噛みつき評論 ブログ版

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世論調査のでたらめ報道

2015-03-23 09:12:22 | マスメディア
 毎年実施されている内閣府世論調査の結果が21日付で発表されました。これを伝える朝日、産経、毎日の各記事は元ネタが同じとは思えないほど「個性的」であります。単なる発表ものを記事にするのにこれほどまで「加工」するのか、と呆れます。また購読する新聞によっていかに認識が違ってくるかを示す好例です。以下に各紙の記事を紹介します(引用のために長文になってしまいました。ご容赦を)。

[朝日]
『地域格差「悪化している」29.6% 内閣府世論調査、6年ぶりの高水準』
という見出しに続いて「地域格差」が悪い方向に向かっていると答えた人の割合の推移を表すグラフを掲げています。以下、記事本文の主要部分です。

『景気悪化を感じる人の割合も1年前より大幅に増えた。アベノミクスによる景気回復の実感が広がらず、格差の拡大を感じる人が増えている実情が浮かび上がった。
 「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)との質問では、「景気」を挙げる人の割合が30.3%と昨年同期の調査より11.3ポイント増えた。「地域格差」は29.6%と5.9ポイント増で、2009年の調査の31.3%に次ぐ6年ぶりの高い水準となった。これに「国の財政」(39.0%)、「物価」(31.3%)、「雇用・労働条件」(27.8%)を加えた経済関連が、上位5分野を占めた。昨年の調査でトップだった「外交」は、13.2ポイント減って25.2%となった。
 一方、「社会で満足していない点」(複数回答)では、「経済的なゆとりと見通しが持てない」を挙げた割合が昨年より9.8ポイント増の46.9%でトップ。「若者が社会での自立を目指しにくい」が4.5ポイント増の40.1%で、安倍政権が社会保障改革で重視してきた「家庭の子育て」が「しにくい」とする回答は、2.2ポイント増の28.8%。看板政策に掲げる「女性の社会での活躍」が「志向しにくい」との回答が3.3ポイント増の25.5%で続いた』

 朝日は「悪い方向に向かっている分野」「社会で満足していない点」というネガティブな項目だけを取り上げ、悪化する暗い社会というイメージを作り上げました。よくもここまでできるものだ、と感心します。

[産経]
『内閣府世論調査 75%が「愛国心を育てる必要あり」…否定的な回答を大きく上回る』という見出しにつづく本文の主要部は以下の通り。

『「国民の間に『国を愛する』気持ちをもっと育てる必要があるかどうか」を尋ねたところ、75.8%が「そう思う」と回答した。教育現場などで愛国心を養う機会を増やすべきだという意見が大勢を占めた格好だ。
 国民が「個人の利益」と「国民全体の利益」のどちらを大切にすべきかを尋ねた質問では、「国民全体の利益」が50.6%と、20年の調査から8年連続で半数を超えた。「個人の利益」との回答は31.4%だった。
 日本が良い方向に向かっていると思う分野を複数回答で聞いたところ、「科学技術」(30.1%)、「医療・福祉」(26.7%)、「防災」(21.3%)が上位を占めた。悪い方向に向かっていると思うのは「国の財政」(39.0%)、「物価」(31.3%)、「景気」(30.3%)と続き、いずれも前回調査を上回った』

 愛国心や公益を取り上げるなど、自らの主張に都合のよいものを取り上げる点は朝日と同様ですが、「悪い方向に向かっている分野」「良い方向に向かっている分野」を共に取り上げている点は朝日よりマシと言えるでしょう。

