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処刑の方法

2009-06-18 10:17:34 | Weblog
 「中国の国営英字紙チャイナ・デーリーは16日、北京市が年内に死刑執行方法を銃殺から薬物注射に切り替えると伝えた」
 「最高人民法院(最高裁)調査局のHu Yunteng局長は、チャイナ・デーリーに対し、薬物注射が銃殺よりも清潔で安全、便利だと語った。死刑執行方法としての薬物注射は、1997年に中国で合法化された」(6月16日 AFP)

 また産経WEB版によると、司法専門家は「(銃殺から注射への移行は)社会の進歩だ」と指摘した、とあります。中国の銃殺は映画などでよく出てくるような前からの一斉射撃ではなく、後ろから頭部を撃つものだそうです。

 薬殺の長所が「清潔で安全、便利」という説明には少し驚きますが、まあお国柄の違いなのでしょう。米国では絞首刑が残虐であるとして廃止され、死刑制度のあるほとんどの州では薬殺または薬殺が選択可能となっているそうです。まず鎮静剤で意識を失わせ、次に筋弛緩剤で体をマヒさせ、最後に心臓を停止させる、という3段階の方法が正常に行われるならば苦痛なく死に至るとされています。

 日本では憲法第三十六条に「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」とありますから、絞首刑は残虐な刑罰ではないという解釈です。ギロチンは苦痛をできるだけ与えない人道的な装置とされていましたが、現在それを残虐ではないと考える人は少ないでしょう。何が残虐かは相対的なものです。たしかに絞首刑は、古来の火あぶりや釜ゆで、イランの石打刑、サウジの斬首刑よりは残虐でないといえるでしょう。しかし薬殺が米国だけでなく、死刑大国の中国まで採用され主流となると、はたして絞首刑は残虐でないと言えるでしょうか。

 日本では死刑を廃止するか存置するかの議論が盛んですが、死刑の方法についてはあまり議論されることはありません。抽象的な存廃論議だけでなく、死刑に関する現実的・具体的な議論がなされてもよいと思います。薬殺の導入、死刑方法を選択可能にすること、などが議論されてもよいのではないでしょうか。

 残虐な犯罪が大々的に報道されるたびに死刑存置論の強まる傾向が見られますが、死刑を廃止する国が多数を占めるに至った現在、この傾向は特異なものです。わが国のメディアの被害者よりの報道姿勢と死刑存置論が無関係とはいえないと、私には思えます。

 グーグルの検索では、上記の記事を掲載しているのはAFPと産経だけで、他に取り上げているメディアはなく、メディアの関心の低さを表しているようです。メディアは存廃の抽象論だけでなく、より現実的な議論にも関心を持ってもよいのではないでしょうか。少なくとも無視すべきものではないように思います。


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2 コメント

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同感です。 (やすじ)
2009-06-18 16:03:59
はぁチャイナがそうなんですか

なるほど時代かなー

冤罪で亡くなる方も皆無とは言えないし

三段階で苦痛与えないでせめてやらざるを得ないときはやって欲しいですねぇ

まぁ人間一度は誰も死ぬから しかし苦痛は必要無いかな

しかしいつもながら 視点が他であまり取り上げてないところを出して来られるので (o^-’)b Goodであります
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ついでに終身刑も (okada)
2009-06-19 10:06:59
Goodを頂戴し感謝します。
終身刑は死刑より残酷という人がいますが、安楽死オプション付の終身刑なら文句はでないでしょうね

死刑の意味ですが、楽に死なせると犯罪の抑止効果がなくなるという意見もあるようです。しかし社会から消えてもらうという意味の方が大事だと思います。
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