知る人ぞ知る銀座のレトロスペクティブ・ビルヂング。
奥野ビルと言えばやはりこの手動エレベーター。
アル・カポネの映画の場面にでも出てきそうな折り畳み格子式のエレベーターです。
ドア横の呼び出しボタンを押すと、上階からエレベーターが降りてくるメカニカルな音が階下に響き、ドア上に掲げられたゴールドの表示版の針が、6、5、4…と静かに回転しながら一階へと近づいてきます。
うーん、クラシック。
静かに箱が一階に降りてくると、イエローにペイントされた鮮やかな折り畳み格子がガラスの向こうに姿を現しました。
ワクワクしながらドアの前に立ちますが、手動式ですからもちろん自動で扉は空いてくれません。
まず表のドアを横に引いて、次に中の折り畳み格子のレバーを倒しながら横に開いてようやく中に入れます。
そして中からもう一度格子を閉じて行き先ボタンを押して初めてエレベーターは上り始めます。
デジタルミュージック全盛のこの時代に、アナログレコードに針を落として音楽を聴くような不思議な感覚。
そんな儀式めいた行為がなんともくすぐったい、実に貴重な経験をさせてくれるのが、このエレベーターなのです。