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日米空挺降下の違い〜平成30年度 陸自第一空挺団降下はじめ

2018-01-19 | 自衛隊

さて、ブラックジョークに近いアメリカ陸軍空挺隊の「愛唱歌」、
「ライザーの血」について解説しましたが、空挺という危険な兵種で
その最悪の事態を起こさないための安全対策というのは、当然としても、

「ちゃんと安全確認しないと死ぬよ」

とか、

「空挺で死んだらこうなるよ」

という程度のことをどうしてこうくどくどと歌にまでしないといけないのか。

わたしは思うのですが、アメリカ陸軍の兵の裾野というのは大変広く、
自衛隊のようにある程度のレベルの学力がないと入ることもできない軍隊と違い、
特にこの歌が生まれた第二次世界大戦時には、ほとんど字も読めないレベルの
兵隊が山ほどいたので、そんな彼らに教科書を読むことでなく
感覚で失敗の怖さを植え付けるために、陸軍ではこのような啓蒙ソングを作り、
繰り返し歌わせたのではないでしょうか。

さて、そんな空挺の系譜である特殊部隊、陸自グリーンベレーの空挺が行われています。
彼らの使用している傘と陸自のそれの違いを見比べられただけでも価値があります。

よく考えたら、日本において日米の訓練展示を見る機会など初めてです。
去年からの降下始めへの米軍参加は、米軍側からの申し入れだったそうですが、
注目すべきは本日参加したグリーンベレーが沖縄駐留部隊であること。

戦車を投入した島嶼防衛のシナリオによる想定訓練はありませんでしたが、
これはよく考えたら、いやよく考えなくても、彼らは尖閣への空挺を想定しており、
これもまた角度を違えた島嶼防衛訓練であると見ることができるのです。

そりゃ共産党市議が文句の一つも言いたくなりますわね。

ちなみに今年の訓練について共産党が抗議したというニュースは
今のところ寡聞にして知りません。

とにかく、初めて見るアメリカ陸軍の空挺、傘の形だけでなく
陸自空挺団とのやり方の違いに注目してみましょう。

この降下している人を拡大してみると、女性らしいことがわかりました。

ね?女性でしょ?
前回女性空挺兵が乗り込んでいくのを写真上で見つけ、探してみたのですが、
どうやら彼女がその一人のようです。

しかし、グリーンベレーの女性・・・凄すぎる。

第一空挺団の降下も間断なく行われます。
我が空挺団の降下は、両足を揃え、腕を閉じて行われます。

少しでも空気抵抗を少なくすることが主目的ですが、
索が伸長する際に腕に絡まる万が一の危険を排除するためでもあります。

降下中、手は補助傘においている人が多いようです。
陸自仕様のスタティックラインジャンプ用傘は

696MIパラシュート、通称12傘(ひとにいさん)

といいます。
いちにがさと読むんじゃなかったのか。

ここで米軍のジャンプを見てみます。
多分この時も「エアボ〜〜〜ンッ!」とか言ってると思います。

米軍も腕を組んでいますが、脚は踏み出したまま宙を歩くような感じ。
陸自と違って脚を揃えることにはなってないみたいですね。

米軍の傘も二種類があり、指揮官が使っていた四角っぽいのと
別のタイプは、自衛隊のヒトニイサンに形は大変よく似ています。

あっ、この左上の降下者も女性かな?

自衛隊の傘との違いがよくわかる画像。
キャノピーの空気抜きのある反対側表面が二重のダーツが取られていて、
その中に空気を含んで傘の形が膨らんでいます。

色も空挺団のゴールドに対し、オリーブドラブ色に近い感じ。

彼らにとっても、こんな住宅街の真ん中に降りる経験は貴重かもしれません。

米軍の着地してからの様子にも注目してみましょう。

遠目に見て彼らと陸自の見分けは、靴の色でつけることができます。
靴の部分が赤いですが、何かバンドを巻いている模様。

そして着地。
もうすでに地上にはいくつもの傘が・・・ん?まだ落ちてる?

その訳はですね。
アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーの皆さん、着地した後は、
こうやって結構長い間横になってぢっとしているからなのです。

目の前で起こっていることが信じられなくて、なんども確認したので間違いありません。
前半エントリで米軍の指揮官がいつまでも寝ていたというのをご紹介したところ、
招待参加の方から

「落下傘を束ねるのが苦手で、風で煽られ落下傘に振り回されるのが
みっともないから、お手伝いが来るのを待っていた・・んじゃないの」

と指揮官降下経験者の元自衛官が言っていたと教えていただきました。

なんでもこの元指揮官は、指揮官降下で無事に着地までは良かったのですが、
その後傘を束ねようとして、風で煽られた落下傘のあとを追いかけて走り回り、
ご家族の前で面目丸潰れになったという経験則から米軍司令官の寝たきり事件を
上記のように解析されたのだということですが・・・。

