goo blog サービス終了のお知らせ 
goo

No1496『われ幻の魚を見たり』~伊藤大輔監督~

昨日、友達と、奈良マラソンのコースの下見がてら、
試走に行ったら、
なんとまあ大勢のランナーが試走していたことか。
しかも、私たちは、
復路の上り坂がどれくらいの感じか知りたくて、
天理駅発の復路だけをのんびり試走したのですが、
他の皆さまは、ちゃんと往路の奈良から天理往復で、
全コース、本気で練習しておられる感じで、
熱心だなあと感服しました。

さて、書きそこねていた映画について、
遅ればせながら。
シネ・ヌーヴォでの
「時代劇が前衛だった~日本映画の青春期~」特集の1本。

マイナー過ぎて、今まで見る機会に恵まれなかった
伊藤大輔監督の1950年の作品。

十和田湖でヒメマスの養殖に成功した
和井内貞行という実在の人をモデルに、
その半生を描いた作品。

紅葉で有名な十和田湖は、
かつて魚が棲みつかない湖だったそうで、
知りませんでした。

大河内伝次郎演じる貞行は、
私財を投げうって、
どんな魚なら十和田湖に適し、
養殖できるものか、
鯉やいろいろな魚で試して、研究します。

しかし、失敗の連続。
銀山が閉鎖して、
雪深い湖畔に人々がいなくなり、
炭焼きの人しか居残っていなくとも
家族とともに残り、
研究を続けます。
宿を開くものの、うまくいかず、
妻は行商に出て、
貧乏を究める生活。

犬にやる餌までなくなって
長男が犬を殺しにいくものの
殺せなくて帰ってきます。
家族も皆犠牲になりながらも
父の研究を助け、
この長男を演じるのが、
『下郎の首』で下郎を敵に売った若主人を演じた片山明彦。

最後の賭けに、
北海道のカバチップ(だったと思います)という魚の卵を買い取り、
稚魚を湖に放つ。

稚魚が湖に帰ってくる日を
何年も待つうちに、
長男は、日露戦争に出征することになり、
湖に向って
「カバチップ、帰ってこいよー」と叫んで、
戦地へと旅立つシーンが
涙ぐましく、こころに残っています。

その間にも、妻のリュウマチはひどくなり、
年老いた大河内は、
毎日、高い樹に登って、湖を見つめる日々。

郵便配達夫(多分、山本礼三郎だと思う。)が
大河内に届けたのが、
長男の戦死の報。
家に帰るなり妻と抱き合い泣き崩れます。

しかし、ついに湖の湖面が輝き、
カバチップが群れをなして帰ってくるのを見つけた大河内。
妻に報告しようと
喜び勇んで家に帰っていくところを
移動カメラで追いかけ、躍動感あふれるショットは
伊藤監督らしい。

このカバチップがヒメマスというのだそうで、
郵便配達夫がいい味を出していました。

妻が、
夫は針で、自分は糸で、
夫の進んでいくところを、自分はついていくだけだと言って、
夫の挑戦を支える姿は、涙ぐましく、
最期に息絶えるときも、
「もう針を追いかけられん」という言葉に
涙でした。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« マラソン中に... No1497『オサ... »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。