国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

日本がウラン濃縮をロシアに委託:軍事覇権国ロシアを中心とする新たな世界的核管理制度への移行?

2007年02月22日 | ロシア・北方領土
●ウラン濃縮を露に委託へ、今夏合意目指す…政府など 読売新聞2007年2月21日

 政府と国内の電力各社が、ロシアが設立する国営の原子力独占企業体「アトムエネルゴプロム(アトムプロム)」に原子力発電所用のウラン濃縮を委託するため、ロシア側と大詰めの交渉に入ったことが20日、明らかになった。まず、原発の使用済み核燃料から取り出して英国に保管しているウラン(回収ウラン)の濃縮を委託する。将来は、日本が権益を獲得したロシアやカザフスタンの鉱山で産出した天然ウランの濃縮も委託する方向だ。日露両政府は夏までに首脳級会談で大筋合意を目指す。委託の前提となる核不拡散の協定についても締結交渉を進める。

 核燃料サイクルでは、使用済み核燃料からまだ燃えるウランやプルトニウムを回収し、ウランは濃度を高めた上で核燃料として再利用する。「非核三原則」を持つ日本は、核兵器開発に転用できるウラン濃縮には慎重で、国内での濃縮はほとんど行っていない。電力各社はウランの回収を英、仏に委託していたが、回収ウランの濃縮はコスト高もあって進まず、両国の抱える回収ウランは6400トンに膨らんでいた。英国は日本に回収ウランの引き取りを求め、日本は引き取った回収ウランを濃縮してくれる委託先を探していた。関係者によると、日本政府と電力各社は、世界最大規模の濃縮設備を持つロシアに2年前に回収ウランの濃縮を打診。ロシア側も引き受ける意向を示し、水面下で交渉が続いてきた。両政府はすでに基本的な調整をすませ、米国政府もロシアへの委託を容認する姿勢を伝えてきているという。

 日本とロシアは核拡散防止条約(NPT)に加盟しているが、日本政府は核燃料処理を委託する国と、NPTとは別に2国間協定を結び、「核エネルギーを第三国に流さない」ことを確約させている。日露両国も首脳級の大筋合意後に、正式に2国間協定の締結交渉を始める予定だ。日本には、ウラン濃縮の委託先を増やし、原子力エネルギーの安定確保を図る狙いがある。ウラン採掘から濃縮、燃料加工までをロシアや周辺地域で一貫して行えば、核燃料の調達コストの大幅削減も見込める。中国などとの資源獲得競争で優位に立つ思惑もある。ロシアも今年6月に国営の原子力関連産業を統合するアトムプロムを設立し、原子力関連ビジネスを強化する方針だ。ただ、厳しい流出防止監視体制を求める日本の要求に応じるかどうか、不透明な面もある。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070221it01.htm






●露首相、27日に来日 産経新聞 2007/02/20

 外務省は20日、ロシアのフラトコフ首相が27日から2日間の日程で来日し、安倍晋三首相と会談すると発表した。これに先立ち貿易経済日露政府間委員会が26日に都内で開かれ、ロシアのフリステンコ産業エネルギー相と麻生太郎外相らがエネルギー問題などを協議する。
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070220/ssk070220002.htm





●ウラン濃縮委託でロと交渉=厳格管理めぐり調整-政府 時事ドットコム:2007/02/21

 政府が原子力発電用のウラン濃縮を委託するためロシア政府と交渉を進めていることが21日、分かった。日本側は軍事転用や他国への流出を防ぐため、濃縮施設への国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れなど厳格管理を要求。難色を示すロシア側との調整が続いている。この問題は28日に開かれる安倍晋三首相と来日するロシアのフラトコフ首相との会談でも議論する方向だ。
 委託対象は原発の使用済みウランを再処理した際に生じる回収ウランの濃縮。濃縮した回収ウランは原発の燃料として再利用できるが、これまでのところコスト高で商業ベースでは実施されていない。しかし、天然ウラン価格は過去7年で10倍に跳ね上がっており、国内電力会社は濃縮、再利用を模索している。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2007022100417






●六ヶ所村探訪[ウラン濃縮工場]