んが、ここで寝ている人たちはお手伝いが来てくれるような偉い人じゃありません。

そもそも空挺部隊というのは基本地面に降りてからがお仕事開始なので、
こんなにのんびり空を見ていていいのかと心配になります。

心配になるほど横になって休憩していたかと思うと、ようやく
首をもちあげて起きる気になった様子です。

ははーん、これは、あれだな。

陸自の人も、訓練の合間に一瞬の隙があれば「寝る」っていうじゃないですか。
あの瞬間、彼らは心から幸せだと思うという話をどこかで読んだのですが、
きっとグリーンベレーのお兄さん(お姉さんもいるけど)は降下直後、
しばし大地に横たわって一息入れているのに違いありません。

一応起き上がったら走って行動しております。
向こうでは傘の片付けも終わりそう。

傘の入っていたコンテナ(背嚢)をわざわざ外して索の先まで運びます。

向こうではキャノピーを畳んでいますが、なんだかずいぶん仕事が丁寧ね。

まず索を先端からまとめて、っと・・・・・。

まとめた索の先から順番にコンテナに詰めていきます。
これがまた結構時間がかかるんだ。

ようやく詰め込み作業完了。
・・・ってか現場でここまでやるんだ・・・。

ちゃんとコンテナのベルトを留めて、よっこいしょういちと背負い退場。
一仕事終えた感満載の後ろ姿です。

さて、その間にも、次々とヘリコプター、航空機が空挺部隊を降下させます。
C-1からの降下はよく「走る新幹線から飛び降りるのと同じ」と言われ、
しかもそれが東京タワーの高さからだというのですが、タワーよりずっと高く見えます。

 

C-1 やC-130Hなど固定翼機からの降下は両側のドアから行います。

ほら、一航過するだけで驚きの降下が!洗剤のCM風に)
20名が一度に飛び降りました。

すると、まだその先陣が降りきらないうちにもう一度C-1航過!

ああ純白の 花負いて  ああ青雲に 花負いて 」

「空の神兵」にもこう歌われているように、その頃の傘は真っ白でした。

視認性を低くするために今では白い傘は軍用には使われなくなりましたが、
旧陸軍の空挺降はさぞ幻想的で美しかったことでしょう。

この傘がそのまま白かったら、と空想し、ついでこんなことを考えました。

「メナドやパレンバンに侵攻したときの落下傘もこんなだったのかな・・・」

空の神兵

本当にこんな感じです。
降下する直前の彼らの表情、陸攻のパイロットが下を見つめる表情、
(この人がものすごい男前!)貴重なフィルムを歌とともにどうぞ。


降下中の姿勢は日米両軍ともに変わりなし。
傘の索の中には、降下者が引っ張れば傘の形を変えて
降下地点をある程度操作できるコントロールラインがあります。

この降下者は右手でそれを引っ張り、操作しています。

そして着地してから。

5点着地によって衝撃を緩和するように着地した後は、
空挺団はすぐさま立ち上がり、傘の片付けに取り掛かります。

寝転んで空を見ているなどという悠長なことは我が空挺団には許されません。

体に付いたままの索を束ね、振り回すように回転させながら
手元に引き寄せて手早くまとめていきます。

降下してから傘をまとめるまで、ほんの2〜3分という感じです。

そして、そのまま傘を抱えて走って退場していきます。

先ほどの写真の米軍兵が寝ている間に、自衛隊は2機の航空機から空挺が着地し、
米軍が落下傘をコンテナに詰めている間に、着地したそれらの2グループは
ほとんどが傘をまとめて撤収していきました。

つまり、一番の日米両軍の違いは「降りてから」だったのです。


もっとも、万が一実戦となれば、米軍も傘を片付けたりはせず
そのまま次の戦闘行動に移るのでしょうし、自衛隊も抱えて走ったりせず、
落下傘をその場に脱ぎ捨てていくのだろうと思われます。

そして最も大きな違いがこれ。
グリーンベレーはスマホでインスタ映えも狙えてしまう模様。


続く。




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1 Comments

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ざっくり (Unknown)
2018-01-20 06:37:50
米軍はざっくりというか大雑把な印象があります。

先日、沖縄普天間基地所属のヘリコプターが緊急脱出用の窓を小学校の校庭に落した事案がありました。CH-53ですが、自衛隊にいたMH-53と窓は同じです。

緊急脱出用なのでレバーを引くだけで落ちるようになっているのですが、普通のフライトで落ちたらまずいので、レバーをワイヤで固定します。ワイヤの有無はパイロットの飛行前点検で一目でわかりますが、事故機のパイロットは見落としました。

実弾射撃の訓練を見せてもらったことがありますが、自衛隊が見たら卒倒します。

自衛隊だと弾薬の管理は厳重なので、事前に既定の弾数を詰めた弾倉を渡し、射撃が終わったら、残弾がないことと薬きょうの数が渡した数と合っていることを確認します。

米軍は紙箱に入った弾薬を持って来て、各人好きなだけの数を取り出し、射撃します。

上手い人は少ししか取らないし、上手くないと思う人はたくさん取ります。理にはかなっていますが、誰が何発取ったとか撃ったとか管理はしないし、当然、撃ち殻薬きょうは回収しません。

長年そうなので、空挺部隊の歌みたいに多少ブラックなことを言わないとダメなんでしょうね。
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