海自の艦艇の見学を案内付きで行ったときのことです。
格子のついた扉の前で、案内の自衛官が、
「ここが何に使われるか知っている方おられますか」
と質問をし、それが艦内牢であると種明かししたのですが、
軍艦に限らず、およそ一定以上の規模の船には、必ず
勾留室に使う外鍵の部屋が存在します。
最初にアメリカで軍艦を見学し始めた頃、
この「シップズ・ブリッグ」の存在に驚いたものですが、
民間船にもそれが存在することがわかりました。
■ 「リトルロック」のブリッグ

「ベトナムルーム」を見学し終わると、そこは艦首部分になるわけですが、
そこにさらに一階下に続く階段が現れます。
これまで見学してきたのがメインデッキの下のセカンドデッキのさらに下、
サードデッキだったので、このさらに下はというと、
おそらく「ファーストプラットホーム」ではないかと思うわけです。
サードデッキだったので、このさらに下はというと、
おそらく「ファーストプラットホーム」ではないかと思うわけです。
艦艇居住区の最下層となります。

ところで「G」って何かしら。
ガムテープで作った車の形がほのぼのしますね。
黄色い矢印は、左側通行をするようにという指示です。


ところで「G」って何かしら。
ガムテープで作った車の形がほのぼのしますね。
黄色い矢印は、左側通行をするようにという指示です。

居住区の最下層にはたくさんの水兵のバンク(ベッド)があります。
一段の高さは・・・60センチくらいしかなさそう。
一段の高さは・・・60センチくらいしかなさそう。
一番上の段に寝ている人は、うっかり体を起こしてしまったとき、
パイプなどに頭をぶつける危険あり。
なんと言っても最下層ですから、エンジン音も凄まじかっただろうな。
パイプなどに頭をぶつける危険あり。
なんと言っても最下層ですから、エンジン音も凄まじかっただろうな。

このコンパートメントのドアにはあまり水密性がなさそうです。
そのドアに貼られた次の展示のご案内は・・・。

そのドアに貼られた次の展示のご案内は・・・。

「シップズ・ブリッグ」=艦内監獄でございます。
写真に撮られている人が本物でないのは、彼らがセーラー服を着ていて、
スカーフを取り上げられていないことからもわかります。
スカーフ以外にもネクタイ、靴紐、ベルトなど長いものは没収されました。
写真に撮られている人が本物でないのは、彼らがセーラー服を着ていて、
スカーフを取り上げられていないことからもわかります。
スカーフ以外にもネクタイ、靴紐、ベルトなど長いものは没収されました。

後で紹介しますが、一口にブリッグと言っても十艦十色、
艦によってその佇まいもさまざまです。
それでいうと、ここ「リトルロック」のはごく小規模でしょう。
厳重に鍵のかかる鉄格子の中は三段ベッド。
定員3名か?
それ以上の不届者が出たら、その時はどこに収監したのでしょうか。
艦によってその佇まいもさまざまです。
それでいうと、ここ「リトルロック」のはごく小規模でしょう。
厳重に鍵のかかる鉄格子の中は三段ベッド。
定員3名か?
それ以上の不届者が出たら、その時はどこに収監したのでしょうか。