かつて、濃縮ウランはアメリカの専売特許的な存在で、日本もアメリカからの輸入に頼っていた。
アメリカは、原子力の平和利用のための物資や技術を海外に提供しながら、提供相手の国が核兵器を作らないように縛ることで、核兵器の拡散を防ぐという政策を取っていた。そのため日本は、原子力関係のことで何をするにしても、アメリカの承認を得なければならなかった。ヨーロッパなどにはかつて、ソ連にウラン濃縮を依頼することでアメリカを牽制したりする国もあったとかいう。そんなことだから、ウラン濃縮は、政治的な意味あいの強い技術だ。

日本の濃縮工場では、アメリカの「ガス拡散法」とは異なる、「遠心分離法」という技術を採用している。「遠心分離法」は、日本の国産技術だ。濃縮工場には、天然のウランから作られた「六フッ化ウラン」と呼ばれる物質が送られてくる。工場ではまず、六フッ化ウランを少し加熱して気化させる。気体となったウランは次に、洗濯機の脱水層のような機械に入れられ、ひたすらぐるぐると回される。濃縮工場では、燃える「ウラン235」と燃えない「ウラン238」とを分けるのだが、「ウラン235」は「ウラン238」よりも少しだけ軽い。「235」「238」というのは、質量数と呼ばれる数で、おおむねその物質の重さをあらわしていると見てよい。

2種類のウランが混ざった脱水層を高速で回転させると、重いウラン238は外の方に、軽いウラン235は中の方に集まる。そこで、脱水層の中心付近に吸い込み口を設ければ、少しだけ「ウラン235」の割合が増えたウランを得ることができる。脱水層の外側に吸い込み口をおけば、「ウラン238」の割合が高いウランが得られる。「ウラン235」の割合をさらに高めるために、脱水層の中心付近から吸い取られたウランは、別の脱水層に送られる。そこでまた高速回転させ、中心付近に吸い込み口をおく。こうやって、何段階も脱水層を経るうちに、ウラン235の濃度は上がっていく。「ウラン235」の割合が2%から4%になるまで濃縮されれば、発電用の濃縮ウランが完成する。参考までに、洗濯機の脱水層とウラン濃縮用の遠心分離装置とは、規模も回転数も違う。遠心分離装置の回転数や直径などは、秘中の秘であるという。

ところで、六ヶ所村の濃縮工場はフル稼働しても、国内全ての発電所には燃料を供給できない。日本が濃縮工場を作ったことには、濃縮ウランの国内での自給率を高める以外にも、海外に日本の技術を示すことで、アメリカなどからの管理を受けにくくする狙いがある。特に、日本に濃縮工場があれば、日本へ輸出する濃縮ウランの価格を政治的な意図でつり上げるようなことはやりにくくなる。濃縮工場には、IAEA(国際原子力機関)の人たちもいるという。IAEAは、原子力についての技術や学問をすすめる国際機関だが、ここでは、任務の一つである「核兵器を保有していない国が、新たに核兵器を作らないように監視する」という仕事に当たっている。彼らは、日本が核兵器を作らないように、日々見はっている。アメリカからの影響が薄くなっても、こっそりと核兵器を作ることは許されないわけだ。日本は、すでにウラン濃縮という核兵器につながる技術を得てしまっただけに、核兵器を作らないという強い意志を持ち続けなければならない。IAEAにもしっかり監視してもらいたいところだ。

ところで、一般の人に見せられない工場内での安全管理は、どれほどのものだろう。IAEAは、核兵器を作らせないための監視は行っても、安全問題への監視はそれほどしないらしい。一般の人は工場の中に入れないわけだから、工場は安全上不都合な情報を隠してしまうことも可能だ。分からないということは、実際の安全性とは別の次元で不安や不信を生む。工場には、核兵器製造技術が外部にもれない範囲で、きちんとした情報を提供する姿勢が求められる。
http://sugi.sakura.ne.jp/ecc/c535_5.html






●現代の錬金術、核変換(常温核融合)の日本における実用化はパックス=ジャポニカを実現するか?
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/9f8b5893ee63e252dcaa0de25f1e8266

●常温核融合と海水淡水化技術は日本による中国間接支配の切り札となるか?
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/e46d994674e575a6d643258d82a5d92d

●常温核融合、東芝・石播のウェスチングハウス社買収、三菱重工とコスモクリーナーD
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/e7ec4245e30d720189d9dd0861844389





【私のコメント】
 日本の核武装を禁じることは国際金融資本の日本支配のための戦略の中核の一つであった。米中両国の核対決の最前線に日本を置いて脅迫し搾取することが彼らのシナリオであったのではないかと想像する。そして、日本とロシアが手を結び中国の脅威に対抗する事は絶対に阻止すべき事であり、それ故に北方領土問題が作り出され維持されてきた面もあるのではないかと思われる。

