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徴兵制復活の流れ

2019-01-21 07:43:17 | マスメディア
 「日本人とユダヤ人」という本が話題になったことがある。1970年のことである。著者のイザヤ・ベンダサンは「日本人は水と安全はタダだと思っている」と書いた。イザヤ・ベンダサンとは山本七平氏のペンネームであるとされている。余談だが、このペンネームの由来は「いざや、便出さん」ではないかという見方があるそうだ。本当であればなかなか楽しいユーモアである。

 冷戦終了後、ヨーロッパの多くの国は徴兵制を廃止したが、この数年は徴兵制復活の動きが目立つようになった。2014年にはウクライナ、15年にはリトアニア、17年にはスウェーデンが徴兵制を復活した。昨年、フランスも徴兵制復活の表明をした。フランス以外はロシアに近い地域が多く、ロシアの脅威がその理由だと考えられている。徴兵制の復活は脅威の増大に対するあたりまえの対応である。しかしこれらのことはなぜか日本ではほとんど報道されていない。

 ロシアは軍事的脅威を与える国だと認識されてきたようだが、クリミア問題で再認識されたわけである。またロシアが極東では将来にわたって領土的野心を持たないとは言いきれない。まして日本の近くには領土的野心を持ち、軍事力を急速に拡大している中国や、核兵器に国力を集中させる北朝鮮がある。

 フランスの徴兵制発表に関して日本の記者がフランス国民に街頭インタビューをする場面があったが、大部分の人は賛成だと言う。そのNHKの記者はこれを意外な結果だと言った。恐らく彼の頭の中は、徴兵制などとんでもないという「日本の常識」に染まっていたのだろう。たしかに日本で徴兵制を持ち出したら政権が吹っ飛んでしまうだろう。けれど「日本の常識」は世界の常識ではない。

 「日本人は水と安全はタダだと思っている」と書いたのは50年ほど昔のことだが、当時の安全に対する日本人の無関心を指摘していたわけである。当時の国際環境は周囲に軍事的脅威となるような国はソ連以外になく、そのソ連は左翼思想のご本尊でもあったのでソ連性善説のようなものがあり、その軍事的脅威は隠されていた。また米ソの冷戦はソ連に抑制的に働いたのではないか。したがってこの時の防衛に対する無関心は仕方がなかったとも言える。

 だが現在、状況は様変わりしている。中国と北朝鮮の脅威は言うまでもないが、韓国は2018年度版の国防白書では周辺諸国との軍事交流協力について記述する際の順序が、これまの韓日、韓中、韓ロが、今回は韓中、韓日、韓ロの順に変更された。日本と「北朝鮮の核とミサイルの脅威」に対して協力するという内容も今回の国防白書では削除された。韓国は変わりつつあり、親北を進める一方、日本にとっては敵性国に近づいている。GDPは日本の3分の1以下だが防衛費は年率8%で増加し、来年には日本と肩を並べるとされる。中国も、ロシアも将来どう変わるかわからない。そして防衛力はすぐにできるものではない。

 安全保障は国の根幹をなすものであり、平和を保つ上で欠かせないものであることは世界の常識であるが、日本の常識ではない。水と安全はタダではないのである。安全保障のためには税金による費用負担と兵役などの労力提供は当然のことなのである。いつになったらフランスのように徴兵を自然に受け入れるだけのまともな認識ができるのであろうか。戦後70年間、軍備に反対してきた左翼マスコミや文化人はそれが平和を維持すると信じてきたが、逆に防衛力の弱さが戦争を招いたとして平和に対する罪人になるかもしれない。うまく洗脳されると洗脳された人間は洗脳されたことに気づかない。厄介なことである。
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