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フル電動自転車の公道使用を認めよ・・・電動アシスト自転車の補助動力アップを検討するのなら

2008-05-12 08:17:43 | Weblog
 警察庁は電動アシスト自転車の人力に対する補助動力の割合を現行の1:1から1:2に変更することを検討しています(改正案の内容は文末に記載)。実現するとより軽く走れるようになります。

 これは動力補助率の上限が50%から66.7%になることを意味します。5月4日付朝日新聞別冊には「補助力を2倍にしたタイプを認める法改正・・・」と書かれていますが、誤った表現です。同一負荷時なら補助力は1.334倍にしかなりません。いつもながらの低学力紙面です。

 おっと話がそれました。一方、人力を必要としないフル電動自転車(スクーターなどを含む)というものが市販されています。道路交通法では電動アシスト自転車が自転車として扱われるのに対して、こちらは原動機付自転車として扱われ、保安部品、運転免許、ヘルメットの着用、強制賠償保険などがないと公道を走ることはできません。これらが面倒なため、違法使用以外では普及していませんが、もし自転車扱いが認められれば便利なもので、かなりの普及が見込まれます。

 このフル電動自転車は多くの利点を持っています。ガソリンエンジンはエネルギーの20~30%だけを動力として利用し、70~80%は熱として無駄になりますが、電動自転車は90%程度の効率が期待でき、ランニングコストはおそらく1/5~1/10となります。また排気ガスを出しません。

 ペダルを必要としなければ車体形状の自由度が高く、シート位置を低くして子供2人の3人乗りにも安全性の高い低重心設計が可能です。一回の充電で走れる距離も40km程度は可能でしょうから実用性は十分です。

 米国フロリダ州にディズニーが作った町「セレブレーション・フロリダ」があります。この実験的な都市は過度のモータリゼーション、エネルギー大量消費への反省から、広い道路をなくし、歩行者を重視した設計がされています。ここでは電動スクーター、カートがごく普通に使われ、充電設備を備えた駐車場が多くあるそうです。

 電動アシスト自転車とフル電動自転車の違いは足で漕ぐ必要があるかどうかだけです。改正案で補助動力が2/3になれば、両者を実質的に峻別する根拠はさらに希薄になります。

 また、フル電動自転車が電動アシスト自転車に比べ安全性の点で劣っているという理由は見あたりません。速度に関しては、自転車扱いの条件を最高速度を20km/hとでもすれば、漕ぐと30km/h以上も出せる電動アシスト自転車よりも安全にすることができます。

 近距離の手軽な移動手段としてフル電動自転車が普及すれば車の使用が減って、都市の交通渋滞が緩和されるだけでなく、全体のエネルギー消費も減るという効果も期待できます。

 このように利点の多いフル電動自転車ですが、0.6kw以下の電動機をつけていれば現行法では原動機付自転車に分類されます。フル電動自転車を自転車と認めることが無理ならば、法を変えて時代の要請に応えることを検討してはどうでしょうか。社会のために法があるわけで、その逆ではないのですから。

(改正案の内容)
現行の補助動力の最大値は速度が0~15km/hで50%、15km/h以上では徐々に減少し(直線比例)、24km/hで0%になるよう決められています。改正案は0~10km/hでは66.7%、10km/hから減少し24km/hで0%になります。低速域での補助率の拡大を認めるもので10km/h以下では人が1、補助動力が2という割合になります。


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2 コメント

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Unknown (porepore)
2008-05-17 17:14:01
二点ほど考えさせられました。電動自動車には功罪共にあるように思います。

第一に、

アメリカでは、90年代半ばのクリントン政権時に、GMによって開発された「EV1」という電動自動車の試みがありました。

政府からの、全額補助金に頼った上での開発でしたので、採算性については度外視していたそうです。広告を用いた大規模なキャンペーンを控え、リース販売のみに特化したのは、当時の自動車産業や石油産業界にとって悪名高い「カリフォルニア州の排ガス規制」に対する皮肉だったのでしょう。実際にリース販売の期間が終了した後に、電動自動車は全て回収され、処分されました。

莫大な資金により広告業界や政界に影響を与える立場にある以上、産業界の力は我々の想像以上に強いのでしょうね。一度手に入れた既得権益を、手放したくないのも理解ができます。こうした傾向は、アメリカに限った話ではないと思います。日本も含め、大国と呼ばれる国のほとんどは、少なからず同じ立場にあるのではないでしょうか。大企業を抱える利点はあるのでしょうが、国民はそのことから生じる弊害も認識しなければなりません。石油や天然ガスといった、持続可能な炭素エネルギーは無限に存在しているわけではありません。エネルギー需要に比例し、環境破壊など外部不経済の影響も考慮しなければなりません。その上でも電動自動車の普及は素晴らしいことです。こんな時に、小回りの利く小国が、正直うらやましい限りです。

第二に、

燃焼型自動車から電動型自動車に切り替わる際に発生するコスト負担についてです。

土地に対する人口過剰の問題が原因の一つに含まれると思います。

日本の場合、国土の7割が山岳地帯であり、東京のような人口過密地域を除いても、総面積に占める非居住地域の割合が相当高いと思います。

近年、不必要な公共事業の無駄遣いがクローズ・アップしてきました。強引に失業者に職を与えている印象があります。悪い言い方をすれば、公共事業に従事する人の中には潜在的な失業者が多数含まれているということです。

話を元に戻すと、現行の燃焼型モデルの自動車は、電動型のそれと比較して、非常に精密であり、コストも掛かるという話を聞いたことがあります。つまり、公共事業と同様に、本来必要のない潜在的な失業者を多数抱えているということです。大企業が傘下に抱える、潜在的な従業員の数は相当数に上ると予測されます。イノベーション渦巻く環境の中、社会の変化は早いと思います。

行き場を無くした人々をどのように救済するのかも重要ですね。
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Unknown (okada)
2008-05-19 20:49:01
いつもコメントをありがとうございます。電動自転車のことを書いたのですが、電動自動車の方に話がいきましたね。確かに現在は自動車が注目されています。エネルギーの使用量もずっと多いですから。

電動自転車は近距離用の乗り物としては実用レベルになっていますが、自動車の方はもう少しかかりそうです。電池の性能次第でしょう。

おっしゃるように内燃機関は複雑な上に熱効率が悪いので、いずれ縮小されることになると思われます。エンジンに比べるとモーターは簡単ですから生産コストはその分下がる筈ですが、長距離用にはエンジンが有利ですから、切替は徐々に進むのではないかと思います。
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