[毎日]
『内閣府世論調査:「社会に満足」60% 外交「悪い方向へ」38%』
の見出しに続く記事の主要部は以下の通り。

『全体として今の社会に満足しているかどうかを尋ねたところ、「満足している」が7・7%、「やや満足している」が53・1%と、ともに昨年2月の前回調査から増え、計60・8%(前回53・4%)だった。良い方向に向かっている分野(複数回答)を聞いたところ、「景気」が前回の11%から22%に倍増。悪い方向に向かっている分野(同)では「外交」を選んだ人が最も多く、38・4%(前回35・9%)だった。
 良い方向に向かっている分野では、「医療・福祉」が27・6%で最も多く、「科学技術」が25・1%で続いた。「景気」は前回から伸びが目立つようになり、内閣府は「景気回復や雇用状況の改善が浸透してきた」と分析している。
 一方、社会に「あまり満足していない」は31・8%、「満足していない」は6・9%で計38・7%。前回の46・1%から7・4ポイント減少した。
 悪い方向に向かっている分野は「外交」に次いで「国の財政」32・8%▽「雇用・労働条件」28%--などの順。「財政」と「雇用」への不安が前回より減ったのに対し「外交」は増え、1998年に同じ設問にしてから初めてトップになった。中国や韓国との関係悪化などが影響したとみられる。
 調査では「国や社会のことにもっと目を向けるべきだ」「個人生活の充実をもっと重視すべきだ」のどちらの意見に近いかも質問。「国や社会」が49・5%で、「個人生活」の39・1%を上回った』

 毎日は比較的バランスの取れた記事になっています。ただ「悪い方向に向かっている分野」で外交がトップとなったとしていますが、他社の記事では逆に前年の38.4%から25.2%にまで減少となっており、恐らく誤りだと思います(初歩的かつ重大な誤りですね)。直接内閣府のHPで確認できればよいのですが現在掲載されていません。これは同時発表するとメディアの存在理由が減少するので、メディアに配慮してわざと遅らせているのだという話があります。記者クラブの圧力なのか知りませんが理不尽なことです。

 発表内容と記事内容との乖離という点で、やはり朝日は突出しています。事実をそのまま伝えるのがメディアのモラルなら、朝日のモラルの低さは最高というわけであります。さすが、というべきでしょうか。やはりというべきでしょうか。昨年の謝罪騒ぎなどまったく意に介しないような傲慢ぶりはお見事です。

 朝日はもちろん突出ですが、産経もけっこう恣意的で、客観的報道とはとても思えません。また毎日は比較的客観性があるものの重大な誤りを犯すお粗末さ。一体どれを信じればよいのでしょう。単に発表を伝えるだけで、それほど難しい報道ではないと思うのですが。


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2 コメント

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賢くなりたいものです。 (onecat01)
2015-03-25 12:22:29
 噛みつき 殿

 私は文系なので、支離滅裂な新聞を並べて読みましても、「へえ、こんなものか。」とうなづいて終わりです。
 
 その点理系の貴方は、キチンと事実を検証し、分析して発信される。
 さすがです・・・と、こう言えば誉めすぎと貴方に笑われそうですが、そんな印象が常にあります。

 さて本題です。マスコミや世間がどうあろうと、愚かな意見に惑わされないように、賢くなりたいものです。

 難しいことですが、心がけております。
貴方のブログは、そんな私たちへの警鐘であり、まさに社会の木鐸であります。

 ひと時、かの朝日が僭越にも自称しておりましたが、笑止千万、とんでもないことです。
 恥を知れと、叱りつけたい今日ですね。
 
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Unknown (okada)
2015-03-27 13:35:57
長くて数字のたくさん入った引用文はさぞ読みにくかったろうと思います。時間をお取しました。私に信用があれば結論だけ書けばいいのですが、そうはいかないので根拠を並べたわけです。
おっしゃる通り理系は厳密さを好みますね。文系だと90%適用可能なら法則として認められますが、理系ではそうは行きません。文系が扱う分野はもともと曖昧さを含んでいるため、そうならざるを得ないのでしょう。
この例では、多くのマスコミが事実を忠実に伝えるという本来の仕事を実にいい加減にやってるという印象を新たにしました。
ほんと、朝日の自称木鐸には呆れますね。
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