現段階ではここに一人収監されており、
寝転がって新聞を読むという監獄ライフを満喫しているようです。
寝転がって新聞を読むという監獄ライフを満喫しているようです。
別の見学艦(『セーラム』)で見つけたブリッグの規則は以下の通り。
a. 収監者は常に身体検査を受けなくてはならない
検査は収監前、衛生士官、監獄士官?看守によって行われる
検査は収監前、衛生士官、監獄士官?看守によって行われる
b.ブリッグスペースはいつも清潔にしておくこと
c.専用の衣服を身につける。
収監中は貴重品などを預かるが、釈放時に返却する
もし無くなったりした時には捜査依頼にサインすること
収監中は貴重品などを預かるが、釈放時に返却する
もし無くなったりした時には捜査依頼にサインすること
d.規定の髪型にカットすること
収監中は清潔を保つこと/口髭は禁止 /靴を磨くこと
収監中は清潔を保つこと/口髭は禁止 /靴を磨くこと
e.重労働収監者は仕事にアサインすること
「パンと水」収監者は見張りのいるところでしか活動できない
「パンと水」収監者は見張りのいるところでしか活動できない
f.司令官かブリッグオフィサーがイベントにおける行動を指揮する
g. 収監者はもし状況が許せば、一日に30分から1時間
運動か訓練に参加することができる
こんなところで閉じ込められっぱなしで、
たとえ状況が許しても一日1時間しか運動できないなんて・・。
否が応でも反省モード突入ですな。
営倉では基本パンと水だけしかもらえなかったそうですが、
パンがよっぽど好きなら問題ないかもしれません。
ある空母での実話だそうですが、何人かの収監者が、
パンと水しかもらえないのに憤慨して、1日目は喫食拒否したものの、
二日目から何を思ったか、パンをお代わりしまくってモリモリ詰め込み、
水を飲みまくると言う「逆ハンガーストライキ」を決行しました。
その後数時間で全員が「胃が引き裂かれるような」痛みを覚えましたが、
パンがよっぽど好きなら問題ないかもしれません。
ある空母での実話だそうですが、何人かの収監者が、
パンと水しかもらえないのに憤慨して、1日目は喫食拒否したものの、
二日目から何を思ったか、パンをお代わりしまくってモリモリ詰め込み、
水を飲みまくると言う「逆ハンガーストライキ」を決行しました。
その後数時間で全員が「胃が引き裂かれるような」痛みを覚えましたが、
ストライキは三日続けられ、さすがにこれは馬鹿げていると思ったのか、
彼らはパンのドカ喰いはやめ、普通の量を食べることにしました。
というより、食べられなくなったということだと思います。
しかし何人かは、これがトラウマになってしまい、
その後どうしてもパンが食べられなくなったそうです。ばかす。
パンがダメならお米を食べればいいじゃない、と思いますが、その頃
アメリカ海軍で米が出されることはほぼなかったものと思われます。
今なら多様性の時代なので、艦内でも、メキシカンやチャイニーズなどで
(多分寿司はない)米料理がたまには食べられているかもしれませんし、
ピザは今やアメリカの国民食ですから、いくらでもパンの代わりはありそう。
彼らはパンのドカ喰いはやめ、普通の量を食べることにしました。
というより、食べられなくなったということだと思います。
しかし何人かは、これがトラウマになってしまい、
その後どうしてもパンが食べられなくなったそうです。ばかす。
パンがダメならお米を食べればいいじゃない、と思いますが、その頃
アメリカ海軍で米が出されることはほぼなかったものと思われます。
今なら多様性の時代なので、艦内でも、メキシカンやチャイニーズなどで
(多分寿司はない)米料理がたまには食べられているかもしれませんし、
ピザは今やアメリカの国民食ですから、いくらでもパンの代わりはありそう。

ブリッグの一角に佇んで何かを天井に問いかけている人。
上記規則の「口髭禁止」「規定の髪型」に違反しているんですがこれは。
■ 過去トリップで遭遇した軍艦のブリッグ

まずは戦艦「マサチューセッツ」のブリッグをご覧ください。

さすが戦艦だけあって、独房が5つも並んでいます。
喧嘩した同士が隣同志の房に入れられて、口で続きをしようとして
監視に怒られたり・・・そんなことがあったかも。
喧嘩した同士が隣同志の房に入れられて、口で続きをしようとして
監視に怒られたり・・・そんなことがあったかも。

独房の一つ。
「リトルロック」より居住環境は少し良さそうです。

「マサチューセッツ」の乗員でアーティストが描いた漫画で、
このエズラ・プラム(プラムってバカって意味なかったっけ)水兵は、
故郷で奥さんと一緒にちょっとでも長く過ごしたくて、
三日も艦に戻るのを伸ばしてこうなってしまったというわけです。
セリフは、
奥さん「帰ってきてくれてとっても嬉しいわ、エズラ。
でも上の人たちは怒ってるんじゃないの?」
エズラ「たぶんね・・・でも何もされないと思うよ?
だってたった3日帰艦を遅らせただけなんだし」
そして、独房に座って、
「なんてこった!
四角い飯のためにあんなことするんじゃなかった」
エズラくんの足元に置いてある食事は四角いパンと水のみ・・。
「四角い飯(スクエアミール)」とは、トレイの形だと思っていたのですが、
今回ブリッグの囚人食、パンのことだと知りました。
今回ブリッグの囚人食、パンのことだと知りました。

