこのブリーチ、膝から下はないので、ブーツを脱ぐと
ものすごくかっこ悪いシルエットになってしまいます。
ブーツなしではナチスドイツの制服は完成しない!ということですね。
両脇と、なぜかファスナーのあるところに小さなポケットがあります。
何を入れるためのポケットなんだろう。
家の鍵とかかな。
左の腰に将校用の短剣、M 1937が佩用されています。
銀メッキの儀式用短剣で、グリップは黄色のイミテーションの象牙、
柄頭(ポメル)には鉤十字があしらわれ、
刀の鍔にはドイツ空軍のワシが翼を広げた姿、
銀の結び目が付けられ、鞘はスチール製、ストラップはベルベット製です。
ドイツ空軍将校の正帽はブルーのウールが主材で、
シルバーのパイピング付きとなっております。
バイザーとチンストラップは皮、ピークには銀色のドイツ空軍の鷲、
帽章にあたる部分にはシルバーワイヤーの
黒、赤、白の花形帽章「コカルド」が付いています。
帽子の裏地には金色のプリントでメーカーのマークが入っています。
🇯🇵 大日本帝國
日本陸軍航空隊 士官候補生(軍曹位)パイロット軍服
「第二次世界大戦のエース」コーナーで海軍エースしか言及がなかったので、
公平を期すためなのか、軍服も飛行服も陸軍のものです。
いや・・・陸軍でもいいんですけどね。
どうせなら海軍第二種夏服、せめて第一種冬服にしていただきたかった、
と考えずにいられないのは私だけではないと信じたい。
展示されている陸軍航空隊(JAAF)使用、
オリーブ・ドラブ・ウールのサービス・コートは、
上部にボックス・プリーツとボタン・フラップ付きの2つのポケット、
下部にボタン・フラップ付きの2つのパッチ・ポケット、
フロントの5つの竹製ボタンには金色のペイントが施され、
ボタンには桜の花の彫刻が施されています。
この情報で「ボタンが竹製の金色ペイントだった」と知って驚きました。
金属不足だからといってボタンまで・・・・・。
ちなみに陸軍のズボンもブーツを履くことを想定してデザインされているので
ブリーチ式(乗馬ズボン式)で丈が膝までしかありません。
従って、短靴を着用するときにはゲートルを巻くことが必須でした。
こういうマークにもいかにもお金をかけていない感じが・・・。
日本人ぽい顔のマネキンを特注してくれたのはありがたいですが、
陸軍の士官候補生なら丸坊主にしていたはずなのでこの髪型はバツです。
ガラスの説明にはこのようにあります。
戦争の最後の2年間、多くの日本軍の士官候補生たちは、
完全に訓練が完了しないうちに
戦闘部隊に割り当てられ実践を行いました。
これは日本軍の戦闘員の著しい損失によるものです。
・・・はい。
🇬🇧 大英帝国
ロイヤル・エア・フォース 軍曹搭乗員サービスユニフォーム
英国空軍のブルーグレーのウール製サービスブラウス。
ウエスト丈の短いタイプで、前身頃は隠しボタンとなっています。
上部にボックスプリーツとフラップ付きの2つのパッチポケット、
身頃と一体型のウエストベルトはバックルで留めるタイプ。
左胸ポケット上部に王冠を被り、
中央にRAFとF刺繍のある翼のパイロット徽章、
左胸ポケット上部に
Distinguished Flying Crossリボン(紫と白の斜めストライプ)、
両腕に軍曹の階級章、右上と左袖に刺繍のRAFイーグル徽章。
階級章の上の両腕に水色の刺繍のRAFイーグル徽章が付いています。
青のサービスユニフォームは案外他で見たことがありませんよね。
このユニフォームのブルーは1918年にRAFが創立した直後から
航空隊のシンボルカラーのようになっていました。
というわけで、フィールドキャップ(いわゆるギャリソンタイプ)、
サービスブラウス、ズボンは全てブルーです。
靴とネクタイは黒で、中のワイシャツの襟は取り外し可能。
ここの展示されている装いは、標準的な兵隊のもので、
袖のシェブロン(階級章)は軍曹のランクであることを示しています。
