噛みつき評論 ブログ版

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政権放棄が続く理由・・・優れた政治家が育たない環境

2008-09-04 20:19:07 | Weblog
政権放棄が続く理由・・・優れた政治家が育たない環境

 権力者とは、欲しいままに甘い蜜を貪(むさぼ)り、やめろと言われようが意に介さず地位にしがみつく強欲な人物、というイメージが私にはありました。しかし2年続いて起きた首相の政権放棄によってそのような権力者のイメージを変えざるを得ません。

 きつい仕事と重い責任を伴う首相の仕事には優れた識見や理念はむろんですが、鉄面皮のしたたかさが必要なのでしょう。それはさて措き、ここでは連続して政権放棄が起こった背景を政治家の資質という観点から考えてみたいと思います。

 二世、三世の政治家が多いという事実は外部の世界から政治家を目指す有能な人間が少ないことを示唆しています。外部からの参入の困難さもあると思いますが、外部からの志望者の減少は優れた政治家を選ぶのに必要な選抜のメカニズムが十分働かないことを意味し、それは政治家の質の低下を招きます。

 昔の権力者は政治権力はもちろん、財産やハーレムまで手に入れることができました。当然、多くの有能な人間が激しく競争したことでしょう。ところが現代の首相は一定期間だけの、しかも部分的な権力であり、魅力の大きさは比較になりません。その限られた魅力のなかでは名誉が大きい位置を占めます。ところがマスコミは批判するのが仕事とばかりに攻めたてるので、その名誉も逆に傷つくことが少なくありません。

 小泉元首相の改革は極度に悪化した財政の建直しに道を開きましたが、一方で格差の拡大を招いたとされています。しかし取り上げられるのは圧倒的に格差拡大の方であり、財政の健全化が評価されることはほとんどありません。経済の活性化と格差拡大は新自由主義政策のもつ両側面です。どんな政策でも正の面と負の面があり、どちらを取り上げるかによってイメージは自在に変えられます。

 最近、官僚の主な供給源であった東大法学部では官僚を選ぶ学生が少なくなっているそうです。官僚や政治家に魅力を感じなくなっているためでしょう。官僚や政治家を目指す若者が多くなるように、もっと魅力を増やす必要がありましょう(官邸にハーレムを併設するのは無理でしょうけど)。官僚と政治家は全国民に重大な影響を与える最も重要な仕事ですから、優れた人材を集め育てることは大変重要な課題だと思います。松下政経塾はそうした試みのひとつでした。

 マスコミも官僚や政治家を批判するばかりでなく、評価すべきは評価するという是々非々の姿勢をとれば、長期的には優れた政治家を育てることになると思います。叩くばかりで、官僚や政治家のイメージをこうも悪くしていては、志をもつ多くの若者が政治家を目指すことはないでしょう。


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3 コメント

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失礼します (作務)
2008-09-04 10:53:50
権力欲や名誉欲の汚泥が積み重なって、現在の荒んだ日本が出来上がってしまいました。

純粋さに勝る強さは無いと私は思います。

http://blog.goo.ne.jp/samu_one
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Unknown (porepore)
2008-09-10 01:18:10
お久しぶりです。

育たない環境にはいくらか要因はあり、
マスメディアの描く「物語」にしてもそうですが、
岡田様のように、合理的な主張をする人間が乏しいことではないかと思います。

誰が首相という「椅子」に座ったところで、所詮は人間です。
実績を残すこともあるし、ミスをすることもある。
さらに、何かを手に入れれば同時に何かを失うものであり、
実績の如何によっては、評価される部分もあれば咎められてしまうこともあります。

しかし、既存のマスメディアの多くは、罪が功を圧倒するかのごとく論調をかき立てます。
これでは市民レベルから見ても、どんな些細なことにも目に角を立てざるを得ないでのしょう。

>最近、官僚の主な供給源であった東大法学部では官僚を選ぶ学生が少なくなっているそうです。官僚や政治家に魅力を感じなくなっているためでしょう。

当方理科系の人間ですが、
専攻分野を抜きにしても、私の担当の教官もこれらのことを危惧しています。
官僚をはじめとした、それまで築かれてきたレールを選択する人間が少なくなったのは、
ここ10年程が顕著であるようです。

背景には、官僚や政治家の魅力そのものが低下したというより、
学生が古典的な考えから脱皮し、魅力の選定基準が変化したためだろうと思います。
そのため相対的に官僚や政治家といった、
国政の舵を握る職の魅力が低下してきたことが原因ではないかと思います。

以前に、私企業を見学したことがあるのですが、
そこでは若手幹部候補も含め、役員は男性だけで組まれており、
男性の私から見てもほとんど理不尽ともいえる光景で、
みすみす潜在的な人材をつぶしていることからも、
こんな会社に未来はあるのだろうか、と首を傾げてしまうほどでした。

学生の就職動機の一つをとっても、
職場の環境を選択する人間は非常に多いのが現状です。
閉ざされた狭い世界を強制させたり、封建的な建前で罷り通すやり方では、
学生を引き付けることは難しいだろう、というのが率直な感想です。
学生の希望先をみても外資系企業が多いのにも納得がいきます。
落ち葉拾いのような事態に陥るというのも悲しい限りです。

>二世、三世の政治家が多いという事実は外部の世界から政治家を目指す有能な人間が少ないことを示唆しています。

その通りですね。
それこそマスメディアの本来の使命でしょう。
代々受け継がれてきた基盤を踏襲する人間が増え、やがて権益化され、
そうした一部の人間による、跳梁跋扈した社会がもたらすであろう弊害を、
もっと声に出して警告するべきですね。
外部からの新規参入が阻害され、仲間内だけの運営に委ねてしまうことは極めて危険なことです。
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付け加えますと (okada)
2008-10-14 10:17:58
コメント、ありがとうございます。
政治家の質の低下は国の将来にとって大変重要なことです。政治家には、法曹のような養成システムがありませんから、メディアの影響は大きい思います。

>官僚や政治家に魅力を感じなくなっているため

と書きましたが、そこには公のために働くという動機の衰退もあるのではないでしょうか。戦後教育は公と私のバランスを変え、私を重視しました。その影響も考えられるように思います。

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