お次はマサチューセッツで見学した巡洋艦「セーラム」のブリッグ。

なんと、ベッドがなく、鉄の床に布団を敷いて寝るという過酷な環境。
日本人なら平気かもしれませんが、アメリカ人にこれはキツい。

空母「ミッドウェイ」のブリッグは再現度高し。

両手を拘束されて肩を落とす収監者。
連れてきたのはCPOで、ブリッグを仕切る担当の前に引き出されています。
デスクにはセル(独房?)の鍵が三本並んでいて、
担当はこれから部屋をアサインすることになります。

写真に写っているのは、
Master-at-Arms (MA)
といい、海軍内で法執行を行い、部隊保護の責任を負う部隊の人です。
昔はこの権限は海兵隊に任されていましたが、
1970年代にMAの管轄になりました。

刑務所とどちらがマシかって感じの独房。


窃盗や喧嘩、脱柵、不敬、反逆、AOL(乗り遅れ含む)・・。
D・トッチさんの罪状は果たしてどれだったのか。
Redditというチャットを見ていたら、シーバッグ(水兵用ダッフル)に
小さなポケットを作り、そこに空砲を入れていたのが見つかって、
ブリッグに放り込まれた水兵さんがいたという話がありました。

小さなポケットを作り、そこに空砲を入れていたのが見つかって、
ブリッグに放り込まれた水兵さんがいたという話がありました。

柵がなく妙に広々としていますが、ここもかつては独房だったのかな。
洗面台に鏡がついているってすごいいい待遇なんじゃないでしょうか。

洗面台に鏡がついているってすごいいい待遇なんじゃないでしょうか。

展示のため、バックミラーで細部が見えるようにしてありました。

さすが空母、ちゃんと収監者専用のシャワーもあります。

定員6名のHolding Tank(檻房の俗語)。
「リトルロック」のバンクよりずっとこちらの方がマシに見える。
ブリッグがどの艦艇にもあったかというと、そうでもありません。
大きさとしては、巡洋艦以上ではないかという気がしますが、
チャットを眺めていると、ブリッグのない艦も結構あったそうです。
そういう時は、自衛隊のように倉庫に閉じ込めたのでしょうか。
しかし「ミッドウェイ」には、艦底以外にもブリッグがありました。

隙間が縦に細長いので、細い人や小柄な女性なら通り抜けられそう。
これは「ミッドウェイ」の士官区画にあったブリッグです。
最初に紹介した時も書いたのですが、
ブリッグというものは基本的に船底に位置するものなので、
なぜこんな高官の区画にあるのかが全く謎です。
士官が何かやらかしてもブリッグに入れられることはなく、
その時はスーパーバイザーの元、行動監視されて、
区画から出ることを禁じられるというのがスタンダードなのですが、
「ミッドウェイ」では監督する人をあてがうのが面倒なので、
士官用のブリッグを作ってあるという可能性もあります。

大きさとしては、巡洋艦以上ではないかという気がしますが、
チャットを眺めていると、ブリッグのない艦も結構あったそうです。
そういう時は、自衛隊のように倉庫に閉じ込めたのでしょうか。
しかし「ミッドウェイ」には、艦底以外にもブリッグがありました。

隙間が縦に細長いので、細い人や小柄な女性なら通り抜けられそう。
これは「ミッドウェイ」の士官区画にあったブリッグです。
最初に紹介した時も書いたのですが、
ブリッグというものは基本的に船底に位置するものなので、
なぜこんな高官の区画にあるのかが全く謎です。
士官が何かやらかしてもブリッグに入れられることはなく、
その時はスーパーバイザーの元、行動監視されて、
区画から出ることを禁じられるというのがスタンダードなのですが、
「ミッドウェイ」では監督する人をあてがうのが面倒なので、
士官用のブリッグを作ってあるという可能性もあります。

