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8割が嫌がる裁判員、"民意"を無視しての強行にメディアの批判なし

2008-05-20 09:18:31 | Weblog
 裁判員制度に関するNHKの最新の調査が発表されました。調査は5月9日~12日にRDDと呼ばれる無作為抽出で行われ、対象の61%にあたる1084人からの回答を得ました。結果を次に示します。

裁判員として参加したい : 18% (是非参加したい: 4%、できればしたい: 14%)
      したくない : 77% (あまり参加したくない: 42%、絶対したくない: 35%)

裁判員制度は必要   : 42% (大いに必要: 8%、ある程度必要: 34%)
      必要ない : 50% (あまり必要ない: 30%、まったく必要ない: 20%)

この調査結果は過去の同様な調査と比較しても、否定的な意見が目立ちます。8割近い人が裁判員として裁判に加わることに否定的です。注目すべきは今までの調査と異なり、裁判員制度そのものの必要性についての質問があって、総合で半分以上が否定的であることです。その中身を見ると大いに必要が8%なのに対し、まったく必要ないが20%と大差がついています。これは最高裁など、裁判員制度推進派には大変都合の悪い調査結果です。

 ところでこれは5月13日午前7時のNHKのラジオニュースで放送されたもので、それ以後何故か、テレビ・ラジオを通じて取り上げられることはありませんでした。したがってご存知の方は少なかろうと思います。少なくとも、繰り返し取り上げられている舞鶴高1殺人事件よりは重要なニュースだと思いますが。

 主要メディアは裁判員制度に批判的ではありません。各社の社説は「民主主義を完成させるために」(毎日)などと賛成の態度を示しています。

 しかし不思議なことは、いつも"民意"を掲げ、それを根拠に騒いできたメディアが民意に反する裁判員制度に関しては一切批判をしないことです。今回のNHKの調査では参加の意思だけでなく、裁判員制度の必要性に関しても否定の方が多いので、民意は"反対"と見るべきでしょう。

 裁判員制度の導入が「民主主義の完成のため」ならば、民意を無視しての導入は、民主主義を否定することになります。民主主義の完成とは立派な建前ですが、実際の裁判員制度には様々な問題が予想されます(参考資料)。

 マスメディアは裁判員に選ばれた場合の問題をしばしば取り上げていましたが、裁判員制度そのものを取り上げたり、まして批判することは少なかったように思います。メディアには、400字詰めで300枚を超す司法改革審議会意見書を読み、裁判員制度を理解していいる人がどれくらいいるのでしょうか。

 例えば、米国では被告は、陪審員制の裁判か、検察官の同意を得て職業裁判官のみの裁判かを選択できます。しかし偶然司法とも呼ばれ、当たり外れの大きい陪審員制を選択する被告はごく僅か(刑事事件5.2%、民事事件1.7%・・・第30回司法制度改革審議会配布資料による)です。しかし日本の裁判員制度では選択の余地はありません。この点、選択を可能にするなどの異論がメディアから出ても良さそうですが、何故か異論や批判はありません。

 新制度を十分理解せずに賛成し、制度がスタートする、そして制度の欠陥が誰の目にも明らかになってから騒ぎ出す、というのではメディアの役割を果たしているとは言えず、単なる情報のメッセンジャーにすぎません。


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2 コメント

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Unknown (っっ)
2008-05-30 17:21:59
僕も主さんと同じ意見です。裁判員制度に関しては、マスコミがこぞって民意に目をつぶっているのが不思議でしょうがありません。殺人事件を報道した後「裁判員制度まであと1年ですからね。我々自身がこういう難問に直面するのですね。」みたいなコメント多いですもんね。既成事実化しようと言う意図すら感じます。裁判員制度の広報CM収入を期待しているのでしょうかね?ただ一つだけ救いに思ったのは先週のサンプロで田原さんが「僕はこんな馬鹿な制度大反対」と、はっきり言っていたことです。小さな一歩でしょうが、ナイス風穴だと思います。
賛成の人が賛成と主張するのは大いに結構だと思います。でも、反対派と積極的に議論をさせて、それを報道すべきですよね。
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Unknown (okada)
2008-06-02 21:30:46
最近、NHKの姿勢がやや批判的に変化してきたように感じます。アンケートで制度そのものに対する賛否を問うたり、6/2のクロ現で問題点を指摘したりと。
そうであって欲しいという希望的観測かも知れませんが。
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