国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシア極東の中核都市になるウラジオストク

2011年11月22日 | ロシア・北方領土
ロシア政府がウラジオストクの新国際空港にオープンスカイ政策を導入することを決定した。これは出入国管理の厳しいロシアでは異例のことである。この政策を起爆剤にしてウラジオストクを極東の交通ハブにすることを狙っているのだと思われる。 ウラジオストクは中国や東南アジアから北米へ、あるいは日本から欧州へ至る航空路の通過点に位置する。ハブ空港としては、新千歳と並んで絶好の位置に存在する。現在インチョンあるいは香港やシンガポールが果たしているのと同じ役割を期待しているのだと思われる。 ロシアは伝統的に二つの首都を有する。内陸のモスクワと海に面したサンクトペテルブルグである。ロシア極東にも同様に内陸のハバロフスクと沿海のウラジオストクという二つの大都市があり、地域の中枢機能を分担している。今回のウラジオストクのオープンスカイ政策という決定は、ハバロフスクとウラジオストクの力関係を後者に有利にするものである。将来のロシアはモスクワ・サンクトペテルブルグ・ウラジオストクの三都体制になるだろう。 もう一つ注目されるのは、中国国境に近いウラジオストクの地理的脆弱性である。ロシア極東ではウラジオストクの他、ハバロフスク・ブラゴベシェンスクが中国国境の至近距離に位置している。安全を考えるのであれば、地域の中枢機能はもっと中国国境から離れた場所、つまりコムソモリスク・ナ・アムーレやナホトカやユジノサハリンスクに設置されるべきである。ウラジオストクを中枢都市として発展させるというロシア政府の決定は、ロシアにとって中国は脅威ではないとの認識を示していると思われる。何らかの裏合意が中ロ間に存在するのだと思われる。 4000kmの陸上国境を有する中ロ両国と異なり、日中間には東シナ海という広い障壁がある。シベリアに比べて日本は人口密度が高く、中国人の不法移民に地域が乗っ取られる危険も小さい。ロシアにとって中国が脅威ではないのなら、日本にとっては更に中国は脅威にはならない。現在の日中両国は相互に軍事的対立を深めている。しかし、これは米国や国際金融資本を油断させるための芝居だというのが私の想像である。 . . . 本文を読む
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