ところでちょっと余談ですが、
アメリカにシェブロン石油というのがあります。
このマークが、これ。
軍服の袖にあって階級を表す山形の線のことを
「シェブロン」(Chevrons)というわけですが、この会社のマークは
まさにそれを表しています。
ちなみに最初は「パシフィック・コースト・オイル会社」という名前で
マークだけがシェブロンでした。
1969年、同社は社名をマークである「シェブロン」に変えます。
「シェブロン」そのものの意味は「山形のマーク」です。
彼の両肩には、このような向かい合わせの対になった
「アルバトロス 」の刺繍があります。
「アルバトロス付きの搭乗員」は、バトル・オブ・ブリテンなど
第二次世界大戦の期間を通してRAFで重要な役割を果たしました。
🇺🇸 アメリカ合衆国
アメリカ陸軍航空隊志願任務者ユニフォーム
大戦中搭乗した「アイク・ジャケット」は機能的でスタイル良く見えるため、
あらゆる階級の軍人の方々に大変ご好評をいただいております。
右袖口近くの三角形のマークは「コミニュケーションスペシャリスト」の印。
左袖口近くの3本の横金線は、かれが合計で
18ヶ月の海外勤務をこなしたということを表します。
胸元に日の丸が見えていますが、これは
反対側にある零戦のマークが映り込んでいるだけですので念のため。
ヨーロッパ戦線で陸軍航空隊の無線通信士として搭乗していた
M.モーガン・ローリンズ軍曹が着用していた制服です。
WASP(女性空軍サービスパイロット) ユニフォーム
それでは最後に、女性軍人(空軍パイロット)の制服をご紹介しましょう。
シングルブレストで仕上げられたウールのドレスチュニックは、
サンティアゴ・ダークブルーといわれる紺色です。
フロントは金属製の3つの黒ボタン、左胸のWASPパイロット・バッジは、
中央にダイヤモンドの付いた翼がかたどられております。
四つのフラップ・ポケット、ウェスト部分のダーツは
女性の体型を美しく見せる効果があります。
両襟タブに光沢のある真鍮製の「W.A.S.P.」と空軍の翼付きプロペラの記章、
左腕の肩に陸軍空軍の刺繍入り記章
(青地に白の五芒星と赤のセンター・ドット、金の翼)が付いています。
陸軍航空隊の徽章は左袖の上肩部分に付けられています。
帽子は小粋なベレー帽で、中央に
アメリカの鷲をあしらったバッジがあしらわれています。
おそらく当時のWACはこれを斜めにかぶって着こなしたのでしょう。
やはり女性軍人のためには
これ着てみたい!と思わせるデザインが必須ってことですね。
続く。
やっぱり、私物だと仕立ても生地もいいですね。日本陸軍の制服は、かなり残念です。
自衛隊では、以前、官品(支給品)の質がよくなく、儀式等では私物を着ていることが多かったのですが、生地の色が明らかに異なり、官品を着ている人と私物を着ている人が並ぶと、不揃いに見えるので、ある時に儀式では私物着用禁止となり、その頃からか、官品の質が向上して来ました。
英国の短ジャケットは機能的でいいですね。Uボートの乗員もこれを着ている写真が多く見られます。最初は急場の間に合わせで敵の捕獲品を使ったのですが、好評だったので自国でも生産するようになったとか('ω')
褐青色衣袴を着て、ネクタイを締め、パイロットはブーツ型の航空夏靴を履いていました。
上質なサージ、肩章留めの肩ボタンとストラットは残し、軍衣襟章を付けていました。正規の士官は銀の桜花、予備士官は銀のコンパスマークでした。3つボタン、両胸ポケット。両脇ポケット付き、背中は両脇が絞ってサイドベンツが正規、略衣はベルト状の横絞り、センターベンツでした。予備士官の名称がなくなったのは昭和18年12月でした。ネクタイは紺の絹織り、シャツは薄い褐青色の木綿製でした。
昭和19年夏敗戦が色濃くなり、第3種軍装イコール陸戦被服となり、褐青色の略帽、略衣、略袴、シャツ、ネクタイとなりました。
参照並木書房柳生悦子著「日本海軍軍装図鑑」