2007年2月21日に読売新聞などが報道した「日本の使用済み核燃料のウラン濃縮をロシアに委託する計画」は、もし事実とすれば従来の国際金融資本の日本支配を決定的に覆す画期的なものである。以前に核変換(常温核融合)の記事で触れたことだが、ロシアでは核変換の電極として使用される金属パナジウムの単体(単一の質量数の元素からなる物質)が安価で豊富に入手可能であるという。ロシアには、質量数の異なる元素から単体を容易に抽出する特殊な技術が存在するのだと思われる。その技術は、ウランの濃縮にもし応用できれば、容易にウラン型原爆を製造可能とするものである。それは、第二次大戦当時にナチスドイツがウラン型原爆を完成させていたという噂から考えると、ドイツからロシアに渡された技術だった可能性がある。今後のロシアはこのウラン濃縮技術を武器にして、世界のウラン資源・プルトニウム資源の管理を一手に引き受け、新たな核管理体制の盟主となるのではないだろうか?そして、日本の持つ核変換(常温核融合)の技術をそれに組み合わせることで、使用済み核燃料に含まれる危険な放射性同位元素の安価で安全な処理も可能となることだろう。

原子力発電や核爆弾の開発を行っている諸国は、多量の放射性廃棄物や使用済み燃料の処理方法に頭を痛めている。これらの廃棄物が日露の技術で安価に処理し、更に新たな核燃料の抽出まで可能となれば、日露連合以外の原子力ビジネスは事実上商業的には存在し得なくなるのだ。将来的には、米英仏中印などの保有する老朽化した核兵器の処理と核爆弾用ウランの供給も引き受けることがあるかもしれない。そして、米国の政治学者ミアシャイマーが主張する「全ての大国が核武装することで世界平和が可能」という構想を実現するために、核兵器の保有を新たに希望する地域大国(日本を含む)に対して日露連合(あるいはロシア単独)が核爆弾用ウランの供給を行うこともあり得るかもしれない。世界の大国全てが核武装するならば、その大国に挟まれた小国は自分も核武装しようとは考えなくなるだろうと想像されるからだ。

 現在、イランの核開発問題を巡って米中露+英仏独の六カ国協議が続けられているが、その落としどころは「ロシアがイランに核燃料を供給し、使用済み核燃料の処理も引き受ける」という案になりそうである。イランと米国の軍事対立は実は冷戦と同様の茶番であり、本当に対立が起きているのは国際金融資本・英国・イスラエル連合と独仏露日+米軍の反国際金融資本陣営の間であると思われる。日本・ドイツ・イタリアなどの先進国の大国、イラン・サウジアラビアなどの産油国の大国、ブラジル・インドネシアなどの途上国・中進国の大国を含め、現在核武装していないあらゆる大国を含めた新たな世界的核管理システムへと現在の核拡散防止条約体制が移行し始めている様に思われる。それは、五世紀間継続した国際金融資本の世界覇権がロシアを中心とする反国際金融資本陣営へ移行することを意味するのだろう。そして、巨大な核軍備と陸上兵力を有するロシアが世界覇権の軍事部門の中核になることは間違いないだろう。

2月26日には東京でロシアのフリステンコ産業エネルギー相と麻生太郎外相の会談が行われ、27-28日にはロシアのフラトコフ首相が訪日して安倍首相と会談する。従来の懸念である北方領土問題・シベリアのエネルギー開発問題だけでなく、日露両国の原子力産業の協力体制樹立というこのニュースに関する何らかの合意が首脳会談で発表される可能性があるだろう。
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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-02-22 01:31:08
中国は対立のどちら側に位置するのですか?
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>中国は対立のどちら側に位置するのですか? (princeofwales1941)
2007-02-22 01:42:35
>中国は対立のどちら側に位置するのですか?

中国は米国と同様に、国際金融資本陣営と反対勢力に分裂しているのではないかと思います。

国際金融資本陣営の中心であると想像されるイギリスやイスラエル、反対勢力の中心であると想像されるロシア・ドイツ・フランス・日本も一枚岩ではなく、その内部には反対陣営が生息しているのではないかと思います。
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Unknown (Unknown)
2007-02-23 13:03:33
このプロジェクトは埋伏の毒とネットでは広がっています。
意味わかる人いますか。
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