行儀

最近、お行儀という言葉をあまり聞かなくなりました。何故だろう？と考えてみると、多分「マナー」という言葉に置き換えられているようです。確かに「マナー」という英単語には、仕方、やり方といった意味以外に行儀作法という和訳が当てられています。

ですが、どことなく「行儀」と「マナー」は異なるような気がします。多分、マナーと言うのは、他人に迷惑をかけないよう最低限互いに守りあうルールのようなものです。ルール（規則）というのは拘束力がありますが、マナーと言うのは互いの思いやりのようなものです。マナーが守れない情けない大人が増えています。

…に対して、「行儀」という言葉は、どこか古めかしい時代遅れのような語感を伴います。マナーが常に、人に対しての行動を律するものであるのに対して、「行儀」というのは自分を律するもののように思います。人に対する言動にとどまらず、あらゆる場面での立ち居振る舞い全てを律する姿勢のようなものです。

現代は、四角四面の枠から個性と言うものを解き放ち、それぞれの人のその人らしさが何よりも大切にされる時代です。だから他人に迷惑をかけるような行為は自制を求められますが、その人自身の立ち居振る舞いには鷹揚です。それらをとやかく言うこと自身が、古さの象徴のように思われていて、社会の許容範囲がとても広くなっています。同時にそれは、自身の浅さを弁明する隠れ蓑に使われてしまっている感がいなめません。

最後には「品性」という言葉に集約できるような気がしますが、私たちは身を律する何かを持たねばならないような気がします。



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