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日本の所得格差やや縮小とOECD発表・・・新聞が黙殺した「不都合な真実」?

2008-11-03 09:08:04 | Weblog
『「日本、所得格差やや縮小」
 世界の主要国と比べた日本の所得格差は中ぐらいで、1990年代半ば以降の10年間ではほかの国での格差拡大とは対照的に日本では格差がやや縮まったことが経済協力開発機構(OECD)が21日発表した格差分析リポートでわかった。企業のリストラなどで家計の実質所得が減るなかで、格差拡大が抑えられたとみられる』

 上記は10月22日の日経に掲載された記事の一部ですが、格差は拡大していると思っていた読者にとっては大変意外な内容です。ところがこの記事は他紙には見当たりません。OECDと所得格差をキーワードにグーグルでニュース検索すると日経以外の一般紙はなく、CNN Japan、マイコミジャーナル、47NEWSのネットニュースがヒットします(赤旗もありましたが、一般紙とはいい難く、記事も発表の主旨から大きく外れているので論外とします)

 検索結果を見る限り、他のすべての新聞は報じなかったようです。OECDの発表はマイコミジャーナル(2008/10/23)に詳しく載っています。「日本の所得格差、過去5年間で縮小に転じる--OECD調査」と題する記事の要点は

○日本を含む4分の3以上の国が過去20年間で格差が拡大
○日本のジニ係数は0.321で世界平均をわずかに上回った
○日本は過去5年ではやや改善されたことを示している
○貧困水準(所得分布の中央値の2分の1未満で生活する人の比率)で日本は4番目に高い
○報告書ではこうした日本の格差の原因のひとつとして、急速に進行する高齢化社会を挙げている。

となっています。ジニ係数は単一の数値だけで表される大雑把なものです。それで見る限り、僅かに格差縮小が見られますが、貧困率の高さなど、決して楽観できるものではないことを示しています。しかしこの発表には従来の認識に修正を迫る部分があることも事実です。

 所得格差の動向はいま注目されている問題であり、発表機関は信頼性のあるOECDです。ニュース価値が低いとは思えません。少なくとも紙面を華々しく飾る殺人事件よりも価値があるでしょう。OECDの発表をわかりやすく解説し、他の資料をも含め、格差の変化を理解できるようにするのが新聞の役割だと思います。

 今まで格差拡大と書きまくった新聞がOECDの発表を掲載をすれば、一貫性を問われことになるのかも知れません。あるいは格差縮小を求める動機が弱くなることに配慮したのかも知れません。

 しかしどんな理由であれ、重要なことを隠蔽する姿勢は納得できません。事実を報道し、読者に評価を委ねるのが本来の報道のあり方であり、新聞の価値判断に基づいて情報を恣意的に選別して、読者を「指導」する姿勢はいい加減にやめるべきでしょう。

 新聞が読者に比べ賢明だというなら「ご指導」にも一理がありますが、なかなかそうは信じられません。農政ジャーナリストの中村靖彦氏は次のように述べています。「テレビ・新聞から食品偽装についてコメントを求められることが多いが、記者連中の基本的な知識の欠如に驚くことがある」・・・ほんの一例ですが。


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