噛みつき評論 ブログ版

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テレビ民主主義

2010-04-12 10:08:37 | Weblog
 世の中の多くのものは時間が経つとまあ良い方向に進みます。技術進歩によるものはむろんですが、組織の統治などでも過去の失敗を教訓としてより巧みなものになる方が多いと思われます。

 むろん時間が経つと悪化する例外もあります。政治はその代表例と言ってもよいでしょう。最近の政治の迷走ぶりを見ていると「政治の劣化」という言葉は本当であったのだと改めて思い知らされます。民主主義という不効率ではあるけれども最もマシだとされている制度に支えられる政治がなぜ劣化していくのかという問題が注目されてもよいと思います。

 有能で見識にも優れた政治家が政権を運営する場にいないことは国民にとって不幸なことです。その理由を単に政党のだらしなさといった個別の問題に帰するのではなく、選挙などの政治システムの問題として扱う必要があるのではないかと思います。

 選挙の機能には利益代表を選ぶということもありますが、優れた政治家を選ぶということはより重要な機能です。現状はこれが十分に機能しているとは思えません。その理由を考える上で参考となる、05年の郵政選挙における興味深いデータがあります。以下は「投票行動から見た日本人の主体性」から抜粋です。

 「05年10月26日の朝日新聞朝刊に、『メディア、牙にも蜜にも 露出は「商品」次第』と題して、05年9月11日の総選挙ではテレビを見た人間程、自民党候補に投票している傾向があると結論づけた世論調査記事を載せている」とし、

 その中で、1日のテレビ視聴時間と自民党候補に投票した割合を示してあります。左側の数値は有権者中の構成比、右側はそのグループの中で自民候補に投票した割合です。

      2時間以内――41%  自民候補票 40%
     2~4時館 ――41%       〃  44%
      4時間以上――15%       〃  47%

 テレビを長く見る人ほど自民党候補を支持していることが読み取れます。また女性はより強くテレビに影響されることも示されています(これは被暗示性の強さとも受けとれます)。これらは郵政選挙における自民党の圧勝がメディアの報道によってもたらされたことを示唆しています(交絡因子を無視したものであり、厳密なものではありませんが)。朝日記事の見出しはこの因果関係を認めたものであり、同時にメディアの影響力の大きさを誇っているかのようです。

 これに関連して注意すべきことが二つあります。ひとつはテレビ視聴時間が年代によって異なるということです。30代と40代は平日の平均が約3時間であるのに対し、60代は約4時間20分と大きな差があります(2005年の資料)。

 もうひとつは60歳以上の世代が選挙に強い影響力を持つことです。有権者を20~39歳、40~59歳、60歳~、3つの階級に分け、それぞれの有権者数と投票率を掛け合わせれば、有効な投票者数になります。60歳以上の階級は有権者数が多いことと投票率が高いことにより、最大の影響力をもつことになるとされています(大竹文雄著「競争と不公平感」p153)。

 つまり、テレビの影響を強く受ける60歳以上の階層は、最大の有効な投票者数をもって、選挙に強い影響力を行使する階層であるということになります。後期高齢者問題など、この階層から批判を浴びやすい政策は、それが正しいものであっても選挙では大きい失点となることが考えられます。このような事情によってテレビが選挙に与える影響は想像以上のものがあるというわけであります。

 さて元に戻りますが、政治の劣化はテレビのあり方と切り離しては考えられない問題であると言うことができます。以前述べたように、投票はメディアが作り出すイメージの反映です。有権者が選ぶ前にメディアが政党や政治家を選んでいるわけで、無能な政党や政治家を選ぶことで政治劣化の片棒を担いでいるといってよいでしょう。


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2 コメント

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Unknown (フラット)
2010-04-12 15:57:23
新党を旗揚げしたご老人方などは後期高齢者の希望の星かアイドル目指せば勇躍出来るかも知れませんね。やたらと「命がけ」を口にする面々ですが、天寿が近いせいでしょうか?
総理は激務だそうですが、各大臣はどうなんでしょう? ましてや野党の無任所代議士って忙しいのかな? 旗揚げ直後は確かに忙しいでしょうが、一体何に命を懸けるのでしょうか? 日本の政治家は軽々しく「命を懸けて」「身命を賭して」などと口にするけど、目標を果たせず責任取って死んだ人の話なんて聞いたことがない(中川さんは……ちょっと違うかな)。任期半ばに病気で亡くなった人なら何人かいますがね。

民主主義は完成された国家統治の形態ではないと思います。アフリカや中東などの民族や部族が対立しあう社会においては民主主義など少数部族の滅殺を意味し、内紛の火だねにしかなりません。地域に合った政治体制の構築が必要です。アメリカあたりのイデオロギーを押しつけられて国家制度を変えさせられ、むしろズタズタになった国が近年だけでも数カ国あるじゃないですか。
しかし日本人は例え腐っていても民主主義を信奉します。そのように教育されてきたし、マスメディアもそういってるから。
本当に大切なのは自分の頭で考えることなのに、その材料としての情報が不確かで偏向しているから思考の基本となる価値観すらもねじ曲げられているような……。

もはやなにを選ぶとかいうレベルではないような気がします。
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Unknown (okada)
2010-04-12 17:21:55
新党を旗揚げしたのは老人方ですが、財政再建を掲げているので一般老人の人気取りは難しいでしょう。一般に寿命が近づくと私欲は少なくなります(一部の人はちがいますが)。与謝野氏らの発言に対し、マスコミはやや冷ややかですが、私はまともに受け取っています。
民主主義に代わる制度はちょっと見つからないので、仕方ありませんが、マスコミ、とくにテレビを何とかしなくては、と思っています。
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