「ミッドウェイ」のSNS用撮影スポット。


先ほどの監房の格子部分はここに移設されているのだと思われます。
■ クルーズ船にブリッグはあるのか?
答え:ある。
ブリッグの主な目的は、船内の秩序と安全を維持することです。
通常、乗客エリアから離れた、アクセスしにくい場所にあり、
マットレスなどの基本的な設備は整っていますが快適とは言えません。
例えば、クルーズ船で暴行、殺人、違法薬物の所持が見つかるとか、
泥酔者や乱暴な乗客も拘留室にお入りいただくことになります。
泥酔して倒れて眠り込み、介抱しようとした医療関係者に
乱暴をして怪我をさせたりしたら即ブリッグ行きになり、
法執行官に引き渡されるまでそこでクルーズをお楽しみいただきます。
もし専用のブリッグがなければ、個室に監禁され、
食事は全てルームサービスが届けられます。
出ることを許されず、ドアにはテープが貼られ、
ドアを開けたらわかるようになっています。
食事は全てルームサービスが届けられます。
出ることを許されず、ドアにはテープが貼られ、
ドアを開けたらわかるようになっています。
さらに重大犯罪者なら部屋の外に警備員が配置されます。
■ ブリッグの幽霊
最後にいかにもネタな小話を。
ブリッグについて調べていて、「軍艦の幽霊」という話を見つけました。
軍艦に幽霊が出る(もっともらしい)理由とは以下の通り。
顕在化の歴史
海軍に所属している間に、心に傷を負ったり、
予期せぬ死を遂げたりした人々は、
自分に起こったことを乗り越えようとする一方で、
安らぎを得るために、配属された場所に留まることを選ぶことがある。
これは、特に戦死した場合や事故で起こる。
顕在化の歴史
海軍に所属している間に、心に傷を負ったり、
予期せぬ死を遂げたりした人々は、
自分に起こったことを乗り越えようとする一方で、
安らぎを得るために、配属された場所に留まることを選ぶことがある。
これは、特に戦死した場合や事故で起こる。
霊魂の中には、肉体がないにもかかわらず、
奉仕しなければならないという使命感を持っている者もいる。
彼らは必要性を感じ、今なすべきことに順応して、
助けるために彼らの(無い足で)一歩踏み出すのだ。
【リトルロック(バッファロー)の幽霊】
【リトルロック(バッファロー)の幽霊】
1967年に起こった七日間戦争中、USS「リトルロック」の乗組員は、
イスラエル軍に誤って攻撃されたUSS「リバティ」から、
ひどい熱傷を負った多数の生存者を移送したが、
これらの負傷者の多くは、USS「リトルロック」艦内で死亡した。
艦内では幽霊の警備員が検査を行い、乗船する観光客を見張っているという。
【リビングストン(テキサス)の幽霊】
USS「リビングストン」は神風特攻隊の攻撃を受け、
その際甲板と機関室に火災が広がり、その炎は
巻き込まれた水兵たちを焼き殺した。
その乗組員たちの霊は艦内に留まることを決めたのだという。
このとき死亡したハンサムなエンジン整備乗組員の霊は、
今でも自分の仕事をするために報告し、きれいな女性の訪問者を楽しみ、
時にはツアーを行うことさえあるらしい。
USS「リビングストン」は神風特攻隊の攻撃を受け、
その際甲板と機関室に火災が広がり、その炎は
巻き込まれた水兵たちを焼き殺した。
その乗組員たちの霊は艦内に留まることを決めたのだという。
このとき死亡したハンサムなエンジン整備乗組員の霊は、
今でも自分の仕事をするために報告し、きれいな女性の訪問者を楽しみ、
時にはツアーを行うことさえあるらしい。
【アイオワ(カリフォルニア州)の幽霊】
USS「アイオワ」は、1980年代、砲塔装填部からの大爆発に見舞われ、
そこで働いていた兵士たちが全員死亡した。
現在、その時死亡した乗組員の霊がボランティアに付き添い、
助言を与え、観光客の命を救ったことさえあるらしい。
【ホーネット(カリフォルニア州)の幽霊】
USS「ホーネット」は第二次世界大戦中、
太平洋での激しい戦闘で300人の死傷者を出した。
「ホーネット」にはランディングコード(航空機のストッパー)
が切れた時に死んだ、首のない甲板乗組員の霊がいる。
彼は勤務を続けないわけにはいかないので、今も職務に励んでいる。
現在、その時死亡した乗組員の霊がボランティアに付き添い、
助言を与え、観光客の命を救ったことさえあるらしい。
【ホーネット(カリフォルニア州)の幽霊】
USS「ホーネット」は第二次世界大戦中、
太平洋での激しい戦闘で300人の死傷者を出した。
「ホーネット」にはランディングコード(航空機のストッパー)
が切れた時に死んだ、首のない甲板乗組員の霊がいる。
彼は勤務を続けないわけにはいかないので、今も職務に励んでいる。

続く。